家庭で実践! 食中毒予防策 食中毒予防3原則編


監 修 | 金井美恵子 東都大学管理栄養学部教授
食中毒の発生が梅雨時期や夏場に限らないのは1週目の「手洗い・買い物・保存編」で紹介したとおりです。加えて金井教授は、「そもそも食材には多くの細菌等が付いていることを前提として、購入、保存、調理する必要があります。当然ながら細菌等は目で見ることはできません。お肉の場合、もともと動物には体表面や消化器官にしか微生物は存在しませんが、加工される過程で我々が食用とする筋肉部も細菌などに汚染されることがあるのです。購入・保存時は細菌等を増やさないようにすること。そして、調理時は表面だけでなくしっかりと内部まで加熱して食べるようにしてください。また、一見きれいに見える野菜にも表面に汚れなどが付いている可能性もあるため、調理前には流水での洗浄が必要です」と、語ります。
ここからは【つけない・ふやさない・やっつける】の方法別に、1週目から3週目で紹介した食中毒予防策を改めて見直していきましょう。

細菌等を『つけない』方法として、私たちが出来るもっとも基本的な対策が「手洗い」です。掃除やペットに触れたあと、トイレなど、生活のあらゆるシーンで手に細菌等が付く可能性があります。水洗いだけでなく、石鹸等を用いたていねいな手洗いを習慣化するとよいでしょう。また、食材の保存や調理時も、ちょっとした気づかいで細菌等を『つけない』ことが可能となるのです。
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正しく手洗いを!
正しい手洗いは食中毒予防の第1歩です。石鹸やハンドソープを用い、手のひらと甲はもちろん、指と指の間、爪の間、手首などをしっかりと洗いましょう。また、調理中は食材が変わる度に手洗いするよう心がけましょう。
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ドリップ漏れを防止!
肉や魚からはドリップと呼ばれる汁が流れ出すことがあります。ドリップを通じて他の食材に細菌などを付着させる可能性があるため、買い物や食材の保存時には、必要に応じてポリ袋に入れるなどの対策が大切です。
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パッキンも外して洗浄を!
弁当の蓋と本体を密閉させるためのパッキンが付いている部分は複雑で、洗浄が行き届かず汚れが残ると、細菌等の増殖につながる恐れがあります。パッキンは外して洗浄し、パッキンをセットする溝もしっかりと洗いましょう。
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魚や野菜はしっかり洗う!
魚や野菜、果物は表面に汚れなどが付いている可能性もあるため、調理前の水洗いがおすすめです。一方、肉の水洗いは、細菌等がシンク周辺に飛び散り、他の食材や調理器具へ付着する可能性があるため厳禁。ドリップが気になる場合は、キッチンペーパーなどで拭き取りましょう。
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手袋などの使用で
安全な調理を!手には食中毒を引き起こす可能性のある細菌等が付着しています。また、手洗いをしたとしても、その後に触れた食材等から細菌等が付着する可能性もあります。特におにぎりや手巻き寿司などを作るときは、ラップや調理用手袋を使用しましょう。

細菌等は時間とともに増殖します。例えば大腸菌の場合、20分で倍になることがあります。細菌等を『ふやさない』ためには、生モノや調理した料理は暖かい部屋に長時間放置せず、作った料理はなるべく早く食べ、食べ切れないものは早めに冷蔵庫へ保存するよう心がけましょう。また、カレーやシチューなどの大鍋で大量に作った料理を保存する際は、早く冷えるよう底の浅い容器へ小分けし、食べる際はしっかりと加熱することが重要です。
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生モノは最後に購入!
冬場の店内は暖房が効いています。肉や魚など生モノを長時間持ち歩くことを避けるため、生モノの購入は最後にするとよいでしょう。また、保冷バッグや氷などを使用し、移動中も食材の温度が上がらないようにしましょう。
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食材を正しく保存!
食品表示の保存方法を守り、消費期限内に食べるようにしましょう。また、かたまり肉や大きな一尾の魚は小分けして冷凍保存することで早く保存に適した温度となり、使用の際も必要な分だけ取り出し、素早く調理することが可能です。
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電子レンジや
流水で解凍を!自然解凍では解凍するまでに時間がかかり、細菌等が増殖する恐れがあります。冷蔵庫の中で解凍するか、電子レンジや流水で短時間に解凍するのがおすすめです。
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料理は小分けして保存を!
カレーやシチューなどの大鍋で大量に作る煮込み料理を保存する際は、短時間で温度が下がるよう、底の浅い容器に小分けして冷蔵や冷凍保存しましょう。保存した料理を食べる際は、全体を十分に加熱しましょう。
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弁当箱に詰めるのは
料理が冷めてから!作り置き料理を弁当のおかずにする際は、しっかりと再加熱しましょう。しかし、熱々のままでは蒸気により弁当内に水分が増え、傷みの原因になるため、弁当箱へ詰める際は料理を冷ましてから行いましょう。
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テイクアウト料理の
常温放置は要注意!テイクアウトや出前料理は、早めに食べるようにしましょう。テーブルに多くの料理が並ぶ食事会やパーティも同様で、特にお寿司などの生モノは皿の下に保冷剤を配置するなどの対策をとりましょう。

細菌等を『やっつける』、そのキーワードは「加熱」です。細菌やウイルスの多くは高温に弱いため、包丁やまな板などの調理器具をはじめスポンジやタワシなども、洗浄後は定期的に熱湯で消毒することで細菌等を減らすことが可能です。細菌には塩素系漂白剤での消毒も同様の効果が得られます。また、調理する際も、焼く、煮る、蒸す、茹でる、揚げるの調理法に関わらず、食材の中心までしっかりと加熱することで細菌等の多くを減らすことができます。
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食材はしっかり
中心まで加熱する!調理法や食材により加熱時間は異なるため、調理や食材ごとに中心まで火が通っているかどうかの確認が必要です。また、卓上でのしゃぶしゃぶや焼き肉など生肉に触れる際は、食べる箸と生肉用の箸やトングを使い分けましょう。
出典:食品安全委員会「食品安全関係素材集」
(https://www.fsc.go.jp/sozaishyuu/hamburg.html)の画像を加工して作成 -
調理器具は清潔に!
可能であれば、包丁やまな板は肉と魚介類用、野菜と果物用などと使い分けると安全です。また、調理器具やスポンジは使用後定期的に熱湯や塩素系漂白剤で消毒を行いましょう。
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キッチンはいつも清潔に!
食後の食器や調理器具を長時間シンクで水に浸した場合、細菌等が繁殖する可能性があるため、できるだけ早く洗いましょう。また、シンク内や三角コーナーなども清潔な状態に保ち、キッチン全体を清潔に保ちましょう。

今週のまとめ
正しい手洗いと食材の扱いで
食中毒菌を「つけない!」
適切な保存と調理で
食中毒菌を「ふやさない!」
十分な加熱や清潔な調理環境で
食中毒菌を「やっつける!」
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