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農林水産省

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  • aff09 SEPTEMBER 2021
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大学農系学部に潜入! 発掘! 凄モノ情報局

大学の農系学部が研究・開発した製品と、その製品化までの道のりを紹介します。

第8回

循環型農村経済圏を創る

庄内スマートテロワール
構想から生まれた
山形大学の豚肉加工品

「スマート・テロワール」とは、洗練を意味する「スマート」と、フランス語の「テロワール」(作物を作る土地の気候条件や風土)とを掛け合わせた言葉で、「土地の魅力を生かした豊かな農村社会をつくる」という想いが込められており、カルビー(株)元代表取締役会長の故松尾雅彦さんが提唱した理念です。
山形大学では、鶴岡市を中心とする庄内地域において、農業・畜産業・加工業が連携して循環型の生産に取り組むことで、地域を循環型農村経済圏(スマート・テロワール)のモデル地域にする取り組みを進めています。
異業種の強みを生かして支え合い、チーム全体で地域を盛り上げるという点が一番の特徴。生産から消費まで地域内で完結する循環型の仕組みで経済を回し、強靱で豊かな農村経済圏を創りだします。

循環型の農村経済圏を確立して
庄内地域の農村を元気に

スマートテロワールの取り組みの背景の一つに、日本の米消費量の減少が挙げられます。米を食べなくなった代わりに、畜産物、パンや麺などの主原料である小麦の消費が増えましたが、その多くは輸入で賄われています。
そこで、米の需要が減り使われなくなった休耕水田などを畑に転換し、畑作穀物や飼料用穀物を輪作体系によって生産し、畜産業や加工業と連携することで、地場産の原料を使った加工食品を生み出して地域の経済を活性化していくことが大きな目的です。
例えば、畑地化した土地で小麦やじゃがいも、飼料用トウモロコシなどを生産し、さらに、そこで育った規格外の作物を家畜の飼料とします。そして、家畜を地域の加工業者が食肉に加工し、地域で消費する。このような、農と食を地域の中で循環させていく仕組みを確立することです。

大豆連作障害圃場での子実トウモロコシ栽培。

農業の可能性を引き出す
「庄内スマートテロワール」

堆肥や余剰穀物を活用し、消費まで含めて地域で完結するスマートテロワールの取り組みにおいては、異業種間の連携が重要な鍵になります。消費者を含めて、地域を構成する多様な人々が力をあわせて新たな価値を生み出していく。一方通行ではなく、双方向で繋がり支え合う循環型の仕組みをご紹介します。

協力農家(養豚)の加藤欣也さん。

〈スマートテロワールの仕組み〉

1

耕畜連携

耕種農家(畑作農家)と畜産農家の連携。農家が生産した家畜の肥料や余剰穀物を畜産農家に届け、畜産農家は家畜の堆肥を畑の肥料として提供します。

2

農工連携

農業と加工業者の連携。地域で採れた穀物や畜産物を原料に、付加価値の高い加工食品を生産します。

3

工商連携

小売店を通じて、生産された加工食品を地域の消費者へ届けます。小売店はその声を集め、次の商品開発に生かします。

4

地消地産

地産地消の考え方を逆順で見直し、「地域で作ったものを消費者に届ける」のではなく、「消費者が望む製品を地域で作る」発想でプロジェクトを推進します。

プロジェクト効果で確実に
拡大しつつある地消地産

その実現のために、農業者と畜産業者、加工業者、小売店が一つのチームを作り、山形大学が事務局となって「チームMD(マーチャンダイジング=商品戦略)」を結成。参画事業者がそれぞれの専門性を生かして消費者のニーズや適正価格、生産量などを検討し、商品開発やマーケティング戦略に反映します。なかでも、小売店の参画により、消費者のニーズを素早く的確にキャッチして商品に反映できるのが大きなメリット。
このように、“個人戦”ではなく“チーム戦”であるということがスマートテロワールの強みです。
この戦略が功を奏し、スマートテロワールが生み出した商品の売れ行きは好調とのこと。当初はハム・ウィンナー・ソーセージの3商品からスタートしましたが、現在では庄内産小麦を使用した中華麺や麦切り(山形の郷土麺)、大豆を使用した味噌など、多彩な商品を小売店で販売しています。さらに、ベーカリーの店頭に庄内産小麦で焼き上げたパンが並んだり、ラーメン店では開発した麺を使用したメニューを提供したりと、さまざまな業態に広がりを見せています。

学生の声

山形大学農学部安全農産物生産学コース
畜産学分野

小林真之介さん(左)
小林花音さん(中)
菅原叶恵さん(右)

《小林花音さん》

養豚経営の主要な飼料であるトウモロコシについて、特に輪作体系に組入れる多収で安全性の高い子実用トウモロコシの品種選定と調製保管技術に関する研究を行っています。この研究によって地域産飼料の生産と利用増進に貢献できると考えています。今後は、私自身も地域の食材を積極的に消費することや、研究で得た経験を活かし地域食材を使用した商品の開発を行うことで生産者の方への貢献に役立てたいと思っています。

《小林真之介さん》

地域で生産されたトウモロコシや飼料用米、さらに地域で生産された小麦の製粉副産物(ふすま)などを用いて美味しい豚肉を生産するための研究を行っています。この研究によって飼料価格に影響を受けることなく、豚肉を安定的に供給することが可能になると考えています。私は今回の研究を通して、さまざまな人と関わることの大切さを学びました。将来はこの経験を活かし、食品メーカーの営業として頑張っていきたいと思っています。

《菅原叶恵さん》

地域飼料資源をフルに活用して生産した豚肉や、その加工品の食味特性を明らかにするための研究を行っています。本研究によって、地域産飼料資源を積極的に活用した豚肉や加工品の美味しさを科学的に評価できると考えています。今回の研究を通して、生産者、加工業者の立場を知ることができました。今後はこの経験を生かし、生産者の気持ちに寄り添った商品の企画・開発をしたいと考えています。

スマートテロワール構想から
生まれた
山形大学×東北ハムの庄内地域産豚肉加工品

スマートテロワール開発商品の第一弾、ハム、ベーコン、ウィンナーは、地域の畑作協力農家が栽培したトウモロコシなどを中心とする飼料を使用して、地域の畜産協力農家が豚を育て、その豚肉で(株)東北ハムが製造を手がけ、「山形大学ブランド」として販売しています。
商品開発時に特に力を入れたのは味と価格。プロジェクトの生みの親である松尾さんは、常に「なにより美味しいものを作らなければいけない」と語っていました。さらに価格にも高いハードルを課し、現在売れているトップシェア商品の定価より25パーセントから30パーセント低く設定しています。そこで、山形大学の学生の協力を得て、小売店の店頭での試食会を通じた価格などに関するアンケートを繰り返し、試作5回目にしてようやく商品化に成功。100パーセント地場産の魅力に加え、「味よし! 価格よし!」 と人気を博しています。

今後の展望について

スマートテロワールは、畑作と畜産の連携がとれる自治体人口20万人から30万人の農村を活性化するためには丁度いい仕組みです。他の農村地域のモデルとなるべく、まずは庄内地域でスマートテロワールをしっかりと定着させ、その後は全国に広める活動に取り組む予定です。「スマートテロワール」=「循環型の農村経済圏」を50前後の地域に導入して広域農村連合体を作り、各地の特色を生かしながら農村全体を活性化していくことを目指しています。
また、消費者のニーズに合わせて地域内で経済を回すスマートテロワールの取り組みは、「持続可能な消費と生産の仕組み」や、「持続可能な農業」を目標の一つとして掲げるSDGsにも合致しています。国内の食料自給率の向上や余剰作物の使用による食品ロスの削減などが期待でき、さらに家族経営の農業を支えることにも繋がっていきます。

畑輪作体系における小麦栽培。

国内屈指の米どころである庄内地域で畑作の力を生かしたスマートテロワールを成功に導けば、他の地域で同様の取り組みを行う際にも参考になるでしょう。しかし、スマートテロワールでは稲作を否定しているわけではありません。地域をゾーニングして、米を作りやすい平野部では水田を守って稲作を続けながら、中山間部の休耕水田などを畑として有効活用し、小麦や大豆、そば、トウモロコシなどの土地に合った作物を輪作していきます。水田、畜産、そして季節によって表情を変える畑が織りなす美しい農村の風景。これもスマートテロワールが目指す理想の未来です。

画像:

山形大学 農学部

山形県鶴岡市若葉町1-23

https://www.tr.yamagata-u.ac.jp/

今回 教えてくれたのは・・・

写真:浦川修司教授

山形大学農学部
附属やまがたフィールド科学センター

浦川修司 教授

農学博士。専門は飼料生産学。耕畜連携による飼料イネの生産技術で博士号取得。2016年より寄附講座「スマートテロワール」形成講座にて生産農家や加工業者、地元の小売店との連携によって、地消地産の加工食品の開発を行う。2021年度からスマートテロワール構築プロジェクト統括リーダーとして社会実装に向けた研究を続けている。

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大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
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