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農林水産省

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はじめよう、竹のある暮らし

4 しなかやに美しく!暮らしに竹をとり入れよう

古くからカゴや垣根、茶道用具など、さまざまな用途に利用されてきた竹ですが、そうした今までの利用方法にとらわれない、新たな竹の活用方法や開発が進められています。地域の竹を材料として、美しく洗練されたデザインのインテリア家具が製造される現場を取材しました。

写真:竹材

竹を使った新たなものづくりの現場

地域の竹材を活用し、美しく洗練されたデザインの家具を製造している岡山県倉敷市の家具メーカー、(株)テオリの中山正明さんにお話を伺いました。

竹に着目したわけ

(株)テオリが立地する岡山県倉敷市真備町はモウソウチクのたけのこの産地で、最盛期ともなれば町内各所でたけのこが出荷されます。良質なたけのこを生産するためには、竹林の手入れが欠かせませんが、間伐された竹が放置されたままになっているなど、その多くが産業廃棄物として処理されていました。すでに家具メーカーを設立していた中山さんは竹林を取り巻く状況に胸を痛め、竹材を無駄なく利用したいと考えました。そこで、1998年に竹の製品づくりを開始。しかし竹の特徴を活かせるようになるまでは失敗の連続で、10年ほど悪戦苦闘の日々が続いたといいます。
竹材を探求するうちに、竹材には柔軟性と強靭さがあり、また、湿気の多い日本にはありがたい低伸縮性や抗菌性を持ち合わせていることがわかってきました。集成材(複数の小さな板を接着剤で接合して作った板材)にすることで強度が増し、老朽化しにくくなります。中山さんはますます竹のもつ潜在能力と可能性を秘めた竹集成材に魅せられていきました。

写真:竹材

地元のモウソウチクが
集成材に生まれ変わるまで

同社が行う竹集成材の製造工程を紹介します。まず竹林で約3年目から5年目の適正な太さのモウソウチクを探し、地面から約2.5メートルのところを筒状に切ります。その後、以下の工程をたどります。

縦割りと粗削り

竹の太さに応じて、いくつかの竹片に割っていきます。竹片の幅は竹の太さに応じて変えており、それによって無駄の少ない材料取りができるそうです。縦割り後、集成材にする際、邪魔になる節を削り、できるだけ均一な平たい状態にします。

写真:縦割りと粗削り

炭化処理

乾留釜で竹片を6時間くらい高温・高圧状態で蒸し煮します。こうすることで、竹に含まれている余分な糖分やでん粉が除去され、腐りにくく虫がつきにくい状態になります。

写真:炭化処理

乾燥

2週間ほど自然乾燥させた後、乾燥装置に入れて4日間乾燥させ、竹片を狂いのない安定した状態にします。

写真:乾燥

板状に成形

均一に切削した材料を高周波接着機で張り合わせてプレスし、板状にします。乾燥後、集成材に仕上がるまで半年かかります。

写真:板状に成型
写真:集成材
写真:竹の性質を最大限活かして作られる集成材

竹の性質を最大限活かして作られる集成材。天板などは木目が互い違いになるように重ね貼りすることで、より強度を高めます。貼り合わせ方や削り方によって、さまざまな模様を生み出します。

デザインにこだわり、
製造された家具たち

同社が竹材の家具づくりを始めた当初の1年間は、東京在住のプロの工業デザイナーにデザインを依頼していましたが、その後、地元の岡山県立大学デザイン学部の教授を中心としたチームで設計を進めました。現在は同学部を卒業後、幅広く設計を学び、竹材を知り尽くした社員がメインにデザインを担当しています。そのインテリアの一部を紹介しましょう。

写真:鏡

イギリスやイタリアにも輸出され、月に300から500個も出荷される鏡。

写真:座り心地がとてもいい椅子

座面は竹の「しなり」を活かした二重構造で、座り心地がとてもいい椅子。

写真:一輪挿し

竹の強い生命力を形にした一輪挿し。全3サイズで展開。

写真:シンプルなちゃぶ台

現代のインテリアにもすっきりとマッチする、シンプルなちゃぶ台。

竹を無駄なく活用するために

同社で集成材に加工するモウソウチクは、地元の真備町や近隣の竹林の整備の際に伐採されたものから、基準に合ったものを買い取っています。さらに放置竹林をなくすために管理を請け負い、その竹の買い取りも行っています。中山さんは「竹こそSDGsを実現する植物だ」と考え、次なる行動を計画しています。今後、会社は次世代に譲り、竹林の世話ができなくなった高齢の農家の方々に替わり竹林の管理を行うなど、地域の方と一緒に竹林を守る町づくりに専念したいと話してくれました。

写真:近隣の竹林から竹の買い取り

近隣の竹林から竹の買い取りを行っており、持ち込みが難しい場合には引き取りにも出向きます。

サステナブルな竹循環ビジョン

竹集成材から丈夫で美しい家具をつくるだけでなく、表皮や枝葉、根元近くの曲がった部分もすべて有効に使い切っている同社の竹事業。地域資源を大切にして、持続可能な「竹循環型社会」の創出をめざしています。

写真:工場内の壁面のチョークアート

同社のコンセプトを描いた工場内の壁面のチョークアート。

竹を原料とした新たな商品の誕生

竹の家具づくりに取り組みはじめてから、竹にさまざまな有用な成分が含まれていることがわかり、あらゆる角度から研究を進めました。最初に開発したのが、竹の表皮に含まれる抗菌殺菌成分とワックス成分を生かした塗料でした。次に、竹の表皮に含まれるカリウムに注目し、島根大学や島根県下のメーカーとの共同開発によって入浴剤を開発。さらに、集成材にはならない竹の細い部分や枝、葉などを粉砕し、オリゴ糖やアミノ酸、ミネラルを付加した土壌改良材を製造。このように竹資源を余すところなく活かしています。

写真:竹を原料とした新たな商品

左から天然土壌改良材「濃い地竹」、竹表皮塗料、入浴剤「つる肌潤い風呂」。

初心者でも楽しめる
竹片のトレイづくり

同社主催のワークショップでは、スライスした竹集成材をねじりながら重ね合わせ、竹のしなりを利用して、舟形のトレイを作っています。
同ワークショップは不定期開催となりますので、最新の情報は同社ホームページでご確認ください。

写真:竹片6枚に竹表皮塗料を塗り、片側の穴に6枚をビス止め

薄くスライスされた長さ約25センチメートルの竹片6枚に竹表皮塗料を塗り、片側の穴に6枚をビス留めします。

写真:竹片を1枚ずつねじりながら、もう片方の穴にビス止め

竹片を1枚ずつねじりながら、もう片方の穴にビス留めしていきます。このとき竹のしなりを生かして、少し強めに曲げながら穴に合わせていくとうまくいきます。

写真:竹片のトレイの完成

完成。部屋のアクセントとしてだけでなく、腕時計や鍵などの小物入れとして利用している人も多いようです。

今回教えてくれたのは

監修者プロフィール

(株)テオリ 社長

中山 正明さん

全国有数の竹の産地である岡山県倉敷市真備町に本社を構える家具メーカー(株)テオリ。100パーセント竹材料を利用した家具づくりに成功しており、加工技術やデザインの独自性が高く評価されている。また、「竹循環型社会づくり」をめざして、環境に配慮したものづくりにも取り組んでいる。

<外部リンク>http://www.teori.co.jp/

写真:中山 正明さん

京都発、「和弓造り」自転車

京都府に伝統の京弓(和弓)の製造技術を応用して、世界で唯一の「和弓造り」自転車を製作しているビルダーがいます。サムライドの板東陽平さんです。もともと自転車競技の選手としてレースに出場していた板東さんが自転車のフレームに竹材を使うことを思いついたのは、竹林整備事業について知る機会があり、放置竹林の竹を商品化することを考えたことがきっかけでした。独学でフレームづくりを進める中で、京都の「御弓師」柴田勘十郎さんの竹弓ワークショップに参加。竹が持つ柔軟性や強靭さを活かした京弓づくりの伝統技法に感銘を受け、自転車のフレームづくりに取り入れることにしたのです。自転車はオーダーメードで「弓のしなりが生む人馬一体の走り」がコンセプト。和弓のしなりが再現されたフレームは軽量なうえ地面からの衝撃を吸収してくれるといいます。板東さんは「“竹林を整え、里山で遊ぶ”ことが夢」と話してくれました。

写真提供:サムライド

写真:竹製自転車
写真:竹製自転車

今も京弓づくりの手伝いをしているという板東さんと製作した「和弓造り」自転車。

編集後記

植物が「花を咲かせる」のは、「子孫を残すために大切なこと」だからと思っていましたが、マダケやハチクの開花は120年周期とのこと。
花を咲かせなくても竹は驚異的に繁殖していき、一見すると(子孫を残すという観点から)もう花を咲かせる必要はないのでは?とも思えてきますが、120年の時を経て忘れずに開花。その開花にどんな重要な意味が隠されているのか、とても気になりました。(広報室KM)

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