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農林水産省

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第6節 再生可能エネルギーの活用


太陽光、水力、バイオマス(*1)、風力等の再生可能エネルギーは、永続的な利用が可能であるとともに、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる温室効果ガス(*2)の排出を削減するという優れた特徴を有し、我が国の農山漁村に豊富に存在しています。地域に新たな収益や雇用をもたらし、農山漁村の活性化につなげるためにも、このような再生可能エネルギーを最大限に活用していくことが必要です。

*1、2 用語の解説3(1)を参照

(再生可能エネルギー発電量の割合は16.9%に上昇)

エネルギー基本計画(*1)を踏まえた長期エネルギー需給見通し(*2)では、総発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を令和12(2030)年度までに22から24%にする目標が示されており、平成30(2018)年度は前年度から0.9ポイント上昇の16.9%となりました(図表3-6-1)。また、その内訳を見ると、水力発電が810億kWh、太陽光発電が627億kWh、バイオマス発電が236億kWh、風力・地熱発電が100億kWhとなっています。

図表3-6-1 再生可能エネルギー発電の発電電力量と総発電電力量に占める割合

データ(エクセル:35KB / CSV:3KB

*1 エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るため、エネルギー政策基本法に基づいて策定された計画

*2 エネルギー基本計画を踏まえた政策の基本的な方向性に基づいて施策を講じたときに実現されるであろう将来のエネルギー需給構造の見通し。平成27(2015)年7月経済産業省策定

(農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画を策定した市町村は61に増加)

再生可能エネルギーの活用に当たっては、農山漁村が持つ食料供給機能や国土保全機能の発揮に支障を来さないよう、農林地等の利用調整を適切に行うとともに、地域の農林漁業の健全な発展につながる取組とすることが必要です。このため、農林水産省では、農山漁村再生可能エネルギー法(*1)に基づき、市町村、発電事業者、農業者等の地域の関係者が主体となって協議会を設立し、地域主導で再生可能エネルギー導入に取り組むことを促進しています。

平成30(2018)年度末時点で、同法に基づく基本計画を作成し、再生可能エネルギーの導入に取り組む市町村は、前年度に比べ14市町村増加の61市町村、発電設備の整備や発電事業を実施している地区は12地区増加の67地区となりました。67地区の内訳を見ると、バイオマス発電を行っている地区が27地区、太陽光発電を行っている地区が24地区、風力発電を行っている地区が15地区となっています。

*1 正式名称は「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」

(農業水利施設を活用した発電により農業者の負担軽減を推進)

農業水利施設(*1)の敷地等を活用した太陽光発電施設、風力発電施設、農業用ダムや水路を活用した小水力発電施設については、農業農村整備事業等により国、地方公共団体、土地改良区が実施主体となって整備を進めています。平成30(2018)年度末時点で、太陽光発電施設は117施設、風力発電施設は4施設、小水力発電施設は135施設が整備されています。これらの発電により得られた電気を自らの農業水利施設で利用することで、施設の稼働に要する電気代が節約でき、農業者の負担軽減につながっています。

*1 用語の解説3(1)を参照

(営農型太陽光発電の導入が進展)

図表3-6-2 営農型太陽光発電の取組面積、設備を設置するための農地転用許可件数(累計)

データ(エクセル:31KB / CSV:2KB

農地に支柱を立て上部空間に太陽光発電施設を設置し、営農を継続しながら発電を行う営農型太陽光発電の取組は年々増加しています。平成30(2018)年5月には促進策(*1)を定め、更なる推進に努めています(図表3-6-2)。

*1 下部農地で担い手が営農する場合や荒廃農地を活用する場合等の一時転用許可期間を、3年以内から10年以内に延長

事例:営農型太陽光発電の取組により電気代を削減(宮城県)

宮城県気仙沼市
電気代の削減が可能な営農型太陽光発電設備

電気代の削減が可能な
営農型太陽光発電設備

宮城県気仙沼市(けせんぬまし)でトマトを栽培している株式会社サンフレッシュ小泉農園(こいずみのうえん)では、ハウス内の暖房のために使用する重油や電気に掛かる経費の高騰が課題となっていたことから、ハウス脇の未利用農地でばれいしょの栽培を行い、その上部に太陽光パネルを設置することで、営農型太陽光発電の取組を始めました。

本取組で得られた電気はハウス内の暖房に利用されており、年間600万円ほどの電気代削減につながっています。

(農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本方針を見直し)

農山漁村再生可能エネルギー法が施行後5年となることから、農林水産省は、同法の附則に基づき、令和元(2019)年7月に「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進による農山漁村の活性化に関する基本的な方針」の見直しを行いました。

新たな方針では、SDGs(*1)やパリ協定といった国際的な状況や、平成30(2018)年に自然災害が多発したことを踏まえ、非常時に備えた農林漁業、食料産業や農山漁村におけるエネルギー源の多層化の手段として、分散型エネルギーシステムの構築が重要としています。また、営農型太陽光発電や木質バイオマス発電とそれに伴って発生する熱の利用等の農山漁村固有の資源を活用した再生可能エネルギーの導入を促進することとしています。さらに、農林水産省を始めとした関係府省は、農山漁村等の地域に合わせたエネルギーマネジメントシステム(VEMS)等、地域経済循環につながる地産地消(*2)モデルの普及を進めることとしています(図表3-6-3)。あわせて、これまでの地区数による目標設定を経済規模による目標設定に改め、再生可能エネルギー発電を利用して地域の農林漁業の発展を図る取組を行う地区の再生可能エネルギー電気・熱に係る収入等の経済規模を令和5(2023)年度において、600億円にすることを目指していくこととしています。

図表3-6-3 農山漁村エネルギーマネジメントシステム(VEMS)のイメージ

*1 用語の解説3(2)を参照

*2 用語の解説3(1)を参照

事例:エネルギーと食料の地産地消による資源循環のまちづくり(福岡県)

福岡県みやま市
みやま市バイオマスセンター「ルフラン」

みやま市バイオマスセンター
「ルフラン」

資料:みやま市

福岡県みやま市(し)では、廃棄物を資源として活用することで、地域でエネルギーを作り出し、地域で消費するという、地産地消型の資源循環のまちづくりを進めています。

平成30(2018)年に稼働を開始した同市のバイオマスセンター「ルフラン」では、家庭や食品工場等から排出された生ごみやし尿、汚泥等をメタン発酵させ、得られた電力や熱を施設内で活用する取組を行っています。また、発酵の際に残る消化液を液肥として地域の水稲、麦、菜種等の栽培に利用し、液肥で育てた農産物を道の駅等で販売することで、資源循環のわができています。さらに、施設の敷地内にある廃校となった小学校を活用し、カフェや食品加工施設、シェアオフィスを運営することで市民の集まる場を提供しています。

これらの取組は地域における先進的な事例として注目を集めており、今後全国に波及していくことが期待されています。

(バイオマス産業都市に7市町村を追加)

地域に存在するバイオマスを活用して、地域が主体となった事業を創出し、農林漁業の振興や地域への利益還元による活性化につなげていくため、関係府省が連携して、地方公共団体等による計画策定や施設整備等の取組を支援しています。

また、関係府省は、経済性が確保された一貫システムの下、地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸に、環境にやさしく災害に強いまち・むらづくりを目指す地域をバイオマス産業都市として選定しています。令和元(2019)年度は7市町村が選定され、バイオマス産業都市は全国で90市町村となりました。

(新たなバイオマス利用技術の開発が期待)

バイオマスを活用するためには、熱、ガス、燃料、化学品等に変換し、利用する技術が必要です。このようなバイオマス利用技術については、平成24(2012)年に関係府省で構成されるバイオマス活用推進会議で決定された「バイオマス利用技術の現状とロードマップについて」の中で、その到達レベルを整理しています。令和元(2019)年5月にはロードマップの見直しが行われ、7件の技術が新たに追加され、31件の技術が更新又は見直しとなりました。本ロードマップに掲載された技術について、産学官における更なる研究の推進、早期の実用化が期待されています。

事例:亜臨界水処理技術を利用し木質バイオマスから飼料を製造(北海道)

北海道北見市
亜臨界水反応装置

亜臨界水反応装置

資料:株式会社エース・クリーン

北海道北見市(きたみし)の株式会社エース・クリーンは、新たなバイオマス利用技術の一つである亜臨界水処理技術を利用し、地域の林業者から有償で仕入れたシラカバ等の残材から、肉用牛向けの粗飼料である木質蒸煮(じょうしゃ)飼料を製造・販売しています。

亜臨界水処理技術とは、高温・高圧に保たれた容器内で撹拌(かくはん)処理することで、有機物を効率的に分解する技術です。一般的に木質バイオマスは、電気や熱を生み出すための燃料として利用されますが、この場合、原料の含水率が歩留まりに大きく影響します。一方で、本技術は、原料の含水率にかかわらず、画一的に処理することが可能であることから、残材のような含水率にばらつきの大きい原料であっても効率的に利用することができます。

今後同社では、本技術を用いて地域に豊富に賦存する未利用資源を有効活用し、食料の供給と林業の活性化、環境保全等、複数の視点から有益なビジネスモデルを確立することを目指しています。

(畜産バイオマスの地産地消を推進)

家畜排せつ物をエネルギー利用する取組は、家畜排せつ物処理の円滑化や高度利用を通じて、酪農・畜産における収益力強化につながることが期待されます。このため、畜産バイオマス地産地消緊急対策事業において、バイオガスプラント導入等の支援により、エネルギーの地産地消の実現や、副産物を肥料等として複合的に利用する新たな経営モデルの確立を推進しています。



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