10.野菜
近年、令和元年の東日本の台風、令和2年7月に熊本県などを襲った豪雨など過去に例のない災害により、土砂の流入、冠水などの被害が多発している。また、野菜価格安定制度の価格差補給金は自然災害等で出荷できない場合は対象外。
災害対策の基本として、自然災害などのリスクに対しては、農業者自らが備えることが重要であるため、青色申告者には収入保険への加入を勧める。また、ハウス栽培の場合は、ハウスの損害に備えて、園芸施設共済等に併せて加入するよう勧める。
ア 寒害対策
発芽又は定植後の幼苗期は、被覆資材の利用等により地温の上昇に努める。また、生育初期の窒素質肥料の多施用を避け、適切な生育管理に努める。育苗に当たっては、低温障害を受けないよう留意しながら、十分な換気を行う。また、病害が発生した場合には、速やかに防除を実施する。
イ 雪害対策
育苗床の設置に当たっては、日照、風向等を十分に考慮するとともに、除雪や融雪促進剤の散布を行い、適期育苗に努める。また、作付予定地等において平年よりも融雪が相当に遅延する場合には、融雪促進剤の散布等と排水を促進することにより、地温の上昇及び湿害の防止に努める。
ウ 凍霜害対策
冷気の滞留場所、風向等を考慮し、凍霜害を回避できる適地を選定する。また、早期のは種・定植を極力避け、健苗の育成に努めるとともに、定植後は、フィルム被覆やべたがけ資材の利用等により被害の回避に努める。被害が発生した場合には、欠株の補植、速効性肥料の施用等により草勢の回復を図るとともに、病害虫を適切に防除する。
エ 低温・長雨・寡照対策
夏秋期における異常な低温・長雨・寡照の条件下では、生育・着果不良等となりやすく、また、病害虫が多発しやすいので、排水対策や病害虫防除対策を徹底する。また、長雨・多雨時に備え、事前に排水路網の点検整備等を行うとともに、品目によっては雨よけ施設等を設置する。
ア 全般
かん水は、早朝・夕方に実施する。施設内でのかん水は、通風するなどして湿度を下げて行う。地温上昇の抑制や土壌水分の保持を図るために、地温抑制マルチや敷わら等を活用する。高温耐性品種を選定する。園芸用施設においては、妻面・側面を解放するとともに遮光資材等を使用し、施設内の温度上昇を抑制する。循環扇を使用することで、局所的な高温空気の滞留を防ぎ、室内温度の均一化が図られるとともに作業快適性が向上する。また、風通しを良くするために、こまめな除草を行うとともに、側枝、弱小枝及び下葉を除去するよう努める。育苗箱は、コンテナやブロックでかさ上げし、風通しを良くするよう努める。なお、単一の技術のみでは、その効果が不十分であることから、複数の技術を組み合わせることが重要となる。
<関連情報>
農研機構HP「高温期ホウレンソウの品質向上マニュアル」(PDF : 659KB)
農研機構HP「いちごの高設栽培の気化潜熱利用培地冷却技術」(PDF : 1,739KB)
イ 葉茎菜類に関する留意事項
乾燥によるチップバーンを防止するため、薬剤防除時にカルシウム剤を混用する。ねぎでは、軟腐病が発生するおそれがあることから、畝間かん水を控える。
ウ 果菜類に関する留意事項
不良果の摘果、若どりを行い、着果負荷を軽減するとともに、適切な施肥を行うことにより樹勢維持に努める。また、老化葉、黄色葉を中心に摘葉を実施し、水分の蒸発抑制に努める。カルシウム欠乏、鉄欠乏、ホウ素欠乏等の生理障害対策として、必要に応じて葉面散布を行う。
土壌の保水力を高め、根を深く張らせるために、深耕、有機物の投入等に努めるとともに、畑地かんがい施設の整備及び用水の確保に努める。さらに、マルチ等により土壌面からの蒸発防止に努める。また、ハダニ類、アブラムシ類、うどんこ病等干ばつ時に発生が多くなる病害虫の適期防除に努める。
ア 予防対策
防風垣、防風網の整備等により風害・潮害対策に努めるとともに、ほ場内からの早期排水のため、あらかじめ溝切り、畦立て等を実施する。また、べたがけ資材の利用等により風害回避に努める。傾斜地畑においては、排水路の設置等により畑地崩壊及び土壌侵食を防止する。
イ 事後対策
冠水・浸水時には速やかな排水に努める。また、土寄せ、追肥、液肥の葉面散布等を行い生育の回復に努めるとともに、折損した茎葉の除去や適切な薬剤散布で病害の発生を防止する。生育初期に被害を受けた場合は、予備苗による植替え等を行う。植替え等により生育が遅れる場合は、フィルム被覆等により生育の促進に努める。潮風害を受けた場合には、散水による除塩作業を実施する。施設栽培においては、台風通過後の強い日射によって高温障害が生じやすいので、フィルムの巻上げ等の換気操作を行う。防除用設備(配管、水槽、スプリンクラー、防除機材等)が破損するなど、既存の管理・防除手段が使えなくなった場合には、他の管理・防除設備等の手配など、代替手段の確保に努め、適期防除を徹底する。
被害発生時には、欠株の補植、追肥等を的確に行い、生育の回復に努める。また、折損した茎葉の除去と適切な薬剤散布を行い、病害の発生を防止する。
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