トピックス3 農林水産物・食品の輸出を促進
農林水産物・食品の輸出について、政府は令和7(2025)年までに2兆円、令和12(2030)年までに5兆円とする目標の達成に向け、更なる輸出拡大に取り組んでいます。
以下では、農林水産物・食品の輸出をめぐる動きや政府一体となった輸入規制の緩和・撤廃に向けた取組等について紹介します。
(農林水産物・食品の輸出額が1兆4,541億円に拡大し、過去最高を更新)
コロナ禍から平時へと移行する中、世界的に人々が外出して飲食する機会が増え、また、円安による海外市場での競争環境の改善が寄与したこと等により、令和5(2023)年の農林水産物・食品の上半期における輸出額は前年に比べ9.6%増加と比較的順調に推移しました。一方、下半期においては、中国等が日本産水産物等の輸入停止等を行ったため、中国等向け輸出が大幅に減少しました。この結果、1年間を通した輸出額としては、前年に比べ2.8%増加し、過去最高の1兆4,541億円となりました(図表 トピ3-1)。
品目別では、真珠や緑茶、牛肉等の増加額が大きくなりました。
国・地域別では、中国向けが最も多く、次いで香港、米国、台湾、韓国の順となっています(図表 トピ3-2)。
(ALPS処理水の海洋放出に伴う水産物の輸入停止等に対応)
東京電力(とうきょうでんりょく)ホールディングス株式会社では、多核種除去設備(ALPS(アルプス)(*1))等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準を確実に下回るまで浄化処理した水(以下「ALPS処理水」という。)を、トリチウムについても1,500Bq/L未満になるまで海水で大幅に希釈した上で、令和5(2023)年8月から海洋への放出を開始しました。
これに伴い、従来の原発事故に伴う輸入規制に加えて、中国、ロシア、香港及びマカオは日本産水産物等の輸入停止を行いました。このため、我が国は、政府一丸となって、国際的な議論の場において、科学的根拠に基づかない規制の即時撤廃に向けた働き掛けを行っています。
中国等が行っている輸入停止により影響を受けている水産物の輸出先の転換に向けた対策として、「水産業を守る」政策パッケージに基づき、独立行政法人日本貿易振興機構(にほんぼうえきしんこうきこう)(以下「JETRO(ジェトロ)」という。)では、海外見本市への出展やバイヤーの招へい等による商談機会の組成、日本食品海外(にほんしょくひんかいがい)プロモーションセンター(以下「JFOODO(ジェイフードー)」という。)では、国際会議等での水産物のプロモーションイベント、海外の飲食・小売店等と連携した水産物フェア等を行っています。
また、中国へ冷凍両貝の形で輸出されたホタテ貝の一部は、中国で剥き身に加工された後に米国向けに輸出されていたことから、農林水産省は、JETRO等と連携しベトナム、メキシコ等で殻剥き加工を行い米国等へ輸出するルートの構築等を進めるなど、輸出先の多角化に取り組んでいます。
*1 Advanced Liquid Processing Systemの略
(コラム)輸出先の多角化に向け、ホタテ加工地の開拓を後押し
ALPS処理水の海洋放出後の中国による日本産水産物に対する輸入停止措置に伴い、輸出が困難となったホタテ等の水産物については、「水産業を守る」政策パッケージに基づき、輸出先の多角化に向けて様々な取組が進められています。特にこれまで主に中国で殻剥き等加工がなされていたホタテ貝については、中国以外の第三国での殻剥き等加工の実施に向けた支援が進められています。
令和6(2024)年1月、JETROはベトナムに初めてホタテ加工施設等の視察・商談ミッション(以下「ミッション」という。)を派遣しました。ミッションには、生産者や加工業者、商社といったホタテの加工地開拓を目指す日本企業12社が参加しました。同国は、新たな加工地として、(1)ASEAN(*)諸国の中でも安価な人件費、(2)エビやカキ等の水産物の加工実績、(3)タイ等に比べて再輸出を前提とした場合の輸入障壁の低さといった特徴があり、我が国の水産事業者の関心が高まっています。

ホタテ加工施設等の
視察・商談ミッション
資料:独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)
ミッションに参加した日本企業は、ホタテ加工地の開拓を検討する上で必要な加工技術の水準や工場の衛生管理状況を直接確認できる機会となり、「新たなホタテの加工地として前向きに検討できる企業と出会うことができ、ほかの参加企業ともコミュニケーションを取れたことは大きな経験になった」、「ベトナムでのホタテ加工に取り組む上で絶好の機会となった」等のコメントが寄せられました。
JETROでは、今後とも安定的に輸出を継続できるサプライチェーンの構築に向け、輸出先を多角化する取組を後押ししていくこととしています。
* 第1章第10節を参照
(令和7(2025)年に2兆円、令和12(2030)年に5兆円の目標達成に向け、輸出拡大を推進)
令和5(2023)年度においても為替相場が円安傾向で推移している中、そのメリットを最大限引き出し、拡大傾向にある国際的な食市場をより一層獲得していくため、農林水産物・食品の輸出拡大を強力に進めていくことが重要です。
農林水産省では、農林水産物・食品の輸出額を令和7(2025)年までに2兆円、令和12(2030)年までに5兆円とする目標の達成に向けて、認定農林水産物・食品輸出促進団体を中核としたオールジャパンでの輸出促進、輸出支援プラットフォームによる海外現地での支援、大ロット輸出に向けたモデル産地の形成、戦略的サプライチェーンの構築、知的財産の保護・活用といった輸出拡大の取組を強力に推進しています。
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