豚農場のカンピロバクター保有状況調査
作成日:平成29年11月10日
2.4.1.1.豚農場
2.4.1.1.1豚農場の菌保有状況調査(平成22~25年度)
豚農場のカンピロバクターの保有状況の傾向を把握するために、平成22、23年度にそれぞれ25農場、平成24年度に50農場、平成25年度に30農場において、1農場につき10頭(平成22~24年度)又は5頭(平成25年度)を対象にカンピロバクターの調査を行いました。 |
(1) 目的
豚農場と豚のカンピロバクター保有状況の傾向を把握する1。
1 「豚農場のサルモネラ保有状況調査」(2.4.2.1.1)、「豚農場のリステリア・モノサイトジェネス保有状況調査」(2.4.3.1.1)、「豚農場のE型肝炎ウイルス保有状況調査」(2.4.4.1.1)と併せて実施。
(2) 試料採取
〇 第1回調査
平成22年10月~平成23年2月に、肥育豚を飼養する25農場で、1農場につき10頭(計250頭)の直腸便(1農場につき試料10点)を採取しました。
〇 第2回調査
平成23年10月~平成24年2月に、肥育豚を飼養する25農場で、1農場につき10頭(計250頭)の直腸便(1農場につき試料10点)を採取しました。
〇 第3回調査
平成24年8月~平成25年2月に、肥育豚を飼養する50農場で、1農場につき10頭(計500頭)の直腸便(1農場につき試料10点)を採取しました。
〇 第4回調査
平成25年8~12月に、肥育豚を飼養する30農場で、1農場につき5頭(計150頭)の直腸便(1農場につき試料5点)を採取しました。
(3) 微生物試験
直腸便を試料としてカンピロバクターの定性試験(3.1.1.1(1) )を行いました。これらの試料(10頭又は5頭の直腸便)のうち1点でもカンピロバクターが分離された農場は、陽性(カンピロバクター保有)と判定しました。
分離されたカンピロバクターについては、生化学的試験及びPCR法により菌種(Campylobacter jejuni, C.coli)を同定(3.1.3.1)しました。第1回調査で分離されたカンピロバクターについては、菌株の同一性を確認するため、フラジェリン遺伝子を利用した型別試験(3.1.3.2)及び薬剤感受性試験(3.1.3.3)を行いました。第2回調査及び第3回調査で分離されたカンピロバクターについては、薬剤感受性試験を行いました。
(4) 結果
第1回~第4回調査の豚農場のカンピロバクター保有率は、それぞれ100%(25/25)、80%(20/25)、64%(32/50)、67%(20/30)、豚のカンピロバクター保有率は、それぞれ42%(106 /250)、22%(55/250)、28%(141/500)、33%(49/150)でした(表2)。分離されたカンピロバクターは、全てC.coliでした。
表2:豚農場におけるカンピロバクター保有状況
対象 | 調査数 | 陽性数 | 陽性率(%) | |
---|---|---|---|---|
第1回調査 | 農場 | 25 | 25 | 100 |
豚 | 250 | 106 | 42 | |
第2回調査 | 農場 | 25 | 20 | 80 |
豚 | 250 | 55 | 22 | |
第3回調査 | 農場 | 50 | 32 | 64 |
豚 | 500 | 141 | 28 | |
第4回調査 | 農場 | 30 | 20 | 67 |
豚 | 150 | 49 | 33 |
第1回調査では、カンピロバクター陽性農場の25農場のうち23農場(92%)において、調査対象の10頭のうち2頭以上が陽性でした(表3)。そのうち13農場では、性状(フラジェリン遺伝子及び薬剤感受性)が同じ菌が複数の豚から分離されました。
第2回調査及び第3回調査では、カンピロバクター陽性農場の20農場、32農場のうち、それぞれ11農場(55%)、29農場(91%)において、調査対象の10頭のうち2頭以上が陽性でした。そのうちそれぞれ7農場、21農場では、性状(薬剤感受性)が同じ菌が複数の豚から分離されました。
第4回調査では、カンピロバクター陽性農場の20農場のうち、17農場(85%)において、調査対象の5頭のうち2頭以上が陽性でした。
表3:豚農場のカンピロバクター陽性豚の頭数
|
該当農場数[()内は割合(%)※] | |||
---|---|---|---|---|
第1回調査 |
第2回調査 |
第3回調査 |
第4回調査 |
|
1頭 | 2 ( 8) | 9 (45) | 3 ( 9) | 3 (15) |
2頭 | 5 (20) | 4 (20) | 5 (16) | 9 (45) |
3頭 | 2 ( 8) | 3 (15) | 2 ( 6) | 5 (25) |
4頭 | 6 (24) | 0 ( 0) | 6 (19) | 2 (10) |
5頭 | 3 (12) | 1 ( 5) | 5 (16) | 1 ( 5) |
6頭 | 2 ( 8) | 1 ( 5) | 5 (16) | - |
7頭 | 2 ( 8) | 0 ( 0) | 5 (16) | - |
8頭 | 3 (12) | 1 ( 5) | 1 ( 3) | - |
9頭 | 0 ( 0) | 0 ( 0) | 0 ( 0) | - |
10頭 | 0 ( 0) | 1 ( 5) | 0 ( 0) | - |
計 | 25 | 20 | 32 | 20 |
※ 小数第1位を四捨五入したため、足し合わせても100%にならない場合がある。
指導者・事業者の皆様へ 調査対象数は限られていますが、平成22~25年度に実施した調査では、豚を飼養する農場の64~100%がカンピロバクターを保有していました。また、陽性農場の55~92%において2頭以上の豚からカンピロバクターが分離され、複数の豚から同じ性状の菌が分離される農場がみられました。このことは、豚農場では、カンピロバクターが侵入すると、農場内の豚に感染が広がる可能性があることを示しています。自分の農場にカンピロバクターを「持ち込まない」、もし菌が農場に侵入したら、菌を農場内の豚に「広げない」、そして自分の農場から外に「持ち出さない」ように、衛生対策に取り組む必要があります。 有害微生物に感染した豚のと殺・解体時に、剥いだ体表が触れたり、消化管から漏れたふん便が付いたりすることにより、有害微生物が食肉を汚染すること(緒言)を考慮すると、農場でカンピロバクターの保有率を下げることにより、豚肉の汚染を減らせると期待できます。 今後も、豚のカンピロバクター保有状況や、保有率を下げるための有用な対策について、引き続き情報収集を行っていきます。 |
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消費・安全局食品安全政策課
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