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aff 2022 JUNE 6月号
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大好き!国産チーズ01 世界に誇る国産チーズの魅力

大好き!国産チーズ01 世界に誇る国産チーズの魅力

つくり手の思いがつまったチーズ工房を訪ねて 近年、世界でもその品質が高く評価されている国産チーズ。そのつくり手は、どのようなこだわりや工夫のもとにチーズづくりを行っているのでしょうか。今回は栃木県の「チーズ工房那須の森」の取り組みに迫ります。 つくり手の思いがつまったチーズ工房を訪ねて

工房一丸となってチーズづくりに取り組むチーズ工房 那須の森 工房一丸となってチーズづくりに取り組むチーズ工房 那須の森

工房長の安田翔吾さん

日本人好みのチーズを意識

栃木県那須塩原市にある、2008年創業の「チーズ工房 那須の森」。この工房が大切にしているのは「食べやすさ」。しっかりと味わいや香りを出しつつも、クセが強すぎない、日本人好みの味になるように心がけているそうです。その中でも「森のチーズ」は、イタリアで開催された「World Cheese Awards 2019」において、最高ランクであるスーパーゴールドを受賞。日本のみならず、世界各国の人々を魅了しました。そんな同工房のチーズづくりについて、工房長の安田翔吾さんにお話をうかがいました。

チーズの味を左右する生乳

製造しているチーズはフレッシュ、白カビ、ウォッシュ、セミハードの各タイプに加え、カチョカバロ、フィラータスティックとバリエーション豊富ですが、味の秘密は原料となる生乳。工房近くの牧場で飼育されているブラウンスイス種の牛から搾られる生乳を分けてもらっているのだとか。ブラウンスイス種の生乳は乳タンパク質が豊富でコクがあり、その生乳で作ったチーズは、熟成することでさらに風味が深くなるそうです。

手入れしながらしっかり熟成させることで
味に深みが増します。

ホルスタイン種が一般的な日本では
希少なブラウンスイス種。

こだわりポイント!

より安定したチーズづくりを目指して、チーズのレシピは常に検証、アップデートしてきました。みんなで試食して、味や香りをチェックすることを大切にしています。

丹念に水分を抜いてつくる
「森のチーズ」

毎週月曜日に行っている、「森のチーズ」の製造工程の一部を見せていただきました。300リットルの生乳に乳酸菌と凝乳酵素を入れ、固まり始めたところでカットしていきます。この後の攪拌作業と合わせると1時間以上ずっと手を動かし続けなければならない、ハードな作業。手応えから状態を確かめながら行う丹念な作業です。

カード(凝固したミルク)を
ピアノ線を張ったカードナイフでカット。

こだわりポイント!

細かく切るほど水分が抜けやすくなるため「森のチーズ」のような熟成タイプのチーズでは、この作業をじっくりと行っています。

World Cheese Awards 2019スーパーゴールド賞 森のチーズ 長熟 World Cheese Awards 2019スーパーゴールド賞 森のチーズ 長熟

「森のチーズ」は、自然のカビや菌、酵母の力で6カ月間熟成させたセミハードタイプのチーズです。「長熟」はさらに2カ月以上熟成させています。「クリーミーで後味が持続する」と高く評価され、初出品にして世界3,804品の中からベスト16に選出されました。

イチ押しポイント!

穏やかながら芳醇な香りと味が特長のチーズです。「長熟」は通常よりさらに濃厚な味わいになっています。

チームで取り組む
チーズづくり

「那須の森」でチーズづくりを行うスタッフは、工房長の安田さんを含めて総勢10名。同工房では、ひとりの看板職人ではなく、「チームで行う」チーズづくりを目指しています。チーズの種類ごとに担当は決まっていますが、担当者不在のときに対応できるように、また新人に技術を教えるために、基本的に担当者と補助の2名で作業を行う場合が多いそうです。このように、お互いにサポートしあいながら、高めあっています。

最初は補助から始め、
ある程度一人でつくれるようになるまで
3カ月から4カ月ほどかかるのだとか。

環境に負荷をかけない
持続可能なチーズづくり

チーズの製造工程では、大量のホエイ(乳清)が副産物としてつくられます。ホエイは非常に栄養価が高い食品ですが、全国の小規模なチーズ工房では活用しきれず、やむなく廃棄されるケースも。そこで同工房では、ホエイの廃棄ゼロを目指し、2021年秋に「ホエイの未来PROJECT」を立ち上げました。このプロジェクトは、クラウドファンディングで資金を募り、ブラウンチーズをつくるプロジェクト。ブラウンチーズとは、ホエイを煮詰めてつくるチーズで、砂糖不使用なのにキャラメルに似た独特の甘い味わいが特徴。主にお菓子の材料として活用することで新たな価値を乗せ、より多くの人に届けたいと考えているそうです。

加熱殺菌処理した生乳からチーズをつくると、
その上に液体のホエイが分離されます。

ホエイを煮詰めて練ることで
つくられるブラウンチーズ。

若きチーズ職人の出発点となる
工房を目指して

この工房は、もともと畜産の研究者だった落合一彦さんが立ち上げたもの。研究の過程で全国の牧場を回るなかで、「定年後はぜひ自分でチーズづくりをしたい」という思いを持ったことがきっかけだったそうです。落合さんの引退に伴って2021年に事業継承が行われ、新体制になりましたが、安田さんはその前年に現代表の山川将弘さんに誘われて工房に入りました。将来的には自らも独立を考えているという安田さん。今後は「スタッフ全員で力を合わせてチーズづくりを行う」という同工房ならではの環境を活かし、「チーズ職人志望の若手を育て、輩出できる工房にしたい」と考えているそうです。夏には2つ目となる新工房がオープン予定。「人が入れ替わってもチーズづくりが受け継がれ、広がっていく。そんな工房を目指していきます」と、笑顔で語ってくれました。

2021年6月21日に、
落合一彦さん(前列左から2番目)から
森林ノ牧場の山川将弘さん(同3番目)に事業承継。

チーズ工房 那須の森
工房長 安田翔吾 さん

1995年、愛知県生まれ。中学生のころから放牧景色に憧れ、北海道大学農学部在学中は放牧酪農と乳脂肪の研究の傍ら、日本各地のほか、イタリア、スイスをめぐり、放牧酪農とチーズの修業を積む。大学卒業後の2020年、(株)チーズ工房那須の森入社。 2021年、工房長就任。

チーズ工房 那須の森
公式サイトはこちら
外部リンク
データで見る国産チーズの今

かつて、日本人が食べやすいチーズとして、プロセスチーズが消費の主流でしたが、ワインブームや、日本から海外への旅行者の増加に伴い、ナチュラルチーズを楽しむ人も増えていきました。近年、日本国内におけるナチュラルチーズの消費量は増加しており、プロセスチーズの消費量を上回っています。また、国産チーズを製造するチーズ工房の数は近年着実に増加を続けており、国産チーズのさらなる生産量の増加が期待されます。

チーズの
国際コンテストを知る

世界的に権威のあるチーズの国際コンテストとして知られているのが、1988年にスタートした「World Cheese Awards(ワールド・チーズ・アワード)」と、1957年にスタートした「World Championship Cheese Contest(ワールド・チャンピオンシップ・チーズ・コンテスト)」です。ともに審査員として世界中からチーズの専門家やバイヤーが集まり、外観や香り、味わいなどについて細かく点数で評価します。近年、いずれのコンテストにおいても、日本のチーズは見た目の美しさや優しい味わいが高く評価されています。

ワールド・チーズ・アワード
主催
The Guild of Fine Food
開催地
ヨーロッパ各国
エントリー数
45カ国4,079品(2021年)
(国産チーズは25工房37品が出品)
写真提供:NPO法人 チーズプロフェッショナル協会

毎年秋にヨーロッパで開催。2021年11月にスペインで開催された大会では、国産チーズはスーパーゴールド受賞の2品含むゴールドラベル5品、シルバーラベル3品、ブロンズラベル6品を受賞しました。

ワールド・チャンピオンシップ・チーズ・コンテスト
主催
Wisconsin Cheese Makers Association
開催地
アメリカ・ウィスコンシン州
エントリー数
29カ国2,978品(2022年)
(国産チーズは23工房35品が出品)
写真提供:NPO法人 チーズプロフェッショナル協会

毎年春に、アメリカ国内向けのコンテストと全世界を対象とする国際コンテストを毎年交互に開催。2022年春に開催された大会では、国産チーズは2工房・3品が金賞を受賞、1工房・1品が銀賞を受賞しました。

今週のまとめ

国産チーズは、国内のみならず、
世界でもその実力が認められつつあります。
国内のチーズ工房は、
近年着実に増加しており、
さらなる生産量の増加が期待できます。

(PDF:8,423KB)

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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