トピックス7 半農半Xなど多様な農業への関わり方が展開

ここ数年、都市住民の農山漁村や農業への関心の高まりもうかがわれる中で、別の仕事をしながら農業をする「半農半X」や短期・短時間の就業先として農業に携わる動き等の広がりが見られるようになっています。以下では、このような多様な農業への関わり方をめぐる最近の動きについて紹介します。
(半農半Xの広がり)
人口急減地域特定地域づくり推進法(*1)により、都市から農村に移住し農業と別の仕事を組み合わせた「半農半X」の取組が広がりを見せています。Iターンで島根県津和野町(つわのちょう)に移住した金田信治(かねだしんじ)さんは、同法に基づいて令和3(2021)年3月に設立された「津和野町特定地域(つわのちょうとくていちいき)づくり事業協同組合」の職員として、5~9月は水稲、茶、露地野菜等の栽培、収穫作業を中心に従事し、それ以外の期間は酒類製造に携わっています。金田さんは、「マルチワークによりスキルアップしている実感があり、人材が不足している現場に派遣されることから、感謝されてモチベーションアップにもつながる。」と述べています。
*1 正式名称は「地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律」(令和2(2020)年6月施行)
(産地間連携の取組を利用した短期間就農の動き)

繁忙期の異なる複数地域の農業協同組合(以下「農協」という。)が連携し、就業期間終了後の次の就業先を紹介し合う取組が行われています。この取組を利用して、定住せずに短期間就業で農作業を行いながら全国を渡り歩くアルバイトも見られます。
北海道のJAふらの、愛媛県のJAにしうわ、沖縄県のJAおきなわは「農業労働力確保産地間連携協議会(のうぎょうろうどうりょくかくほさんちかんれんけいきょうぎかい)」を平成30(2018)年2月に設立し、共同でアルバイトの確保を行っています。全国からWeb広告等で募集した主に20~30代の男女のアルバイト20~30人程度が、産地間を繁忙期に合わせて移動し、それぞれの農協のアルバイト用宿舎に滞在しながら、農作業に従事しています。参加したアルバイトからは「次のアルバイト先の紹介があるので助かる。」との声が寄せられています(図表トピ7-1)。
(農業を組み合わせたワーケーションの実施)
農業に興味のある都市住民と農村地域の農業や観光・宿泊業が連携し、働き方改革の一環として広がりを見せるワーケーションと農業を組み合わせた取組が行われています。
都市地域のIT企業に勤める戸塚惇子(とつかじゅんこ)さんは、令和3(2021)年6~7月に長野県須坂市(すざかし)で実施されたワーケーションと農業を組み合わせた取組「農ケーション」に15日間参加しました。戸塚さんは、期間中は同市の旅館に宿泊し、平日午前5~7時にぶどうの摘粒や出荷作業等の農作業を行い、午前9時~夕方にテレワークを行いました。テレワークが短いときは農作業を増やし、また、休日には農作業や観光を行い過ごしました。戸塚さんは「農作業での収入を滞在費として補填でき、身体もリフレッシュできるので良い体験になった。」と述べています。
(労働力募集アプリを活用した1日単位での農業への関わり)
北海道十勝(とかち)管内の農協等で構成される「とかちアグリワーク協議会設立準備会(きょうぎかいせつりつじゅんびかい)」(令和元(2019)年設立)は、Kamakura Industries(かまくらいんだすとりーず)株式会社が開発した1日バイトアプリ「デイワーク」を活用して、短期で働きたい人とアルバイトを雇いたい農業者をマッチングする取組をしています。デイワークを利用してアルバイトをする者は、副業として利用する社会人が最も多く、次いで学生となっています。アルバイトをする者の多くからは、「満足度が高い。」との声があり、また、アルバイトを雇用する農業者からも、「当初は1日単位で雇うことに不安があったが、始めてみたらとても真面目に一生懸命に作業してくれてとても助かった。」との声がありました。
(多様な農業への関わり方を可能とする取組と農業現場での期待)
これらの動きからは、雇う側、雇われる側の双方が、就農時間、雇用形態、居住地域等に柔軟に対応することで、多様な農業への関わり方が可能となっていることがうかがわれます。農業の現場では労働力不足に直面していることから、今後、このような新たな動きが更に広がり、農業現場での短期的な労働力不足の解消に寄与するとともに、将来的な就農につながっていくことが期待されます。
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