作成日:平成28年12月28日
採卵鶏農場のサルモネラ保有状況・鶏卵のサルモネラ汚染状況調査
2.2.1.1. 採卵鶏農場・GPセンター(卵選別包装施設)
2.2.1.1.4. 採卵鶏農場の菌保有状況・鶏卵の菌汚染状況調査(平成26年度)
採卵鶏農場における鶏群とその鶏群由来の鶏卵のサルモネラ保有状況や鶏卵の洗浄効果を把握するために、2農場の6鶏群の新鮮盲腸便と塵あい、鶏舎内と農場内のGPセンター(卵選別包装施設)から採取した鶏卵を対象にサルモネラの調査を行いました。その結果、1農場の複数の鶏群から、同一の血清型のサルモネラが複数回分離されました。また、GPセンターにおいて洗浄後の鶏卵の卵殻からサルモネラが分離されました。 |
(1) 目的
採卵鶏農場における鶏群とその鶏群由来の鶏卵のサルモネラ保有状況や鶏卵の洗浄効果を把握する。
(2) 試料採取
敷地内にGPセンター(卵選別包装施設)を併設している2農場(A及びB農場7)において、平成26年9月~11月に試料を採取しました。
毎月1回(計3回)、各農場で飼育されている鶏群(A農場:3鶏群8、B農場:3鶏群)の新鮮盲腸便試料を1鶏群につき5点(鶏舎内の5か所から)、塵あい試料を1鶏群につき2点(鶏舎内の2か所から)採取しました。
また、毎週(計13回)、A農場では調査対象鶏群の鶏舎内の5か所以上から洗浄前の鶏卵(100個)と農場内のGPセンターから洗浄・包装後の鶏卵10パック(10個入り、計100個)をそれぞれ採取しました。B農場では農場内のGPセンターから、調査対象鶏群由来の鶏卵(洗浄前100個、洗浄・包装後10パック(10個入り、計100個))を採取しました。
7農場名A及びBは、他調査の結果で用いられている農場名と関連ありません。
8平成26年9月から11月までの期間を通じて試料を採取した1鶏群、平成26年9月の1回目のみ採取した1鶏群、平成26年9月の2回目以降から11月までの期間に採取した1鶏群
(3) 微生物試験
新鮮盲腸便と塵あいを試料としてサルモネラの定性試験(3.2.1.1 (9) 、3.2.1.4(5) )を行いました。これらの試料のうち1点でもサルモネラが分離された鶏群は、陽性(サルモネラ保有)と判定しました。また、消毒前の鶏卵は10個ごとに、消毒・包装後の鶏卵はパック(10個入り)ごとに卵殻と卵内容に分けて、それぞれを試料1点とし、サルモネラの定性試験(3.2.1.7 (3))を行いました。
両農場で分離されたサルモネラについてはO抗原とH抗原を調べて血清型を特定(3.2.3.1)しました。
(4) 結果
A農場では、調査した3鶏群のうち、平成26年9月の1回目のみ採取した1鶏群(33%)がサルモネラ陽性でした。新鮮盲腸便と塵あいからサルモネラが分離され、血清型はいずれもSalmonella Singaporeでした。
平成26年9月の5回目に採取した洗浄前の鶏卵の卵殻(2/130、2%)からサルモネラが分離され、血清型はS. Lockleazeでした。S. Singaporeが分離された鶏群とは異なる鶏群由来の鶏卵でした。洗浄後の鶏卵の卵殻と卵内容物からはサルモネラは分離されませんでした。
B農場では、調査した3鶏群全てがサルモネラ陽性でした。新鮮盲腸便と塵あいから、それぞれ6の血清型と11の血清型が分離されました。新鮮盲腸便や塵あいから分離されたこれらの11の血清型のうち、6の血清型が採材期間(平成26年9月~11月の月1回)中2回以上連続して分離されました(表14)。
表14:B農場の新鮮盲腸便や塵あいから分離されたサルモネラの血清型と鶏群数
O抗原の型 | 血清型※1 | 鶏群数※2 | ||
---|---|---|---|---|
9月 | 10月 | 11月 | ||
O4群 | 特定不能 [O4:d:-] | 0 | 1 | 1 |
O7群 | S. Infantis | 1 | 1 | 1 |
S. Lockleaze | 2 | 3 | 3 | |
S. Mbandaka | 1 | 0 | 0 | |
S. Potsdam | 2 | 3 | 2 | |
S. Tennessee | 2 | 0 | 1 | |
O8群 | S. Corvallis | 3 | 1 | 3 |
O13群 | 特定不能 [O13:y:-] | 1 | 0 | 0 |
O16群 | S. Yoruba | 1 | 0 | 0 |
O18群 | 特定不能 [O18:z4,z23:-] | 1 | 1 | 1 |
O群不明 | 特定不能 [OUT:HUT] | 0 | 0 | 1 |
1 OUT:O抗原が不明、HUT:H抗原が不明
2 調査鶏群数は3
洗浄前の鶏卵の卵殻(36/130、28%)と洗浄後の卵殻(2/130、2%)からサルモネラが分離されました。卵内容物からは洗浄前も洗浄後もサルモネラは分離されませんでした。
洗浄前の鶏卵から分離された8の血清型のうち、3の血清型(S. Infantis、S. Potsdam、[O18:z4,z23:-])は採材期間中に2回以上連続して分離されました(表15)。連続して分離された3の血清型は新鮮盲腸便や塵あいからも分離されていました。
洗浄後の鶏卵の卵殻から分離されたサルモネラの血清型はS. Infantisと[O18:z4,z23:-]でした。いずれの血清型も新鮮盲腸便や塵あい、洗浄前の鶏卵の卵殻から分離されていました。
表15:B農場の洗浄前の鶏卵卵殻から分離されたサルモネラの血清型
O抗原の型 | 血清型※1 | 鶏群数※2 | ||
---|---|---|---|---|
9月 | 10月 | 11月 | ||
16※3 | 13※4 | 7 | ||
O7群 | S. Infantis | 1 | 2 | 0 |
S. Lockleaze | 10 | 0 | 1 | |
S. Potsdam | 4 | 7 | 5 | |
S. Tennessee | 0 | 1 | 0 | |
O8群 | S. Corvallis | 1 | 0 | 0 |
O16群 | S. Yoruba | 0 | 1 | 0 |
O18群 | 特定不能 [O18:z4,z23:-] | 1 | 2 | 1 |
O群不明 | 特定不能 [OUT:HUT] | 0 | 1 | 0 |
1 OUT:O抗原が不明、HUT:H抗原が不明
2 調査鶏卵個数は、9月では50個(10個×5回)、10月と11月ではそれぞれ40個(10個×4回)
3 16試料のうち1試料からは、S. LockleazeとS. Potsdamが分離された。
4 13試料のうち1試料からは、S. Potsadmと[OUT: HUT]が分離された。
指導者・事業者の皆様へ 今回調査した2農場のうち1農場では、過去の調査(2.2.1.1.1)と同様に、複数の鶏群から同一の血清型が複数回分離されました。このことは、農場にサルモネラが侵入すると、鶏舎間で感染が広がり、かつ、持続してしまう可能性があることを示しています。農場において有効と考えられる衛生対策を「鶏卵の生産衛生管理ハンドブック」(生産者編、指導者編)で紹介しています。ご自身の農場における衛生対策の再確認や、食中毒を防ぐための追加の対策を検討したい方の参考になれば幸いです。 |
お問合せ先
消費・安全局食品安全政策課担当者:危害要因情報班
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