家庭で実践! 食中毒予防策 食事編


監 修 | 金井美恵子 東都大学管理栄養学部教授
料理は小分けして保存を

「カレーは翌日がおいしい!」といわれるように、カレーをはじめシチューや煮物など大鍋で大量に作る煮込み料理は、具材が馴染んで更に美味しくなるからと、何日かに分けて食べるご家庭も多いのではないでしょうか。
しかし、煮込み料理を食べる際に気をつけたいのが、ウェルシュ菌による食中毒です。
ウェルシュ菌は、熱に非常に強い芽胞*を作り、この芽胞は100度で1時間以上加熱しても死滅しません。また、食品の中心部は酸素のない状態となり、空気が苦手な嫌気性菌であるウェルシュ菌にとって増殖しやすいので、食品の温度が下がると芽胞は発芽して急速に増殖します。そのため、加熱するから大丈夫と考えて、加熱した後に常温で放置することは非常に危険です。
煮込み料理を保存する場合は、短い時間で出来るだけ温度が下がるよう、底の浅い容器等に一度に食べられる量ずつ小分けして、冷蔵庫(10度以下)や冷凍庫で保存しましょう。
また、保存していた料理を食べる際は、鍋でしっかりかき混ぜながら、中心部まで十分に再加熱(60度以上で10分以上)しましょう。
さらに、保温する場合も、ウェルシュ菌は55度以上で増殖が抑えられますが、ウェルシュ菌以外の食中毒菌の増殖を抑えるため、65度以上を保つようにし、なるべく早く食べるように心がけましょう。
*芽胞:ウェルシュ菌などの特定の菌が作る細胞構造の一種。生育環境が増殖に適さなくなると菌体内に形成する。加熱や乾燥などの過酷な条件に対して強い抵抗性を持ち、発育に適した環境になると、栄養細胞となり再び増殖する。食品中で大量に増殖した菌が、体内に取り込まれた後に再度芽胞を形成する際にエンテロトキシンという毒素を産生し、この毒素により下痢などの消化器症状が引き起こされる。
弁当の盛り付けは冷ましてから

作り置きの料理を弁当のおかずにする場合もあるかと思います。たとえその料理を冷蔵庫で保存していたからといっても、細菌は冷蔵庫内でもゆっくりですが増殖してしまうため、注意が必要です。作り置きの料理をおかずに用いる際は、料理を再度十分に加熱しましょう。
ただし、おかずやご飯が熱々なうちに弁当箱に盛り付けてしまうのは避けましょう。
おかずやご飯から出た蒸気が弁当箱内で水分となり傷みの原因となるため、必ず冷ましてから弁当箱へ詰めましょう。
また、水分が多いと細菌が増えやすくなるため、おかずの汁気はよく切りましょう。食品からの水漏れを防いだり、他の食品に細菌が移るのを防ぐために、仕切りや盛りつけカップを活用したり、揚げ物や焼き物など、弁当には水分がもともと少ないものを利用することもおすすめです。
弁当に入れる
ミニトマトのヘタは…

色彩も良く弁当の副菜として用いられる事も多いミニトマトですが、弁当に入れるときはヘタを取りましょう。ヘタの周りのように、細かいくぼみがある部分には、水で洗っても細菌が残ってしまうことがあります。
ヘタを取ってから洗い、水分をペーパータオルなどで拭き取ってから詰めましょう。
このように、ちょっとしたひと手間で安心して食べることができるのです。
テイクアウト料理は購入したらすぐに食べましょう

テイクアウト・出前をした食品は、持ち歩く時間を短くし、早めに食べるようにしましょう。冷蔵庫内か、55度以上であれば、多くの細菌は増殖できませんが、冬場であっても注意が必要です。暖房器具の利用により室温が上昇するため、一年を通して長時間の常温放置には十分注意しましょう。すぐに食べることができない場合は、冷蔵庫に入れて保存し、出来るだけ早くしっかりと加熱して食べましょう。
また、クリスマスパーティーなどのイベントや年末年始は家族や友人同士で集う機会が多いもの。テーブルにずらりと並ぶオードブルはパーティーの醍醐味ですが、同様の理由で食中毒には注意が必要です。特にお寿司等の冷蔵保存が必要な食品については、お皿の下に保冷剤を入れたり、短時間で食べられる量を随時冷蔵庫から取り出すなどの工夫をしながら、パーティーを楽しみましょう。
電子レンジでも裏返すなど
均一な加熱を

冷蔵(凍)庫で保存した料理や食材を、電子レンジで再加熱や調理する際に注意してほしいことがあります。電子レンジは、マイクロ波を食材に照射することで食材に含まれる水分子が高速で振動し、水分子同士に摩擦熱が生じることで食品を温めます。しかし、マイクロ波の照射は均一ではなく、どうしても加熱ムラが生じてしまいます。そのため、電子レンジを使用する場合は、耐熱性の容器や蓋を使い、調理時間に気を付けましょう。熱が伝わりにくい場合、時々食材を混ぜたり裏返すことも必要です。
食後はキッチンも清潔に!

食後のキッチンを清潔に保つことも、食中毒菌の増殖を防止するために大切です。例えば、汚れを落ちやすくするため、シンクで食後の食器や調理器具を水に浸しておく場合もあるかと思いますが、それが長時間にわたることで細菌が繁殖する可能性もあります。食後は食器や調理器具をそのままにせず、できるだけ早く洗うようにしましょう。
洗浄後の食器を拭くふきんも乾燥した清潔なものを使い、使用後は洗ってしっかり乾かしましょう。また、2週目の調理器具編でも紹介したように、使用した包丁やまな板などは洗浄後、熱湯や塩素系漂白剤などによる消毒を心がけましょう。加えて、シンク内や三角コーナーも清潔な状態を保ち、キッチン全体を清潔に保ちましょう。
今週のまとめ
カレーやシチューなど
大鍋で作る料理は小分けして保存を!
水分が痛みの原因となるため、
料理は冷まして弁当箱に詰めましょう!
テイクアウト料理は
帰宅後なるべく早く食べましょう!
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