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農林水産省

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ディープなさかなの世界

1 実は身近な地球最後のフロンティア深海

未知の領域が多いことから「地球最後のフロンティア」と呼ばれている深海。そこには、独自の進化を遂げてきた生物の存在が確認されています。実は、日本は世界有数の深海大国です。普段の食卓に上る魚をはじめ、我々の身近なところにも深海とのつながりがあります。深海とは、どんな場所なのでしょうか。

画像:深海魚イメージ

知る 「深海」ってどんなところ?

ミステリアスなイメージの深海。そこにはどんな世界が広がっているのか紹介します。

深海の環境

深海とは、一般的に植物プランクトンが光合成できる限界とされている水深200メートルより深い海のことで、海洋の約95%を占めています。深海でも6,000メートルより深い溝のようなところは海溝といいます。世界で最も深いマリアナ海溝の深部は、チャレンジャー海淵(かいえん)といい、水深は1万メートル以上とされています。

深海の環境の特徴は次の3つです。

【暗い】
水深200メートル程度で、太陽光は海面の0.1パーセントしか届きません。水深1,000メートルより深くなると、生物が太陽光をキャッチできない「暗黒の世界」となります。

【低温】
浅い海の水温は季節や海域によって違いはあるものの、摂氏10度から20度台とされています。そこから水深が深くなるほど水温は下がり、水深1,000メートルぐらいで2度から4度に。それより深い海ではほぼ一定です。

【高圧】
水深が10メートル深くなるごとに1気圧ずつ水圧が高くなっていきます。水深6,500メートルでは約660気圧で、1平方センチメートルに約680キログラムの力がかります。たとえるなら、小指の先に力士が約4人乗っかるほどの圧力です。

図:水深0~200mが表層、200m以降が深海。200~700mが中深層、700~3000mが漸深層、3000~6000mが深層、6000~10000mが超深海層

ユニークな深海生物たち

エサが少なく太陽光の届かない深海には、あまり生物がいないと考えられていた時代もありました。しかし、現在は数多くの生物が確認されており、まだ見つかっていない生物も多いと考えられています。ここでは深海の環境の中で効率的にエサを取るために、独自の進化を遂げている深海生物たちを紹介します。

ダイオウグソクムシ

世界最大の等脚類(ダンゴムシやフナムシの仲間)で、大きいものでは全長50センチメートルにもなります。雑食性で生き物の死骸などを食べるので「海の掃除屋」とも呼ばれています。飢餓状態に強く、何年もエサを食べないことも。ダイオウグソクムシやダイオウイカなど、身体が大きくなるのは深海生物に時折見られる特徴の一つです。

写真:ダイオウグソクムシ

撮影協力/新江ノ島水族館

サケビクニン

ウロコが無いゼリー状の体は、非常に柔らかい組織でできています。顔の下にあるヒゲのように見えるのは胸鰭(むなびれ)で、その先端には味蕾(みらい)という味を感じる器官があり、暗い深海で海底にいるエビやカニなどのエサをこの味蕾で探して食べます。獲物を捕らえやすい大きな口は、深海生物に多く見られる特徴の一つです。

写真:サケビクニン

リュウグウノツカイ

その神秘的な見た目から、人魚伝説のモデルになったといわれる魚です。オール状に伸びた腹鰭(はらびれ)の先端には、エサを探す機能があると考えられています。漂着したり水揚げされたりする度にニュースになりますが、その生態は謎に包まれています。

写真:リュウグウノツカイ

デメニギス

透明のドームのような頭の中に緑色の物体が2つ横並びになっている、奇抜な見た目。深海生物の中でも特にユニークな姿の魚です。緑色の大きな目は、わずかな光も捕らえられ、真上を見ることができ、エサや敵を見つけやすいと考えられています。

写真:デメニギス

ハダカカメガイ(クリオネ)

冷たい海に生息する貝殻の無い巻貝の仲間で、「クリオネ」の通称で知られています。翼足と呼ばれる羽のような器官を羽ばたかせて泳ぐ様子はしばしば天使に例えられますが、バッカルコーンという6本の触手を伸ばして獲物を捕食する様子はなかなかにワイルド。貝殻のある泳ぐ巻貝をエサにすることもあります。

写真:ハダカカメガイ(クリオネ)

日本は世界一の“深海大国”

日本の水深5,000メートル以深の海水保有体積は世界1位です。

なぜかというと、日本列島が4つのプレートの境界にあり、日本周辺の海に海溝が4つもあるためです。このプレート同士がぶつかり合うことで深い溝ができます。その影響から日本は地震が発生しやすいのですが、一方で、多様な海洋生物や深海底に眠る資源といった恩恵を得られるのです。現在日本では、これらのメリットを活かすために、さまざまな調査、研究、技術開発が進行中です。

図:日本周辺の主な海溝・トラフ 千島海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝、南海トラフ、南西諸島(琉球海溝)、沖縄トラフ

食べる 深海魚を食べてみよう

深海魚には、脂がのったおいしい魚が多くいるといわれています。そこで、その中から人気のおいしい深海魚を4つ紹介します。

人気のおいしい深海魚

そのおいしさから鮮魚売り場や飲食店のメニューでも見かけるこれらの魚。実はみんな深海にも暮らしている魚たちなのです。

キンメダイ

漢字で「金目鯛」と書かれますが、タイの仲間ではありません。特徴ある大きな目は、深海のわずかな光も捕らえられます。ほのかに甘味のある白身は、煮付けのほか、しゃぶしゃぶ、鮮度の良いものは刺し身など、さまざまな調理法で食べられています。

写真:キンメダイ

マダラ

北太平洋に広く分布する大型のタラ。ふっくらしたお腹とあごの下に生えた一本のヒゲが特徴。このヒゲには、海底に潜むエサを探知する役割があります。クセがなく淡白な味わいで、鍋物や煮付けなど、さまざまな調理法で食べられています。精巣は「白子」として人気の食材です。

写真:マダラ

キチジ

地域によっては「キンキ」や「メンメ」とも呼ばれる高級魚。かつては大量に漁獲され、身近な魚だったとか。柔らかな白身には脂がたっぷりで、口の中でとろける味わい。煮付けや刺身、干物などで食べられています。

写真:キチジ

アンコウ

鍋物や唐揚げで食べられる、東日本を代表する高級魚。骨以外は捨てるところがないといわれています。プリプリの食感の皮はうま味とコラーゲンが豊富。肝は「海のフォアグラ」と呼ばれるほど濃厚な味わいです。

写真:アンコウ

深海でスローライフを送っている深海魚は、動きものんびりで、成長もゆっくり。おいしいからといって大量に獲ると数が減ってしまい、生態系が崩れてしまう恐れがあります。そのため、長期的な視野を持って、持続可能な漁業を行っていく必要があります。

深海魚グルメを味わえるお店

日本最深の湾といわれる駿河湾では、昔から深海魚漁が行われてきました。特に沼津港周辺には、深海魚が気軽においしく味わえるお店が多くあります。

深海魚バーガー

写真:深海魚バーガー

深海魚バーガーは、キスに似ていることが名前の由来といわれる「メギス(ニギス)」をフライにしてバンズにサンド。チーズ、千切りキャベツと特製オーロラソースであっさり食べられます。

<店舗情報>

沼津バーガー
住所:静岡県沼津市千本港町83-1
電話:055-951-4335

<外部リンク>https://tabelog.com/shizuoka/A2205/A220501/22022629/

深海丼

写真:深海丼

老舗水産会社直営の海鮮丼専門店がつくる深海丼は沼津港で獲れた新鮮な深海魚(深海本エビ、キンメダイ、サクラエビ、ユメカサゴ、アブラボウズ、メギス)を使用。どれも適度に脂がのった上品な味わいです。

<店舗情報>

海鮮丼 佐政
住所:静岡県沼津市千本港町83
電話:055-939-5333

<外部リンク>http://www.minato83.com/

今回教えてくれたのは

専門家プロフィール

(国研)海洋研究開発機構 地球環境部門 上席研究員
東京海洋大学 客員教授

藤原 義弘 さん

1993年から海洋科学技術センター(現 海洋研究開発機構)に入所。米国スクリプス海洋研究所留学などを経て、2019年より現職。近年、深海域のトッププレデター(食物連鎖の頂点に位置する捕食者)に関する研究や環境DNAの研究に取り組む。今まで撮影した深海生物は1,500種にのぼる。著書に『深海のとっても変わった生きもの』(幻冬舎)、『潜水調査船が観た深海生物―深海生物研究の現在』(共著、東海大学出版会)など。

写真:藤原 義弘
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編集後記

某大人気ゲームの島で釣ることができる深海魚もいくつか紹介しました。私もプレイしていますが、リュウグウノツカイなどは出現率が低いレアな魚であり、ゲーム内のお店で高く買い取ってもらえるので、釣れれば嬉しさもひとしおです。こういったゲームをきっかけに魚に興味を持った方も多いのではないでしょうか?(広報室KT)

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