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農林水産省

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第8節 生産・加工・流通過程を通じた新たな価値の創出


我が国の農業総産出額は8兆円から9兆円程度で推移しています。農林漁業者が生産した農林水産物は、保管、流通、加工、調理等の様々な過程で価値が付加され、飲食料の最終消費額は80兆円を超えています(*1)。農林漁業の成長産業化のためには、農林水産物を始めとする地域の多様な資源を有効に活用した6次産業化(*2)等により、新たな付加価値を生み出すことが重要です。

*1 農林水産省「平成27年(2015年)農林漁業及び関連産業を中心とした産業連関表(飲食費のフローを含む。)」

*2 用語の解説3(1)を参照

(農業生産関連事業の年間総販売金額は近年増加傾向)

農業者による加工・直売等の取組である農業生産関連事業の市場規模は近年拡大しています。平成30(2018)年度の年間総販売金額は2兆1,040億円で、前年度並となりました(図表1-8-1)。また、1事業体当たりの年間販売金額は増加しており、このことが全体の販売金額を下支えしている要因となっています。

図表1-8-1 農業生産関連事業の年間総販売金額と1事業体当たりの年間販売金額

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(6次産業化により売上高は増加しているものの経常利益の向上が課題)

六次産業化・地産地消法(*1)に基づく総合化事業計画(*2)の認定件数は、令和元(2019)年度末時点で2,557件となりました。同計画の認定を受けた事業者は、交付金や農林漁業成長産業化ファンドによる資金面での支援等を受けることができます。令和元(2019)年度末時点で、農林漁業成長産業化ファンドによる出資決定案件は157件、出資決定額は181.9億円となりました(*3)。なお、最近の出資状況、過去の投資実績等を踏まえ、農林水産省は、農林漁業成長産業化ファンドに対し、令和3(2021)年度以降、新たな出資の決定を行わないなどの方向で、投資計画を見直すよう指示しました。

農林水産省が行った認定事業者を対象としたフォローアップ調査によると、5年間総合化事業に取り組んだ事業者の総合化事業で用いる農林水産物等と新商品の売上高平均額は、増加傾向で推移しています(図表1-8-2)。

一方で、取組から5年目における総合化事業関連の売上高と経常利益について計画認定申請時と比較すると、8割近くの事業者は売上高が増加しているものの、その半数は経常利益が減少しています(図表1-8-3)。その主な要因としては、新たな事業の開始に伴う人件費や減価償却費の増加、農業生産資材等の高騰による経費の増加が挙げられています。さらに、認定事業者にヒアリングを実施したところ、加工技術が向上せず、商品開発に遅れが生じていること、他の事業者との競合等により、新商品の販路開拓が難航していることも挙げられています。

このことから、農業者の経営改善に向けて、加工・業務用需要に対応した農産物の一次加工や農泊等と連携した取組の促進、多様な関係者とのコーディネート機能を有するプランナー等によるサポート体制の構築が求められています。

図表1-8-2 農林水産物等と新商品の売上高平均額

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図表1-8-3 認定事業者の売上高と経常利益

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*1 正式名称は「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」

*2 用語の解説3(1)を参照

*3 農業競争力強化支援法に基づく事業再編計画等及び食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律に基づく食品等流通合理化計画の認定事業者への出資を含む。

(6次産業化プランナーが6次産業化の取組をサポート)

6次産業化の取組を支援するため、都道府県段階に6次産業化サポートセンターが設置され、同センターに登録された6次産業化プランナーが農林漁業者の抱える様々な課題を解決するためのアドバイス、新商品の企画・設計や販路拡大、申請書類の作成補助等の支援を行っています。6次産業化プランナーの派遣実績は、令和元(2019)年度は5,787件となりました。また、市町村段階では、地域の実情に応じた取組方針の検討や、商工業者や大学等の地域の多様な主体が連携することで地域ぐるみの6次産業化が推進されています。

事例:担い手育成と遊休農地を活用した業務用野菜の6次産業化(茨城県)

茨城県つくば市
ワールドファームの皆さん

ワールドファームの皆さん

茨城県つくば市(し)に本社を置く、有限会社ワールドファームでは、農産物の国産化と若い担い手を育成する農業と関連産業の地域一体化プロジェクト「アグリビジネスユートピア構想」を掲げ、自社はもとより、全国13か所の地方公共団体と農業参入協定を締結し、遊休農地や耕作放棄地を活用したキャベツ、ほうれんそう等の生産及び業務用一次加工(カット、冷凍)を展開するとともに、地元若手就農者の雇用就農を促進しています。

農業の無駄や非効率を解消し、儲かる農業を実践するために、加工場を建設して6次産業化に取り組み、加工品は、グループ企業を経由して、食品メーカーやコンビニ等に業務用として販売しています。

また、約8年で一人前の担い手を目指す教育プログラムを導入し、若手の育成にも積極的に取り組んでおり、社員80人の平均年齢は30歳となっています。さらに、全国に農場を展開していることを活かし、収穫や定植等で一定期間のみ多くの人手が必要な場合には、他の農場の人材を数十人単位で投入することが可能な「集団農業」の仕組みを構築しています。

今後は、民間企業との連携により、100か所程度の野菜加工施設(カット、冷凍、乾燥等)を整備し、更なる冷凍野菜の国産化を推進する予定です。

(農産物直売所の総販売金額は農協等の規模の大きい事業体が牽引)

地域で生産された農林水産物をその地域内において消費する地産地消(*1)の取組を推進することは、食料自給率(*2)の向上や地域活性化、流通経費の削減等につながります。

農林水産省の基本方針(*3)では、令和2(2020)年度までに年間販売金額が1億円以上の通年営業の農産物直売所の割合を50%以上にするという目標が掲げられています。平成30(2018)年度の年間販売金額1億円以上の農産物直売所の割合は、前年度に比べ3.0ポイント上昇して24.5%となりました。

また、平成30(2018)年度の農産物直売所の総販売金額は、前年度並の1兆789億円となりました(図表1-8-4)。内訳を見ると、運営主体が農協等である農産物直売所の年間販売金額が8,978億円と全体の8割を占めています。そのうち年間販売金額が1億円以上の割合は、前年度に比べ3.4ポイント上昇して26.2%となっており、このことから、農協を始めとする年間販売金額の大きい事業体が農産物直売所の総販売金額を牽引(けんいん)していることがうかがえます。

さらに、学校給食等において地場産物を使用することは、地産地消を推進するに当たって有効な手段となります。このため、「第3次食育推進基本計画」では、学校給食において地場産物を使用する割合を令和2(2020)年度までに30%以上にする目標が掲げられていますが、相次いだ自然災害の影響による国産農産物価格の高騰等により、平成30(2018)年度は前年度と比べ0.4ポイント低下の26.0%となりました。取組の拡大のためには、学校給食と生産現場の双方のニーズや課題を調整してつなぐ地産地消コーディネーターの活動が重要です。農林水産省では、これまで、コーディネーターの育成や派遣、優良事例の普及等の支援を実施してきましたが、今後、これらの取組を更に発展させていくことが求められます。

図表1-8-4 農産物直売所の販売状況

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*1、2 用語の解説3(1)を参照

*3 農林水産省「農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化並びに地域の農林水産物の利用の促進に関する基本方針」

(消費者が最も重視する食の志向は健康志向、簡便化志向も増加傾向)

図表1-8-5 消費者の食の志向(上位3回答)

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公庫が令和2(2020)年3月に公表した調査によると、消費者の食の志向の動向としては、簡便化志向が前年に比べ5.7ポイント増加の36.9%となり、初めて経済性志向を上回りました。簡単に食べられるものを求めるという新たな傾向がうかがえます。一方、健康志向は、前年に比べ5.6ポイント減少の41.0%となりましたが、消費者の食の志向のうちで最も高く、健康を重視する傾向にあることに変わりがないと言えます(*1)(図表1-8-5)。国内の人口減少や高齢化の進行に伴い食料需要が減少する中、このような消費者のニーズを的確に捉え、新たな販路の獲得につなげるためには、農林水産物や食品が有する健康維持・増進機能の科学的根拠による実証が重要です。このため、農研機構を中心とする産学官のチームでは、農林水産物・食品の健康維持・増進機能に関する科学的根拠の獲得と、それらのデータを収載した農林水産物・食品健康情報統合データベースの開発を進めています。これを活用して民間企業がヘルスケアに貢献する高付加価値食品を開発したり、アプリ開発やサービス提供をしたりすることによって国民の健康増進に貢献することが期待されています。

*1 第1章第4節(1)を参照

(機能性表示食品の届出が増加)

機能性表示食品は、安全性と機能性に関する科学的根拠に基づき、食品関連事業者の責任で「おなかの調子を整えます」等の健康の維持・増進に資する、特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、販売前に食品関連事業者により科学的根拠等の情報が消費者庁長官に届け出られた食品です。

令和元(2019)年度では、「加齢により衰えがちな認知機能の一部である、個人が経験した比較的新しい出来事に関する記憶をサポートする機能がある」との報告があるアンセリンやカルノシンを含む鶏肉、「一過性の疲労感を軽減する機能と加齢に伴い低下する認知機能の一部である記憶力(言葉を覚え、思い出す能力)を維持する機能がある」との報告があるイミダゾールペプチドを含む豚肉等が新たに届出されています。



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