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農林水産省

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  • aff11 NOVEMBER 2021
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大学農系学部に潜入! 発掘! 凄モノ情報局

大学の農系学部が研究・開発した製品と、その製品化までの道のりを紹介します。

第12回

LED光源で栽培された

⽟川⼤学の
植物⼯場産リーフレタス

「Sci Tech Farm」(完全人工光型植物工場)

太陽光の代わりにLED照明装置を使用し、温度や湿度などの栽培環境を制御した野菜の栽培の研究を行う玉川大学の“Future Sci Tech Lab”。同大学の渡邊博之教授は植物工場での野菜栽培実用化を目指して長年研究を続けており、その過程で誕生したのがリーフレタス「夢菜®」です。今回は、植物工場での野菜の栽培の紹介とともに、宇宙空間での野菜栽培に関する研究にも迫ります。

農業の最先端技術が集結!
“Future Sci Tech Lab”

Future Sci Tech Labの植物工場内にある栽培室。

「Future Sci Tech Lab」内で主に行われている研究は、LEDを使った植物栽培です。葉菜類をはじめ、ハーブや根菜類、花など、様々な植物の人工光栽培による技術開発を行っています。学内の「LED農園®︎」で栽培されているリーフレタスは玉川大学ブランドの「夢菜®」として2012年に商品化され、今では7種類のラインアップで1日2,500から3,000株生産される人気のブランド野菜に。この成功により、植物工場で研究開発された野菜が流通し、きちんと収益を上げられる事業として成り立つことを示すモデルとなりました。
この研究には、一体どのような最先端技術が用いられているのでしょうか。

飛躍的にLEDの耐久性を
高めることに成功した
“LED冷却技術”

植物⼯場では、太陽の代わりに独自のダイレクト冷却システムによるLED光源を使用し、植物が必要とする栄養分を水に直接溶かし込んだ水耕栽培を行っています。
LEDが光を発する際に強く発熱することが原因となり、次第に出力が劣化していくことが研究初期からの大きな課題でした。そこで渡邊教授は、LEDのチップを水冷して耐久性を高める、ダイレクト冷却式ハイパワーLEDランプユニットを開発しました。この技術を用いることで、LEDをハイパワーで10年間使用しても90パーセントの出力を保つことが可能に。結果として、LEDの交換のコストと手間を軽減することにもつながりました。

光の色を操ることで、
目的に合わせた
野菜の生育が可能に

LED農園®の栽培棚。

また、最近の研究ではLEDの色の種類を変えることで、植物の栄養価や形、味が変化するなど、植物の反応も多彩に変わることが明らかになってきました。植物にとって、赤色の光には赤色の、青色の光には青色の生理的役割があるといいます。例えば、赤色は主に光合成に利用されます。また青色は、光合成にも利用されるほか、野菜の形や色、味、香りなどの品質にも強く影響します。その色の役割をわかったうえで、人工的に色のバランスをチューニングした光を当てると、太陽光や蛍光灯を利用して栽培した場合とは異なる特徴を有する野菜を栽培することができるのだとか。例えば、ビタミンCやポリフェノールなどの栄養素を高めるなど、目的に合わせた旬の野菜を一年中安定して供給することができるといいます。天候や自然に左右されずに野菜を育てることは白熱灯や蛍光灯でも可能ですが、特定の栄養素を高めたり、形や大きさを調整したりするなど、目的に応じて色の最適化を図ることができるのは、単色性のあるLEDにしかできないことだと渡邊教授はいいます。

無重⼒や低圧環境でも
野菜が育つ!?
「宇宙農場ラボ」

宇宙農場ラボ。

宇宙農場ラボでのジャガイモ栽培。

“Future Sci Tech Lab”の一部として設置されているのが、植物工場の技術を宇宙空間での野菜生産に応用する研究を行う「宇宙農場ラボ」です。ここで行われているのは、人間のエネルギー源として欠かせない炭水化物を宇宙空間でも確保することを目指した、ジャガイモ生産です。火星や月面基地などの限られたスペースで栽培することを想定した場合、“多段式でスペース効率の高い栽培システムが採用できる”、“可食部が多い”、“備蓄ができる”、“栽培期間が短い”などの条件を満たしたジャガイモは、宇宙空間で炭水化物を供給するのに非常に適した作物といえるそうです。

3-Dクリノスタット(疑似微小重力植物栽培装置)。

低圧植物栽培システム。

また、ラボには疑似的な微小重力環境や低圧環境を作る装置が設置され、宇宙空間における重力や気圧に対する植物の反応の研究も行われています。野菜によっては、気圧を下げると実つきがよくなったり、生育がよくなったりすることもあるのだとか。実は、植物の重力感受性についてはわからないことがまだまだ多く、生理学的に植物がどのように重力を感知しているかを明らかにする研究としても、とても大きな意味があると渡邊教授は語ります。

学生の声

玉川大学大学院農学研究科
資源生物学専攻

島田 明典 さん

宇宙において低圧環境下で植物を栽培した際に、生育にどのような影響を及ぼすのかを研究しています。人間が宇宙で長期間活動するためには、持続的な食料生産技術が必要です。植物の生育に必要な気体は酸素と二酸化炭素であり、大気に最も多く含まれている窒素は利用することができません。そのため、宇宙での食料生産においては大気中の余分な気体である窒素を取り除き、低圧環境下で植物栽培を行うことが効率的と考えられています。私は、低圧環境下での環境制御と植物の最適な栽培方法の確立を目指しています。将来は、環境制御を利用した宇宙での植物栽培技術の向上に貢献したいと考えています。

LED農園®発の未来型野菜。
リーフレタス「夢菜®」

夢菜®。

「LED農園®」で生産されたリーフレタス「夢菜®」は、鮮度が長持ちすること、農薬を使用せずに育てられること、1年を通して安定して供給できること、この3つが主な特徴です。長持ちすることで店頭や家庭での廃棄が少なくなり、また洗う必要がなく外葉を含めて食べられることから、食品ロスの対策にも役立つと考えられています。
「夢菜®」に続く新たな野菜として考えているのは、農薬を使わずに栽培するイチゴ。年間を通して供給できるイチゴの栽培は今後の大きな目標です。

イチゴの栽培試験。

今後の研究について

今後の研究目標は、例えば、香り高いハーブやリコピンを高濃度で含むトマトなど、付加価値の高い野菜生産です。
さらに、植物工場の実用化と普及に力を入れ、植物工場の都市部への展開を目指したいとのこと。生産から配送、販売までを一貫して行われるようになれば、新鮮な野菜をスピーディーに家庭に届けることが可能となり、輸送にかかる費用やエネルギーの削減にも繋がります。
また、植物工場事業に参入する企業が増えれば、雇用の創出へと結びつきます。今後も多品種・多品目の野菜栽培や野菜の高機能化・高品質化について、更なる研究・実証を推進し、国内だけではなく、地球規模の農業に対するイノベーションとなる「新しい農業のカタチ」を発信しつづけることを目指しています。

画像:大学外観

玉川大学

東京都町田市玉川学園6-1-1
042-739-8710(教育情報・企画部広報課)

今回 教えてくれたのは・・・

プロフィール画像

玉川大学 農学部 先端食農学科
玉川大学 大学院 農学研究科長

渡邊 博之 教授

博士(農学)。名古屋大学農学部農芸化学科卒業、筑波大学大学院修了後、三菱化学(株)(現、三菱ケミカル)横浜総合研究所主任研究員を経て2003年玉川大学農学部応用生物化学科助教授、2008年より現職。1992年よりLEDを光源とした植物栽培技術の開発に取り組み、現在世界的に普及が進みつつあるLED植物工場の技術基盤を確立。

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大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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