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農林水産省

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aff 2019年8月号
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漁業の新潮流(1)水産業の復興に向け担い手を育成

一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(宮城県石巻市)

一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(宮城県石巻市)

2014年に設立。水産業のイメージをカッコよくて、稼げて、革新的という「新3K」に変え、次世代へと続く未来の水産業の形を提案していく若手漁師集団。

漁師の世界への入口を作る

宮城県石巻市の沖には世界三大漁場といわれるほどの好漁場が広がり、三陸海岸の南端の入り組んだ湾は養殖に適しています。しかし、豊かな海に生きてきた漁師たちは2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けました。

この地で被害を乗り越え、漁業を次世代につなげようと活動している若手漁師らの団体が、フィッシャーマン・ジャパン。中でも彼らが力を入れているのが、新たな漁師を育てることを目的としたTRITON PROJECT(トリトンプロジェクト)です。

漁師が現場の仕事を教える。漁業体験ができる
漁業体験ができる「TRITON SCHOOL」。漁師が現場の仕事を教える。
写真提供/Funny!!平井慶祐

漁師になってみたい人などの相談を受け付ける問い合わせ窓口、水産業専用の求人サイト、漁業を学べる短期研修プログラム、空き家をリフォームし新人漁師が暮らせるようにしたシェアハウスなどの事業からなるプロジェクトです。この他、「子どもが憧れる職業に」をモットーに子ども向けの漁業体験も実施しています。

代表理事を務める阿部勝太さんは「宮城県漁協も漁業体験への講師の派遣や就業先として協力してくれるなど、担い手作りで行政も漁協も一緒にチャレンジする関係になっています」と言います。周囲の人々の理解と協力もあり、2019年までの4年間で30人の新たな漁師を宮城県に呼び込みました。

空き家をリノベーションした漁師専用シェアハウス。
空き家をリノベーションした漁師専用シェアハウス。宮城県内の7軒に10人が暮らしている。

また、漁師という職業についてこう言います。「1,000万円、2,000万円分の水揚げがあっても、船のエンジンが壊れれば1,000万円、船を替えるなら3,000万円というように大きな費用がかかる仕事です。それでもサラリーマン以上の収入を得られることもある。努力次第で成果の上がる夢のある仕事です」

さらに、高校時代はバレーボールに打ち込んでいたという阿部さんは、自らのワカメ養殖の仕事について「目標を立てて努力すれば、成果を上げられるのは部活に似ています。ワカメの種付けと収穫の関係は練習と試合のようです」と表現します。「刺激的なチャレンジですから、運動をバリバリやっていた人なら楽しめると思いますよ」

フィッシャーマン・ジャパン代表理事のその後、阿部勝太さん。
フィッシャーマン・ジャパン代表理事の阿部勝太さん。宮城県石巻市出身。高校卒業後、東京や愛知で5年間生活。その後、故郷の十三浜に戻り、ワカメ漁師に。2014年にフィッシャーマン・ジャパンを設立。

地域の人たちとともに復興を

事務局長としてフィッシャーマン・ジャパンの活動を支える長谷川琢也さんは「震災が発生した3月11日が自分の誕生日ということもあり、運命的なものを感じて、ボランティア活動を行うため被災地に向かったのが始まりでした」と言います。

しばらく泥かきや炊き出しをしていましたが、「個人でできることは限られている」と感じた長谷川さんは勤めている大手IT企業を動かして、数々の支援プロジェクトを企画しました。

フィッシャーマン・ジャパン事務局長の長谷川琢也さん。
フィッシャーマン・ジャパン事務局長の長谷川琢也さん。神奈川県横浜市出身。千葉大学を卒業し、ITスタートアップ企業を経てヤフー株式会社に入社。東日本大震災後、宮城県に移住する。

さらに地元の人たちとともにビジネスを作り、復興につなげたいという思いから2012年に石巻市に移住。被災地の産品を販売する「復興デパートメント(現在のエールマーケット)」というサイトを立ち上げ、ここで扱う水産物を介し、被災した若い漁師たちと知り合います。

阿部さんは当時のことを「震災後、漁師を辞めていく仲間も多く、このままでは浜が廃れていくばかりだ、と強い危機感を持っていました」と振り返ります。

フィッシャーマン・ジャパンが制作したプロモーションビデオ。

自分たちで立ち上がるしかない、と決意した地元の若手漁師たちと長谷川さんは手を組みます。そうして、2014年7月、「漁師の育成」と「チームで6次化」をテーマに掲げ、漁師8人と仲買人3人、事務局2人でフィッシャーマン・ジャパンを立ち上げました。

「カッコいい、稼げる、革新的」の新3K

フィッシャーマン・ジャパンでは、魚を獲る人だけでなく、加工する、卸す、売る、情報を発信する人などを含め広い意味で水産業に関わる人をフィッシャーマンと位置づけており、三陸の水産業を担うフィッシャーマンを10年で1,000人増やすことを目標に掲げています。

2019年6月には石巻駅近くで、漁師が集まるスペースのお披露目を行った。
2019年6月には石巻駅近くで、漁師が集まるスペースのお披露目を行った。ここは、漁師になりたい人、漁業に興味のある人などが集まり、情報交換などを行う場所。インターネットを介したクラウドファンディングで資金を調達して完成した。

また漁師の仕事を「カッコいい、稼げる、革新的」の新3Kで表現されるものにしていくこともテーマのひとつとしており、漁師をモチーフにしたロゴ入りのウエアやグッズを販売する事業などを手がけています。

大手ファッションブランドと連携し、フィッシャーマンをテーマとした衣料などを企画・販売する。(右)
大手ファッションブランドと連携し、フィッシャーマンをテーマとした衣料などを企画・販売する。
写真提供(右)/URBAN RESEARCH

長谷川さんは「自然に立ち向かい、食べるものを獲ってくる。そんな漁師のカッコよさを伝えたいと、インターネットなどの写真や動画で彼らの姿を紹介しています。私たちの活動に共感し、協力してくれる腕利きのクリエーターの皆さんも、漁師は絵になる、と口をそろえます」と笑顔に。

さらに、漁協の共販以外の販路を自分たちで開拓している他、東京都中野区に宮城県直送の魚介類を提供する「魚谷屋(うおたにや)」をオープンさせました。

魚谷屋では若い漁師が自ら料理を振舞うことも。
魚谷屋では若い漁師が自ら料理を振る舞うことも。

こうした従来の漁師のイメージの枠を超える活動が知られるようになり、他県の漁業者とのつながりも生まれています。すでに北海道の利尻島や福岡県の藍島(あいのしま)でフィッシャーマン組織の立ち上げを支援しています。

震災からの復興にとどめず、自分たちで模索した課題解決のヒントを全国で生かしてもらえるように、と「フィッシャーマン・宮城」でなく、「フィッシャーマン・ジャパン」と名乗った漁師たちの思いが実を結ぼうとしています。

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

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