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食とくらしの「今」が見えるWebマガジン

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特集 みんなで食育 ⓒ松本山雅FC

プロスポーツチームが思う「地域と食」への貢献 プロスポーツチームが思う「地域と食」への貢献

感動と興奮の非日常空間を創造し、人々に夢と希望を届けるアスリート達。
特にプロスポーツリーグは、ホームタウンとの密接な連携が不可欠です。
ここでは、バスケットボールとサッカー、2つのプロスポーツチームが行っている
地域への貢献と共生の取り組みを紹介します。

“ささえる”からはじまる社会貢献 千葉ジェッツふなばし “ささえる”からはじまる社会貢献 千葉ジェッツふなばし

心のパスをつなぎ、お互いに助け合いながら、明るい未来に貢献できるよう
アシストしたい。
そんな思いから作られたプロジェクトとは?

©CHIBAJETS FUNABASHI/PHOTO:Keisuke Aoyagi

社会貢献活動で恩返しをする

千葉ジェッツふなばし(以下、千葉ジェッツ)は2015年に創立されたBリーグ(※)を代表する強豪チームのひとつで、2020-21シーズンにはリーグチャンピオンに輝くなど、数々のタイトルを獲得してきました。
そんな千葉ジェッツの選手やスタッフが、バスケットボールのゲームとともに力を注いできたのが、地域における社会貢献活動です。「地域愛着」をモットーとする千葉ジェッツは、クラブ創設時からホームタウンの千葉県船橋市を中心にさまざまな社会貢献活動を行ってきました。現在、そのベースとなっているのが “JETS ASSIST(ジェッツアシスト)” という社会貢献活動プロジェクトです。
このプロジェクトがスタートした2019年9月、首都圏はのちに「令和元年房総半島台風」と名付けられる巨大台風の直撃を受けました。(株)千葉ジェッツふなばしパートナー企画部渉外チームリーダーの矢島博文さんは当時のことを次のように語っています。
「このとき千葉県は甚大な被害を受けました。被災者を何とか支援したい、元気づけてあげたいという気持ちが、“JETS ASSIST” を大きく発展させていく原動力のひとつになりました」

※(公社)ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ

コート外で差し出す支援の手

全国のBリーグのチームと同じように、千葉ジェッツの選手たちもバスケットボール教室などを通じて地域の子どもと交流を重ねてきましたが、JETS ASSISTの活動はコート内だけに留まるものではありません。ここでは食に関する活動を紹介します。

JETS ASSIST 01

©CHIBAJETS FUNABASHI

千葉ジェッツ子ども食堂
supported by 公益社団法人日本財団

千葉ジェッツのコラボカフェにひとり親世帯の親子を優先的に招き、迫力たっぷりの試合映像を観ながら、食事を楽しんでもらうものです。このイベントは非常に好評で、2022年9月の第1回以来、すでに開催は10回を数え、通算食事提供数も2,000食を超えました。

※ 現在は休止中

JETS ASSIST 02

©CHIBAJETS FUNABASHI

ホームゲームでの
「フードドライブ」

ホームゲームで実施される「フードドライブ」。地域のフードバンクを通じて支援を必要とする人々に食料品の寄贈を行っています。選手がSNSなどを通じて試合前に呼びかけを行うため、千葉ジェッツファンの間ではすっかりおなじみのイベントとして定着していて、1回に10キログラムを超える食料品が集まることも珍しくないそう。

JETS ASSIST 03

千葉ジェッツとJAいちかわのコラボレーションで作られた「船橋にんじんグミ」

農業への取り組み

都心へのアクセスが良い船橋市は、東京のベッドタウンとして知られていますが、郊外へ少し車を走らせると辺りには広々とした田園風景が広がっています。そこでは特産のなしや「船橋にんじんグミ」といったコラボ商品が生まれているほか、4月下旬の船橋にんじんの初出荷時には、ジェッツカラーの赤白2色でチームロゴをあしらった出荷箱が使用されています。こうした土地柄もあって、食育や農業に関する取り組みが多いことも特徴になっています。

「アシスト」が地域に根付いていく

「こうした活動はクラブ主導のものと考える人がいるかもしれませんが、実はそうではありません。地域の子どもや支援を必要とする人々には何をしたら良いのか? 選手一人ひとりが主体的に考えた結果なのですよ」と話すのは、選手の社会貢献活動をサポートするチーム統括本部のリーダー、小林香織さんです。こうした活動の中で、千葉ジェッツのベテラン選手、荒尾岳さんが行っている取り組みに注目します。

©CHIBAJETS FUNABASHI

荒尾岳選手の“G.CREW”

荒尾岳さんが行っている“G.CREW”。このプロジェクトは、地域の子ども達に食や農業、自然の大切さを知ってもらうことを目指しています。船橋市の農家の田んぼ一反を借り、フリースクールの子ども達と行った田植えや稲刈り、クラブスポンサーの農園でのいちご苗の植付けや児童養護施設の子ども達を招待した収穫体験、さらにはJAいちかわ女性部の協力による料理体験教室などを行っています。
ちなみにプロジェクト名は荒尾選手の名前(GAKU)と自然(GREEN)に由来するもので、もし将来的に荒尾選手が移籍や引退によって千葉ジェッツを離れるようなことがあっても、個人の活動として継続していく予定です。

©CHIBAJETS FUNABASHI

新たなホームアリーナとなる“LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)” が竣工し、さらなる人気の高まりが期待される千葉ジェッツ。ファンの熱い声援への恩返しだという社会貢献活動は、地域の食や農業への関心を高め、人々の絆を確かなものにしていくに違いありません。

お話を聞いた千葉ジェッツふなばしの矢島博文さん(左)と小林香織さん(右)

LaLa arena TOKYO-BAY

地域の農業の課題解消と連携を目指す 松本山雅FC 地域の農業の課題解消と連携を目指す 松本山雅FC

美しきホームタウンに貢献できることは何か。農地荒廃や農業技術の継承といった課題に着目し、この地域ならではの連携と活性化を目指します。

©松本山雅FC

地元生まれの青大豆に託す思い

松本山雅FCは長野県に初めて誕生したJリーグ(※)のプロサッカークラブで、松本市のほか、塩尻市、山形村、安曇野市、大町市、池田町、生坂村、箕輪町、朝日村、高森町、麻績村の11市町村をホームタウンとしています。現在の所属はJ3ですが、過去には2度、トップディビジョンのJ1に昇格したこともあります。
クラブ発祥の地である松本市の周辺は、北アルプスや美ヶ原などの山々に囲まれた風光明媚な土地で古くから農業が盛んでした。ところが、近年は農業従事者の高齢化や後継者不足から、耕作放棄地の増加が問題となっています。
こうした地域の課題に取り組んでいく社会貢献活動として、2018年にスタートしたのが『スマイル山雅農業プロジェクト』です。
それまでも松本山雅FCでは、子ども向けのサッカー教室や学校訪問、イベント参加など、さまざまな形でホームタウン活動を行ってきました。しかし、このプロジェクトは従来のものとは活動のあり方や狙いが異なっています。松本山雅ユースアカデミーの選手が中心となり、遊休農地で地元特産品の青大豆「あやみどり」を栽培することにより、地域の課題を長期的、継続的に解決していこうとするものなのです。

※(公社)日本プロサッカーリーグ

選手が新人研修の一環として「あやみどり」を育て枝豆として収穫

©松本山雅FC

チームカラーと同じ鮮やかな緑の豆

「あやみどり」は品種改良により塩尻市で生まれた青大豆の一種で、鮮やかな緑色と濃厚な味わいを特徴としています。栄養豊富な大豆はアスリート向きの食品であるうえ、その色はチームカラーと同じ鮮やかな緑色、まさに松本山雅FCにはぴったり。
しかしながら、入社時からこのプロジェクトを担当してきた(株)松本山雅事業推進部の渡邊はるかさんによると、当初はこの取り組みを疑問視する人も少なくなかったといいます。
「農業は片手間ではできない、と言われたこともありました。そんな中でプロジェクトを継続してこられたのは、ベテランの生産者をはじめ、直売所や障がい福祉サービス事業所の協力など、地域の人たちの手助けがあったからに他なりません」と渡邊さんは言います。

スマイル山雅農業プロジェクトの1年

松本山雅FCによるあやみどりの栽培は、ホームスタジアム “サンプロアルウィン” に隣接する畑など、松本市内3カ所、安曇野市内2カ所、生坂村内1カ所で行われています。畑では、食育と選手との交流を合わせた体験教室を通年で開催しています。

6月初旬 種まきをします。2024年は6月1日に行われました。

9月 枝豆の収穫をします。採れたての枝豆を作業後の畑で茹でて食べました。 “サンプロアルウィン”で試合が行われる時は、収穫したばかりの枝豆を販売することもあります。

11月 地域の生産者の方にご協力いただき、大豆の収穫を行います。

12月以降 地元の障がい福祉サービス事業者の手で選別、出荷されます。出荷されない豆はクッキーなどに加工して販売され、これらの売り上げの一部は事業所利用者の工賃になります。取材協力:社会福祉法人 長野県知的障害者育成会 ドリームワークス

松本市内の保育園の給食メニューにも提供されました。活動や地域農業の大切さを描いた『ガンズくんとあやみどり』という絵本も制作しました。

お話を聞いた(株)松本山雅の渡邊はるかさん

また、ホームスタジアムの試合がある時は地元農家が自分たちの手で農産物を持ち込み、販売する「軽トラ野菜マルシェ」というイベントも開催され、これらはサポーターの間では、サンプロアルウィンの名物としてすっかり人気が定着しているそうです。
渡邊さんは、これからも『スマイル山雅農業プロジェクト』を通じて食や農業にまつわる活動を続けながら、地域とクラブを盛り上げていきたいと語っていました。

今週のまとめ

食や農業を通じて地域貢献に取り組むプロスポーツチームを紹介しました。
地元特産の農産物を育てることで、世代や立場を超えた人々の交流が生まれ、
食育についての関心や理解も深まっています。

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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