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農林水産省

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第5節 食の安全と消費者の信頼確保


食品の安全性を向上させるため、食品を通じて人の健康に悪影響を及ぼす可能性のある有害な化学物質や微生物について、科学的根拠に基づいたリスク管理に取り組むとともに、農林水産物・食品に関する適正な情報提供を通じて、消費者の食品に対する信頼確保を図ることが重要です。

(1)食品の安全性向上

(科学的根拠に基づいたリスク管理を実施)

図表1-5-1 食品安全に関するリスク管理の流れ

食品の安全性を向上させるためには、科学的根拠に基づき、生産から消費に至るまでの必要な段階で有害化学物質・微生物の汚染の防止や低減を図る措置の策定・普及に取り組むことが重要です(図表1-5-1)。そのため農林水産省は、関係省庁等(*1)と協力して、食品の安全性向上に取り組んでいます。

例えば、食品の安全性を向上させる対策が必要かどうかを検討するために、農畜水産物や加工食品、飼料中の有害化学物質・微生物の実態を調査しています。具体的には、令和元(2019)年度は、ヒ素、鉛、ダイオキシン類、トリコテセン類(*2)、麦角(ばっかく)アルカロイド類(*3)、カンピロバクター(*4)、ノロウイルス(*5)等の危害要因について、農畜水産物、加工食品中の汚染実態等の調査や、加工食品中のアクリルアミド(*6)の低減対策に係る効果を検証するための調査を行いました。また、飼料については、有害化学物質の基準の設定・見直しや遵守状況の監視のため、カドミウム、フモニシン等の含有実態を把握しました。さらに、こうした実態調査が科学的原則に基づいた一貫した考え方の下で行われるよう、「分析法の妥当性確認に関するガイドライン」と「化学物質の経口摂取量推定に関するガイドライン」を公表しました。

こうした実態調査の結果、健康への悪影響がないと言い切れない危害要因について、安全性向上対策を策定・普及するための検討を行っています。具体的には、令和元(2019)年度は、3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類(*6)、カンピロバクター等の危害要因について、汚染の防止・低減技術を開発するための試験研究や、生産者及び事業者と連携した汚染の防止・低減技術の効果の検討を行いました。

また、食品安全に関する情報の発信にも積極的に取り組んでおり、令和元(2019)年度は食品中のトランス脂肪酸低減に関し、国内事業者向けの情報を充実させました。さらに、学校や保育所向けに学校等の菜園でのジャガイモ栽培の注意点を分かりやすく解説した動画のほか、正しい手洗いのポイント、お弁当を作る際の注意点をまとめたWebサイトと動画を作成し、食中毒の予防対策の普及を図りました。

*1 消費者庁、食品安全委員会、厚生労働省

*2 主にフザリウム属菌が産生する、トリコテセン骨格という構造を持つかび毒の総称。デオキシニバレノール、ニバレノール、T-2トキシン、HT-2トキシン等がある。

*3 主にクラビセプス属菌(麦角菌)が産生するアルカロイド類の総称。エルゴタミン、エルゴメトリン、エルゴクリスチン等がある。

*4 食中毒の原因細菌の一つ。カンピロバクターによる食中毒は、細菌性食中毒の中で患者数と発生件数が最も多く、主な原因食品は生又は加熱不十分の鶏肉製品。食鳥処理やと畜の段階で家きん・家畜の腸管にいるカンピロバクターに食肉(内臓を含む。)が汚染されることがある。

*5 食中毒の原因ウイルスの一つ。ノロウイルスによる食中毒は、食中毒事件の中で患者数が最も多く、主な原因食品は食品製造者・調理従事者を介してウイルスに汚染された食品である。そのほか、二枚貝も原因食品の一つとなっている。

*6 食材を加熱すると、もとから含まれる成分から、食品にとって好ましい色や香りのもととなる物質や健康に影響を及ぼす可能性がある物質ができる。健康に影響を及ぼす可能性がある物質の一つにアクリルアミドがあり、食材に含まれるアミノ酸と糖類を120℃以上に加熱するとできる。そのほか、3-MCPD脂肪酸エステル類及びグリシドール脂肪酸エステル類があり、油脂の精製工程のうち、油脂を真空に近い条件で高温に加熱する脱臭工程でできる。

(農業者のニーズに応じ肥料取締制度を見直し)

近年、我が国の農地土壌をめぐっては、堆肥の施用量の減少や主要成分中心の画一的な施肥等により、地力の低下や土壌の栄養バランスの悪化といった課題が顕在化してきています。また、世界的に肥料の需要が伸びてきており、将来にわたって我が国の肥料を安定的に確保するためには、国内で調達可能な堆肥や産業副産物をより有効利用し、肥料原料の海外依存度を下げることが重要です。一方で、肥料については、原料の虚偽表示等により、有機農産物等を生産する農家に経済的被害が発生する事例も発生しています。このため、より安心して肥料を利用できるよう、原料管理を強化することや表示偽装への対応を行うことが課題となっています。

さらに、これまでは堆肥等の特殊肥料と化学肥料等の普通肥料の配合を原則認めておらず、そのことが、両者を一度に散布して省力化につなげたいといった農業者のニーズに対応した柔軟な肥料生産を行う上での制約となっています。

このため、令和元(2019)年12月に「肥料取締法の一部を改正する法律」が公布され、この改正により、肥料の原料管理制度の導入、肥料の配合に関する規制の見直し、肥料の表示基準の整備、法律の題名の変更が行われることとなっています(図表1-5-2)。今後、農林水産省は改正法の施行に向けた準備を進めることとしています。

図表1-5-2 肥料取締法の一部を改正する法律の概要

(農薬の安全性に関する審査の充実)

農林水産省は、平成30(2018)年に改正された農薬取締法に基づき、農薬使用者や蜜蜂に対する影響を科学的に評価するためのガイダンスを令和元(2019)年6月に公表しました。これに基づき評価を行うことで、農薬使用者や蜜蜂に対する農薬の安全性を更に向上させることとしています。

(2)消費者の信頼確保

(ゲノム編集技術を利用して得られた農林水産物・食品等の取扱いが決定)

近年、ゲノム編集(*1)という新たな技術により、機能性成分を多く含んだトマト、天然毒素を大幅に低減したばれいしょ、超多収性等の形質を有するイネ等の開発が進められています。ゲノム編集技術を利用して得られた農林水産物・食品等については、食品衛生法上の組換えDNA技術応用食品等やカルタヘナ法(*2)上の「遺伝子組換え生物等」に該当せず、規制の対象にならないもの等も作出される可能性があることから、それぞれの関係省庁において、その取扱いについて議論され、令和2(2020)年2月までに整理、公表されました。

ゲノム編集技術を利用して得られた農林水産物・食品等について、食品安全や飼料安全の観点から、自然界又は従来の品種改良の技術でも起こり得る範囲のものは、食品衛生法等に基づく安全性審査を義務付けずに、食品等を実用化しようとする事業者がその使用に先立ち、食品安全の観点からは厚生労働省、飼料安全の観点からは農林水産省へ届出を行い、各省庁で内容を確認した上でその情報を公表することとしました。また、それ以上の遺伝子変化により得られるものは、基本的に安全性審査の対象とすることとなりました。なお、食品への表示については、厚生労働省の安全性審査の対象となるものは遺伝子組換え表示を行うものとし、安全性審査の対象とならないものについては、表示等の義務はないものの、食品関連事業者は合理的な根拠資料に基づき積極的に情報提供に努めるべきとの考え方が消費者庁から示されました。

生物多様性への影響の観点からは、細胞外で加工した核酸が含まれないものについては、カルタヘナ法における「遺伝子組換え生物等」には該当しないとされた一方、これらの生物について拡散防止措置を執らずに使用する場合は、農林水産省及び環境省へ生物多様性影響等について事前に情報提供を行い、農林水産省及び環境省は、学識経験者への意見照会を行うなどして内容を確認した上で、その情報を公表することとなりました。

*1 用語の解説3(1)を参照

*2 正式名称は、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(平成15年法律第97号)



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