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aff 2023 APRIL 4月号
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農業を始めたい!地域ぐるみで新規就農をサポート

農業を始めたい!地域ぐるみで新規就農をサポート

農業大学校などの教育機関だけでなく、新規就農のための研修事業を実施している自治体は少なくありません。自治体や地域の農業公社、JAなどが連携して就農希望者の実地研修を支え、地域での高い営農率を実現している鹿児島県志布志(しぶし)市の事例を紹介します。

新規就農をかなえる研修制度 新規就農をかなえる研修制度

研修事業を始めた理由

志布志市は鹿児島県の東部に位置し、国際的な物流拠点・志布志港を擁しています。同市の農業研修事業を実施しているのが(公財)志布志市農業公社です。同公社事務局の猜野宏樹(あべの・ひろき)さんから、ここで行われている研修事業についてお話を伺いました。
同市では広大な農地に大規模畑地かんがい施設を整備して、野菜や茶などを安定的に生産してきました。また、温暖な気候を好むピーマンの栽培も盛んであったことから、1968年に冬春ピーマンの指定産地となり、全国でもトップクラスの生産量を誇る時期もありました。
ところが、同市でも高齢化などの影響を受けて、基幹産業である農業の担い手不足が進行。それに歯止めをかけるため1996年、志布志町(当時)に担い手の確保や研修事業などの実践を目的とする農業公社が設立されました。そして、ピーマン栽培を柱とした研修事業を開始したのです。

*畑地かんがい=畑などにおいて栽培される畑作物の育成環境の保持・改善等のために必要な用水を畑地に供給すること。

お話を伺った志布志市農業公社の事務局長・猜野さん。

実際の研修はどんなもの? 実際の研修はどんなもの?

志布志市農業公社の松山黒石農場。

写真提供:(公財)志布志市農業公社

研修に参加するには?

志布志農業公社での研修は冬春ピーマンの実地栽培です。
研修場所は、国の農山漁村振興交付金事業を活用して旧松山町地区に建設、整備した「松山黒石農場」。2018年に完成したこの農場には、栽培用圃場が120アール、育苗ハウスが70アールほどあり、研修生はすべてここで作業を学びます。
研修期間は2年間。研修条件が「農業に対する固い意志と意欲のある農業後継者や新規就農希望者」であることは当然ですが、重要な点は「研修終了後も志布志市内に居住して営農を継続できる人」ということ。募集人員は3組6名で、年齢はおおむね45歳未満。「単身での受け入れもしているが原則夫婦が望ましい」という猜野さんはその理由を「農作業には人手が必要なものもかなりあり、2人で作業ができるというのは有利ですし、遠慮なく言い合える夫婦だと、やりやすいということもあるのではないかと思います」と話します。

室温が調節された暖かい松山黒石農場のハウス内には、ピーマンの株がひしめくように並んでいます。

研修時、栽培を任される面積は夫婦2人で研修に参加する場合は20アール、夫婦どちらか1人の場合や単身者は10アールです。1年目は国からの給付金(要申請)と農業公社からの研修手当で、夫婦2人だと月額25万円、夫婦のうち1人や単身者の場合は15万円が支給されます(ファームサラリー方式)。
2年目は研修手当は支給されませんが、収穫物を自分のものとして出荷します(独立経営方式)。多く収穫できれば1年目の研修手当をはるかに超える収入を得られる可能性があります。かつては2年目も研修手当を支給していましたが、独立経営を経験して営農収益を上げる実感を得ることは、気持ちのうえでも就農後の生活に影響するため、2年目は独立経営方式を採用することにしたそうです。
その他、ファームサラリー方式の1年目のみ、軽トラックを購入した場合に燃料代を毎月5,000円支給したり、家賃も1万円を超える場合は1万円を限度として家賃補助するなど、生活に対するサポートもしています。
なお、研修はピーマンの苗が出来上がる6月で終わりますが、その後収穫して実際の収益が発生するのは11月になります。6月から11月までは無収入になるので、その間の生活費として、ある程度の自己資金は必要です。

地域におけるバックアップ体制

実技も座学も連携指導

実技研修は志布志市農業公社の職員が行いますが、学科研修は県やJAが担当します。
たとえば県では、1年目に土壌や肥料の基礎や農業機械の安全使用などについての講義を、2年目には簿記研修を実施、経営に必要な複式簿記の基礎を習得します。JAでは栽培に関わる全般的な管理に関する指導や、播種・定植、農薬・肥料に関する指導など実践的な知識を身につけられるよう、細かくフォローします。さらに管内の先進農家で行う現地研修では、先輩からさまざまなアドバイスが受けられます。
また、同公社が実施している研修事業の特徴として、農地の斡旋も行っていることがあげられます。個人で農業を始めようという時、農地の確保が困難だからです。
「私たちも研修生の農地を確保するために奔走しています。農地を確保できれば、志布志市内の圃場は用排水路などがきちんと整備されているので、営農にはそれが強みとなります」(猜野さん)

年間スケジュール

収益を上げて地域で生きる

研修後は同公社に代わって、行政やJAがバックアップしてくれます。研修修了生の定着率は高く、この地に就農する人が増えました。
新規就農者を定着させるには、まずはきちんと収益を上げ、確実に生計がたてられること、つまり儲かる農業であることが必須だと猜野さんはいいます。ある人は「自然豊かな場所に一戸建てを建てたい」と思い夫婦で研修を受けて栽培に励み、就農5年目にその夢をかなえました。また、家族との時間や趣味に時間を費やすことを大切にしながら営農することを望む人も多いそうですが、志布志市でのピーマン栽培は2か月間の夏休みが確保できるため、そこにも魅力を感じている人が多いといいます。そのためピーマン部会員には、ほかの職業から転身した地元出身者が多く、また研修修了生の二世も少なくないそうです。
「望む暮らしの形は人それぞれですが、それを実現できる職業のひとつとして、農業をとらえる人も多くなってきたのでは」という猜野さんの言葉が印象に残りました。

これまでに受け入れた研修生の定着状況

ただいま、研修中です!古森健次さん・佳奈さん夫妻 ただいま、研修中です!古森健次さん・佳奈さん夫妻

松山黒石農場で作業中の古森健次さん(44歳)。妻の佳奈さんと夫婦で研修に参加、現在2年目です。古森さん夫婦は、小学生の2人の息子さんと茨城県から移住してきました。志布志市農業公社の研修事業については、農業情報提供イベント「新・農業人フェア」で知ったそうです。取材時は、1棟に1,000本の株が植えられているハウス内で収穫の真っ最中でした。ここでは、年間で13トンから14トンの収穫が見込めるそうです。すでにこの研修所近くの農地を借り、研修修了後の準備をしています。

TIPS! 新・農業人フェア開催!!

2023年1月14 日(土曜日)、東京都千代田区の東京国際フォーラムで「新・農業人フェア EXPO」が開催されました。同フェアは、農業に興味のある人やこれから就農しようという人などが、農業に関するさまざまな情報を得られる国内最大級の就農イベントです。当日の出展ブース数は182団体(うちオンライン8団体)。来場者数は昨年度同時期の2倍の約1,000名となり、多くの方に来場いただきました。2023年度も東京、大阪で複数回の開催を予定しています。

column 農業を始めたい人に役立つ
情報を集めた
ポータルサイト
「農業をはじめる.JP」

職業として農業に興味を持っている人、これから農業を始めたいという人におすすめなのが、全国新規就農相談センターが運営する就農情報ポータルサイト「農業をはじめる.JP」です。就農に向けて具体的なアクションを起こすために必要な情報が満載です。

公式サイトはこちら
外部リンク

今週のまとめ

技術や農地の取得など、
就農希望者が抱える不安を解決するまで支え
就農をサポートする、
地域ぐるみの取り組みがあります。
安心して農業を続けられるのは、
就農後も切れ目ない
サポート体制が続くからです。

(PDF:2,158KB)
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