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特集 牛乳愛(ラブ)

ミルクファン歓喜!ヨーグルトの魅力と愛し方 ミルクファン歓喜!ヨーグルトの魅力と愛し方

牛乳に乳酸菌を加えて発酵させるというシンプルな製造方法。
それだけに、ヨーグルトは原料の牛乳の個性が強く表れます。
今回は、ヨーグルトマニア向井智香さんに、ヨーグルトの魅力や愛し方を聞きました。

“ヨーグルトマニア”向井智香さんが語る ヨーグルト愛=牛乳愛です。 “ヨーグルトマニア”向井智香さんが語る ヨーグルト愛=牛乳愛です。

ヨーグルト好きが高じて、
ヨーグルトの情報発信を仕事にした向井智香さん。
全国各地で作られている
ご当地ヨーグルトの魅力について伺うとともに、
ヨーグルトを活用したおすすめレシピを紹介していただきました。

(一社)ヨグネット代表理事 向井智香さん

2011年よりSNSでヨーグルトの商品レビューを発信。2018年「第1回全国ヨーグルトサミットin小美玉」にて講師を務めたことをきっかけにヨーグルトサミットの活動に従事。2023年(一社)ヨグネット設立。著書に『ヨーグルトの本』(エムディエヌコーポレーション)。

子どもの頃から
日常的に食べてきた
ヨーグルト。

「ヨーグルトは、私にとって主食のようなもの。1日に5回、毎回違うものを選んで、合計で1.5キログラムぐらい食べています。冷蔵庫の中はいつも物産展のようです」と語る、向井智香さん。子どもの頃から日常的に食事やおやつとしてヨーグルトを食べていた向井さんが、本格的にヨーグルトのトリコになったのは2011年のこと。「当時新発売されたギリシャヨーグルトを食べて、今まで食べていたヨーグルトとの違いに衝撃を受けました。それがきっかけで、ヨーグルトの定義や歴史、種類などに興味を持つようになりました」。そして日本全国のヨーグルトを収集し、その商品レビューをSNSで発信していきました。レビューは現在も続けていて、今年中にはレビュー数が3,000を超えることは確実です。向井さんは当時フリーランスのWebデザイナーをしながら“ヨーグルトマニア”としての活動をしていましたが、2018年になって大きな転機が訪れました。「いくつかのウェブメディアから受けた取材の記事がヨーグルトサミットの関係者の方の目に留まって、サミットでの講演会の講師を依頼されたんです」

2021年12月から2022年1月にかけて行われた「第3回全国ヨーグルトサミットinいわて」。向井さんは公式アンバサダーを務め、パネルディスカッションなどに参加しました。

酪農家との交流によって
気づいた
ヨーグルトの課題。

2018年に茨城県小美玉市で開催された「第1回全国ヨーグルトサミットin小美玉」は、全国のご当地ヨーグルトが集う、日本初の大々的なイベントでした。2日間で延べ3万9,000人もの人々が来場したこのヨーグルトサミットでは、物産展やステージイベントと並行して、ヨーグルト製造者や研究者向けの交流の場が設けられていました。「そこで全国の酪農や乳業に携わる方々とのつながりができたことで、消費者の立場では見えていなかった、さまざまな事情や課題に気づくことができました」。そのひとつが、いわゆる“ご当地ヨーグルト”が生まれた背景でした。「酪農家の皆さんは、それぞれ自分の牧場の牛から搾った牛乳にこだわりと愛着を持っています。しかし牛乳のままでは差別化が難しく、賞味期限も短いので売りづらい。そこで付加価値を付けるためにヨーグルト製造を始めたというケースが多いんです」。その一方で、ヨーグルト業界では2000年代から菌由来の機能性をうたった商品がブーム。消費者の関心もそちらに偏りがちです。「もちろん菌の機能性もヨーグルトの魅力ではありますが、牧場や地場の小さな乳業メーカーでは、大手のように菌の研究開発は行えません。同じ土俵で戦っていては、訴求力や価格で負けてしまいます。だから“ヨーグルトマニア”として、ご当地ヨーグルトは一般のヨーグルトとは分けて応援したいと考えるようになりました」

ヨーグルトサミットで全国の酪農家と知り合ったことで、各地の牧場を訪ねる機会を得た向井さん。「牧場ごとにさまざまなスタイルがあることを知りました。今も各地を巡りながら酪農や乳業について学ばせていただいています」

ご当地ヨーグルトからは、
作り手の想いが感じられる。

ご当地ヨーグルトの魅力は、日本各地で搾られている多様な牛乳の個性を感じられる点だと語る向井さん。「ご当地ヨーグルトには、1.酪農家さんが6次産業化して製造販売を行っているもの、2.地場の乳業メーカーさんが製造販売しているもの、3.専門店などが牧場や乳業メーカーから牛乳を仕入れて製造販売しているもの、の3つのパターンがあり、それぞれに良さがあります。いずれにしても、1つの牧場や地域の牛乳だけが使用されていることが多いので、その土地の牛乳の個性が表れやすいんです」。とくに1.の場合は、同じ牧場の環境で、同じエサを食べている牛の乳だけになるため、季節によってヨーグルトの味にも変化が感じられるそうです。また、酪農家の考え方などがよりダイレクトに反映されるところも面白いと向井さんは語ります。「たとえば、石垣島に女性お一人でやっている牧場があるのですが、そこのヨーグルトは完全にその方が自分で食べたい味に仕上げています。酸味が苦手なので、酸味が出にくい乳酸菌を使ったり。またそこでは搾乳ができなくなってしまった牛もペットとして飼っていて、そうすると当然ものすごくお金がかかるのですが、それを販売しているヨーグルトの価格に乗せているんです。それでも、納得して買ってくれているお客さんがいて、商売が成り立っているのがすごいですよね」

ヨグネットでは、百貨店などに催事出店する他、羽田空港第1ターミナルの羽田産直館でご当地ヨーグルトの卸販売を行っています。右のマップは羽田産直館のブースのオープン時の入荷商品。ラインナップは随時入れ替わります。

ヨーグルトの背景にある
ストーリーが好き。

ヨーグルトサミットは、2019年は岡山県真庭市、2021年から2022年にかけて岩手県で開催されましたが、過去3回すべて運営母体が異なっていたため、ノウハウの引き継ぎが行われていませんでした。そこでヨーグルトサミットの運営母体を担いつつ、ご当地ヨーグルトの地位を向上させるために2023年に設立されたのが、一般社団法人ヨグネットです。ヨグネットは、第4回ヨーグルトサミットの開催実現に向けて動きながら、ご当地ヨーグルトを実際に口にしてもらえる機会を増やすために、各地のイベントや百貨店のフェアなどで試食会や即売会を行っています。またこれと並行して勉強会やワークショップなども企画していくそうです。「私は、なぜこういう発酵にしたのかとか、なぜこういう容器にしたのかなど、商品の背景にあるストーリーが好きなんです。ヨーグルトは私にとってはおいしいものが多すぎるので、それを踏まえて何か価値を見出そうとすると、作り手の想いみたいなところになる。それを感じられるところがヨーグルトの魅力だと思います」

「コンビニオリジナルのヨーグルトひとつとっても、チェーンごとにブランディングに違いがあって面白いですよ」と語る向井さん。ヨグネットの活動と並行して、個人としては大手メーカーやご当地ものを問わず、ヨーグルトの魅力を発信していくそうです。

向井さんプレゼンツ タイプが異なるヨーグルトを用いたかんたんヨーグルトレシピ 向井さんプレゼンツ タイプが異なるヨーグルトを用いたかんたんヨーグルトレシピ

サワラのムニエルヨーグルトカレーソース サワラのムニエルヨーグルトカレーソース

淡白な味わいの魚を、ヨーグルトとスパイスで賑やかに楽しむレシピです。サワラに限らず、タラやカジキなど、季節の魚に合わせていただけます。レモンとパセリは途中から味変に使えます。

材料(1人分)

サワラ…1切れ
塩胡椒…適量
薄力粉…適量
バター(有塩)…10グラム
プレーンヨーグルト…40グラム
粉チーズ…6グラム
カレー粉…大さじ4分の1
レモン…適量
パセリ…適量

作り方

  1. プレーンヨーグルト、粉チーズ、カレー粉を混ぜ合わせておく。
  2. サワラに塩胡椒を振って10分ほどおき、水分を拭き取ったら薄力粉をまぶす。
  3. フライパンでバターを熱し、サワラの両面によく絡めながら焼く。
  4. 皿に盛り付けて1をかけ、レモンとパセリを添える。

プレーンヨーグルトは、酸味が強いものをお料理に使うとすごく映えます。岩塩やにんにく、ハーブなどと合わせた時に、ヨーグルトの酸味が互いを引き立ててくれます。

卵とギリシャヨーグルトのスプレッド 卵とギリシャヨーグルトのスプレッド

パン中心の朝食に、たんぱく質をプラスしてもらうために考えたスプレッドです。お好みのパンに塗って召し上がってください。ヨーグルトの商品ごとに異なる水分量を調整するためにおからパウダーを活用しており、食物繊維がさりげなく摂取できる腸活アレンジでもあります。

材料(1人分)

卵…Mサイズ 1個
ギリシャヨーグルト…50グラム
塩昆布…適量
おからパウダー…適量

作り方

  1. 卵を固茹でにして刻む。
  2. 1とギリシャヨーグルト、塩昆布を混ぜ合わせ、おからパウダーで粘度を調整する。

水切りしたヨーグルトはフレッシュチーズの代わりにも使えます。カプレーゼにしてもよいですし、カレーやパスタにサワークリーム感覚で添えたりしていろいろ使えますよ。

カスピ海タイプヨーグルトの冷製ポータージュ カスピ海タイプヨーグルトの冷製ポータージュ

デザートの印象が強いヨーグルトを食事の一品として楽しんでいただくためのレシピです。ジメジメと暑い季節にもひんやり爽やかにお野菜とヨーグルトを摂取していただけます。ヨーグルトを加熱せずに扱えるので、生きたままの乳酸菌が摂取できます。甘みのある野菜に合わせて白味噌でコクを出しています。

材料(1人分)

アスパラガス…1本
玉ねぎ…小4分の1個
じゃがいも…4分の1個
水…25ミリリットル
カスピ海タイプヨーグルト…50グラム
白味噌…小さじ1
塩…適量
乾燥パセリ…適量

作り方

  1. アスパラガス、玉ねぎ、じゃがいもを細かくカットし、耐熱容器に入れて電子レンジで加熱する(600ワット4分目安)。
  2. 1と水を合わせてミキサーにかけ、冷蔵庫でよく冷やす。
  3. 白味噌を溶かし込み、カスピ海タイプヨーグルトを加えて混ぜる。
  4. 塩で味を調えたら器に移して乾燥パセリを振りかける。

カスピ海タイプのようなとろみがあるヨーグルトは、スープ系のアレンジによく合います。ヨーグルトが持っている粘りがいい仕事をしてくれるんです。

ヨーグルトの基礎知識 ヨーグルトの基礎知識

日本ではヨーグルトの規格はなく、「乳等命令(乳及び乳製品の成分規格等に関する命令)」で「発酵乳」と定められた乳製品の一種になります。発酵乳は「乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を、乳酸菌または酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの、またはこれらを凍結させたもの」で、無脂乳固形分8.0パーセント以上、乳酸菌または酵母が1ミリリットルあたり1,000万個以上(加熱殺菌したものは除く)と決められています。

ヨーグルトの種類

ヨーグルトは、状態や製法によって5つのタイプに分けることができます。また原料をタンクで発酵させた後に容器に充填する「前発酵」と、原料を容器に充填してから発酵させる「後発酵」タイプがあります。

プレーンヨーグルト/ハードヨーグルト/ソフトヨーグルト/ドリンクヨーグルト/フローズンヨーグルト

ヨーグルトの作り方

ヨーグルトの製造工程は、ヨーグルトの種類によって異なり、また発酵温度も乳酸菌の種類によって異なりますが、基本的な作り方としては図のようになります。

加熱殺菌→乳酸菌添加→発酵→冷却

ヨーグルトに使われる主な乳酸菌

乳酸菌とは、糖類を分解して乳酸を主に生成する細菌の総称です。ヨーグルトには主にブルガリア菌とサーモフィラス菌という2種類の乳酸菌が使われています。これ以外にもさまざまな種類があり、モチモチしたものやサラッとしたものなど、菌の組み合わせ方によって食感や風味を変えることができます。また他にもビフィズス菌など、ヨーグルトの発酵には関与しない菌が保健機能向上を目的として加えられることもあります。

ブルガリア菌/サーモフィラス菌/ビフィズス菌

ヨーグルトの栄養素

プレーンヨーグルトの場合、乳酸菌しか加えられていないので、含まれている栄養素は原料乳とほぼ同じ。発酵によってたんぱく質が分解され、消化吸収されやすくなっています。また乳糖も一部分解されているので、乳糖不耐(乳糖の消化不良による腹部膨満や下痢などの症状)が起こりにくくなってます。

ヨーグルトの栄養素の動き

ヨーグルトの発酵では、乳糖を乳酸菌が分解して作りだした乳酸によって、乳が酸性に傾きます。するとたんぱく質のカゼインが固まってヨーグルトができます。

生乳から生まれるさまざまな牛乳乳製品 生乳から生まれるさまざまな牛乳乳製品

牛から搾った生乳は、飲用牛乳として消費される他に、発酵させたり、乾燥したり、凝縮や分離などの加工によって、用途に応じて姿を変えます。生乳からさまざまな乳製品が生まれるさまを、1本の木に例えてわかりやすく表現したのが上の「ミルクツリー」です。

(一社)Jミルク「日本のミルクサプライチェーン2023」

今週のまとめ

さまざまな種類があり、全国各地で作られているヨーグルト。
生乳と同じように、牧場やメーカーのこだわりが反映されています。
ぜひ牛乳の風味に注目しつつ、食べ比べてみてください。

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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