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農林水産省

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更新日:2010年10月19日

脂質による健康影響

食事から摂取する脂質は、少なすぎる場合も多すぎる場合も健康に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、一部の種類の脂質については食生活における摂取目安量や目標量が設定されています。

日本人の食事摂取基準

厚生労働省は、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的に、科学的な根拠、確率論的な考え方に基づいて、エネルギー及び各栄養素の摂取量の指標(食事摂取基準、Dietary Reference Intakes)を定めています。現在は、2009年5月に公表された「日本人の食事摂取基準(2010年版)」が最新となります。以下に、栄養素に関する指標のうち、脂質に関するものをご紹介します。

日本人の食事摂取基準(脂質に関する部分)

脂質、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸の目標量は、総エネルギー摂取量に占める割合(%エネルギー)、n-6系脂肪酸の目安量及びn-3系脂肪酸、コレステロールの目標量は1日当たりの摂取量で示されています。 (成人についての基準のみ抜粋)

  性別 男性 女性
年齢 18-29歳 30-49歳 50-69歳 70歳
以上
18-29歳 30-49歳 50-69歳 70歳
以上

脂質

(脂肪エネルギー比率)

目標量 20%
以上
30%
未満
20%以上25%未満 20%
以上
30%
未満
20%以上25%未満
飽和脂肪酸 目標量 4.5%以上7.0%未満 4.5%以上7.0%未満
n-6系脂肪酸 目標量 10%未満 10%未満
目安量 11 g 10 g 8 g 9 g 8 g 7 g
n-3系脂肪酸 目標量* 2.1 g
以上
2.2 g
以上
2.4 g
以上
2.2 g
以上
1.8 g以上 2.1 g
以上
1.8 g
以上
コレステロール 目標量 750 mg未満 600 mg未満

*n-3系脂肪酸の目標量では、EPA+DHAを1 g/日以上摂取することが望ましい。

脂質の欠乏又は過剰による健康影響

脂質(脂肪エネルギー比率:脂質の総エネルギーに占める割合)

脂肪は、同じ重さで比べると炭水化物やたんぱく質よりも大きなエネルギーを持っています。したがって、脂肪の多い食品は少量でも大きなエネルギーを持っており、脂肪をとりすぎると、特に運動不足の場合にはエネルギーのとりすぎになってしまいます。とりすぎたエネルギーは体脂肪として蓄積されるため、肥満やメタボリックシンドロームの原因となります。厚生労働省によれば、「メタボリックシンドロームになると、糖尿病、高血圧症、高脂血症の一歩手前の段階でも、これらが内臓脂肪型肥満をベースに複数重なることによって、動脈硬化を進行させ、ひいては心臓病や脳卒中といった命にかかわる病気を急速に招く」とされています。

日本人の食事摂取基準(2010年版)の策定検討会報告書(2009年)(以下、「検討会報告書」とします。)には、脂質をとりすぎた場合の影響について、「脂肪エネルギー比率が高くなると、エネルギー摂取量が大きくなり、ひいては肥満、メタボリックシンドローム、さらに冠動脈疾患のリスクを増加させる。高脂肪食は飽和脂肪酸量を増加させ、飽和脂肪酸は血漿LDL-コレステロール濃度を上昇させ、冠動脈疾患のリスクを高くする。」ことが報告されています。また、脂質の中には必須脂肪酸が含まれる他、摂取量が少ないと脂溶性ビタミンの吸収の悪化やたんぱく質及びエネルギーの不足になるため、目標量として下限、上限が定められています。

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は、炭素-炭素二重結合を持たない脂肪酸で、乳製品、肉などの動物性脂肪や近年、我が国において使用量が増えているパーム油などの植物油脂に多く含まれています。これらも重要なエネルギー源ではありますが、とりすぎると血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が増加し、動脈硬化が促進されることが予想されています。近年の研究では、飽和脂肪酸の摂取量が多い場合に冠動脈性疾患、肥満、糖尿病が問題となることが解っていますが、これらの直接の原因が飽和脂肪酸の摂取であるかどうかは明らかではありません。飽和脂肪酸を多く摂取するような生活習慣が、心筋梗塞や糖尿病リスクを増加させると考えられています。

日本人の食事摂取基準では、飽和脂肪酸の摂取量が少ない場合にも、脳出血、生活習慣病のリスクを増加させる可能性があると考えられており、目標量の上限、下限がそれぞれ設定されています。

一価不飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸は、不飽和脂肪酸のうち、炭素-炭素二重結合を一つもつもので、動物性脂肪やオリーブ油などの植物油に多く含まれ、その大部分はオレイン酸です。一価不飽和脂肪酸は食品から摂取するほか、飽和脂肪酸から体内で合成することができるため、必須脂肪酸ではありません。

日本人の食事摂取基準では、一価不飽和脂肪酸と冠動脈性疾患などの生活習慣病リスクの関連は明らかではないことから、目標量の下限、上限は設定されていません。脂肪エネルギー比率を目標量の範囲に抑え、その他の脂質を目安量又は目標量の下限以上摂取することで、一価不飽和脂肪酸の過剰摂取は避けられると考えられています。検討会報告書は、「欧米の研究で、多量の摂取は冠動脈性心疾患のリスクになることが示されているため、過剰摂取に注意すべき」としています。

n-6系不飽和脂肪酸

炭素-炭素二重結合を二つ以上もつ多価不飽和脂肪酸の中でも、鎖状に結合した3個目の炭素に二重結合があるものを「n-3系(エヌ・マイナス・サンケイ)脂肪酸」といい、6個目の炭素に二重結合があるものを「n-6系(エヌ・マイナス・ロクケイ)脂肪酸」といいます。

n-6系脂肪酸には、リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸などがあり、γ-リノレン酸、アラキドン酸はリノール酸の代謝物です。日本人が食品から摂取するn-6系脂肪酸の98%はリノール酸とされており、大豆油やコーン油などの植物油が主な摂取源です。リノール酸は生体内で合成することができないため、食事から摂取する必要がある必須脂肪酸です。

日本人の食事摂取基準では、n-6系脂肪酸が不足すると皮膚炎等の欠乏症が見られるため目安量が定められています。ただし、n-6系脂肪酸については、体内で炎症を引き起こす要因となる化学物質に変化するため、十分なデータは示されてはいないものの、とりすぎた場合の安全性も危惧されており、成人については目標量の上限も同時に定められています。

n-3系不飽和脂肪酸

n-3系脂肪酸には、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などがあり、α-リノレン酸は主に植物油から、EPAやDHAは魚介類から摂取しています。

n-3系脂肪酸のうち、α-リノレン酸には冠動脈疾患の予防効果が、EPAやDHAには冠動脈疾患だけでなく脳梗塞や加齢黄斑変性症に対しても予防効果が認められていることから、日本人の食事摂取基準では目標量の下限が設定されており、特にEPA及びDHAについては1 g/日以上、魚に換算すると約90 g/日以上の摂取が推奨されています。EPAやDHAは日常の摂取量の範囲では多く摂取しても有害な作用があるとは考えられていませんが、魚類にはn-3系脂肪酸などの有益な栄養素が含まれる一方で水銀やカドミウム、ダイオキシンなどの有害物質も含まれていることから、極端な摂取は好ましくないと考えられます。なお、子供の場合、n-3系脂肪酸が不足すると皮膚炎等の欠乏症が見られるため、目標量ではなく目安量が定められています。

コレステロール

コレステロールは、脳神経や筋肉の働き、細胞膜やホルモンの生成に不可欠な物質です。コレステロールは体内(肝臓)で合成される脂質ですが、一部は食事からも取り入れています。卵には、1個にコレステロールが約250 mg含まれています。実は、食事から摂取するコレステロールは体内で作られるコレステロールの1/7~1/3とわずかしかないことが知られています。食事から摂取するコレステロールが少ないと、体内で作られるコレステロールが増加し、逆に多く摂取すると体内で作られるコレステロールは減るため、食事からのコレステロールがそのまま血液中のコレステロール値に反映されるわけではありません。

体内で合成された(又は食事から吸収された)コレステロールは、LDL(低比重リポタンパク)によって必要としている細胞組織に運ばれます。そこで利用されなかったコレステロールは、HDL(高比重リポタンパク)によって肝臓に戻ります。 このLDLとコレステロールの複合体をLDLコレステロール(いわゆる「悪玉コレステロール」)、HDLとコレステロールの複合体をHDLコレステロール(いわゆる「善玉コレステロール」)と呼んでいます。 食事からコレステロールを多くとると、血液中のLDLコレステロールの量が特に増えて、HDLコレステロールとのバランスが崩れ、細胞組織に運ばれるコレステロールが過剰となり、それらが血管の壁にたまることで動脈硬化を引き起こす要因となると考えられています。また、コレステロールの摂取量が多い場合に、ある種のがんの罹患率が高くなることも報告されています。このため、食事摂取基準では成人について目標量の上限値が設定されています。

用語解説

メタボリックシンドローム

平成17年4月に、国内8つの学会(日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本肥満学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会、日本内科学会)が合同で、メタボリックシンドロームの概念とその診断基準を示しました。
日本では、メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満(内臓のまわりに脂肪が蓄積するタイプの肥満)に加えて、高血糖、脂質代謝異常、高血圧が2つ以上生じている状況をいいます。これらの因子が重複して発症した場合、虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症リスクが大きいため、内臓脂肪を減少することで発症リスクの低減が図られるという考え方を基本としています。
出典:厚生労働省 今後の生活習慣病対策の推進について(中間とりまとめ)[外部リンク]

冠動脈性心疾患

心臓の筋肉へ血液を供給する動脈(冠動脈)が狭くなったりふさがったりすることにより、心臓への血液供給が減少または完全に遮断される病気の総称です。代表的な病気には狭心症と心筋梗塞があります。虚血性心疾患や冠動脈疾患と呼ばれる場合もあります。

参考文献

お問い合わせ先

消費・安全局食品安全政策課
担当者:製造流通安全企画班
代表:03-3502-8111(内線4459)