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aff 2023 APRIL 4月号
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農業を始めたい!農業法人への就職と大きな夢

農業を始めたい!農業法人への就職と大きな夢

新規就農する場合、個人で起業する、親の農業を継ぐといったケースの他、農業法人に就職し従業員として給料をもらうというスタイルもあります。今回は、熊本県にある農業法人の雇用現場における働き方改革の取り組みや就職した若手農業者の声を紹介します。

働いている人が誇りを持てる職業に 働いている人が誇りを持てる職業に

ワークライフバランスの
取り組みを推進

熊本県阿蘇の外輪山の麓に立地するセブンフーズ(株)。この農業法人の主な事業は養豚で、資源循環型農業により野菜、飼料作物の生産も行っています。県内にある5か所の養豚場で、常に2万5,000頭を飼育し、年間5万頭を出荷しています。ここで生産される豚肉は「肥後あそび豚」「未来村とん」のブランド名で店頭に並びます。
現在、社員数80人、平均年齢は33歳、正社員が約9割を占めます。養豚の場合、肥育に関する知識やスキルが必要で、社員の育成に時間がかかるため、正社員雇用が理想だといいます。そのため、国内や海外の進んだ農業を現地で学ぶ研修や、社員のスキルアップを目的とした各種研修制度、資格を取得するための受講料の会社負担などの支援を積極的に行なっています。また、社員が作業フローを確認し合いながら確実に週に2日間休みを取り、最大9日間連続して取得できる長期休暇制度も取り入れています。
育児や介護の支援制度の理解を深めるために社員同士の交流会を開催するなど、社員の幸せとは何かを全員で考え、働きやすい環境や設備などの改善に社員自らが取り組むように促しているという同社。理想とする、環境に負荷をかけない資源循環型農業の確立には、末永く就業してもらえる人材の育成が最も大切だと考えているのです。

セブンフーズが実践している資源循環型農業
セブンフーズが実践している資源循環型農業

豚の排泄物を発酵床で分解する独自の技術を開発。同社が理想とする持続可能な資源循環型の農業、食品リサイクルループを実現した。

  • 使用済みの発酵床を熟成させて良質な完熟堆肥に
  • この堆肥を、飼料用米、子実とうもろこし、野菜の生産に利用
  • 飼料用米と子実とうもろこしは、自家配合飼料として利用
  • 野菜は、食品工場へ原料として納品
  • 食品工場からの未利用資源も自家配合飼料として利用
  • 自家配合飼料で豚を肥育

*子実(しじつ)とうもろこし:完熟させたとうもろこしの子実(粒)だけを収穫した飼料用とうもろこし。

今年収穫した子実とうもろこし。飼料用米の生産と合わせ、飼料の自給化を目指してこれから最も力を注ぎたい分野だ。

就農ストーリー「会社の理想が、僕の目標と一致しました」 就農ストーリー「会社の理想が、僕の目標と一致しました」

藤澤秀斗 さん
(20歳)

熊本県立熊本農業高等学校畜産科卒、入社2年目。実家は非農家で、高校に入学した当初は獣医師になるため大学進学を考えていたが、実習を経験するうちに農業の面白さを実感し、セブンフーズ(株)への就職を決意。

動物が好きで農業高校に進学

こどもの頃から動物が好きだったので、動物に関わる生活がしたいと思っていました。農業高校なら動物の飼育管理技術などを幅広く学べることを知り、熊本県立農業高等学校畜産科に進学、牛の飼育や養豚、養鶏を学び、特に養豚に興味を持ち始めました。
高校2年生の時、「農業クラブ」で「養豚における食品廃棄物を利用した飼料製造に関する研究」をテーマにプロジェクト発表を行い、県大会、九州大会を勝ち抜いて、全国大会で最優秀賞を獲得することができました。
それがきっかけで、東京で行われた農業関係のイベントで研究発表をする機会がありました。そこにコメンテーターとして参加していた当社の前田佳良子社長の資源循環型農業の考え方などに魅力を感じ、高校の現場実習をここで行ったところ、会社の理念と僕の目標が合致していたので入社しました。

*農業クラブ:農業高校で学ぶ生徒の組織で、学校行事や地域貢献活動などに取組む。例年10月に開催される全国大会では、プロジェクト発表や意見発表、各種競技会等が実施され、全国の仲間との交流を深めています。

写真提供:セブンフーズ(株)

入社後の仕事でまず驚いたのは、豚の頭数が多く管理が大変なこと。高校では豚の飼育頭数がだいたい100頭くらいだったのに対して、今は5人体制で6,000頭を担当しています。豚にストレスをかけないように飼育することが大事なので、そこに最も気を使っていますが、どんなに気を使っても病気になってしまう個体もいます。生命産業の厳しさを感じることもありますが、人々の食を守る仕事なので、誇りをもってやっています。
現在入社2年目で、出荷を担当しています。この会社に就職したことで、大きな将来の夢を持つことになりました。その夢は農場長になること。そして、ゆくゆくは自分の養豚農場を持ち、セブンフーズのように地域の養豚業に貢献したいと思っています。
当面の目標としては、農業のあまり良くないイメージを払拭していくこと。実は僕も農業高校に進学する時は、「農業は休みがなくて大変そう」などと思っていました。ここでも、あまり休みが取れないかもしれないと思っていましたが、そんなことはありませんでした。ですから知らずに抱く偏見や誤解を少しでもなくしていければと考えています。

藤澤さんの一日の作業スケジュール

朝は8時から仕事を始め、夕方5時には仕事が終わります。作業は日によって違いますが、この日の午前はシステムの点検整備、午後は発酵床資材の堆肥化作業などを行いました。一人暮らしで通勤は車です。休日はジムに泳ぎに行ったり、友達と釣りに行ったり。次はキャンプを始めたいと思っています。

就職とは学びの場を選ぶこと!

セブンフーズ(株)の前田佳良子社長

セブンフーズ(株)代表取締役社長の前田佳良子さんは、両親が3頭から始めた養豚業を継ぎ、ここまで規模を拡大してきましたが、小学校の頃、学校でいつも肩身の狭い思いをしていたといいます。
「私が後を継いだら、働いている人たちが誇りを持てる職業にしていきたい、こどもや孫にも喜んでもらえる業界にしていきたいと胸に誓っていました」
前田さんは大学を卒業後、いったん会社勤めをしたのですが、そこで大切なことに気づきました。大人が何か学ぼうとするとお金がかかりますが、会社に就職するとお金をもらいながらいろいろなことを教えてもらえ、社会勉強ができるということを。それは農業法人に就職する場合も同じことだといいます。
「お金をもらいながら農業が学べるのですから、就農希望者は農業法人への就職を選択肢に入れてみてはいかがでしょう」
農業法人は地域雇用の受け皿となるというミッションもあるので、雇用を充実させるためには就業環境を整えることが絶対条件です。7、8年前に完全週休2日制やノー残業デーを導入した時には、社内の幹部にも心配する声があったという前田さん。
「面接に来る人は働く環境を選んでくるわけですから、納得してもらえるような環境をつくらないといい人材は集まらないし、会社は伸びていかないと思います」
そんな就業環境をより良くしていくためにも、ICT(情報通信技術)を活用した農場の効率化、食育や農育を通した地域との交流に取り組み、野菜畑をコンピューターで管理するシステムや豚舎を自動で洗浄するロボットなどを導入する予定だそうです。
「魅力のある会社でなくては、人は集まりません」と前田さんは結びました。

豚舎の横に並ぶ飼料米やとうもろこしなどの飼料貯蔵タンク。右は妊娠期、授乳期、肥育期など、飼育状況に合わせて飼料配合を行う制御システム

TIPS! 雇用就農資金を活用しよう

農林水産省では、農業法人などが49歳以下の就農希望者(独立就農することを目指す方も対象です。)を新たに雇用する場合に資金(雇用就農資金)を助成しています。

雇用就農資金については
こちら

CHECK! 農業インターンシップ

(公社)日本農業法人協会では農林水産省の補助事業を活用して、農業に関心のある人が全国に200ある農業法人などで短期間(2日以上6週間以内)農業を体験することができる農業インターンシップ事業を行っています。詳しくは公式サイトをご覧ください。

公式サイトはこちら
外部リンク

今週のまとめ

新規就農するために農業法人へ
就職するという方法があります。
就職先として魅力のある
経営体をめざして、
従業員が働きやすく、成長もできる
環境づくりを行っています。

(PDF:2,236KB)
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