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特集 牛乳愛(ラブ)

もっと知りたい!牛乳のチカラ もっと知りたい!牛乳のチカラ

牛乳に対して、何となく“栄養がある飲み物”というイメージを持っていても、
その中身について、正確に知っている人は少ないかもしれません。
今回は、牛乳の魅力について、主に栄養面からくわしく紹介します。

世界と比較するとまだまだ少ない牛乳の国内消費量

世界の飲用乳の一人当たり年間消費量

農林水産省令和4年度「食料需給表」によれば、日本における牛乳乳製品の総消費量は約1,174万トン。野菜や穀類を抑えて国内で最も消費されている食品となっています。しかし欧米に比べると1人当たりの消費量はまだまだ低いのが現状です。2021年度の数値を見ると、飲用牛乳の消費量は年間1人当たり約31.8キログラムで、フィンランドやオーストラリアの約3分の1、アメリカの約2分の1となっています。

JIDF(国際酪農連盟日本国内委員会)
「世界の酪農状況2021」

Jミルクに農林水産省職員が直撃インタビュー 牛乳の栄養にまつわるギモン Jミルクに農林水産省職員が直撃インタビュー 牛乳の栄養にまつわるギモン

牛乳には、どんな栄養素があって、どんな役割を果たしているのでしょう。
牛乳の成分については、さまざまな誤解も散見されます。
そこで、学術研究に基づいた、牛乳乳製品に関する
あらゆる情報を発信している(一社)Jミルクを訪れて、
牛乳の栄養に関する素朴な疑問をぶつけてみました。

農林水産省畜産局牛乳乳製品課 紹介

(一社)Jミルク 紹介

Q1 牛乳にはどんな栄養素が含まれていますか?

牛乳には、体を作り、エネルギーのもとになる「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」、体の調子を整える「ミネラル」「ビタミン」といった、いわゆる5大栄養素が豊富に含まれています。ただし鉄分はほとんど含まれず、また食物繊維は含まれません。

特にカルシウムやビタミンB2、ビタミンB12が豊富なんですね。

はい。コップ1杯の牛乳で、成人女性ならカルシウムは1日の推奨量(厚生労働省 日本人の食事摂取基準 2020年版)の約3分の1を摂取できます。カルシウムは骨や歯の材料となるだけでなく、血液や神経、筋肉などにおいても重要な生命活動に関わっている栄養素ですが、体内で作ることができないので、毎日の食事から摂取しなくてはなりません。日本人はこのカルシウムが不足しがちなんです。

カルシウムが豊富な食品というと、他にも小魚や干しえび、小松菜やほうれんそうなどが有名ですね。

そうですね。ただし、毎日の食生活で必要とされるカルシウムを摂取しようとすると、1食で相当量を食べなければなりません。またカルシウムは吸収しにくい栄養素ですが、牛乳の吸収率は40パーセントと他の食品と比較しても高く、子どもから大人まで手軽に摂取できる食品です。他のカルシウムを含む食品と合わせて上手に利用してほしいですね。

各種栄養素を含む優れた食品で、特筆すべきはカルシウムの豊富さです。

カルシウムを多く含む食品と、1食分中の含有量の比較の図

Q2 牛乳を飲むと太るって本当?

食品のエネルギー100キロカロリーあたりの各栄養素の量を「栄養素密度」と呼び、栄養素密度が高いということは、少ないエネルギー量で必要な栄養素を多く摂取できることを表します。

牛乳は栄養素密度が高いので、必要な栄養素を取りつつも、摂取するエネルギー量を抑えることができるんですよ。

牛乳は脂質が含まれるので、それが太りやすいイメージにつながっている気がしますね。

そうですね。牛乳中には脂肪分が約3.8パーセント含まれています。しかしここで注目してほしいのは、脂質の「質」です。脂肪酸にはさまざまな種類があって、乳脂肪に含まれる脂肪酸は短鎖・中鎖脂肪酸が含まれている点が特徴です。短鎖・中鎖脂肪酸は、速やかに代謝されてエネルギー消費されるので、体脂肪として蓄積されにくい性質があります。

むしろ、必要な栄養素を摂取しつつエネルギー量を抑えられる理想的な食品です。

食品別栄養素密度(100キロカロリーあたり)の比較の図

Q3 牛乳は胃の中で固まるので消化が悪い?

牛乳には、「乳たんぱく質」と呼ばれるたんぱく質が含まれています。乳たんぱく質には2種類あって、約8割を占めるのが「カゼイン」です。カゼインは水に溶けないたんぱく質で、牛乳中に微粒子状に分散していますが、酸を加えると固まる性質があります。牛乳を飲むと、胃酸によってカゼインが固まりますが、これはヨーグルトと同じようなものなんですよ。ヨーグルトは乳酸菌が作る乳酸によってカゼインが固まったものです。

ヨーグルトに「消化が悪い」という印象はまったくないですね。

ヨーグルト状になった牛乳は、軟らかくて隙間が多い構造をしているので、胃から分泌されるたんぱく質分解酵素などがすみずみまで入り込んで、どんどん分解していきます。胃で消化されたカゼインは少しずつゆっくりと小腸に送り出されるので、小腸でもしっかりと消化吸収されます。さらにカゼインには、カルシウムの吸収を助ける機能があることも分かっています。牛乳のカルシウムの3分の2は、リン酸カルシウムとしてカゼインに結合して「カゼインミセル」を形成することで、牛乳の中でも沈殿せずに大量かつ安定的に保持されます。

ちなみに牛乳が白く見えるのは、このカゼインミセルや脂肪球があるからなんですよ。

カルシウムの一部は小腸下部まで移動し、「カゼインホスホペプチド(CPP)」というペプチドを生成します。このCPPは腸管からのカルシウムの吸収量を助ける働きがあります。

さまざまなメカニズムが働いて、カルシウムの吸収を高めているんですね。

固まるからこそ、ゆっくり確実に栄養の消化吸収を助けます。

牛乳が白く見えるワケ

浮遊するカゼインミセルや
脂肪球の微粒子に光が反射し、
反射光が散乱することで白く見えます

出典:Jミルク. メディアミルクセミナー ニュースレター No.16、36より作成

Q4 牛乳は筋肉づくりをサポートしてくれますか?

乳たんぱく質のうち、残り約2割が「ホエイたんぱく質」です。ホエイは「乳清」とも呼びますが、牛乳からカゼインと乳脂肪を取り除いた半透明の液体部分のことです。カゼインと違って水溶性なので、そのまま胃を通過して、小腸ですばやく消化・吸収されます。

ホエイはプロテインサプリメントの原料として有名ですね。

ホエイは筋肉を作るうえで重要な働きをするアミノ酸の「ロイシン」を豊富に含んでいます。ロイシンは、筋肉たんぱく質の合成を強く促進すると同時に、筋肉を壊れにくくする作用もあります。

脂質もそうでしたが、たんぱく質も、その「質」に注目してほしいです。たんぱく質の「質」を評価する指標はいくつかありますが、カゼインも含めた乳たんぱく質はどの指標でも高水準なんです。

たんぱく質を作るには20種類のアミノ酸が必要で、ひとつでも欠かすと合成できません。そしてそのうち、人間の体内で合成できない9種類を「必須アミノ酸」と言います。乳たんぱく質は、必須アミノ酸のすべてが必要量を満たして存在しているので、アミノ酸スコアは最大値の100です。さらにアミノ酸の組成だけでなく、その消化吸収のされやすさも含めて評価する「DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)」という指標もありますが、乳たんぱく質はこのDIAASでも栄養価の高さが証明されています。

質の高いたんぱく質が豊富なので、もちろん筋肉づくりを助けてくれます。

牛乳中の乳たんぱく質の図

Q5 日本人は体質的に牛乳が合わないのでは?

牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするという人がいますが、その原因は何ですか?

牛乳に含まれる炭水化物のほとんどは、「乳糖(ラクトース)」です。一部の人の中には、この乳糖によって腹部の不快症、いわゆる「お腹がゴロゴロ」することはあります。これは、乳児の頃にはできていた、乳糖を消化するラクターゼという分解酵素の分泌が大人になって少なくなることが原因です。ただし、体質といっていいもので病気ではありません。

乳糖の消化不良が、お腹ゴロゴロの要因になっているんですね。

しかし、人類がヒツジ、ヤギ、ウシなど哺乳動物のミルクを利用したのははるか昔のことで、考古学で明確になっているのは紀元前5,000年頃、さらに哺乳動物が家畜化された過程を考えれば、現在より1万年前とする説もあります。世界の各地域におけるミルク利用の起源地でも乳糖不耐はあったものの、古代からはじまった日本人のミルク利用も含めて、現在これほど世界でさまざまな乳利用の文化が広がり、発展しているのは、世界中の人たちが牛乳の栄養やおいしさへの価値に重きをおいているからだと思います。

乳糖は、腸内で乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増殖させる「プレバイオティクス」としての重要な働きがあることも知られています。「体質だから」とあきらめている方もいらっしゃると思いますが、下で紹介している対処法によって、お腹をこわさずに摂取しやすくなりますので、ぜひ試してみてください。

お腹をこわさずに摂取できる対処法があります。

おすすめのお腹ゴロゴロ対処法 数回に分けて飲む/温めて、ゆっくり飲む/料理にプラスする/牛乳の代わりにヨーグルトやチーズを食べる/毎日飲む習慣をつける

Q6 子どもの頃から牛乳を飲むと背が伸びる?

背の高い人に牛乳を飲んでいる人が多いことは、これまでの研究でも報告されています。ただし身長の高さは遺伝を始めさまざまな要素が関わっていて、睡眠や運動、栄養バランスなども大切です。

人間の成長は、骨の成長でもあります。骨の成長には、十分な量のカルシウムを取ることが必要です。また丈夫な体を作るには、骨の量と密度が重要です。人間の骨量は思春期に急速に増加して、20代でピークの時期を迎えます。そしてその後は加齢とともに徐々に減少していきます。

骨量を増やすことができるのは成長期の間だけなんですね。

そして20代までがピークです。しかし1日に必要な小中学生のカルシウム摂取推奨量に対して、学校給食がない日は約8割の子どもがカルシウムの摂取不足になっていることが分かっています。その不足量が、小中学生だとちょうど牛乳1本から2本分なんですよ。

なるほど。つまり家で牛乳を飲む習慣がある子どもが少ないということですね。

そうなんです!そこでJミルクでは、子どもたちのカルシウム不足の解決を目的に、学校給食がない日も牛乳を飲むことを促進する「土日ミルク」の取り組みを行っています。活動を通じて国産牛乳・乳製品の魅力をみなさんにもっと知っていただけたら嬉しいです。

子どもたちの成長に牛乳が役立つことは間違いありません。

骨量の経年変化の図

給食のない休日はおうちで牛乳を飲もう 土日ミルク 給食のない休日はおうちで牛乳を飲もう 土日ミルク

2022年12月から始動した「土日ミルク」では、以下の3つの活動を柱に、さまざまなコンテンツの公開やイベント、学習プログラムなどの提供を行っています。「土日ミルク」のサイトでは、ロゴやポスターなどの画像素材の他、これまで実施してきたイベントのツールや運営マニュアルも無料でダウンロードできます。

1情報発信・啓発

ミルクをテーマにした週刊連載のSNS漫画雑誌コンテンツ「週刊土日ミルク」や専門家とインフルエンサーの対談コラムの他、酪農乳業関係者や「牛乳スマイルプロジェクト」メンバーと連携したイベントを開催し、休日に牛乳を飲むことの大切さについて啓発を行っています。2023年11月には東京・豊洲で体験型イベント「土日ミルクフェス」も開催し、累計2万3,000人以上の人々が来場しました。

2レシピや利用場面の提案

実際に牛乳をおいしく楽しんでもらえるように、SNSで話題の料理家たちによるオリジナルのミルクレシピを公開中。また休日ならではの牛乳の楽しみ方ができる場として、アウトドア向きの牛乳乳製品を使った「土日ミルクキャンプ」の情報も発信しています。

3学校の食育との連携

「なりきり広告クリエイター」は、土日ミルクを題材にした、クリエイティブ体験の授業プログラム。子どもたちに、保護者に向けた土日ミルクの広告を制作してもらいます。その過程で、給食のない日も牛乳を飲むことの重要性を知るとともに、考える力を養い、創作する喜びを分かち合うことができます。

今週のまとめ

牛乳にはカルシウムや良質なたんぱく質を始め、
人間にとって重要な栄養素が豊富にバランス良く含まれ、
それらが消化吸収されやすくするしくみも備えています。

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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