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農林水産省

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aff 2022 AUGUST 8月号
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もっと食べたくなるトマト 生産者のこだわりが詰まったトマト農場を訪ねて

もっと食べたくなるトマト 生産者のこだわりが詰まったトマト農場を訪ねて

露地栽培をしているカゴメの加工用トマト契約農家と、ハウス栽培をしている生食用トマト農場。タイプが異なる2つの農場を訪問しました。

メーカーと契約農家の
二人三脚で取り組む
国産加工用トマトづくり

茨城県結城郡八千代町 古橋水長さん(カゴメ契約農家)、カゴメ(株)野菜事業部 佐藤公宣さん(フィールドパーソン)

取り決めた額で
全量買い取る契約栽培

農業から生産、加工、販売まで、一貫したバリューチェーンを持つカゴメ(株)。「畑は第一の工場」、「よい原料はよい畑から生まれる」という商品づくりの哲学を支えているのは、1899年の創業以来取り組み続けてきた契約農家との栽培です。この「契約栽培」では、まず作付け前にカゴメと農家の方々との間で価格を取り決め、畑から収穫されるトマトの全量を買い入れる契約を結びます。そしてその後カゴメから苗を提供し、「フィールドパーソン」と呼ばれる担当者が契約農家さんの畑を巡回して栽培指導などを行いながら、共にトマトをつくりあげていきます。農家にとっては、価格変動や廃棄の無駄を気にすることなく栽培に専念できる点が大きなメリットです。

古橋さんは八千代町内に5カ所の畑を持ち、面積は合計で約1町(約9,917平方メートル)になります。写真はそのうちで最も広い畑で、5反(約4,959平方メートル)ほどの広さがあります。

全契約農家の
2割以上を占める茨城県南西部

カゴメは現在16の道県で加工用トマトの契約栽培を展開していますが、なかでも大きなウエイトを占めているのが茨城県。とくに南西部の常総市、下妻市、八千代町にまたがるJA常総ひかりの管区は一大生産地となっています。全国のカゴメの契約農家の畑を合わせた面積は約300ヘクタールに及びますが、そのうち約70ヘクタールがこのエリアの畑なのだそうです。このエリアには90人ほどの契約農家さんがいますが、そのうちの一人、八千代町の古橋水長さんは2011年から加工用トマトの栽培を始めました。「それまでは、40年近くほうれんそうを中心に栽培をしていましたが、東日本大震災の影響で出荷停止に。困っていたところに、全農と農協を通じて契約農家の話をいただいたのです」

古橋水長さんとカゴメのフィールドパーソン、佐藤公宣さん。男性8名、女性1名のフィールドパーソンは、それぞれ担当エリアの畑を巡回し、作付けから収穫まで契約農家をサポートしています。

天候に左右される
露地での無支柱栽培

「トマトの栽培は初めてだったので、最初は手探り状態でした」と語る、古橋さん。カゴメのフィールドパーソンの指導を受けつつ、時には他の生産者にも相談しながら栽培に取り組んできました。支柱で茎を支えながらハウス栽培するのが一般的な生食用トマトと違って、加工用トマトは露地で支柱を使わずに育てるため、生育状況は天候に大きく左右されます。「トマトは雨を嫌う植物で、雨が多いと葉の密集した所が蒸れて病気になりやすい。だから通気性をよくし、防除を徹底することが大事です」。初年度こそ1反(約992平方メートル)あたり6トン程度の収穫量だったものの、今では毎年安定して約10トン収穫できるようになったそうです。

古橋さんの畑の加工用トマト栽培年間スケジュール 古橋さんの畑の加工用トマト栽培年間スケジュール

3月中旬 3月中旬

・カゴメからトマトの苗が入ったポットが届く。

・ポットより大きな容器に培土を入れ、
苗を移し替えて育てる。

4月中旬以降 4月中旬以降

・定植開始。水に浸らないように周囲から
30センチメートルほど高く土を盛って畝をつくり、
マルチ(ビニールなどのシート)で覆う。
遅霜が降りることがあるので、芽の部分がマルチの
穴から外に出ないように深めに土を掘って苗を植える。

・ある程度大きく育ったら、
風に倒されないように根元に土を入れる。

5月中旬以降 5月中旬以降

・1週間に1回の目安で防除。

・いったんビニールシートをはがし、
伸びた葉が土につかないように畝をつくり直す。

枝葉が密集している所は手で分けて通気性をよくします。

7月以降 7月以降

・収穫。7月後半と8月に入ってからの
2回収穫のピークがある。
2回目のピークが終わったらその年の収穫はほぼ終わり。

枝葉が程よく広がりつつ伸びているのは、新芽に栄養が行き渡って伸びている証拠。花芽は成長して黄色い花を咲かせると、約50日後に赤い実になっていきます。

安定した収穫量の秘訣は
巧みな土づくり

「古橋さんの畑は、本当にすばらしいですね」。すくすくと育つトマトの新芽を見て、このエリアを担当するカゴメのフィールドパーソン、佐藤公宣さんは感心したようにつぶやきます。「安定して1反あたり10トン収穫できるのは、じつはまれなことなんです」。その秘訣は、古橋さんの土づくりの巧みさにあると佐藤さんは言います。「肥料を適正な量とタイミングで与えているかどうかということになりますが、それが難しい。私たちも聞き取りしてマニュアル化しようとはしているのですが、なかなか可視化できません」

高品質なトマトを生み出す畑の土。「土づくりに神経を使うほうれんそうを長年つくっていたので、その経験が生きているのだと思います」と古橋さんは語ります。

消費者の声が何よりの励みに

古橋さんの畑のトマトは、7月から収穫時期を迎えます。加工用トマトには機械収穫に適した品種もありますが、このエリアでは夏期に限定販売される『カゴメ トマトジュース プレミアム』に使う、手摘み用の品種をつくっています。「手摘み用品種のほうがゼリー部分のうま味が若干多いんです。真夏の手収穫はかなりの重労働ですが、なんとか維持していきたいですね」と語る、佐藤さん。「近年の夏は暑すぎるので日中は作業せず、早朝と夕方に分けています。正直暑くて嫌になっちゃうけど、『今年もジュースがめちゃめちゃ売れてるよ』なんて聞くとやっぱり嬉しくなります」と古橋さん。またカゴメのコミュニティサイトでユーザーのコメントを読む機会があり、それも大きな励みになっているそうです。「『おいしいトマトをありがとう』というコメントを見ると、つくってよかったと思うんですよ」

収穫時は、畑になっているトマトの実のうち、赤く熟したものだけを手でもいでいきます。トマトをいっぱい入れた黄色いコンテナの重さは約20キログラム。これを畑から運び出すのも大変な作業です。

最新技術で
契約農家をサポート

カゴメの契約農場は、以前は関東甲信越から東北に集中していましたが、近年は北海道や西日本にも拡大。広域化に伴い、SNSなどを活用した遠隔での栽培指導も行っています。その他に畑に定点カメラを設置してモニタリングしたり、IT企業と共同で衛星画像やセンサなどを駆使した農業管理システムの活用を検討するなど、先端技術の導入も積極的に行っているそうです。また果皮が硬くて日持ちのする品種を栽培し、収穫機械を貸与することで農家の作業負担を軽減しています。

ヤンマーと共同開発した
加工用トマト専用の収穫機
「Kagome Tomato Harvester KTH」

“お隣さんの農園” として
採れたての野菜を
直接消費者に届けたい

東京都日野市ネイバーズファーム 川名桂さん

ネイバーズファーム川名桂さんの1日 ネイバーズファーム川名桂さんの1日

8時:農場に着くと、まずズッキーニ、ルッコラ、ナスなどの露地野菜を収穫し、袋詰めする。また農場併設の自動販売機に野菜を補充する。
9時:ハウス内でトマトの収穫。
11時:収穫したトマトのパッキング。14時:トマトを近隣の直売所などに配達。
16時:茎や枝の誘引など、トマトの管理作業。トマトに与える養液のチェックや灌水システムなどの設定調整。

狭い農地でも
収益を確保できるトマト栽培

学生時代に経験した途上国でのボランティア活動などを通じて、農業こそが人が生きていくうえでの基本だと強く感じた川名桂さん。2014年に東京大学農学部を卒業した後、千葉県の農業法人に就職し、福井県の農場の立ち上げに携わりました。そこで出合ったのがトマト栽培です。「それ以来トマトしかつくったことがなかったので、独立の際にもトマト栽培をメインに考えました。もし違う作物を担当していたら、それをつくっていたかもしれませんね」。とはいえ、“東京でお客さんの顔が見える農業をしたい”という思いで独立した川名さんにとって、トマトはぴったりの作物でした。「東京で就農するとなると、どうしても狭い土地になります。そこで生計を立てることを考えると、安定的に収益を確保できるトマト栽培しかないと思いました」

ネイバーズファームは、多摩モノレールがすぐ脇を走る、東京・日野市の住宅街の中にあります。

川名さんは、2018年に施行された「都市農地貸借円滑化法」を利用した第1号新規就農者です。トマト栽培用のハウスを建てられる農地を2年がかりで探した結果、自宅近くで30年にわたって生産緑地を貸してくれる地主が見つかり、2019年3月にネイバーズファームを設立。翌年からトマトの栽培を開始しました。面積712平方メートル、自動開閉式の屋根やカーテンを備え、ICT(情報通信技術)で数値管理する高機能ハウスで行っているのは、土の代わりにヤシ殻を使い、肥料を水に溶かした培養液によって作物を育てる養液栽培です。灌水システムは、日射量に比例してある程度自動で培養液の量などを調節してくれますが、完全に機械任せというわけにはいきません。「培養液を与える時間や量、肥料の濃度などを細かく設定できます。マニュアルはありますが、ハウスのつくりやその日の天気によっても変わるので、完璧にと言うのは難しい。水を1日多く出しすぎると実が割れてしまったりするので、毎日記録を取って、『今日はよかった』『今日はダメだった』という感じで、今も試行錯誤の連続。でもそれがおもしろい」

光合成を促進するため、白いシートが一面に張られたハウス内部。9月に定植すると10月から翌年の7月まで収穫することができます。

トマトの養液栽培では品種を絞るのが一般的ですが、ネイバーズファームではミニトマト数種に大玉、中玉とバリエーション豊か。いずれも川名さんがタイプごとに一番おいしいと感じた品種を選んでいます。「耐病性や安定性なども考慮していますが、一番の基準はおいしさですね」。トマトのおいしさというと糖度が注目されがちですが、川名さんが求めるのは、甘さだけでなく酸味も香りもすべてが “濃い” トマト。「そのために、のびのびと育てるように心がけています。樹勢があると光合成能力も高くなり、それが味に結びつく。品種の特性を出すことで、糖度も出るし、収穫量も上げることができます」。この収穫量を上げるということも川名さんにとっては重要です。「経営を成り立たせるには、おいしいトマトを、たくさんつくらないと意味がありません。どちらかだけなら比較的簡単なのですが」。悩むこともありますが、植物が日ごとに育っていくのを見ることは単純に楽しい、と川名さんは言います。

ネイバーズファームのトマトたち。ミニトマトはチカ、イエローミミ、サングリーンの3品種。中玉がフルティカで、大玉は桃太郎。3色のセットなど、パッケージングも工夫しています。

川名さんは、トマトのつくり方だけでなく、売り方にもこだわりをもっています。収穫したトマトの行き先は、6割が直販、3割が地域の流通業者への卸、残り1割がネット通販など。そして直販のうち、約半分は近隣の直売所などへの持ち込みで、残り半分は農場に併設された自動販売機。この自動販売機には1日60人ほどのお客さんが野菜を求めに訪れます。「商品を補充する際にお客さまとお話しして、感想をいただくこともあります。『おいしい野菜をありがとう』と言われると、とてもやりがいを感じますね。わざわざここまで買いに来てくださる方がたくさんいるんだってことが実感できるので、頑張ってつくらなきゃって思います」。名前の通り、“お隣さんの農園”として、つくった野菜が新鮮なうちに消費者の手に届くところまで見届けたいという川名さんの挑戦は、これからも続きます。

「将来的にやりたいことはいろいろありますが、まずは栽培をきちんとしたい」と語る、川名さん。「樹の状態がよければ無駄な作業が減って効率もよくなります。そうして働く時間を短くできるようにしたいですね」

川名さんも参画する、
農業女子PJ

農業女子PJには、全国各地の920名の農業女子と、37の企業、8つの教育機関が参画しています(2022年7月現在)。メンバーの就農ルートもさまざまで、約3割のメンバーが新たに起業する新規参入者。生産者であり、かつ生活者、消費者でもある農業女子の能力を各企業などと結び付け、新たな商品やサービスなどを生み出しています。プロジェクトを通して、女性農業者の存在感を高め、女性の職業選択に農業を加え、未来の農業女子を育てることにもつながっています。

ネイバーズファーム
公式サイトはこちら
外部リンク

今週のまとめ

栽培方法が大きく異なる
加工用トマトと生食用トマト。
しかしお客さんの声が大きな
モチベーションになる点は同じです。

(PDF:15,380KB)
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大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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