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農林水産省

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第6節 動植物の防疫


食料の安定供給や農畜産業の振興を図るため、CSF(*1)(豚熱(ぶたねつ)(*2))を始めとする家畜伝染病や植物病害虫に対し、侵入・まん延を防ぐための対応を行っています。近年、ASF(*3)(アフリカ豚熱(*4))を始め、畜産業に甚大な影響を与える口蹄疫(こうていえき)や高病原性鳥インフルエンザ(*5)といった越境性動物疾病が近隣のアジア諸国において継続的に発生しています。これら疾病の海外からの侵入を防ぐため、政府一丸となって取り組むことが重要です。

*1、3 用語の解説3(2)を参照

*2、4、5 用語の解説3(1)を参照

(CSFの感染拡大防止が急務)

平成30(2018)年9月、我が国において26年ぶりにCSFが発生し、令和2(2020)年3月末時点で、岐阜県、愛知県、三重県、福井県、埼玉県、長野県、山梨県、沖縄県の豚又はイノシシ(以下「豚等」という。)の飼養農場において58例の発生が確認されており、清浄国のステータスは一時停止中となっています(図表1-6-1)。また、野生イノシシにもCSFウイルスが浸潤し、感染区域が拡大しており、豚等及び野生イノシシにおける感染拡大防止とその後の清浄化が急務となっています。

農林水産省は、令和元(2019)年10月15日に、発生から1年が経過し、埼玉県や長野県において新たに発生が確認されるなど、CSFの状況が新たなステージに入ったこと等から、飼養豚へのCSFの予防的ワクチン接種を可能にする新たな防疫指針を施行しました。これを受け、野生イノシシにおいて感染が確認されている12県(岐阜県、愛知県、三重県、福井県、埼玉県、長野県、山梨県、富山県、石川県、滋賀県、群馬県、静岡県)において、10月25日から順次、接種が開始されました。その後、野生イノシシの感染拡大が想定される8都府県(茨城県、栃木県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、京都府、奈良県)のほか、飼養豚において新たにCSFの発生が確認された沖縄県をワクチン接種推奨地域に設定し、順次、接種が開始されています。

また、「CSFの疫学調査に係る中間取りまとめ」(*1)において、今般のCSFの感染経路については、CSFに感染した野生イノシシ由来のウイルスを人、車両又は野生動物が農場内に持ち込んだ事例が多いとされているため、関係省庁、都道府県、市町村等が連携して、野生イノシシの捕獲の強化とともに、空中散布も含めた経口ワクチンの散布によりウイルス拡散を防ぐ「ワクチンベルト」の構築等の野生イノシシ対策を推進し、豚等への感染リスクを低減させる取組を行っています。

CSFの豚等への感染リスクの低減を図るためには、飼養衛生管理基準の遵守が極めて重要です。現行基準が平成29(2017)年2月に施行されて以降、CSFの国内での発生やASFの近隣諸国での発生が新たに確認されていることから、農林水産省では、農場における飼養衛生管理基準の遵守に向けて指導しています。特に、沖縄県での初発事例では、加熱が不十分な肉製品を含んだ食品残さの給餌により感染した可能性が否定できないと推定されたことも踏まえ、豚、イノシシの基準について、病気を防除するために必要となる水準や目指すべき飼養衛生管理の姿を現場に普及させる取組について議論を行い、農場ごとの飼養衛生管理に係るマニュアル策定や野生動物侵入防止対策の義務付け、エコフィード(*2)の加熱基準の厳格化等を内容とする基準の改正を行うこととしました。

なお、農林水産省や地方公共団体は、CSFが豚やイノシシの病気であって、人に感染することはなく、仮にCSFに感染した豚やイノシシの肉を食べても人体に影響がないことを周知しています。

図表1-6-1 CSFの発生場所

*1 令和元(2019)年8月8日農林水産省、拡大CSF疫学調査チーム策定

*2 用語の解説3(1)を参照

(ASFの国内への侵入防止を徹底)

ASFは、FAO(国際連合食糧農業機関)等の国際機関が「国境を越えてまん延し、発生国の経済、貿易及び食料の安全保障に関わる重要性を持ち、その防疫には多国間の協力が必要となる疾病」と定義する「越境性動物疾病」の代表例です。

ASFには、病原性が高い一方で、治療法や予防法がないため、一度まん延すると、 長期にわたり畜産業の生産性を低下させ、 国民への畜産物の安定供給を脅かす可能性があります。

現在、ASFは、アフリカ大陸だけでなく、ロシア、東欧地域においても発生が拡大しており、平成30(2018)年8月には、中国においてアジアで初めて発生が確認されました(図表1-6-2)。その後、モンゴル、ベトナム、カンボジア、北朝鮮、ラオス、ミャンマー、韓国等アジア各国へ発生が拡大していることに加え、国際的な人及び物の往来が増加している状況を踏まえると、今後、我が国にASFが侵入するリスクが非常に高くなっています。

ASFの豚等への感染リスクの低減を図るためには、水際における国内へのウイルス侵入防止の徹底と飼養衛生管理基準の遵守が極めて重要です。

このため、農林水産省では、関係省庁と連携しながら水際検疫を徹底するとともに、国内にASFウイルスが侵入する可能性があるという前提に立ち、豚等の所有者と行政機関及び関係団体とが緊密に連携し、実効ある防疫体制を構築しています。また、OIE(*1)(国際獣疫事務局)/FAOのアジア地域ASF専門家会合の開催等、OIE等の国際機関を通じた情報共有や国際連携の強化を図っています。あわせて、万が一国内にウイルスが侵入した場合に備え、農場に持ち込ませないよう、各農場における飼養衛生管理基準の遵守の徹底と、バイオセキュリティの向上を図っています。

図表1-6-2 ASFの発生状況

*1 用語の解説3(2)を参照

(越境性動物疾病の侵入防止策を強化)

CSF、ASFを始め、畜産業に甚大な影響を与える口蹄疫(こうていえき)や高病原性鳥インフルエンザといった越境性動物疾病は、近隣のアジア諸国において継続的に発生しています。これら疾病の海外からの侵入を防ぐため、政府一丸となって取り組む必要があることから、平成31(2019)年4月に関係省庁による申合せを行い、肉等の持込み禁止に関する広報活動の強化、水際における摘発強化、農場へのウイルス侵入防止対策の強化について連携を図ることを確認しました。

具体的な取組として、旅行者が訪日前に我が国の検疫制度を認識できるよう、動物検疫所Webサイトの多言語化や多言語動画の配信を行っているほか、在外公館や日本政府観光局(JNTO)を通じて現地でのSNS(*1)の配信やWebサイトでの注意喚起、航空会社の協力による現地空港カウンターでの注意喚起、航空機内や船舶内でのアナウンス、税関申告書の様式変更(肉製品の持込みの有無についての質問が目立つよう、用紙の裏面から表面へ移動)といった、海外から肉製品等を「持ち出させない」ための広報を強化しています。

検疫探知犬を視察する農林水産大臣

検疫探知犬を視察する
農林水産大臣

また、急増する入国者に対応するため、家畜防疫官の増員や動植物検疫探知犬の増頭による検疫の強化を行いました。入国者の携帯品検査については、平成31(2019)年4月以降、畜産物の違法持込み者への対応を厳格化し、税関と連携して違反者情報のデータベース管理を行うとともに、悪質な場合は警察への通報や告発等を行うこととしており、実際に輸入禁止肉製品の持込みによる逮捕者も出ているところです。

さらに、国内線における靴底消毒マットの設置推進、農場における野生動物侵入防止防護柵の設置支援、地方公共団体へのごみ対策の協力依頼等「農場に入れない」ための国内対策を強化しています。

このようなCSF、ASF等家畜疾病対策の取組の強化については、令和元(2019)年12月に決定された農業生産基盤強化プログラムにも位置付けられ、関係省庁と連携して万全の対策を講じることとされました。

*1 Social Networking Serviceの略。登録された利用者同士が交流できるWebサイトのサービス

(家畜伝染病予防法を改正)

家畜伝染病予防法は、家畜の伝染性疾病の発生を予防し、まん延を防止することにより、畜産の振興を図ることを目的としています。同法については、有効なワクチンがないASFが近隣諸国でまん延している状況に鑑み、国内でのASF発生時に緊急の措置としてASFのまん延を防止するための予防的殺処分ができることとする等の措置を講ずるため、令和2(2020)年2月に改正されました。また、野生動物における悪性伝染性疾病のまん延防止を図るための措置を新たに法に位置付けるとともに、農場における飼養衛生管理基準の遵守の徹底、予防的殺処分の対象疾病の拡大、畜産物の輸出入検疫に係る家畜防疫官の権限の強化等の措置を講ずるため、令和2(2020)年2月に家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案を国会に提出し、同年3月に成立しました。

(植物病害虫の侵入・まん延防止に向けた対策を実施)

農産物の生産に被害を及ぼす病害虫の侵入を効果的かつ効率的に防止するため、農林水産省では、海外での発生情報等を踏まえ、病害虫の侵入・まん延の可能性や、まん延した場合に農業生産に与える経済的被害について評価する病害虫リスクアナリシスを行っています。

また、国内への侵入を防止するため、植物防疫所では、空港・港等において、量や商用・個人用を問わず、貨物、携帯品、郵便物として輸入される植物を対象に検疫を行っています。さらに、国内で病害虫のまん延を防ぐため、侵入病害虫に対する緊急防除や寄主植物の移動禁止等の取組を進めています。

国内で既に発生している病害虫についても、急激なまん延による我が国農業への被害を防止するため、病害虫の発生予測や、発生予測に基づく的確な防除対策を推進しているところであり、特に、近年、りんごの黒星病等農薬への耐性が課題となっている病害虫に対する新たな防除体系の確立に向けた取組を進めています。

令和元(2019)年7月、鹿児島県においてツマジロクサヨトウ(*1)が国内で初めて確認され、その後、南は沖縄県から北は青森県まで広い地域での発生が確認されました。農林水産省では都道府県と連携し、発生状況の把握、早期発見・早期防除の徹底に努めています。

平成31(2019)年4月、我が国で開催したG20首席農業研究者会議(G20MACS)において、「越境性植物病害虫」を主要議題の一つに取り上げ、これを踏まえ、農林水産省は、G20メンバー等関心国及び国際機関の研究者を参集範囲とする国際ワークショップを開催しました。国際ワークショップでは、越境性病害虫のリスク軽減のため、発生情報の迅速な提供や病害虫の分析方法、防除方法等の確立に向けた国際的な連携が必要との方向性が示されました。

*1 さとうきび、とうもろこし、イネ、豆類、いも類、野菜類等、80種類以上の作物に被害を与えるヤガ科の害虫

(動物分野における薬剤耐性対策を推進)

抗菌剤の不適切な使用により、抗菌剤が効かない細菌(薬剤耐性菌)が増加し、家畜の治療を難しくしたり、畜産物等を介して人に伝播して健康に影響を及ぼしたりすることがないよう、農林水産省では、家畜における薬剤耐性菌の全国的な動向調査(平成11(1999)年より開始)や抗菌剤の使用を真に必要な場合に限定する「慎重使用」等の薬剤耐性対策を進めてきました。また、平成28(2016)年4月に国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議で決定された薬剤耐性対策アクションプランに基づき、抗菌剤の飼料添加物としての指定の取消しを進める(*1)とともに、令和元(2019)年度には、医療分野と連携した公開シンポジウムの開催、獣医系大学生への抗菌剤の慎重使用に関する普及啓発の実施、養殖魚及び愛玩動物における薬剤耐性菌の全国的な動向調査等を行いました。

*1 コリスチン、リン酸タイロシン、テトラサイクリン系等9種類の抗菌剤の飼料添加物としての指定を取消、使用を禁止



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