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農林水産省

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aff 2020年2月号
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最新技術で病気から守る

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斬新な発想をもとにAI(人工知能)などの先端技術を利用し、病気から動植物を守るさまざまな試みが行われています。

AIを使った家畜のヘルスケア
(株)ファームノート

牛用センサーデバイスの「Farmnote Color」は、首に装着して各種生体情報を取得する。

牛用センサーデバイスの「Farmnote Color」は、首に装着して各種生体情報を取得する。

酪農・畜産の世界でも技術革新が進んでいます。例えば、スマートデバイスを用いて牛の個体情報を管理する「Farmnote」というシステムがあります。牛の首に「Farmnote Color」というセンサーを装着して、行動量、休息、反芻を計測し、クラウド上のAIで解析。目視や勘では気づきにくい異常を素早く検知し、発情兆候や疾病の疑いがあれば、飼い主や獣医師のスマートフォンやパソコンに通知します。

個々の牛の情報を収集して、クラウド上のFarmnoteで分析。AIで発情の兆候や疾病、活動量の低下などを検知し、パソコンやスマートデバイスに通知する。

個々の牛の情報を収集して、クラウド上のFarmnoteで分析。AIで発情の兆候や疾病、活動量の低下などを検知し、パソコンやスマートデバイスに通知する。

(株)ファームノートの取締役執行役員の本多壮一郎さんは「牛の個体管理は紙とペンに頼っていました。しかし、Farmnoteは、スマートデバイスでのタッチ操作で簡単に入力でき、個々の牛の病気や発情などの状態を記録したり、データを閲覧したり、情報を共有したりできるシステムです。すでにFarmnoteは約4,000戸の生産者に導入していただいています」と説明します。

豚のくしゃみの音で風邪を発見
筑波大学など

豚は風邪(豚呼吸器感染症)にかかりやすく、豚舎内で流行してしまうことがあります。もし早期発見できれば、隔離するなどして感染の拡大を防ぐことが可能です。

筑波大学音響システム研究室の水谷孝一教授は、複数のマイクを用いて、豚のくしゃみや咳の音をとらえ、そのデータをパソコンに送って自動的に判定するシステムを開発しました。カメラを併用することで、どの豚が発したかを自動的に特定する研究も推進中です。

「豚舎内は豚の鳴き声や換気扇などいろいろな雑音があります。特に豚房を仕切る金属のフレームに豚が接触する音は、くしゃみと似た周波数特性があり、検出が困難でした。しかし、動画像を見ながら研究者が聞き分けた音を『教師データ』として、AIに繰り返し学習させることにより識別の精度を上げました」

養豚の大規模化や省力化に対応するシステムとして期待される技術です。

複数のマイクとカメラで豚の状態を継続して観測し、パソコンで識別・判定を行う。

複数のマイクとカメラで豚の状態を継続して観測し、パソコンで識別・判定を行う。
提供/筑波大学

動物の行動分析にAIを利用
北海道大学、円山動物園など

ホッキョクグマ

札幌市の円山動物園では、AIを利用した実証実験が行われています。これは、動物が通常と異なる行動をとったとき、それを飼育員に伝えることにより、心身の状態をとらえやすくするものです。

中心となって研究を進めているのは北海道大学自律系工学研究室の山本雅人教授です。「ホッキョクグマの行動を監視カメラで記録し、静止、歩く、走る、寝る、遊ぶという各行動の頻度や時間帯などのデータを自動的に収集。これを心身の状態を評価する際、役立ててもらう研究などに取り組んでいます。有意義な結果が得られれば、他の動物園や酪農家に活用してもらいたいと考えています」

ホッキョクグマをカメラで追跡

2頭のホッキョクグマをカメラで追跡して行動のデータを収集。例えば、飼育上のある工夫をした前後でどのように行動が変化したかなどを分析することに役立てられる。

同園飼育展示課の石橋佑規さんは「飼育員は動物の状態に可能な限り注意を払っていますが、他にもさまざま業務を抱えているため、観察や映像記録の確認だけに長い時間を割くことができません。AIを利用して映像記録から自動的に行動を分類できれば、動物たちのためにより多くの時間を割くことできます」と期待を語ります。

スマートフォンの画像で病害虫を識別
農研機構 (国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)など

農家の高齢化が進む中、農作物に被害を与える病害虫に関する知識を新規就農者などにどのように伝えていくかが課題となっています。

これに対し、農研機構などは、被害を受けた葉の状態をスマートフォンで撮影すれば、どのような病害虫によるものか、即座に識別できるアプリケーションの開発を進めています。

すでに24府県の協力を得て、病害虫について調査を行い、約80種類の病害虫の被害を受けた植物の画像を数十万枚収集。これをデータベース化して、AIが自動的に学習できる基盤を作っています。

開発にあたる農研機構 農業環境変動研究センターの農業空間情報解析ユニット長・岩﨑亘典さんは「技術的に難しい点として、傷んでいる葉の一部など、ごく小さな特徴を抽出して識別しなければならないことがあります。しかし、これをクリアし、農業の効率化につなげたいと考えています」と言います。

開発中のアプリケーション画面

開発中のアプリケーション画面。病害虫の被害が疑われる葉を撮影すると(左)、識別結果が表示される(右)。スマートフォンの操作に慣れていない人も容易に扱えるよう工夫されている。

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449
FAX番号:03-3502-8766