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農林水産省

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ご当地の郷土料理の魅力 ふるさと給食自慢

日本全国で提供されている学校給食のメニューの中から、その土地で親しまれている郷土料理や食材などを取り入れたものを紹介。その地域ならではの食の連載をお届けします。

第23回

沖縄県渡嘉敷村の学校給食

イナムドゥチ

写真:イナムドゥチの給食

琉球王国時代から連綿と続く沖縄県の伝統的な琉球料理のひとつ「イナムドゥチ」の汁物に、麦ごはん、シブイのそぼろ煮、ゴーヤーのあげ煮、ドラゴンフルーツのゼリーと、沖縄ならではの食材や料理が並んだ献立です。琉球漆器で提供しています。

祝いの席に欠かせない
「イナムドゥチ」

(渡嘉敷村学校給食共同調理場)

沖縄県の渡嘉敷村は、沖縄本島の那覇市から西方の海上に位置し、渡嘉敷島や前島など14の島々からなる村です。イナムドゥチは沖縄に古くから伝わる琉球料理のひとつで、旧正月のほか、入学式や卒業式、成人式などの祝いの席で食べられてきました。沖縄では、その年の干支と同じ生まれ年の人は厄年とされ、祝いの心で厄を落とす生年祝い「トゥシビー」を行います。トゥシビーは数え年に行い、61歳からは長寿を祝うものとなり、渡嘉敷村では正月に合同生年祝賀会を開催します。また、97歳のお祝いは「カジマヤー」と呼び、地域をあげて盛大に祝います。これら行事の行われる日には、給食にイナムドゥチが登場し、子ども達に「めでたい日に食べる料理」として伝統料理を伝えています。

写真:県内産の豚三枚肉

イナムドゥチは県内産の豚三枚肉をはじめ、しいたけ、こんにゃく、厚揚げ、そして、沖縄で食べられる魚のすり身にたっぷりと卵を入れた「カステラかまぼこ」などの具材を使います。具はすべて短冊切りにし、豚骨から取った出汁とかつお節から取ったかつお出汁を組み合わせた合わせ出汁で煮込みます。仕上げに甘口の白味噌を加え、そこからさらに煮込んでとろみが出たら完成です。

写真:調理の様子

ゴーヤーの揚げ煮は、半月切りしたゴーヤーに溶き卵を絡め、片栗粉をまぶして油でカラッと揚げます。揚げたてのゴーヤーに、醤油、みりん、砂糖を煮たてた濃いめのタレを絡ませて、仕上げにごまを散らしたもの。シブイのそぼろ煮の「シブイ」とは冬瓜(とうがん)のことで、豚のひき肉と一緒に柔らかくなるまで煮込み、片栗粉でとろみをつけています。シブイは沖縄ではソーキ(豚の骨付きあばら肉)と一緒に煮たり、炒め物やスープなどにも使われたりする食材です。デザートのドラゴンフルーツも沖縄ではよく食べられている果物。果肉には赤いものと白いものがあり、ゼリーには色鮮やかな赤の果肉を使っています。渡嘉敷村は離島であるため、米や野菜は沖縄本島から取り寄せており、使用する食材は県内産のほか、福岡県産のものも使われています。

沖縄に伝わる伝統料理「イナムドゥチ」とは?

イナムドゥチの歴史

イナムドゥチのイナは「猪」、ムドゥチは「もどき」を意味しており、「猪もどき」という意味で、イナムルチとも呼ばれます。古くは猪肉が使われていたそうですが、今では豚三枚肉を使うことが主流となっています。豚三枚肉とは、皮つきの豚バラ肉のことで、沖縄の郷土料理のひとつ「ラフテー」などにも使用される食材。沖縄県では、祝いの席や葬儀などの際に、飼育している豚を出席者に振る舞う風習があります。肉は日持ちをさせるために塩漬けにして保存し、調理する時には塊ごと茹でて塩抜きしてから使用していました。現在では、県内のスーパーマーケットなどで生の三枚肉の塊を購入することができ、塩抜きする必要がなく、そのまま切って煮たり焼いたりと手軽に食べられています。

写真:イナムドゥチの歴史

写真協力:沖縄県文化振興課

もてなす心を大切にする伝統料理
「イナムドゥチ」の実力

写真:中身汁

中身汁
写真協力:沖縄県文化振興課

写真:ソーキ汁

ソーキ汁
写真協力:沖縄県文化振興課

肉やしいたけ、カステラかまぼこなどの具材を短冊切りする時は、すべて同じ大きさにそろえ、薄く切ったほうが口当たりが良いとされています。祝いの席などで振る舞う料理であるため、丁寧に仕込み、集まった人をもてなす気持ちを大切にしているのだそうです。汁にとろみのあるこってりとしたイナムドゥチは、寒い時期に合い、主に旧正月の祝いの料理などで食べられています。沖縄には類似の料理に豚肉やシブイを入れたすまし汁の「鹿ムドゥチ」もあり、さっぱりと食べられるためこちらは夏に好まれます。ほかにも、豚の内臓を使った「中身汁」、ソーキをカツオ節や昆布、塩でじっくり煮込んだ「ソーキ汁」などの汁物が、祝いの席で食べられています。

写真:イナムドゥチ

食生活の欧米化や生活様式が多様化したことで、伝統料理離れが進んでいる現状を危惧し、渡嘉敷村では学校給食を通して子ども達が琉球料理に親しみ、食文化を学べる献立を取り入れています。村の共同調理場には、県が伝統的な食文化の担い手として認証した「琉球料理伝承人」が調理にかかわり、琉球料理の調理法や味を次世代に伝える取り組みをしています。入学式や卒業式、創立記念日のほか、長寿を祝う村の行事の日などに給食でイナムドゥチを提供し、行事と食とのつながりを子ども達に伝えています。

全国給食牛乳コレクション

全国のほとんどの学校給食で毎日提供されている牛乳にも、地域によって違いがあります。子ども達に新鮮な牛乳を楽しんで飲んでもらえるように、どんな工夫があるのでしょうか。各地域で提供されているご当地牛乳を紹介します!

九州編

宮﨑県・鹿児島県 デーリィ牛乳/南日本酪農協同(株)
写真:デーリィ牛乳 紙パック

1960年に設立された南日本酪農協同(株)は、スコールやヨーグルッペなどのブランドで知られる宮崎県都城市の乳業メーカーです。宮崎県と鹿児島県の学校に提供している「デーリィ牛乳」は、緑豊かな南九州で育まれる乳牛から搾った生乳を使用した、生乳本来のコクのあるおいしさにこだわった成分無調整牛乳です。カルシウムをはじめ、たんぱく質などの必要な栄養素をバランスよく摂取することができます。パッケージには、同社のマスコットキャラクターである「デーリィ坊や」と「モーモーちゃん」を採用しています。

大分県 大分っ子牛乳/(有)古山乳業
写真:大分っ子牛乳 紙パック

1915年に、大分市佐賀関において創業した(有)古山乳業が生産する給食用牛乳が「大分っ子牛乳」です。100パーセント大分県産の生乳を使用して、大分市の一部と臼杵市、津久見市の小中学校に供給しています。生乳を80度で保持してしばらく撹拌するホールディング工程を採用することによって、脂肪分の塊が分解されクリーミィな口当たりの牛乳となり、栄養分の消化吸収がよくなるともいわれています。パッケージは2002年にサッカー、2019年にラグビー、それぞれのワールドカップ開催地のひとつとなったことから、大分県のゆるキャラ応援団“鳥”「めじろん」がサッカーとラグビーをしている躍動感のあるデザインとしています。

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