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農林水産省

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脂質による健康影響

更新日:2020年4月27日

食事から摂取する脂質は、多すぎても少なすぎても健康に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、一部の種類の脂質については、食生活における摂取量の基準が設定されています。

日本人の食事摂取基準

厚生労働省は、国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び各栄養素について、摂取量の基準を定めています。現在は、令和元年(2019年)12月に公表された「日本人の食事摂取基準(2020年版)」が最新です。以下に、栄養素に関する指標のうち、脂質に関するものをご紹介します。

日本人の食事摂取基準(脂質に関する部分)

脂質、飽和脂肪酸の目標量(※1)は、総エネルギー摂取量に占める割合(%エネルギー)、n-6系及びn-3系脂肪酸の目安量(※2)は1日当たりの摂取量で示されています(成人についての基準のみ抜粋)。

 ※1  生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。
 ※2  一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量。 

  性別 男性 女性
年齢 18-29歳 30-49歳 50-64歳 65-74歳 75歳以上 18-29歳 30-49歳 50-64歳 65-74歳 75歳以上
脂質
(エネルギー比率)
目標量 20% 以上 30% 未満 20% 以上 30% 未満
飽和脂肪酸
(エネルギー比率)
目標量 7%以下 7%以下
n-6系脂肪酸
(g/日)
目安量 11g 10 g 9 g 8 g 8 g 7 g
妊婦 9 g
授乳婦 10 g
n-3系脂肪酸
(g/日)
目安量 2.0 g 2.2 g 2.1 g 1.6 g 1.9 g
2.0 g
1.8 g
妊婦 1.6 g
授乳婦 1.8 g

 

脂質の欠乏又はとりすぎによる健康影響

脂質(脂肪エネルギー比率:総エネルギーに占める脂質の割合)

脂質は重要なエネルギー供給源であるとともに、細胞膜や生理活性物質の構成成分にもなります。脂質の一部を構成する脂肪酸の中には、体内で合成することができず、食事からとらなければならない必須脂肪酸もあります。一方、脂質(特に飽和脂肪酸)をとりすぎると循環器疾患の危険因子となる脂質異常症のリスクが増加する可能性があります。
食事摂取基準では、飽和脂肪酸の目標量の上限を超えないよう、また必須脂肪酸の目安量を下回らないよう、脂質の目標量として脂肪エネルギー比率の下限、上限が定められています。

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は、炭素間に二重結合を持たない脂肪酸で、乳製品、肉などの動物性脂肪や、近年、我が国において使用量が増えているパーム油などの植物油脂に多く含まれています。これらも重要なエネルギー源ではありますが、飽和脂肪酸をとりすぎると、血中総コレステロールが増加し、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患のリスクが増加することが予想されています。

食事摂取基準では、日本人が現在摂取している飽和脂肪酸の量の中央値をもとに、目標量の上限が設定されています。

一価不飽和脂肪酸

炭素間に二重結合をもつ脂肪酸を不飽和脂肪酸といいます。一価不飽和脂肪酸は、不飽和脂肪酸のうち、二重結合を一つもつもので、動物性脂肪やオリーブ油などの植物油に多く含まれ、その大部分はオレイン酸です。一価不飽和脂肪酸は食品から摂取するほか、体内で飽和脂肪酸から合成することができるため、必須脂肪酸ではなく、食事摂取基準では、目安量や目標量は設定されていません。

n-6系脂肪酸

炭素間の二重結合を二つ以上もつ多価不飽和脂肪酸の中でも、鎖状に結合した炭素のうち、末端から数えて3個目と4個目の炭素間に最初の二重結合があるものを「n-3系(エヌ・マイナス・サンケイ)脂肪酸」といい、6個目と7個目の炭素間に最初の二重結合があるものを「n-6系(エヌ・マイナス・ロクケイ)脂肪酸」といいます。
n-6系脂肪酸には、リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸などがあり、γ-リノレン酸、アラキドン酸はリノール酸の代謝物です。日本人が食品から摂取するn-6系脂肪酸の98%はリノール酸とされており、大豆油やコーン油などの植物油が主な摂取源です。リノール酸などのn-6系脂肪酸は体内で合成することができないため、食事から摂取する必要がある必須脂肪酸です。
食事摂取基準では、日本人のn-6系脂肪酸摂取量の中央値をもとに目安量が定められています。

n-3系脂肪酸

n-3系脂肪酸には、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがあり、α-リノレン酸は植物油が、EPAやDHAは魚介類が主な摂取源です。これらの脂肪酸は、体内で合成できない必須脂肪酸です。食事摂取基準では、現在の日本人のn-3系脂肪酸摂取量の中央値をもとに、目安量が設定されています。
なお、妊婦は胎児の器官生成のため、より多くのn-3系脂肪酸の摂取が必要です。また、授乳婦も、n-3系脂肪酸を十分に含む母乳を分泌できる量を摂取する必要があります。食事摂取基準では、妊婦と授乳婦の摂取量について、それぞれ目安量が設定されています。

コレステロール

コレステロールは、脳神経や筋肉の働き、細胞膜やホルモンの生成に不可欠な物質です。コレステロールは体内(肝臓)で合成できる脂質であり、食事から摂取されるコレステロールは、体内で作られるコレステロールの7分の1から3分の1であることが知られています。食事から摂取されるコレステロールが少ないと体内で作られるコレステロールが増加し、逆に食事から摂取されるコレステロールが多いと体内で作られるコレステロールは減少します。よって、食事から摂取されたコレステロールの量が、そのまま血液中のコレステロール値に反映されるわけではありません。

食事摂取基準では、目標量は設定されていませんが、脂質異常症の方等においては、その重症化予防の目的から、コレステロールの摂取量を200 mg/日未満に抑えることが望ましいとしています。

トランス脂肪酸

食事摂取基準では、トランス脂肪酸の健康への影響が飽和脂肪酸に比べてかなり小さいとして、目標量は定められていません。ただし、世界保健機関(WHO)が2003年にトランス脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギーの1%に相当する量より少なくすることを目標としたことを参考に、厚生労働省の食事摂取基準でも、トランス脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギー量の1%相当より少なくすること、1%相当より少ない場合でも、さらにできるだけ少なくすることが望ましいとしています。

用語解説

冠動脈性心疾患(冠状動脈性心疾患)

冠動脈性心疾患は、心臓に血液を供給する冠動脈で血液の流れが悪くなり、心臓に障害が起こる病気の総称です。冠動脈の内側が狭くなり、心筋に必要な量の酸素が供給できなくなった結果、胸の痛みに襲われる狭心症や、冠動脈の詰まりがひどく、心筋の一部の組織が壊死してしまう心筋梗塞が含まれます。ほぼ同様の病気の総称を、虚血性心疾患や冠動脈疾患という場合もあります。

出典:冠状動脈性心疾患/CHD(厚生労働省 e-ヘルスネット)〔外部リンク〕

参考文献

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

担当:化学物質管理班
代表:03-3502-8111(内線4453)

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