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農林水産省

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ブロイラー農場の菌保有状況調査

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平成27年11月26日更新

 

作成日:平成27年6月25日

2.1.1.1. 肉用鶏農場

2.1.1.1.1. ブロイラー農場の菌保有状況調査(平成19,21年度)

国内のブロイラー農場(鶏群)のカンピロバクター保有状況や、衛生対策の実施状況を把握するために、延べ124農場(平成19年度)と142農場(平成21年度)において、各農場で1鶏群を対象にカンピロバクターの調査と、衛生対策の実施状況についてアンケートを行いました。その結果、農場(鶏群)のカンピロバクター保有率は約5割でした。また、車両の消毒や作業服の交換等の衛生対策を実施するとともに消毒した飲用水を鶏群に与えている農場では、消毒していない飲用水を鶏群に与えている農場よりも、鶏群のカンピロバクター保有率が低いことがわかりました。

(1) 目的

国内のブロイラー農場(鶏群)のカンピロバクター保有状況や、衛生対策の実施状況を把握する。さらに、衛生対策の実施状況とカンピロバクター保有との関連性を把握する。

 

(2) 試料採取・アンケート

第1回調査

平成19年11月~平成20年2月に、ブロイラー生産者12社の延べ124農場において、原則1農場につき1鶏群(計124鶏群)の新鮮盲腸便を、鶏舎内の床の5か所から(1鶏群につき試料5点)採取しました。鶏群は、出荷まで2週間以内のものを対象としました。また、各農場に、衛生対策の実施状況についてアンケートを行いました。

第2回調査

平成21年9月~平成22年2月に、ブロイラー生産者11社の延べ142農場において、原則1農場につき1鶏群(計142鶏群)の新鮮盲腸便を、鶏舎内の5か所から(1鶏群につき試料5点)採取しました。鶏群は、出荷まで2週間以内のものを対象としました。また、各農場に、衛生対策の実施状況についてアンケートを行いました。

 

(3) 微生物試験

新鮮盲腸便を試料としてカンピロバクターの定性試験(3.1.1.1(1) )を行いました。この試料のうち1点でもカンピロバクターが分離された鶏群は、陽性(カンピロバクター保有)と判定しました。分離されたカンピロバクターについては、生化学的試験及びPCR法により菌種(Campylobacter jejuni, C.coli)を同定(3.1.3.1)しました。

 

(4) 結果

第1回調査において、アンケートに回答していただいた114農場のうち、9割を超える農場が車両の消毒や作業服の交換等の衛生対策を行っていましたが、消毒した飲用水を鶏群に与えている農場は約5割でした(表2)。各農場における衛生対策の実施の有無と、鶏群のカンピロバクターの保有の有無を解析すると、消毒した飲用水を鶏群に与えている農場(鶏群)のカンピロバクター保有率は21%(11/53)であり、消毒していない飲用水を鶏群に与えている農場(鶏群)のカンピロバクター保有率(67%、41/61)よりも低いことがわかりました(表3)。

表2:ブロイラー農場の衛生対策の実施状況(対象:114農場)  

衛生対策

実施率(%)

 農場出入口で車両を消毒している。

 99

 作業服を毎日交換している。

 97

 作業靴を鶏舎ごとに消毒(はき替え)している。

 97

 毎日死亡鶏を除去している。

 100  

 ネズミ等の駆除を少なくとも3ヶ月間隔で行っている。

 96

 消毒した飲用水を鶏群に与えている。

 47

 農場単位のオールインオールアウトを行っている。

 98

 出荷ごとに鶏舎を洗浄・消毒している。

 100  

 鶏舎の空舎期間が14日以上である。

 94

 

表3:ブロイラー農場における飲用水の消毒の有無とカンピロバクター保有率

飲用水の消毒

農場(鶏群)数

うちカンピロバクター陽性農場(鶏群)

農場(鶏群)数

陽性率(%)

消毒水を使用

53

11

21a

未消毒水を使用

61

41

67a

注釈 ap<0.01(99%以上の確率で、消毒水を使用する農場の方が、未消毒水を使用する農場よりも、鶏群のカンピロバクター保有率が低い。)   

 

また、農場(鶏群)のカンピロバクター保有率は、第1回調査では44%(54/124)、第2回調査では47%(67/142)でした。2か月毎(9~10月、11~12月、1~2月)の保有率を見ると、1~2月が最も低いことがわかりました(表4)。なお、調査で新鮮盲腸便から分離されたカンピロバクター168株のうち、122株はC.jejuni、46株はC.coliでした。

表4:ブロイラー農場(鶏群)のカンピロバクター保有率の季節変化

調査期間

農場(鶏群)数

うちカンピロバクター陽性農場

農場(鶏群)数

陽性率(%)

 平成21年9月~10月

50

31

62a

 平成19年11月~12月

44

28

64b

 平成21年11月~12月

50

26

52c

 平成20年1月~2月

80

26

33b

 平成22年1月~2月

42

10

 24ac

注釈 ap<0.01(99%以上の確率で、平成22年1月~2月に調査した農場(鶏群)の方が、平成21年9月~10月に調査した農場(鶏群)よりも、カンピロバクター保有率が低い。)

bp=0.001(99.9%の確率で、平成20年1月~2月に調査した農場(鶏群)の方が、平成19年11月~12月に調査した農場(鶏群)よりも、カンピロバクター保有率が低い。)

cp<0.01(99%以上の確率で、平成22年1月~2月に調査した農場(鶏群)の方が、平成21年11月~12月に調査した農場(鶏群)よりも、カンピロバクター保有率が低い。)  

 



指導者・事業者の皆様へ

ブロイラーを飼養する国内の124農場及び142農場(124鶏群及び142鶏群)のカンピロバクター保有率は約5割でした。食鳥処理場1か所において、カンピロバクター陽性の14鶏群と陰性の10鶏群から製造された鶏肉のうち、カンピロバクターに汚染されていた鶏肉のほとんどが陽性鶏群から製造されたものであったこと(2.1.1.2.1)を考慮すると、農場でカンピロバクターの保有率を下げることによって、鶏肉の汚染率が下がり、食中毒の発生の減少につながると期待できます。

また、車両の消毒や作業服の交換等の衛生対策を実施するとともに消毒した飲用水を鶏群に与えている農場は、消毒していない飲用水を与えている農場よりも、鶏群のカンピロバクター保有率がかなり低いことがわかりました。飲用水の消毒など、農場において有効と考えられる衛生対策を「鶏肉の生産衛生管理ハンドブック」(生産者編・指導者編)で紹介していますので、参考にしてください。

なお、鶏は、カンピロバクターに感染しても症状を示すとは限らないので、自分の農場の状況を知るにはカンピロバクターの検査を行う必要があります。

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課
担当者:危害要因情報班
代表:03-3502-8111(内線4457)
ダイヤルイン:03-6744-0490
FAX:03-3597-0329