
横浜港の本牧ふ頭に世界各国から運ばれてきた色とりどりのコンテナーが陸揚げされる。これらには青果物や切花、球根、種子、乾草から正月飾りのような加工品にいたるまであらゆる種類の植物が納められている。
病害虫から守るために
【植物防疫官】
農林業に被害を与えるおそれのある病害虫の侵入を防ぐため、全国の海港や空港では外国から輸出されてきた各種の植物の検疫が行われています。
日本は、穀物や果物、木材など膨大な植物を世界各国から輸入しています。仮に、これらに病害虫が紛れ込んでいて、国内に侵入するようなことがあれば、農林業に甚大な被害が及びかねません。こうした事態を防ぐため、輸入した植物に関する検疫業務を行うのが、全国の港や空港に置かれる植物防疫所に属する約1,000人の植物防疫官です。

白戸洋章さん。筑波大学大学院で生物学を学び、現在、横浜植物防疫所の植物防疫官として輸入検疫業務を行う。
植物防疫官は、輸入検疫の他、輸出相手国の求めに応じて行う輸出検疫、さらに国内検疫として病害虫のまん延防止や緊急防除などの業務も担っています。

輸入検疫がどのように行われているかを見せていただくため、神奈川県の横浜港と川崎港を担当する横浜植物防疫所を訪ねました。
現場に密着

どれだけの量を検査するかは、品目ごとに割合が定められているそうです。検査対象のコンテナーは、ふ頭のコンテナーヤードに設けられた検査場に集められます。抽出指示をしたコンテナーであることが確認できたら、封印を切断して扉を開けます。

「緊張感を持って働いています」と表情を引き締める白戸さん。突風で急に動いたコンテナーの扉にぶつかったり、開けたとたん荷物が崩れてきたり、ふ頭の仕事には危険が伴います。この日、白戸さんは午前中だけで数カ所の検査場を回りました。

オーストラリア産のオレンジ。慣れた手つきでヘタを外して虫が潜んでいないか、確認していきます。白戸さんが「病害虫の付着無し」と判定することで検査に合格となります。

飼料用の乾草に病害虫や輸入禁止品の土などが付着していないか、ばらしながら丹念に調べる白戸さん。

中国産の小豆を検査用のふるいにかけ、虫などがいないか目を凝らします。膨大な荷物を確実に調べなければいけないので、てきぱきとチェック。

アボカドに付着している虫が見つかりました! 白戸さんは事務所に持ち帰り、どのような種類かを特定する同定作業に移ります。

同定作業の結果、病害虫のカイガラムシの一種と分かりました。有害な生物だった場合、サンプルを採った荷はすべて消毒か、返送か、廃棄かのいずれかの方法で処分してもらうことになります。同定作業は病害虫に関する深い知識が要求されます。

1ミリメートル以下の昆虫も検査の対象になります。「この仕事を始めたばかりのとき、先輩が目に見えないほど小さい虫をすばやく見つけるのを目の当たりにして、自分にこんな仕事ができるだろうか、と愕然としたことを覚えています」(白戸さん)。

「コンテナー貨物の検査は、炎天下の夏も寒風吹きすさぶ冬も原則屋外。辛い日もありますが、食料の安定供給に欠かせない輸入に伴うリスクを小さくする仕事であることに使命感を覚えます」と白戸さん。
- 8時30分から11時30分
- コンテナーヤードなどで検査
- 11時30分から12時00分
- 結果の通知など検査後の事務、発見した病害虫の同定
- 12時00分から13時00分
- 昼休憩
- 13時00分から15時00分
- 発見した病害虫の同定、コンテナーヤードなどで検査
- 15時00分から15時30分
- 結果の通知など検査後の事務
- 15時30分から17時15分
- 翌日の検査に関する書類の審査、照会の対応など
お問合せ先
大臣官房広報評価課広報室
代表:03-3502-8111(内線3074)
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