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農林水産省

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作成日:平成29年3月31日

ブロイラー鶏群から製造された鶏肉のサルモネラ汚染状況調査(2)

2.1.2.2. 食鳥処理場

2.1.2.2.5 ブロイラー鶏群から製造された鶏肉の菌汚染状況調査(2)(平成25年度)

次のことを把握するために、食鳥処理場4か所において、9~10処理日にわたり、計78ブロイラー鶏群の盲腸内容物や鶏肉を対象にサルモネラの調査を行いました。

  • サルモネラ汚染鶏肉はサルモネラ陽性鶏群から製造されるのかどうか。
  • 陽性鶏群のサルモネラが、食鳥処理場の機械や器具等を介して陰性鶏群から製造される鶏肉を汚染するのかどうか。

その結果、サルモネラ陽性の39鶏群から製造された鶏肉の汚染率は72%、サルモネラ陰性の39鶏群から製造された鶏肉の汚染率は24%でした。今回の調査におけるサルモネラ汚染鶏肉の75%が、陽性鶏群から製造された鶏肉でした。また、サルモネラ陰性鶏群から製造された鶏肉から、その陰性鶏群の直前に処理された陽性鶏群から分離されたサルモネラと同じ血清型の菌が分離されました。

(1) 目的

サルモネラ汚染鶏肉はサルモネラ陽性鶏群から製造されるのかどうか、また、陽性鶏群が処理された後に陰性鶏群が処理される場合、陽性鶏群のサルモネラが、機械や器具等を介して、陰性鶏群から製造される鶏肉を汚染するのかどうかを把握する17

17 「ブロイラー鶏群から製造された鶏肉のカンピロバクター汚染状況調査(2)」(2.1.1.2.5)と併せて実施。

(2) 試料採取

食鳥処理場4か所(A~D18)において、平成25年5~12月の間にそれぞれ9~10処理日ずつを選び、第1鶏群(1番目に処理される鶏群)及び第2鶏群(2番目に処理される鶏群)を調査対象としました(計78鶏群)。各鶏群から、中抜き工程において15羽分の盲腸内容物(1鶏群につき5羽分をプールした試料3点)と、解体・包装後に鶏肉(ムネ肉及び肝臓の2種類)を5袋ずつ(1鶏群につき試料10点)採取しました。

18 食鳥処理場名A~Dは、他調査の結果で用いられている食鳥処理場名と関係ありません。

(3) 微生物試験

盲腸内容物及び鶏肉を試料としてサルモネラの定性試験(3.2.1.1(11)3.2.1.5(2))を実施しました。盲腸内容物の試料のうち、1点でもサルモネラが分離された鶏群は、サルモネラ陽性と判定しました。分離されたサルモネラについては、O抗原及びH抗原を調べて血清型を特定(3.2.3.1)しました。

(4) 結果

78鶏群のうち、39鶏群(50%)がサルモネラ陽性でした。サルモネラ陽性の39鶏群から製造された鶏肉の72%(281/390)からサルモネラが分離され、一方、サルモネラ陰性の39鶏群から製造された鶏肉については、24%(95/390)からサルモネラが分離されました(表46)。今回の調査におけるサルモネラ汚染鶏肉の75%(281/376)が、サルモネラ陽性鶏群から製造された鶏肉でした。

表46:鶏肉のサルモネラ汚染状況

鶏群

鶏肉

試料点数

陽性点数

陽性率(%)

サルモネラ陽性鶏群

(39鶏群)
全体 390 281

72

ムネ肉 195 153

 79a

肝臓 195 128

 66a

サルモネラ陰性鶏群

(39鶏群)
全体 390 95

24

ムネ肉 195 42

22

肝臓 195 53

27

 
注釈 ap<0.01(99%以上の確率で、サルモネラ陽性鶏群から製造された肝臓は、同鶏群から製造されたムネ肉よりも、サルモネラ陽性率が低い。)



サルモネラ陰性の39鶏群のうち9鶏群は、陽性鶏群の直後に処理されていました。その9鶏群のうち7鶏群から製造された鶏肉38点(ムネ肉19点、肝臓19点)からサルモネラが分離され、このうち27点は、直前に処理された陽性鶏群から分離されたサルモネラと同じ血清型でした。
 
また、今回の調査では、食鳥処理場や採取時期(月別)の違いによる、鶏肉からのサルモネラの分離状況に差はありませんでした(表47)。

表47:食鳥処理場別の鶏肉からのサルモネラ分離状況

処理場 鶏肉のサルモネラ汚染率(%) [陽性点数/試料点数]
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
A 15%

[3/20]
80%

[16/20]
8%

[3/40]
90%

[18/20]
5%

 [1/20]
20%

[8/40]
95%

[19/20]
25%

[5/20]
B 65%

[13/20]
70%

[14/20]
55%

[22/40]
90%

[18/20]
50%

[10/20]
33%

[13/40]
35%

[7/20]
75%

[15/20]
C 0%

[0/20]
55%

[11/20]
65%

[26/40]
60%

[12/20]
30%

[6/20]
53%

[21/40]
0%

 [0/20]
70%

[14/20]
D 採取

せず
95%

[19/20]
85%

[17/20]
100%

[20/20]
33%

[13/40]
100%

[20/20]
78%

[31/40]
0%

[0/20]

※ムネ肉及び肝臓
 

なお、盲腸内容物から分離された88株のサルモネラのうち80株は、3つの血清型(S. Infantis(65%、57/88)、S. Typhimurium(19%、17/88)、S. Schwarzengrund(7%、6/88))に分類され、残りの8株は既知の血清型に分類できませんでした。また、鶏肉から分離された389株のサルモネラのうち328株は、3つの血清型(S. Infantis(58%、227/389)、S. Typhimurium(23%、88/389)、S. Schwarzengrund(31%、12/389)、S. Lagos(0.3%、1/389))に分類され、残りの61株は既知の血清型に分類できませんでした。

指導者・事業者の皆様へ

食鳥処理場4か所において、サルモネラ陽性の39鶏群から製造された鶏肉の72%、陰性の39鶏群から製造された鶏肉の24%からサルモネラが分離されました。そして、サルモネラ汚染鶏肉の75%が、サルモネラ陽性鶏群から製造された鶏肉でした。過去の調査(2.1.2.2.1)でもサルモネラ汚染鶏肉のほとんどが陽性鶏群から製造されており、農場で鶏群のサルモネラの保有率を下げることによって、鶏肉の汚染率が下がり、食中毒の発生の減少につながると期待できます。

なお、分離されたサルモネラの血清型の多くは、サルモネラ食中毒事例で分離される血清型でした(ただし、2,500以上の血清型のうち、サルモネラ食中毒の原因として一番多い血清型S.Enteritidisは分離されませんでした。)。

また、サルモネラ陰性鶏群から製造された鶏肉から、その陰性鶏群の直前に処理された陽性鶏群から分離されたサルモネラと同じ血清型の菌が分離されました。陽性鶏群を介して食鳥処理場にサルモネラを持ち込むと、それが食鳥処理場の機械や器具等を汚染し、その後に処理される鶏群を汚染する可能性があるので、農場で衛生対策を実施することが重要です。

なお、今回の調査では、食鳥処理場や採取時期(月別)の違いによる、鶏肉からのサルモネラの分離状況について、差はありませんでした。

ブロイラー鶏群のサルモネラ保有率は約8割(2.1.2.1.12.1.2.1.2)、食鳥処理場に搬入された鶏群のサルモネラ保有率も約6割(2.1.2.2.4)であったため、食鳥処理場は、受け入れる生鳥がサルモネラに感染している可能性があることを考慮して、衛生対策を実施する必要があります。厚生労働省は、食鳥処理場における衛生管理措置及び食鳥検査や、食鳥処理場におけるHACCPの導入を推進しています。

 

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課
担当者:危害要因情報班
代表:03-3502-8111(内線4457)
ダイヤルイン:03-6744-0490
FAX:03-3597-0329