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農林水産省

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aff 2020年2月号
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病気から動植物を守る
病気から動植物を守る

家畜の病気の原因となるウイルスや植物の病害虫などの侵入を空港や港で防いだり、国内で動物や植物を病気から守ったりするために活動している人たちがいます。こうした専門家の仕事ぶりや関連する最新の技術を紹介しましょう。

病気から守るために
【家畜防疫官】

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海外から日本の空港に到着したとき、税関に向かう前に、制服姿の人から、「肉製品をお持ちではありませんか」と質問されたり、可愛らしいビーグル犬に手荷物を嗅がれたりしたことはありませんか。その正体は、日本国内への家畜伝染病の侵入を防ぐために活動している農林水産省 動物検疫所の家畜防疫官とその仕事仲間の検疫探知犬です。

家畜検疫官の若生伶奈さん(中)と検疫探知犬のハンドラーの小谷啓さん(左)と田甫菜千香さん(右)、検疫探知犬のジャグ。

家畜防疫官の若生伶奈(わこうれな)さん(中)と検疫探知犬のハンドラーの小谷啓さん(左)と田甫菜千香さん(右)、検疫探知犬のジャグ。

家畜防疫官は、畜産物だけでなく家畜や犬猫など生きた動物について輸入検査を行う他、輸出に際しての検査などの業務も行います。

畜産物の輸入検査では、生肉だけでなく、ハムやソーセージ、肉まんなどの加工品も検査対象とします。これは、例え含まれる肉の量が少なくても、その中に家畜に害を及ぼすウイルスなどの病原体が生き残っている可能性があるためです。

人や畜産物の移動は、動物の感染症の侵入というリスクを伴います。例えば、ワクチンも治療法もなく、死亡率が非常に高いASF(アフリカ豚コレラ)などの伝染病が侵入すれば、国内の畜産業が大きな打撃を受けることになります。

若生伶奈(れな)さん。

若生さん。岩手大学農学部卒。子育てと両立しながら働いている。動物検疫所成田支所の職員は女性のほうが多いとか。

全国の主要な空港などに動物検疫所の支所や出張所が置かれ、481名(2019年現在)の家畜防疫官が働いています。今回は、成田国際空港を訪れ、家畜防疫官がどのように働いているかを見せてもらいました。

ASFの発生状況

アフリカ豚コレラの発生状況

アフリカではしばしば発生が確認されているASF。近年、東ヨーロッパで感染が広がり、2018年には中国で発生した。ワクチンも治療法もなく、死亡率は非常に高い。

現場に密着

成田国際空港第1ターミナルの税関検査場の一角にある動物検疫のカウンターがある。

成田国際空港第1ターミナルの税関検査場の一角にある動物検疫のカウンター。肉製品などを日本に持ち込もうとする人は、日本到着時にここで検査を受けなければなりません。肉、ハム、ソーセージなどは、ほとんどの国からの日本への持ち込みが禁止されています。輸入禁止品以外の畜産物も、輸出国の政府機関が発行する検査証明書を取得していないと日本に持ち込むことはできません。検査で不合格になったものや、検査前に開封したものは放棄してもらうそうです。

午前の便が次々に到着する中、家畜防疫官の若生さんは動物検疫カウンターの近くに立って、プラカードを手に、持ち込み禁止の肉類などを所持していないか、到着した人たちに呼びかけます。

午前の便が次々に到着する中、家畜防疫官の若生さんは動物検疫カウンターの近くに立って、プラカードを手に、持ち込み禁止の肉類などを所持していないか、到着した人たちに呼びかけます。「声をかける際は、旅客に不快な思いをさせないよう、心がけています。外国人の旅客にも質問するため英語や中国語を学んでいます」(若生さん)。

ある旅行者の手荷物から大量の持ち込み禁止品が見つかりました!

ある旅客の手荷物から大量の輸入禁止品が見つかりました! ひとつずつ真剣に確認をする家畜防疫官。ほとんどの場合、検疫について知らなかったり、うっかりしていたり、といったケースだそうです。しかし、悪質なケースだと、警察に相談したり、告発したりすることになるそうです。

海外から到着した人たちが通過するだけで靴底が消毒される消毒マット

海外から到着した人たちが通過するだけで靴底が消毒される消毒マット。海外で農場に立ち入ったり、家畜に触れたり、ゴルフシューズなど土が付着した靴を所持していたりする人は、動物検疫カウンターに申告してもらうように伝えます。動物検疫所では、必要に応じて適切な消毒を行っているそうです。

スペインに向かう秋田犬の検査に当たる若生さん。

動物を日本から持ち出すときも、相手国の要求する条件を満たしているかどうかなど、動物検疫所で輸出検査を受ける必要があります。これも家畜防疫官の仕事です。写真はスペインに向かう秋田犬の検査に当たる若生さん。

若生さん

「家畜の病気を水際で食い止める重要な仕事に就いているという緊張感を持って現場に立っています。持ち込みが禁止された肉製品などを所持されている方は少なくありません。ただ、ほとんどは悪意がなく、放棄の求めにも応じていただけます。動物検疫制度を理解していただき、興味も持っていただけるとうれしいです」(若生さん)。

動物検疫官・若生さんのある日の業務

9時00分から11時30分
動物検疫のカウンター業務と事務所での電話対応
12時00分から13時00分
昼休憩
13時00分から14時30分
ターミナルで旅客への口頭質問や探知犬の世話
14時30分から16時30分
輸出入される犬と猫の検査

(注)育児中のため、勤務時間を調整している

空港で活躍する検疫探知犬とハンドラー

検疫探知犬は手荷物の中から、肉製品や果物など動物検疫や植物検疫の対象品を探し出す訓練を受け、選抜された犬です。スーツケース内の真空パックに入った肉も嗅ぎ分けることができますし、果物のにおいも種類ごとに記憶しています。空港の利用者に検疫探知犬の活動を見てもらうことで動物検疫の存在を知ってもらうのも大切な役割です。

田甫菜千香さん(26歳)は2019年にハンドラーになったばかり。

田甫さんは2019年にハンドラーになったばかり。「検疫探知犬を扱うのは難しいですが、ジャグと仲良くなるにつれ、うまくいくようになってきました」

現場に密着

ジャグ(6歳)。雄。米国生まれ。

ジャグ(6歳、雄、米国生まれ)。保護施設にいたところをスカウトされ、訓練を受けて検疫検知犬に。

朝の食事の後、散歩するのが日課。

朝の食事の後、排せつを済ませたら準備万端。ハンドラーは食事や健康管理など検疫探知犬の世話もします。「探知の仕事は信頼関係を保ち、やる気を持続させることが大切です。そのために日ごろの世話をしっかり行い、コミュニケーションを図る必要があります」(田甫さん)。

ハンドラーとともに空港の敷地内にある犬舎から、ジャグがいざ出勤です。

ハンドラーとともに空港の敷地内にある犬舎から、ジャグがいざ出勤です。「検疫探知犬は専用のコートに身を包むと仕事モードになるんですよ」

検疫探知犬に選ばれるビーグルは嗅ぎまわることが好きで、物怖じせず、人なつっこい性格。

検疫探知犬に選ばれるビーグル犬は嗅ぎまわることが好きで、物怖じせず、人なつっこい性格。小さくて愛らしい姿が旅客に威圧感を与えないのもメリットだそうです。

ジャグは、肉製品などを発見すると荷物の横にお座りしてハンドラーに伝えます。

ジャグは、肉製品などを発見すると荷物の横にお座りしてハンドラーに伝えます。見つけると、ほめられ、ごほうびのおやつをもらえます。この日も、スーツケースに納められた生肉や肉製品などを次々に見つけていました。

田甫さん。

「コンビを組むジャグと一緒に探知の技術を磨いていきたい」と田甫さん。「初めて手荷物を嗅がれた方は驚かれるかもしれませんが、動物の病気の侵入を防ぐための大切な検査なので、ご協力をお願いします」

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

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