トピックス2 みどりの食料システム戦略の進展と消費者の行動変容
農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立に向けて、令和3(2021)年5月にみどり戦略を策定し、調達から生産、加工・流通、消費に至る食料システムの各段階で環境負荷低減の取組を推進しています。環境と調和のとれた食料システムの確立に向けては、食料システムに関わる全ての事業者及び消費者の理解と行動変容が不可欠です。
以下では、食料システムに関わる事業者、消費者の理解と行動変容を促す施策として、「クロスコンプライアンス」の取組や、環境負荷低減の取組の「見える化」、学生によるみどり戦略に基づいた活動を表彰する「みどり戦略学生チャレンジ」について紹介します。
(農林水産省の全補助事業等において環境負荷低減の「クロスコンプライアンス」を導入)
みどり戦略においては、令和12(2030)年までに施策の支援対象を持続可能な食料・農林水産業を行う者へ集中していくことを目指し、農林水産省の補助事業等について、環境負荷低減メニューの充実と併せて、各事業の実施要件に加え、最低限行うべき環境負荷低減の取組の実践を要件化する「クロスコンプライアンス」の充実を図ることとされました。
農林水産省では、全ての補助事業等において、チェックシート方式により、事業を活用した者が最低限行うべき環境負荷低減の取組を行っているか確認する「クロスコンプライアンス」(愛称「みどりチェック」という。)を導入することとし、令和9(2027)年度からの本格実施を目標に、令和6(2024)年度から試行実施しています(図表 トピ2-1)。

(環境負荷低減の取組の「見える化」を推進)
環境と調和のとれた食料システムを確立するためには、食料システム全体で環境負荷低減を推進するとともに、その取組を可視化して、そのような環境に配慮した農産物を消費者が選択できる環境づくりを通じて、消費につなげていく活動も重要です。

「みえるらべる」と「ChoiSTAR」
農林水産省では、生産者による環境負荷低減の努力を可視化するため、農産物の生産段階における温室効果ガス排出量・吸収量を簡易に算定できる「農産物の温室効果ガス簡易算定シート」を作成しました。また、算定結果に基づき、地域の慣行栽培と比べた温室効果ガスの削減貢献の度合いを星の数で表示する「見える化」の取組を推進しています。算定の対象は米や野菜を始めとする23品目で、畜産物(牛肉、生乳)を対象品目に追加するため、評価手法の検討や算定実証を行っています。また、米については、生物多様性保全の取組についても、その取組数に応じて評価し、温室効果ガス削減への貢献と合わせて表示することが可能です。令和6(2024)年3月に新たなラベルデザインでガイドラインに則った運用を開始し、同年6月にはラベルの愛称を「みえるらべる」に決定しました。また、インバウンドへの対応や輸出展開を見据え、英語版のラベルを作成し、令和7(2025)年3月にラベルの愛称を「ChoiSTAR(チョイスター)」に決定しました。
政府は、環境に配慮した調達も推進しています。令和7(2025)年1月には、グリーン購入法(*1)に基づく、国、独立行政法人及び特殊法人が環境物品等の調達を総合的かつ、計画的に推進するための基本的事項を定めた「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」が閣議決定し、「見える化」された農産物やこれを原材料とする加工品の取扱いが新たに食堂での調達基準に位置付けられました。
(事例)「みえるらべる」を活用した環境負荷低減の取組の可視化が進展(大阪府)
(1)「みえるらべる」の活用による購買行動に訴求した取組を実施

大阪府南部でスーパーマーケットを展開する株式会社サンプラザ(本部:大阪府堺市(さかいし))では、取引先の生産者の環境負荷低減の取組について、「みえるらべる」を活用して、消費者の購買行動に訴求した取組を行っています。
(2)消費者により分かりやすく伝わるための工夫
同社は20年以上にわたって、環境に配慮した農産物を多く取り扱ってきました。小売業として、生産者の努力がより分かりやすく消費者に伝わるように、「みえるらべる」を貼付した野菜、果物の販売や、同ラベルを取得した農産物を原料とする総菜等の販売を行っています。また、「みえるらべる」を活用した情報発信も行っており、無加温栽培や有機肥料の活用等の環境負荷低減の取組を店内のポスター等で宣伝するほか、駅のデジタルサイネージでの広告の展開等に取り組んでいます。
消費者からも好評を得ていることから、「みえるらべる」の表示品目を拡大するなど、環境負荷低減に貢献する取組を今後も展開していくこととしています。

大阪駅のデジタルサイネージでの情報発信
資料:株式会社サンプラザ

「みえるらべる」を表示したみかん
資料:株式会社サンプラザ
このほか、食品産業における加工食品の温室効果ガス排出削減に関する取組が国内消費者の選択につながるよう、令和5(2023)年12月に策定された加工食品共通カーボンフットプリント(CFP(*2))算定ガイド案を用いて、米みそ、小麦粉、清涼飲料水等の計5品目で算定実証を行い、令和7(2025)年3月に加工食品共通CFP算定ガイドを取りまとめました。
*1 正式名称は「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」
*2 Carbon Footprint of Productの略で、製品・サービスのライフサイクルを通じた温室効果ガス排出量のこと
(みどり戦略学生チャレンジにより、若い世代の環境に配慮した取組を推進)
環境と調和のとれた食料システムに対する理解と関心を深めるには、将来を担う若い世代に対する広報活動の充実を図ることも必要です。農林水産省では、令和6(2024)年度から、将来を担う若い世代の環境に配慮した取組を促すため、大学生や高校生等による、みどり戦略に基づいた活動を表彰する「みどり戦略学生チャレンジ(全国版)」を実施しています。第1回大会には、高校の部で221件、大学・専門学校の部で181件の参加登録があり、各部門の最も優れた取組として、高校の部では、宮城県農業(のうぎょう)高等学校、大学・専門学校の部では、独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業(おきなわこうぎょう)高等専門学校が農林水産大臣賞を受賞しました。
農林水産大臣賞(高校の部)
宮城県農業高等学校
取組名:Re:温故知新

農林水産大臣賞(大学・専門学校の部)
独立行政法人国立高等専門学校機構沖縄工業高等専門学校
取組名:データと発酵をフル活用する循環型農業の実践



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