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更新日:2015年6月24日

トランス脂肪酸の摂取と健康への影響

国際機関のトランス脂肪酸に関する評価

食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合 (2003)

2002年に開催された「食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合」の報告書(2003)では、肥満、2型糖尿病、心血管疾患(CVD)、がん、歯科疾患、骨粗しょう症に対する食事及び栄養による影響に関する証拠を検証し、それらの疾患を予防するための勧告を行っています。

その中で、トランス脂肪酸については、飽和脂肪酸(ミリスチン酸及びパルミチン酸)、塩分のとりすぎ、過体重、アルコールのとりすぎとともに、心血管疾患(CVD)、特に冠動脈性心疾患(CHD)のリスクを高める確実な証拠があるとされています。

その具体的な証拠としては、次の事項が記載されています。

また、食品から摂取するトランス脂肪酸のほとんどは硬化油脂由来である。たとえ世界の多くの地域で消費者向けに販売される油脂やスプレッドでトランス脂肪酸の削減が行われても、揚げ物などのファストフードや焼き菓子などがトランス脂肪酸の主要な摂取源であり、それらからの摂取が増加していると報告されています。

同報告書では、トランス脂肪酸が2型糖尿病のリスクを増加させるかどうかについては、可能性はあるが証拠が不十分であるとされています。

 

トランス脂肪酸に関するWHOの最新の科学的知見(2009)

WHOは「食事、運動及び健康に関する世界的な戦略」の実践の一つとして、トランス脂肪酸に関する科学的知見の更新を行いました。この中では、トランス脂肪酸を代替することの実行可能性のほか、疫学的及び実験的な見地からのトランス脂肪酸の健康影響についても検討が行われました。2007年に開催された専門家会合で主要論文について評価が行われ、6つの総説が公表されています。

この中で、トランス脂肪酸による健康影響については、次のように結論しています。

  • 対照試験及び観察研究によって、部分水素添加油由来のトランス脂肪酸の摂取が、複数の心血管系疾患発症リスク因子を強め、虚血性心疾患の発症を増やすことが最近の証拠から示されている。
  • 反すう動物由来のトランス脂肪酸は食品から完全に除くことはできないが、それらの摂取はほとんどの集団において少なく、これまで通常の摂取量において虚血性心疾患リスクとの関連を支持する決定的な証拠はない。
  • 部分水素添加油脂に由来するトランス脂肪酸は、健康への便益が無いことが立証され、明確な健康リスクのある、工業的な食品添加物と見なすべきである。
  • 外食事業者や食品製造事業者は、食品製造において工業由来のトランス脂肪酸の使用を避けるべきであり、政府はトランス脂肪酸の代替油脂の支援に踏み出すべきである。
  • 対照試験及び観察研究では、特に、例えばインスリン抵抗性が既にある、内臓脂肪症又は運動不足などの危険因子を抱える個人において、トランス脂肪酸がインスリン抵抗性を悪化させる可能性が示唆されている。

 

人間栄養における脂肪及び脂肪酸に関するFAO/WHO合同専門家会合 (2010)

2008年に開催された「人間栄養における脂肪及び脂肪酸に関するFAO/WHO合同専門家会合」の暫定報告書(2010)では、「トランス脂肪酸に関するWHOの最新の科学的知見」に基づいて、水素添加油脂由来のC18:1(炭素数が18で炭素-炭素二重結合が一つ)のトランス脂肪酸について、「虚血性心疾患(CHD)の危険因子や虚血性心疾患の発症を増やす、これまで考えられていたよりも確実な証拠がある」、「メタボリックシンドローム関連因子及び糖尿病のリスクに加えて、致死性CHDや心臓性突然死のリスクを増やす、ほぼ確実な証拠がある」として、トランス脂肪酸の摂取量を反すう動物由来のものと工業由来のものを合わせて総エネルギー摂取量の1%未満とする目標値を設定しました。

 

日本におけるトランス脂肪酸に関する評価

  食品に含まれるトランス脂肪酸に係る食品健康影響評価 (2012)

国内外におけるトランス脂肪酸に関する調査や規制等の状況を踏まえ、我が国においても、食生活の変化により若年層のトランス脂肪酸の摂取が増えていると考えられることから、食品安全委員会は2010年3月にトランス脂肪酸に関し自ら食品健康影響評価を行うことを決定し、2012年3月に評価書を公表しました。評価結果の概要は以下の通りです。また、評価結果の詳細については、食品安全委員会のページをご覧ください。

 

日本人の食事摂取基準(2015年版)

日本人の食事摂取基準(2015年版)(2014年3月、厚生労働省)では、脂質に関しては、総脂質と飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸について目標量(※1)や目安量(※2)の基準を定めています。トランス脂肪酸について、目標量の基準は定められていません。

※1  一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量。
※2  生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。

 

諸外国のトランス脂肪酸に関する評価

近年、食品中のトランス脂肪酸について何らかのリスク管理措置が必要かどうかを検討するために、いくつかの国や地域でリスク評価が行われ、トランス脂肪酸の健康影響について次のように評価されています。

米国 (2002)

米国食品医薬品庁(FDA)の要請を受けて、全米科学アカデミー医学研究所(IOM)は、トランス脂肪酸の摂取量の上限値を検討するために、トランス脂肪酸の健康への悪影響を検証した報告書を公表しています。

その中で、トランス脂肪酸の摂取と総コレステロール及びLDLコレステロール濃度には直線的な正の相関があり、それゆえ冠動脈性心疾患のリスクを増加させるとしています。

HDLコレステロール濃度に及ぼす影響については、すべての調査研究報告で一貫した結果とはなっていないが、大半は飽和脂肪酸と比較してトランス脂肪酸の摂取がHDLコレステロール濃度を低下させるとしています。

トランス脂肪酸の摂取は、リポタンパク(a)濃度、止血因子、LDL酸化感受性及び血圧に対して、現時点で得られているデータに基づけば、ほとんど影響しないとされています

 

EU (2004、2010)

欧州食品安全機関(EFSA)の栄養製品・栄養・アレルギーに関する科学パネルは、2004年7月に「食品中のトランス脂肪酸のヒトへの健康影響に関する意見書」をまとめました。この意見書では、トランス脂肪酸による健康への影響を、心血管疾患、糖尿病、がん、初期成長・発達、ぜんそく・アレルギーの5つ観点から考察し、次のように結論づけています。

さらに、同科学パネルは、2010年3月に「飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、コレステロールを含む脂質における食事摂取参照値に関する科学的意見書」をまとめました。 本意見書では、トランス脂肪酸を含む各脂質について、生成機構、摂取量、身体への影響等に関するデータをもとに、DRVs(Dietary Reference Value、健康な人々の栄養摂取に関する定量的な参照値)の策定について検討され、トランス脂肪酸については以下の通り結論付けられました。

 

オーストラリア・ニュージーランド (2007、2009)

オーストラリア・ニュージーランド食品安全庁は、新たなトランス脂肪酸に関する知見を踏まえて、2007年にトランス脂肪酸のレビューを実施し、報告書を発表しました。その中で、トランス脂肪酸による健康影響については、要約すると次のように報告しています。

このレビューの後、オーストラリア及びニュージーランドでは、規制によらず自主的な取組を進めることにより、トランス脂肪酸の低減を進めています。2009年には、改めてオーストラリア及びニュージーランドでのトランス脂肪酸の摂取量推定及びリスク評価を行うため、また、これまで進めてきた自主的な取組の効果を確認するため、再度レビューが行われました。報告書では、以下のことから、これまでの取組を継続していくと結論づけられています。

 

このほか、英国、フランス、カナダなどもトランス脂肪酸のリスク評価を実施しています。

 

参考リンク


 

 冠動脈性心疾患

心臓の筋肉へ血液を供給する動脈(冠動脈)が狭くなったりふさがったりすることにより、心臓への血液供給が減少または完全に遮断される病気の総称です。代表的な病気には狭心症と心筋梗塞があります。虚血性心疾患や冠動脈疾患と呼ばれる場合もあります。

 2型糖尿病

(出典:厚生労働省 生活習慣病を知るためのホームページ[外部リンク]より)
血糖値を下げる作用を持つホルモンであるインスリンの出る量が少なくなって起こるものと、肝臓や筋肉などの細胞がインスリン作用をあまり感じなくなる(インスリンの働きが悪い)ために、ブドウ糖がうまく取り入れられなくなって起こるものがあります。食事や運動などの生活習慣が関係している場合が多く、日本の糖尿病の95%以上はこのタイプです。

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