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農林水産省

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見直そう!豆のチカラ

4 求められる伝統と革新。

近年、食味や加工のしやすさなどのニーズに合わせて、豆の品種開発も盛んに行われています。そんな品種開発の最新情報をはじめ、日本人の生活と豆との古くからの関わりについて紹介します。

写真:様々な豆の花。薄紫、黄、白。
左から大豆(フクユタカ)の花、小豆の花、手亡の花

品種開発の現場を訪ねて

古くから「豆」といえば大豆のことをさすほど、大豆は日本人にとって身近な豆ですが、自給率は6パーセント(2018年)です。また、生産者や消費者のニーズに応じた品質の大豆を生産することも重要です。そこで、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の髙橋浩司さんに、生産量や品質の向上を実現するための品種開発のお話を伺いました。

品種開発の必要性

大豆は古くから豆腐、納豆、味噌、醤油、煮豆など、日本の食卓に欠かせない食材や調味料に加工されてきました。国産大豆の需要は年々拡大していますが、大豆は意外にもとても繊細な作物であり、栽培する地域の気象条件に左右され、生産量の年次変動が大きいといいます。特に近年は異常気象の影響で、安定生産が望めない年も出てきました。

また、原料の大豆に求められる品質が異なるため、味や風味だけでなく、加工適性などにも優れた新品種の開発、導入や栽培技術の向上のための研究が進められています。

写真:温室での育種研究
温室での育種研究

品種開発の道筋

品種開発は目的の形質を持っている大豆(タネ)を選ぶことから始まります。たとえば耐病性や高い収量など、特定の有用な形質を持った個体や系統を選び出すことを「選抜」といいます。

作物の品種開発は、別々の品種をかけ合わせることで新しい品種を生み出す「交雑育種法」が基本ですが、交雑育種法は選抜に時間がかかるだけでなく、有用な形質と一緒に不良な形質も導入してしまうことがありました。そこで、選抜を容易かつ正確に行うために開発されたのが「DNAマーカー」による選抜(識別)技術です。

DNAマーカーによる品種開発

DNAマーカーを使えば、目印となるDNAの違いによって形質を正確に判別でき、しかも同時に複数の形質も識別することができます。

DNAマーカーでタネを選り分けながら、年に2回ほど繰り返して交配していくと、3年後には形質が定まってきます。そこから約3年の月日をかけて、実際にその品種を生産する地域で栽培試験を行い、収量性や栽培特性、品質などを調査。問題がなければ申請を行い、新品種として登録されるのです。

図:交配を重ねることで必要な遺伝子をもちつつ不要な品種の遺伝子の割合を減らしていく
最初の交配で得られる子どもたちは、品種Aと品種Bの遺伝子が半分ずつになります。そのうち、莢(さや)がはじけにくい難裂莢性の遺伝子をもつ子どもをDNAマーカーを使って選抜し、これを品種Aと交配することを繰り返すと、品種A由来の遺伝子(A型)の割合が増えていきます。最後は目的としていた難裂莢性遺伝子以外のほとんどが品種A由来の遺伝子(A型)となった新品種が育成されます。

はじけやすいという短所を改良

近年、国産大豆の安定供給を目指して力を注いだのが、“莢がはじけにくい(難裂莢性)大豆”の開発でした。従来の国内の品種の多くは莢がはじけやすく、収穫適期を逃すと莢がはじけて、実がこぼれ落ちてしまっていました。天候不順の影響などで収穫の時期を逃すと、莢が自然にはじけ、収穫量は大幅に減ってしまいます。

そこで加工適性、風味などはそのままでありながら、成熟後も莢がはじけにくく、その他の栽培特性が元品種とほぼ同じで生産者がより取り組みやすい品種「サチユタカA1号」「フクユタカA1号」「えんれいのそら」「ことゆたかA1号」などを開発しました。「サチユタカA1号」は豆腐加工適性が高い「サチユタカ」に、莢がはじけにくい遺伝子をもつ「ハヤヒカリ」をかけ合わせ、得られた子どもを「サチユタカ」にさらに5回かけ合わせてつくられた品種です。栽培特性などはこれまで栽培していた「サチユタカ」と同じです。生産者はこれまでの品種を「サチユタカA1号」に置き換えるだけで、収穫量のアップが見込めるようになりました。

写真:左:莢がはじけた「サチユタカ」、右:莢がはじけにくい「サチユタカA1号」
左:莢がはじけた「サチユタカ」、右:莢がはじけにくい「サチユタカA1号」

さまざまな目的に合わせて

画像:リポキシゲナーゼ泳動像とサポニンの薄層クロマトグラム。
きぬさやかとスズユタカの比較で、きぬさやかは青臭みの原因であるリポキシゲナーゼが見られない。また、強いえぐ味を呈するグループAアセチルサポニンも少ない。
「きぬさやか」は青臭みやえぐみのない大豆として開発された品種です。この分析結果を見ても、青臭みの原因酵素のリポキシゲナーゼや、えぐみの原因物質のひとつであるグループAアセチルサポニンが欠失していることがわかります。
写真提供:東北農業研究センター・菊池彰夫氏

豆乳の出荷量は2009年以降一貫して伸びており、豆乳用の大豆品種として青臭みやえぐみのない品種の開発が求められています。このような中、農研機構では「きぬさやか」などで風味向上を目指した品種を開発し、実用化を図っています。

そのほか、大粒良質の高たんぱく質の品種や大粒良質の豆腐用品種、倒れにくくコンバイン収穫がしやすい品種、耐病虫性でしわ粒の少ない品種など、生産者と消費者のニーズに応えて日々品種開発を行っています。

今回教えてくれたのは

監修者プロフィール

農研機構
次世代作物開発研究センター 大豆育種ユニット長

髙橋 浩司さん

農学士。1990年10月以降一貫して大豆育種研究に従事。育種の究極の目標である超多収大豆の開発にも取り組んでいる。ここ数年は収穫ロスを低減できる「サチユタカA1号」「フクユタカA1号」などを育成し普及を進めている。

写真:髙橋 浩司さん

新品種の導入を支援
「麦 大豆増産プロジェクト」

国産大豆製品の人気が続いていますが、収量の年次変動が大きい大豆は生産の安定化が最大の課題です。そこで農林水産省では「麦 大豆増産プロジェクト」を設置しました。同プロジェクトによって、新品種を本格導入する前段階として試験栽培などに補助金で支援したり、単一の品種に偏るのではなく、作付けする時期を分散することでリスクを低減する必要性から、地域に適した品種を選定し分散して栽培するモデルの構築を支援。それ以外にも湿害対策やスマート農業の導入など、国産大豆の増産に向けた取り組みを幅広く支援しています。

自給率の向上と食育に貢献する
「大豆100粒運動」

大豆100粒運動は、料理研究家の辰巳芳子さんが大豆の栽培を通して、子ども達に生命の尊さとそれを育む「食」の大切さを伝えたいという思いで始めた活動です。辰巳さんがこの運動を提唱した理由には、自給率の低さや、食料の安全性への危機感、大豆の栄養価の高さ、学校教育の場に有効であることをあげています。

運動名の由来は、子どもの両手いっぱいに大豆を載せると約100粒になることから。自分の手に載った大豆をまき、育て、収穫することで食べ物の大切さを体感し、収穫した大豆をまた翌年まき、育てることで命の連続性を学びます。地道に各地で続けられているこの運動は、地域や伝統的な食を見直すきっかけにもなっています。

写真:大豆収穫体験の様子
写真提供:NPO法人大豆100粒運動を支える会
http://www.daizu100.com

日本人の暮らしとともに

季節や人生の節目に食べる料理には、豆が使われているものが多くあります。日本の伝統行事にも深く関わりのある豆。文化的な視点からみた私たち日本人と豆の関係を、国立歴史民俗博物館研究部教授 関沢まゆみさんに伺いました。

儀礼食としての豆

五穀は5つの主要な穀物をさしますが、豆は米、麦、粟、ひえとならび古くから五穀に数えられてきました。『古事記』や『日本書紀』にも豆が五穀のひとつであったことが記されています。主食にはなりませんでしたが、豆が日本人にとって大切なものであったことは、儀礼食として伝承してきたことからもわかります。

大豆であれば、節分の豆まきに象徴されるように、人々は厄災を払う力を大豆に見出していました。節分の豆まきの記録では、室町時代前期の伏見宮貞成(ふしみのみやさだふさ)親王の日記『看聞御記(かんもんぎょき)』に、応永32(1425)年1月8日が節分で、「鬼大豆打」と記されています。豆は「魔滅」(魔を滅する)の語呂合わせ、煎った豆は「魔の目を射る」の意味をもつため、新年に厄払いをしたのです。

イラスト:豆まきの豆

小豆の赤は生命力の象徴

小豆も古くから日本人にとって身近な食材でした。小豆の赤い色は太陽を象徴すると考えられ、転じて生命力の象徴としてとらえられていました。そのため、おめでたい席、祝いの席に取り入れられてきました。代表的なものは赤飯です。

生命力の象徴であるがゆえに、小豆は魔除けや邪気払いにも用いられていました。1月15日の小正月に「あずき粥」を食べる地域がありますが、小豆には邪気を払い、万病を除く力があると伝えられていたからです。お彼岸のおはぎやぼたもちも同様です。

比較的やせた土地でもよく育ち、栄養価が高いうえ保存がきく豆類。ほかの作物や収穫物がないときに、人々の命をつなぎ、常に日本人の暮らしの中にありました。人々は豆のもつ霊力を崇拝し、儀礼に取り入れ伝承してきたのです。

イラスト:赤飯

今回教えてくれたのは

監修者プロフィール

国立歴史民俗博物館研究部教授・総合研究大学院大学教授

関沢 まゆみさん

文学博士。専門は民俗学。筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。日本民俗学会、日本文化人類学会、比較家族史学会所属。『民俗小事典 食』(共編著、吉川弘文館)『日本の食文化 2:米と餅』『日本の食文化 6:菓子と果物』(吉川弘文館)ほか多数。

写真:関沢 まゆみさん

10月13日は「豆の日」

みなさんは「豆の日」をご存知ですか。

日本では古来、旧暦8月15日の「十五夜」と9月13日の「十三夜」に名月を愛で、五穀豊穣を祈る習慣がありました。十五夜には芋を、十三夜に豆を供えたことから、十五夜は「芋名月」、十三夜は「豆名月」と呼ばれました。旧暦の9月13日は新暦にすると、その年によって日付が変わるため、(一社)全国豆類振興会では毎年10月13日を「豆の日」と制定し、関連イベントを行っています。

そのひとつが「豆!豆!料理コンテスト」。豆を使ったオリジナル料理を募集し、優秀作品を表彰するとともに、それらのレシピを広く一般に紹介するというもの。2020年の「第27回 豆!豆!料理コンテスト」のグランプリを受賞したのは、三重県の水谷早百合さんが応募した米の代わりにレンズ豆を使った「レンズ豆のパエリヤ」でした。

〈外部リンク〉 https://www.tokyo-np.co.jp/beans/recipe/recipe47/

写真:左:莢がはじけた「サチユタカ」、右:莢がはじけにくい「サチユタカA1号」
写真提供:(一社)全国豆類振興会

編集後記

煮豆をよく食べる家で育ち、実家の食卓には黒豆、金時豆、白花豆が順番に登場していたのを思い出します。納豆も豆腐も大好き、醤油、味噌も使わない日はほぼありませんから、豆は本当に身近な存在です。調理に時間がかかりそうな印象の煮豆も、圧力鍋を使えば、あっという間にできてしまう上、日持ちもするのでオススメです!(広報室KM)

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