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農林水産省

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ブロイラー鶏群から製造された鶏肉のカンピロバクター汚染状況調査(2)

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作成日:平成29年11月9日

2.1.1.2. 食鳥処理場

2.1.1.2.5 ブロイラー鶏群から製造された鶏肉の菌汚染状況調査(2)(平成25年度)

次のことを把握するために、食鳥処理場4か所において、9~10処理日にわたり、計78ブロイラー鶏群の盲腸内容物や鶏肉を対象にカンピロバクターの調査を行いました。
  • カンピロバクター汚染鶏肉はカンピロバクター陽性鶏群から製造されるのかどうか。
  • 陽性鶏群のカンピロバクターが、食鳥処理場の機械や器具等を介して陰性鶏群から製造される鶏肉を汚染するのかどうか。

その結果、カンピロバクター陽性の22鶏群から製造された鶏肉の汚染率は79%、カンピロバクター陰性の56鶏群から製造された鶏肉の汚染率は0.5%でした。今回の調査におけるカンピロバクター汚染鶏肉の98%が、陽性鶏群から製造された鶏肉でした。また、カンピロバクター陰性鶏群から製造された鶏肉から、その陰性鶏群の直前に処理された陽性鶏群から分離されたカンピロバクターと同じ性状の菌13が分離されました。
 
13 菌種とフラジェリン遺伝子の型。

 


(1) 目的

カンピロバクター汚染鶏肉はカンピロバクター陽性鶏群から製造されるのかどうか、また、陽性鶏群が処理された後に陰性鶏群が処理される場合、陽性鶏群のカンピロバクターが、機械や器具等を介して、陰性鶏群から製造される鶏肉を汚染するのかどうかを把握する14

14  「ブロイラー鶏群から製造された鶏肉のサルモネラ汚染状況調査(2)」(2.1.2.2.5)と併せて実施。

 

(2) 試料採取

食鳥処理場4か所(A~D15)において、平成25年5~12月の間にそれぞれ9~10処理日ずつを選び、第1鶏群(1番目に処理される鶏群)及び第2鶏群(2番目に処理される鶏群)を調査対象としました(計78鶏群)。各鶏群から、中抜き工程において15羽分の盲腸内容物(1鶏群につき5羽分をプールした試料3点)と、解体・包装後に鶏肉(ムネ肉及び肝臓の2種類)を5袋ずつ(1鶏群につき試料10点)採取しました。

15 食鳥処理場名A~Dは、他調査の結果で用いられている食鳥処理場名と関連ありません。

 

(3) 微生物試験

盲腸内容物及び鶏肉を試料としてカンピロバクターの定性試験(3.1.1.1(4)3.1.1.6)を実施しました。盲腸内容物の試料のうち、1点でもカンピロバクターが分離された鶏群は、カンピロバクター陽性と判定しました。分離されたカンピロバクターについては、生化学的試験及びPCR法により菌種(Campylobacter jejuni, C.coli)を同定(3.1.3.1)しました。また、菌株の同一性を確認するため、フラジェリン遺伝子を利用した型別試験(3.1.3.2)を行いました。

(4) 結果

78鶏群のうち、22鶏群(28%)がカンピロバクター陽性でした。カンピロバクター陽性の22鶏群から製造された鶏肉の79%(173/220)からカンピロバクターが分離され、一方、カンピロバクター陰性の56鶏群から製造された鶏肉については、0.5%(3/560)のみカンピロバクターが分離されました(表32)。今回の調査におけるカンピロバクター汚染鶏肉の98%(173/176)が、カンピロバクター陽性鶏群から製造された鶏肉でした。
 

表32:鶏肉のカンピロバクター汚染状況

鶏群

鶏肉

試料点数

陽性点数

陽性率(%)

カンピロバクター陽性鶏群

(22鶏群)
全体 220 173

79

ムネ肉 110 76

 69a

肝臓 110 97

88a

カンピロバクター陰性鶏群

(56鶏群)
全体 560 3

    0.5

ムネ肉 280 2

    0.7

肝臓 280 1

    0.4

 
注釈 ap<0.01(99%以上の確率で、カンピロバクター陽性鶏群から製造されたムネ肉は、同鶏群から製造された肝臓よりも、カンピロバクター陽性率が低い。)



カンピロバクター陰性の56鶏群のうち2鶏群は、陽性鶏群の直後に処理されていました。その2鶏群のうち1鶏群から製造されたムネ肉1点からカンピロバクターが分離され、直前に処理された陽性鶏群から分離されたカンピロバクターと同じ性状(C.jejuni、フラジェリン遺伝子9型)でした。

また、食鳥処理場別の鶏肉からのカンピロバクターの分離状況は、調査期間を通じて分離されなかったところ(食鳥処理場A)、調査期間を通じて分離されたところ(食鳥処理場C)、一時期に継続して分離されたところ(食鳥処理場B)、散発して分離されたところ(食鳥処理場D)があり、食鳥処理場によって傾向が異なっていました(表33)。


表33:食鳥処理場別の鶏肉からのカンピロバクター分離状況

処理場 鶏肉のカンピロバクター汚染率(%) [陽性点数/試料点数]
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
A 0%

[0/20]
0%

[0/20]
0%

[0/40]
0%

[0/20]
0%

[0/20]
0%

[0/40]
0%

[0/20]
0%

[0/20]
B 0%

[0/20]
55%

[11/20]
15%

[6/40]
50%

[10/20]
50%

[10/20]
5%

[2/40]
0%

[0/20]
0%

[0/20]
C 10%

[2/20]
50%

[10/20]
48%

[19/40]
100%

[20/20]
45%

[9/20]
70%

[28/40]
70%

[14/20]
75%

[15/20]
D 採取

せず
0%

[0/20]
100%

[20/20]
0%

[0/20]
0%

[0/40]
0%

[0/20]
0%

[0/40]
0%

[0/20]

※ムネ肉及び肝臓
 

 なお、盲腸内容物から分離されたカンピロバクターの78%(54/69)がC.jejuni、残りはC.coliでした。また、鶏肉から分離されたカンピロバクターのうち、94%(169/179)はC.jejuni、残りはC.coliでした。


指導者・事業者の皆様へ

食鳥処理場4か所において、カンピロバクター陽性の22鶏群から製造された鶏肉の79%、陰性の56鶏群から製造された鶏肉の0.5%からカンピロバクターが分離されました。そして、カンピロバクター汚染鶏肉の98%が、カンピロバクター陽性鶏群から製造された鶏肉でした。過去の調査(2.1.1.2.1)でもカンピロバクター汚染鶏肉のほとんどが陽性鶏群から製造されており、農場で鶏群のカンピロバクターの保有率を下げることによって、鶏肉の汚染率が下がり、食中毒の発生の減少につながると期待できます。

また、カンピロバクター陰性鶏群から製造された鶏肉から、その陰性鶏群の直前に処理された陽性鶏群から分離されたカンピロバクターと同じ菌が分離されました。陽性鶏群を介して食鳥処理場にカンピロバクターを持ち込むと、それが食鳥処理場の機械や器具等を汚染し、その後に処理される鶏群を汚染する可能性があるので、農場で衛生対策を実施することが重要です。

なお、月別の鶏肉からのカンピロバクターの分離状況は、食鳥処理場によって傾向が異なっていました。この結果は、過去の調査(2.1.1.2.3)と同様でした。

ブロイラー鶏群のカンピロバクター保有率は約5割(2.1.1.1.12.1.1.2.4)であったため、食鳥処理場は、受け入れる生鳥がカンピロバクターに感染している可能性があることを考慮して、衛生対策を実施する必要があります。厚生労働省は、食鳥処理場における衛生管理措置及び食鳥検査や、食鳥処理場におけるHACCPの導入を推進しています。

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課
担当者:危害要因情報班
代表:03-3502-8111(内線4457)
ダイヤルイン:03-6744-0490
FAX:03-3597-0329