更新日:平成27年11月26日
作成日:平成27年8月19日
採卵鶏農場のサルモネラ保有状況調査
2.2.1.1. 採卵鶏農場・GPセンター(卵選別包装施設)
2.2.1.1.1. 採卵鶏農場の菌保有状況調査(平成19年度)
国内の採卵鶏農場(鶏群)のサルモネラ保有状況や、衛生対策等の実施状況を把握するために、338農場の400鶏群を対象にサルモネラの調査と、衛生対策等の実施状況についてアンケートを行いました。その結果、農場のサルモネラ保有率は21%でした。鶏舎の種類別のサルモネラ保有率は、無窓(ウィンドウレス)鶏舎の農場で52%、開放鶏舎の農場で10%でした。また、誘導換羽又はインライン集卵2を行っている無窓鶏舎の農場や、インライン集卵を行っている開放鶏舎の農場のサルモネラ保有率が高いことがわかりました。 |
2鶏舎とGPセンター(卵選別包装施設)の間を連結したバーコンベアで卵を移送すること。
(1) 目的
国内の採卵鶏農場(鶏群)のサルモネラ保有状況や、衛生対策等の実施状況を把握する。さらに、衛生対策等の実施状況とサルモネラ保有との関連性を把握する。
(2) 試料採取・アンケート
平成19年9月~平成20年3月に、採卵鶏を飼養する338農場において、1農場につき、1~2鶏群3(計400鶏群)の新鮮盲腸便を鶏舎内の床の5か所から(1鶏群につき試料5点)、塵あいを鶏舎内の2か所から(1鶏群につき試料2点)採取しました。
また、各農場に衛生対策や飼養管理の実施状況についてアンケートを行いました。
3廃用2か月以内の鶏群、誘導換羽後1か月以内の鶏群又は農場内で最高齢の鶏群が調査対象。
(3) 微生物試験
新鮮盲腸便と塵あいを試料としてサルモネラの定性試験(3.2.1.1 (1) 、3.2.1.4 (1) )を行いました。これらの試料のうち1点でもサルモネラが分離された農場や鶏群は、陽性(サルモネラ保有)と判定しました。分離されたサルモネラについては、O抗原とH抗原を調べて血清型を特定(3.2.3.1)しました。
(4) 結果
〇採卵鶏農場(鶏群)のサルモネラ保有状況
農場のサルモネラ保有率は21%(70/338)、鶏群のサルモネラ保有率は20%(78/400)でした。
分離された合計132株は30以上の血清型に分類され、上位5血清型はSalmonella Cerro、S. Braenderup、S. Infantis、S. Corvallis、S. Enteritidisでした(表2)。サルモネラ食中毒の原因として一番多い血清型であるS. Enteritidisの農場の保有率は3%(10/338)でした。
表2:採卵鶏農場で分離されたサルモネラの血清型(対象:338農場)
サルモネラ血清型 |
陽性農場数 |
サルモネラ血清型 |
陽性農場数 |
---|---|---|---|
S. Cerro |
15 |
S. Oranienberg |
4 |
S. Braenderup |
14 |
S. Derby |
2 |
S. Infantis |
14 |
S. Javiana |
2 |
S. Corvallis |
10 |
S. Montevideo |
2 |
S. Enteritidis |
10 |
S. Putten |
2 |
S. Mbandaka |
8 |
S. Saintpaul |
2 |
S. Livingstone |
8 |
S. Singapore |
2 |
S. Thompson |
6 |
S. Virchow |
2 |
S. Bareilly |
4 |
その他 |
22 |
2鶏群ずつ調査した62農場のうち、8農場では2鶏群ともサルモネラを保有していました。さらに、このうち5農場では、2鶏群から同じ血清型のサルモネラが分離されました。
〇農場のサルモネラ保有率と鶏舎の種類
無窓(ウィンドウレス)鶏舎の農場のサルモネラ保有率は52%(44 / 85)、開放鶏舎の農場のサルモネラ保有率は10%(26 / 253)であり、無窓鶏舎の農場の方が高いことがわかりました(表3)。
表3:採卵鶏農場におけるサルモネラの保有状況(対象:338農場)
鶏舎の種類 |
農場数 |
うちサルモネラ陽性農場 |
うちSE |
||
---|---|---|---|---|---|
農場数 |
陽性率(%) |
農場数 |
陽性率(%) |
||
全体 |
338 |
70 |
21 |
10 |
3 |
無窓鶏舎 |
85 |
44 |
52a |
6 |
7b |
開放鶏舎 |
253 |
26 |
10a |
4 |
2b |
*SE: S.Enteritidis
注釈 ap<0.01(99%以上の確率で、無窓鶏舎の農場の方が、開放鶏舎の農場よりも、サルモネラ保有率が高い。)
bp=0.02(98%の確率で、無窓鶏舎の農場の方が、開放鶏舎の農場よりも、S.Enteritidis保有率が高い。)
一方、アンケートに回答していただいた313農場について、無窓鶏舎の農場(80農場)と開放鶏舎の農場(233農場)の衛生対策の実施率をみると、飲用水の消毒はどちらも約6割でしたが、サルモネラワクチンの接種はそれぞれ58%と26%、それ以外の衛生対策(サルモネラの定期的な検査や車両の消毒など)はそれぞれ89~99%と55~80%程度であり、無窓鶏舎の農場の方が高くなっていました(表4)。
表4:採卵鶏農場の衛生対策の実施状況(対象:無窓鶏舎80農場、開放鶏舎233農場)
衛生対策 |
実施率(%) |
|
---|---|---|
無窓鶏舎 |
開放鶏舎 |
|
サルモネラの検査を定期的に行っている。 |
93 |
75 |
サルモネラワクチンを接種している。 |
58 |
26 |
農場出入口で車両を消毒している。 |
95 |
55 |
作業服を毎日交換している。 |
95 |
79 |
ネズミ等の駆除を定期的に行っている。 |
89 |
60 |
農場関係者以外の立ち入りを制限している。 |
99 |
80 |
消毒した飲用水を鶏群に与えている。 |
66 |
62 |
注釈
〇農場のサルモネラ保有と飼養管理との関係
サルモネラ保有の有無と、農場での衛生対策や飼養管理の実施状況との関係を解析しました。なお、無窓鶏舎の農場と開放鶏舎の農場は別の集団と考えられたため(表3、表4)、それぞれについて解析しました。
▼無窓鶏舎の農場
誘導換羽を行っている農場のサルモネラ保有率は60%(38 / 63)であり、行っていない農場のサルモネラ保有率(24%、4 / 17)よりも高いことがわかりました。また、インライン集卵を行っている農場のサルモネラ保有率は63%であり、行っていない農場のサルモネラ保有率(17%、3 / 18)よりも高いことがわかりました(表5)。
飼養管理※ |
農場数 |
うちサルモネラ陽性農場 |
||
---|---|---|---|---|
農場数 |
陽性率(%) |
|||
誘導換羽 |
行っている |
63 |
38 |
60a |
行っていない |
17 |
4 |
24a |
|
インライン集卵 |
行っている |
62 |
39 |
63b |
行っていない |
18 |
3 |
17b |
※誘導換羽とインライン集卵の2要因の間に関連性はなく、それぞれ独立した要因
注釈
bp=0.002(99.8%の確率で、インライン集卵を行っている無窓鶏舎の農場の方が、インライン集卵を行っていない無窓鶏舎の農場よりも、サルモネラ保有率が高い。)
▼開放鶏舎の農場
インライン集卵を行っている農場のサルモネラ保有率は17%(13 / 76)であり、行っていない農場のサルモネラ保有率(7.6%、12 / 157)よりも高いことがわかりました(表6)。
表6:インライン集卵の実施状況とサルモネラ保有率(対象:開放鶏舎の233農場)
飼養状況 |
農場数 |
うちサルモネラ陽性農場 |
||
---|---|---|---|---|
農場数 |
陽性率(%) |
|||
インライン集卵 | 行っている |
76 |
13 |
17a |
行っていない |
157 |
12 |
8a |
注釈
指導者・事業者の皆様へ 採卵鶏を飼養する国内の338農場のサルモネラ保有率は21%でした。鶏舎の種類別にみると、無窓鶏舎の農場(52%)の方が、開放鶏舎の農場(10%)よりもサルモネラ保有率が高くなっていました。さらに、誘導換羽又はインライン集卵を行っている無窓鶏舎の農場や、インライン集卵を行っている開放鶏舎の農場のサルモネラ保有率が高いことがわかりました。このような農場は、サルモネラ保有率が高い傾向にあるという点に留意して、サルモネラ低減のための対策をとることが重要です。 複数の農場において、同一農場内の2鶏群から同じ血清型のサルモネラが分離されました。このことは、サルモネラが採卵鶏農場に侵入すると、農場内の鶏群から鶏群に広がる可能性があることを示しています。自分の農場にサルモネラを「持ち込まない」、もしサルモネラが農場に侵入したら、サルモネラを農場内の鶏群から鶏群に「広げない」、そして自分の農場から外に「持ち出さない」ように、衛生対策に取り組む必要があります。 市販鶏卵の調査で、鶏卵パック(卵殻)の0.3%がサルモネラ陽性だったこと(2.2.1.2.1)、そして鶏卵を出荷した2農場では、飼養されていた鶏群の約8割(27 / 32)がサルモネラ陽性だったという結果(2.2.1.1.2)を考慮すると、鶏卵の汚染率をさらに下げるためには、GPセンター(卵選別包装施設)における衛生管理を適切に行うとともに、農場でサルモネラの保有率を下げることも必要であると推測されます。 農場において有効と考えられる衛生対策を「鶏卵の生産衛生管理ハンドブック」(生産者編、指導者編)で紹介しています。ご自身の農場における衛生対策の再確認や、食中毒を防ぐための追加の対策を検討したい方の参考になれば幸いです。 |
お問合せ先
消費・安全局食品安全政策課担当者:危害要因情報班
代表:03-3502-8111(内線4457)
ダイヤルイン:03-6744-0490
FAX:03-3597-0329