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aff 2023 JUNUARY 1月号
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冬もおいしい葉物野菜 葉物野菜を上手に育てるヒケツ

冬もおいしい葉物野菜 葉物野菜を上手に育てるヒケツ

家庭菜園などで葉物で葉物野菜を育てるコツについて、“野菜づくりの伝道師”としてテレビやラジオでもおなじみの恵泉女学園大学人間社会学部の藤田 智教授に教えていただきました。

藤田 智教授(後列左から1番目)と恵泉女学園大学家庭菜園教室のみなさん

監 修 | 藤田 智教授

ふじた・さとし。1959年、秋田県生まれ。岩手大学農学部、同大学院修了。恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科の教授として教鞭をとる傍ら、各地の市民農園講座などで野菜づくりの指導、普及活動にも積極的に取り組む。また「趣味の園芸・やさいの時間」(Eテレ)ほかメディアにも多数出演し、わかりやすく、親しみやすい指導が人気を集めている。近著に『藤田智の 新・野菜づくり大全』(NHK出版)。

結球タイプの野菜は苗からがおすすめ 結球タイプの野菜は苗からがおすすめ

今回栽培法を紹介する6品目の葉物野菜のうち、こまつなやほうれんそう、しゅんぎくは種まきから始めても1カ月程度で収穫できますが、キャベツ、はくさい、玉レタスなど、結球するタイプの葉物野菜は、最低でも2カ月はかかります。
苗作りの楽しさやメリットもありますが、その分栽培期間が長くなるので管理が難しくなります。初心者は育苗の作業を省くためにポット苗を購入し、植え付けの段階から始めましょう。

キャベツ(手前)とはくさいの苗。植え付け作業から始められるので便利です。

野菜がよく育つ土作り 野菜がよく育つ土作り

団粒構造のフカフカ土を作ろう

野菜にとって理想的な土は、水持ちのよさと水はけのよさという、一見矛盾した2つの要素を兼ね備えている土。それを可能にするのが「団粒(だんりゅう)構造」です。団粒とは、粘土や砂などの土壌粒子がくっついて団子状になったもの。土がこの団粒で構成されていると、団粒部分で保水しつつ、余分な水は団粒と団粒のすきまを通して排水することができます。これに対して団粒がない単粒構造の土は、適度なすきまがないので水や空気の透過性が悪く、根が伸びにくくなります。団粒構造の土は、フカフカしているのが特徴です。

土の粒子の比較

土壌粒子をくっつけているのは、土中の微生物が有機物を分解する際に生じる糊状の物質。そこで土の団粒化を促すために欠かせないのが、微生物の食べ物となる堆肥(写真)や腐葉土です。程よく投入することで、微生物の働きを活発にしてくれます。

土を耕し、畝を立てる時は、目印となるひもを張ると便利。今回紹介している葉物野菜は、いずれも幅60センチメートル、高さ10センチメートル程度の平畝で栽培できます。

土壌酸度を適切な
pHに調整しよう

日本は雨が多いため、土中のミネラル分が流されて土が酸性に傾きがち。土壌酸度によって土に溶け出す栄養素が変わり、酸性に傾くとカルシウム、マグネシウム、リンなどの欠乏が起こりやすくなります。そこでアルカリ分の多い石灰をまき、適正な土壌酸度になるように調整します。栽培する野菜によって適正なpHは異なるので注意しましょう。

土壌酸度計。土に直接さすだけで土壌酸度が計測できます。土が乾いている場合は水をまいて湿らせてから測ります。

石灰には粒タイプと粉タイプがありますが、写真の粒タイプのほうが風に舞いにくいので使いやすいです。

病害虫対策も忘れずに 病害虫対策も忘れずに

ローテーションで
連作障害を避ける

同じ科の野菜を同じ場所で繰り返し栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなります。この「連作障害」を防ぐには、次作以降は異なる科の野菜を栽培する「輪作」が基本。たとえば図のように畑を野菜の科ごとに4つの区画に分け、ローテーションすることで連作を避けられます。プランターなどで栽培する場合も同様に、複数のプランターでローテーションを。同じプランターで栽培する場合は土を入れ替えましょう。

害虫対策に有効なトンネル栽培

野菜栽培においては害虫の被害も困りごとの一つです。特にキャベツを始めとするアブラナ科の野菜はアブラムシ、アオムシ、ヨトウムシ、コナガなどがつきやすいので要注意です。害虫対策には、野菜と虫を物理的に遮断する防虫ネットが効果的。専用の支柱を用いて畝をトンネル状に覆うことで被害を抑えることができます。

1

畝をまたぐようにトンネル用支柱を50センチメートルから60センチメートル間隔でしっかりさす。

2

支柱の上から防虫ネットを被せ、たるみのないように張る。

3

両端をまとめて結び、結び目の上からUピンをさして固定する。

4

ネットのすそを土で埋めたら、ネットが風に飛ばされないようにトンネル用支柱で押さえて完成。

野菜作り上達の3ヵ条

毎日畑のようすを
見よう

病害虫や生育不良は、初期段階で気づいて対処すれば大きな被害を避けられます。早期発見のためには、毎日野菜の育ち具合を観察することが大事です。畑が自宅から遠い場所にある場合でも、できれば2、3日に一度は畑のようすを見に行くようにしましょう。

不作の際は、
まず原因を考えよう

何にでも失敗はつきもの。一度不作に終わったからといって気落ちすることはありません。ただし原因は何だったのか考えることは大事です。土作りから種まき、植え付け、栽培管理までの過程をよく振り返り、失敗から学んで次に活かしましょう。苦労した分、成功した時の喜びは格別です。

野菜作り上達の3ヵ条

肥料などの量は
きちんと守ろう

石灰や堆肥、肥料はたくさんあげればあげるほどよいというものではありません。本やネットの野菜の栽培法に書かれている肥料の量は目安なので、多少の増減は構いませんが、多すぎ、少なすぎはいけません。自己判断に頼らず、書かれている量を守るようにしましょう。

化成肥料。「N-P-K=8-8-8」などと表示がある場合、チッ素、リン酸、カリの3要素が、その肥料の重量に対してそれぞれ8パーセントずつ含まれていることを意味します。

品目別 栽培のポイント 品目別 栽培のポイント

キャベツ │ アブラナ科 キャベツ │ アブラナ科

土作り

植えつけの2週間前に、土壌酸度の調整とマグネシウム補給のために1平方メートル当たり100グラムから150グラムの苦土石灰を散布し、よく耕します。1週間前に1平方メートル当たり堆肥を3リットル、化成肥料を100グラム散布し、土に混ぜ込みます。

植え付け

本葉4枚から5枚の苗を40センチメートルから45センチメートル間隔で植え、防虫ネットをトンネルがけします。

栽培管理

植え付けの2週間後から、2週間に1回のペースで化成肥料を1平方メートル当たり30グラム追肥し、土寄せします。

収穫

球の上部を手で押さえてみて堅く締まっていたら収穫時期。外葉を数枚つけたまま、株元を切って収穫します。収穫が遅れると割れてしまうので要注意。

肥料は筋状に与えよう

キャベツ、はくさい、玉レタスなど結球タイプの野菜は栽培期間が長いので、土作りの際には肥料の効果が続きやすい「溝施肥(みぞせひ)」を行います。

栽培スペースの中心に縦横が20センチメートル程度の溝を掘ったら、そこに元肥となる堆肥と肥料をまき、軽く土と混ぜてから埋め戻します。

追肥も筋状に行います。片側一列に化成肥料をまいて土寄せしたら(ア)、次回は反対側の一列(イ)に追肥します。

はくさい │ アブラナ科 はくさい │ アブラナ科

土作り

植えつけの2週間前に、1平方メートル当たり100グラムから150グラムの苦土石灰を散布し、よく耕します。1週間前に1平方メートル当たり堆肥を3リットル、化成肥料を100グラム散布し、土に混ぜ込みます。

植え付け

黒マルチを張った畝に本葉4枚から5枚の苗を40センチメートルから45センチメートル間隔で植え、たっぷりと水を与えます。その後防虫ネットをトンネルがけします。

栽培管理

植え付けの2週間後から、2週間に1回のペースで黒マルチの各穴に化成肥料を3グラムから5グラムずつまきます。株の直径が40センチメートルほどになったら、いったんマルチをまくり、畝の肩に化成肥料を1平方メートル当たり30グラム追肥し、土寄せします。

収穫

球の上部を手で押さえてみて堅く締まっていたら収穫時期。外葉を押し広げ、株元を切って収穫します。

マルチングで病気を予防

葉が土に触れたり、雨による泥はねで汚れると、病気の原因になります。土の表面をポリエチレンフィルム(ポリマルチ)やワラで覆うマルチングを行いましょう。

マルチングにはポリマルチが手軽で便利。黒マルチに透明マルチ、穴あきタイプなどさまざまな種類があります。たるみなくピンと張るようにしましょう。

根こぶ病に強いCR品種

糸状菌(カビ)の一種である根こぶ病原菌が引き起こす土壤伝染性の病害、根こぶ病。アブラナ科の野菜、特にはくさいやかぶで近年被害が増えていますが、根こぶ病に抵抗性のあるCR(Clubroot Resistance)品種も開発されています。

すぐ収穫しない場合は
ひもで縛る

霜が降りるようになると、寒さではくさいが傷みやすくなります。そこで外葉ごとひもで縛っておくと、外葉が枯れるだけで中の球は守られるので、長く畑に置くことができます。

結球部分を外葉で包み込むようにして、上部を紐で縛ります。これを「鉢巻き」とも呼びます。

こまつな │ アブラナ科 こまつな │ アブラナ科

土作り

植えつけの2週間前に、1平方メートル当たり100グラムから150グラムの苦土石灰を散布し、よく耕します。1週間前に1平方メートル当たり堆肥を3リットル、化成肥料を100グラム散布し、土に混ぜ込みます。

種まき

畝にトンネルの支柱などを使って深さ約1センチメートルのまき溝を作り、1センチメートル間隔でタネをまきます。土を被せ、たっぷり水やりをします。

栽培管理

本葉が1枚から2枚のころに、3センチメートル間隔になるように間引きを行い、株元に土寄せします。本葉が4枚ぐらいになったら株元に化成肥料を1平方メートル当たり30グラム追肥し、土寄せします。

収穫

草丈が25センチメートルぐらいになったら収穫時期。ハサミで根元を切るか、根ごと抜き取ります。育ちすぎると固くなってしまいます。若い分には問題なく食べられるので、早めに収穫しましょう。

長期間収穫を
楽しめるずらしまき

生育期間が短いこまつなは、収穫せずに長く畑に置いておくと品質が落ちてしまいます。一度にたくさん作らず、7日から10日おきに少しずつ種まきする「ずらしまき」をすれば、長期間楽しむことができます。

レタス(リーフレタス) │ キク科 レタス(リーフレタス) │ キク科

土作り

植えつけの2週間前に、1平方メートル当たり100グラムから150グラムの苦土石灰を散布し、よく耕します。1週間前に1平方メートル当たり堆肥を3リットル、化成肥料を100グラム散布し、土に混ぜ込みます。

植え付け

黒マルチを張った畝に本葉4枚から5枚の苗を30センチメートル間隔で植え、たっぷりと水を与えます。その後防虫ネットをトンネルがけします。

栽培管理

植え付けの2週間後から、2週間に1回のペースで黒マルチの各穴に化成肥料を約3グラムずつまきます。

収穫

葉の長さが20センチメートルから25センチメートル、株の直径が30センチメートルくらいになったら収穫時期。株元を切り取って収穫します。切り口から出る白い液が葉につくと茶色に変色して傷みやすくなるので布などで拭き取っておきましょう。

マルチングをしっかり行おう

特にリーフレタスは葉と葉の間に泥が入り込みやすいので、はくさいと同様に、黒マルチによるマルチングを行いましょう。

長く楽しめる
かき取り収穫

リーフレタスは、株ごと切り取るのではなく、葉を1枚ずつかき取って収穫してもOK。しばらくするとまた新しい葉が育つので、長く楽しむことができます。

かき取り収穫の際は、外側の葉から1枚ずつハサミで切り取るか、手で摘み取っていきます。

しゅんぎく │ キク科 しゅんぎく │ キク科

土作り

植えつけの2週間前に、1平方メートル当たり100グラムから150グラムの苦土石灰を散布し、よく耕します。1週間前に1平方メートル当たり堆肥を3リットル、化成肥料を100グラム散布し、土に混ぜ込みます。

種まき

畝にトンネルの支柱などを使って深さ約1センチメートルのまき溝を作り、5ミリメートル間隔で種をまきます。「好光性種子」といって十分に光を当てたほうが発芽がよくなるので、土は薄く被せます。

栽培管理

間引きは3回。まず本葉1枚から2枚の時に株間3センチメートルに間引きます。2回目は本葉3枚から4枚の時に株間6センチメートルに。3回目は本葉5枚から6枚の時、株間15センチメートルから20センチメートルに間引きます。また種まきの3週間後から、2週間に1回のペースで化成肥料を1平方メートル当たり30グラム追肥し、土寄せします。

収穫

春は抜き取り収穫、秋は品種によって摘み取り収穫するものと抜き取り収穫するものがあり、収穫時期も異なります。

2種類ある
しゅんぎくの収穫法

摘み取り種の場合は、草丈30センチメートルほどになったら、下の葉を2枚から3枚残して主枝の先を摘み取ります。以後、わき芽が伸びてくるので、順次収穫できます。抜き取り種の場合は、地際から側枝が次々と伸びるので、草丈20センチメートル程度になったら、株ごと引き抜いて収穫します。

ほうれんそう │ ヒユ科 ほうれんそう │ ヒユ科

土作り

植えつけの2週間前に、1平方メートル当たり150グラムから200グラムの苦土石灰を散布し、よく耕します。1週間前に1平方メートル当たり堆肥を3リットル、化成肥料を100グラム散布し、土に混ぜ込みます。

種まき

畝にトンネルの支柱などを使って深さ約1センチメートルのまき溝を作り、1センチメートル間隔で種をまきます。土を被せ、たっぷり水やりをします。

栽培管理

本葉が1枚から2枚のころに、3センチメートルから4センチメートル間隔になるように間引きを行います。草丈が7センチメートルから8センチメートルぐらいになったら株元に化成肥料を1平方メートル当たり30グラム追肥し、土寄せします。

収穫

草丈が25センチメートルから30センチメートルになったら収穫時期。根ごと抜き取ってからはさみで根元を切り落とす「抜き取り収穫」と、根を残して根元を切る「切り取り収穫」の2つの方法があります。切り取り収穫は慣れていないと根を切らずに葉を切ってしまうことがあるので、抜き取り収穫のほうがおすすめです。

酸性土壌嫌いな
ほうれんそうは石灰を多めに

ほうれんそうは酸性土壌を嫌い、酸度がpH5.5以下の土壌では生育不良になりがちです。種まき前に苦土石灰を散布して、適正pHに調整しておくことが重要です。

高温期は
芽出しまきをしよう。

ほうれんそうは、高温になると発芽しにくくなります。そこで暑い時期は、あらかじめ芽を出しておくと安心。種を水にひと晩浸した後、湿らせた紙や布に包んで冷蔵庫に1日から2日置くと芽が出てきます。

左は東洋種、右は東洋種と西洋種をかけあわせた一代雑種の果実。種はこの果実の固い皮の中にあります。

今週のまとめ

収穫したての旬の野菜には、
格別なおいしさがあります。
それが自分が愛情込めて育てた
野菜なら、なおさらです。
この機会に、野菜作りを
楽しんでみてはいかがでしょう。

(PDF:3,363KB)
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