先端技術の現場への
導入に向けた取り組み
行政関係機関の立場で開発に携わる農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)の長﨑裕司さんに、これまでの研究の成果や今後期待される技術について伺いました。

2019年5月に開催されたG20新潟農業大臣会合における自動運転田植機の実演。誰でもベテラン同様の田植えの作業ができる。無人でも操作可能。
農研機構は、ロボット技術、ICTなどを活用した革新的な生産技術の研究に力を入れてきました。その成果の1つが、人工衛星で位置情報を把握して、農作業を無人で行える自動走行車両です。
官民で開発に取り組む農業用ロボットの進歩には目覚ましいものがあります。上記のような車両型の他、重い収穫物を持ち上げるなどの作業の負担を軽減する人体装着型の農作業アシストスーツ、トマトやいちごなどの収穫を行うロボットなどさまざま。さらにハウス栽培や酪農の搾乳などの工程を担う施設型ロボットも登場しています。


G20新潟農業大臣会合で展示された各種トラクターとアシストスーツ。
「今後の発展が期待される技術にドローンがあります。空撮画像を農作物の生育情報の取得や診断に使う他、防除、農場の遠隔監視、害鳥獣への威嚇など幅広い用途があります。私たちとしてはドローンの可能性を今後さらに追求していきたいと考えています」

実演会ではドローンも披露された。
農研機構は「スマート農業実証プロジェクト」でも事務局を務めています。「実際に作業ができるか、営農の現場でどのような課題があるか、こうしたことを検証し、課題への対応を進めています」と長﨑さん。
プロジェクトでは、69の拠点ごとに作業や経営の詳細なデータを取り、これを農研機構が収集、整理。「将来的にはこれらを『農業データ連携基盤(WAGRI)』というデータ連携プラットフォームに収め、生産者がアプリケーションを用いて必要な情報を容易に得られるようにすることを考えています」
また、日本が目指すべき未来社会の姿として政府が提唱し、農研機構も組織目標のベースとしているSociety5.0でも『データ駆動型の農業』へのシフトが謳われています。長﨑さんは「あわせてベテラン農業者の貴重な経験や知識を次世代に引き継ぐことも、スマート農業に期待される役割ととらえています」と言います。

長﨑裕司さん
企画戦略本部研究推進部研究推進総括課セグメント第1チーム長。1988年に農林水産省に入省後、農研機構、農林水産技術会議事務局で中山間農業に係る農業機械・農作業システム・施設園芸に関する研究開発の他、産学官連携活動に従事。2019年4月から現職。
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