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農林水産省

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中部地方 静岡県

静岡県

画像提供元:静岡県観光連盟

日本一の富士と駿河湾、豊かな自然をいだく県

静岡県は日本のほぼ中央に位置し、太平洋に面している。南側は遠州灘、駿河湾、相模灘に沿った約500キロメートルの海岸線であり、北側は富士山など3000メートル級の山々が連なる北部山岳地帯で東西に長い地形である。標高3776メートルの富士山と水深が2500メートルの駿河湾は共に日本一の高さ・深さを誇り豊かな自然に恵まれている。
気候は北部山岳地帯を除けば全般的に温暖な海洋性気候。春、夏、秋、冬と四季がはっきりしているが、冬は乾燥して晴天が多く、平地における降雪は少ない。
県内の地域区分は、中部、西部、東部となっているが、東部を伊豆地域と分ける場合もある。

取材協力店舗:懐石 いっ木

徳川家康ゆかりの地

静岡県は江戸幕府を開いた徳川家康のゆかりの地である。家康は幼少期、今川氏の人質として駿府で過ごし、晩年も駿府に戻ってきている。死後埋葬された久能山東照宮(国宝)や、静岡浅間神社など家康ゆかりの寺社も残っている。
静岡県が現在の形になったのは明治9年8月である。それ以前の廃藩置県(明治4年)が実施されたときは、韮山県(伊豆)、静岡県(駿河、遠江)、堀江県(浜名湖北部)の3県であった。同年11月、韮山県は足柄県の一部となり、遠州には新たに浜松県が設置された。やがて、明治9年4月の足柄県廃止に伴い、旧伊豆の国が静岡県と合併し、さらに同年、浜松県と静岡県が合併したことにより、現在の静岡県が生まれている。
静岡浅間神社

画像提供元:静岡県観光協会

静岡県は東日本と西日本のほぼ中央にあるため東西の食文化の接点といえる位置にあり、東西双方の嗜好に通じている。生産される農林水産物は収穫量が全国でトップクラスの茶やミカン、温室メロン、ワサビ、カツオ、マグロ、桜エビ、シラスなど1140品目を超え、多彩な食文化が育まれている。またピアノや二輪自動車・原動機付き自転車、プラモデルの出荷量・額は日本一であり、ものづくり産業も盛んである。
静岡県の食文化は大きく「中部地域」「西部地域」「東部地域」に分けられる。
それでは、各エリアの特徴と、そこに育まれた食文化を紹介しよう。

<中部地域>
ふるさとの味は黒はんぺんとサクラエビ

県中央部に位置し、県庁所在地の静岡市、焼津市、藤枝市、島田市、牧之原市、吉田町、川根本町の5市2町で構成される。牧之原大地一面に拡がるお茶畑、清水港や焼津港で水揚げされるマグロやカツオ、由比港のサクラエビ、用宗港のシラスなど収穫量が全国1、2位を誇る食の素材に恵まれた地域である。
静岡市内にあるおでん街・横丁では、「静岡おでん」が味わえる。牛すじを煮込んだ黒いだし汁に、大根や黒はんぺんなどを入れ煮込み、たっぷりのだし粉をかけて食べることで知られている。
サクラエビ干し

画像提供元:静岡県観光協会

黒はんぺんとは、一般的な白いはんぺんとは見た目も食感も異なり、色は黒っぽく、形は半円形で、サバ・アジ・イワシなどのすり身を茹でたものだ。静岡県では、はんぺんといえば、この黒はんぺんのことをさす。おでんの具材にする他、フライにしても食べられている。静岡市では「黒はんぺんフライ」は子どもから大人まで年齢を問わず親しまれている、ふるさとの味である。
黒はんぺんフライ
国内では駿河湾でしか水揚げされないサクラエビを使った料理も日常の食卓に登場する。「サクラエビのかき揚げ」は、中部地域に限らず県内の家庭ではよく作られている。揚げたてのかき揚げは桜エビの香ばしさが漂い、かき揚げ丼にしたり、年越し蕎麦の上にのせたりしても食される。また「沖あがり」は、サクラエビ漁の漁師らが漁の反省をしながら酒の肴に食べたという鍋料理。豆腐やネギと一緒に桜エビを甘辛く煮たすき焼き鍋風のものである。
サクラエビのかき揚げ

中部地域は江戸時代、東海道五十三次の宿場があったため、当時旅人に評判だった名物が今に伝わる。丸子宿の「とろろ汁」は、山芋である自然薯をすって、だし汁と味噌で割ったものを麦飯にかけて食べる料理で、スタミナ食として知られていた。現在でも家庭で作られている。

また「安倍川もち」も、餅にきな粉をまぶしたもので人気があったとされる一品。現在も県内の家庭では、手軽に作られている。つきたての餅、あるいは焼いた餅をさっと煮て、砂糖を混ぜたきな粉をまぶして食べる。安倍川橋のたもとには、安倍川もちを提供する店が並び、観光客が舌鼓をうっている。
安倍川もち

画像提供元:Kimiko Uyama

<西部地域>
開発精神息づく地域が生んだ、古くて新しい味

浜松市、磐田市、掛川市、袋井市、湖西市、御前崎市、菊川市、森町の7市1町で構成される。天竜川を挟んで西側には三方原台地、東側には磐田原台地が広がり、南は遠州灘から御前崎まで海岸線が続く。ウナギの養殖で有名な浜名湖は汽水湖(海水と淡水の混じり合った塩分濃度の高い湖)となっている。
奥浜名湖

画像提供元:静岡県観光協会

同地域は、自動車や二輪車、楽器などの製造業が盛んである。トヨタ・ホンダ・スズキ・ヤマハなどの発祥の地であり、ヤマハや河合、ローランドなどの楽器メーカーもある。また、温暖な気候を活かしたお茶、メロン、みかんなどの栽培や、浜名湖でのカキ、のり、ウナギの養殖、遠州灘のシラス漁などが行われている。
この地域では「遠州のからっ風」と呼ばれる強い季節風が吹くが、この風と長い日照時間が「切り干しいも」を作る上でいい影響を及ぼし、甘さと柔らかさが特徴の切り干しいもができあがる。また遠州地域では発酵食品である浜納豆が知られている。通常の糸引き納豆とは異なり、ぽろぽろに乾いた濃い味噌色の柔らかい豆である。大福寺(浜松市)において秘伝の製法で受け継がれてきているため大福寺納豆とも呼ばれている。

南側に面している駿河湾は、大量のプランクトンが発生するため国内でも有数のシラス漁場となっている。新鮮な生のシラスを温かいご飯に載せ、その上にワケギや海苔を散らす「生シラス丼」が家庭でも気軽によく食べられ、観光客にも人気がある。
生シラス丼

画像提供元:「しずおかのおかず」開港舎

地域興しのため、昔の料理を再現したものもある。江戸時代に袋井宿で提供されていたものであり、「たまごふわふわ」と名づけられた料理だ。袋井市観光協会が地域の新名物になるものを生み出したいと、江戸時代の文献を調べ復活させた。卵とだし汁だけで作ることができ、名前の通りふわっとした一品。家庭で作れるようレシピも公開されている。
たまごふわふわ

画像提供元:袋井市観光協会

<東部地域(伊豆地域を含む)>
富士の雪解け水と海に恵まれた食

富士市、沼津市、御殿場市、富士宮市、裾野市、清水町、長泉町、小山町、熱海市、三島市、伊東市、下田市、伊豆市、伊豆の国市、東伊豆町、河津町、南伊豆町、松崎町、西伊豆町、函南町の11市9町から構成される。
日本のシンボルである富士山を初めとして、海と山のある豊かな自然に恵まれている。同地域は首都圏に近く、伊豆半島は温泉資源に恵まれているため全国有数の観光地となっている。富士山は2013年6月には「信仰の対象と芸術の源泉」として世界文化遺産に登録され、さらに2015年7月に「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の1つとして、伊豆の国市にある韮山反射炉も世界文化遺産に登録された。伊豆半島は2018年4月に「ユネスコ世界ジオパーク」に認定されている。

農産物では、イチゴ、トマト、馬鈴薯、ワサビ、ミズカケナ、ミカン、カキなど多種多様な野菜・果物が栽培されている。近年、地元の馬鈴薯を使った三島コロッケなど新しい商品が開発され、首都圏からの観光客の人気を集めている。また、函南町丹那地区では、酪農が盛んで、乳製品の製造に力を入れている。
漁業においても、下田、稲取を中心にキンメダイの漁獲量が多く、その他、マグロ、サバ、アジ、イセエビ、サザエなどが水揚げされている。
富士の雪解け水が豊富な御殿場市を中心に栽培されている「水かけ菜」は、明治時代に新潟から種子が持ち込まれ栽培されるようになったものであり、春を告げる伝統野菜だ。漬け物にして、おやつやお茶請けとして食され、地元の人々に取っては欠かせないものとなっている。
富士宮市
また、同市の「御厨そば」は、水を使わずに山芋や自然薯を練り込んで打った蕎麦に、鶏ガラでだしを取り、ニンジン、シイタケ、鶏肉をいれて煮たつゆをかけて食す。現在でも大晦日や正月、行事の時によく食されている。
御厨そば

画像提供元:「しずおかのおかず」開港舎

伊豆半島は「キンメダイ」の産地であり、家庭で切り身や丸ごと1匹の姿のまま「金目の煮付け」を作ることも多い。近年は煮付けや刺身以外のメニューも次々に開発され、魚をあまり食べない世代にも受け入れられる商品が、道の駅やスーパー、土産物店などで提供されている。
金目の煮付け
伊豆の伝統的な郷土料理に「イルカの味噌煮」がある。イルカ猟は現在、イルカの愛護・保護活動の影響でほとんど行われていない。かつてはどの家庭でも、鮮魚点で売られていたイルカ肉を購入し、ゴボウ、こんにゃく、ニンジンなどと一緒に味噌煮にしたひと皿が食卓に上っていた。
イルカの味噌煮

画像提供元:「しずおかのおかず」開港舎

もともと漁師めしだった「まご茶漬け」は、アジのたたきをご飯の上にのせ、熱いお茶か、だし汁をかけ醤油とワサビで味をととのえ食べるものだが、マグロやブリの刺身で作るときもある。簡単にでき、魚のうまみが汁に溶け込み、生魚が苦手な子どもでも食すことができる郷土の一品である。

静岡県の主な郷土料理

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