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農林水産省

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aff 2022 November 11月号
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日本の食文化 オールジャパンで 食文化を海外へ!

日本の食文化 オールジャパンで 食文化を海外へ!

海、山、里にある豊かな自然、そこに地域特有の伝統や文化を育んできた日本。食材や調理方法も地域ごとに特徴があり、また季節ごとの魅力があります。今回は、SAVOR JAPANの認定地域である青森県十和田市のローカルフード「バラ焼き」の世界に向けて活動している取り組みを紹介します。

SAVOR JAPANって何? SAVOR JAPANって何?

2022年にアジア・欧米豪12地域の海外旅行経験者を対象に行った調査によると「新型コロナウイルス感染症が収束した後に観光旅行したい国と地域」として、日本はトップでした。
農林水産省では、農山漁村にインバウンド需要を呼び込むことを目的に2016年に「農泊 食文化海外発信地域(SAVOR JAPAN)」認定制度を創設しました。SAVORとは英語で「味わう、楽しむ」という意味、日本を存分に味わい、楽しんでほしいという思いが込められたネーミングです。農泊(農山漁村滞在型旅行)を推進し、多様な地域の食やそれを支える農林水産業、伝統文化の魅力で訪日外国人の誘致に積極的に取り組む地域が認定されます。

SAVOR JAPAN認定地域 2022年10月時点で37地域が認定されています。

新型コロナウイルス感染症収束後に
観光旅行したい国・地域

日本が一位の図

出典:DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(第3回 新型コロナ影響度 特別調査)
「次に海外旅行したい国・地域」より第3回調査結果の図を参考に作成

気候風土が育んだ野菜を
ブランド化

2021年度は新たに6地域が認定され、そのひとつである青森県十和田市を訪ねました。この地域では農業体験を含む農泊に力を入れ、地元野菜のブランド化や市民のソウルフードのグローカル化に注力しています。
青森県は八甲田山を境に日本海側の津軽地方と太平洋側の南部地方に分かれています。十和田市を含む南部地方は、津軽地方ほど雪は降りませんが寒さは厳しく、太平洋から吹きつける「やませ(梅雨から盛夏にかけて吹く冷たく湿った東風)」が冷害の原因となり、葉物野菜の栽培や稲作に大きな被害を受けてきました。そこでやませの影響を受けにくい根菜類の栽培に転換。やわらかい土質と適切な土壌改良が奏功し、やがてながいも、ごぼう、にんにく、ねぎなどが多く生産されるようになったのです。

*グローバル(global)とローカル(local)を合わせた造語。国を超えて世界規模で捉える視野と、地域の特色や特性を視野に入れて課題を捉えていこうとすること。

写真:十和田奥入瀬観光機構提供

6月下旬のにんにくの収穫に始まり、8月から10月いっぱいがねぎ、10、11月とごぼう、11月から12月中旬までがながいもと、農業体験ができる時期は短くありません。

ごぼう、にんにくの生産量は全国第1位(2020年度)、特ににんにくは青森産が国内生産量の約7割を占め、県内では十和田市が生産量日本一です。色白で粘りが強いながいも、緑と白い部分の境目がはっきりしていることから「ぼけしらずネギ」と呼ばれ親しまれているねぎ。十和田市ではこれらのキャラクターをつくり、PRしています。

食と体験を分かち合う
楽しい時間を

SAVOR JAPANへの申請を行った(一社)十和田奥入瀬観光機構は、これらの主要な地域野菜を生産している農家を中心に、農業体験・農泊を実践してきた十和田農業体験連絡協議会と連携するようになりました。同協議会は2007年に設立されたグリーン・ツーリズム事業の先駆団体である「アジアからの観光客誘致推進協議会」の活動理念を受け継ぎ、台湾からの修学旅行生や訪日外国人を数多く受け入れてきました。新型コロナウイルス感染症の影響が出る前にはデンマークから訪日したカップルが観光旅行を楽しんだ後、農業体験をするために十和田市を訪れ、5泊していったこともあったそうです。
ここ数年は新型コロナウイルス感染症対策をとりながら、日帰りの農業体験を実施してきたそうですが、「われわれが大事にしているのは、農業体験をしたうえで宿泊してもらい、それらを使った地域の料理を共に食しながら交流することなんです」と、同協議会事務局の高屋繁雄さんは、農泊が実施できないことを嘆きます。

同機構の金子周平さんはもともと神奈川県出身の都会育ち。十和田に転勤してから初めて農泊を体験したといいます。「アットホームで楽しかった。友だちと山菜を取りに行っても、自分たちだけでは調理の仕方がわからない。そういうことを教えてもらえるのが農泊の良さですね」と語ります。
同機構では“田植え体験と十和田産食材のランチ”や“農業体験と料理教室ツアー”、“街なかアートマルシェ”などのイベントを主催し、地域の活性化に力を注いでいます。同協議会が主導する農泊も含め、こうした活動が「SAVOR JAPAN」認定につながりました。

写真:十和田奥入瀬観光機構提供

農業資源を観光コンテンツとして活用する日帰りツアー「田植え体験と十和田食材のランチ」。地元農家の水田を借りて開催され、近隣地域だけでなく首都圏からの参加者もいました。

写真:十和田奥入瀬観光機構提供

地元の産直野菜、郷土料理、和洋軽食、スイーツ、ドリンクなどの飲食店、キッチンカーが出店する「街なかアートマルシェ」。マルシェで使用するテントブースは、十和田市に移住してきた設計事務所によるもので、青森県産材のスギを骨組みに使用し、アートと建築の街・十和田市の景観に合うようデザインされています。

お話を伺った(一社)十和田奥入瀬観光機構の金子さん(左)と十和田農業体験連絡協議会事務局の高屋さん(右)。

地方から世界に広がれ!十和田のバラ焼き 地方から世界に広がれ!十和田のバラ焼き

もうひとつ(一社)十和田奥入瀬観光機構が「SAVOR JAPAN」に認定された大きな理由が、地域のローカルフード「バラ焼き」の海外進出でした。その周知活動を牽引してきた十和田バラ焼きゼミナールの舌校長、畑中宏之さんに話を伺いました。

(一社)ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会加盟団体「十和田バラ焼きゼミナール」の畑中さん。企業組合ラビアンローズ代表理事も務めます。

当たり前の料理が
ご当地グルメへ

バラ焼きは、牛バラ肉とたまねぎに甘辛のたれをからめて鉄板で焼いた料理です。1958(昭和33)年、米軍三沢基地の前の屋台で誕生したとされています。
「米兵用に確保されたステーキ以外の牛の部位が、安く市中に払い下げられていました。それをおいしく食べる方法として考え出されたのが、バラ焼きといわれています」と畑中さん。当時、バラ焼きは十和田で急速に広がり、家庭料理として定着しました。
それを本格的にご当地グルメとして売り出すきっかけになったのが、東北新幹線の開通でした。全線開通を2年後に控えた2008年、十和田市も何か誘客できる食を作ろうということで、当時商工会議所青年部のメンバーだった畑中さんたちは新規メニューをいくつも考案します。ところが「新しいレシピの研究開発には資金がかかり、地域に普及させるには時間がかかる。もともと地域に根付いているものがあるはずだから探してみては」とご当地グルメのイベントの主催者から助言されます。そこでバラ焼きが浮上したのですが、バラ焼きは自分たちにとって、あまりにも当たり前の料理だったため、すぐには思いつかなかったのでした。

十和田のソウルフード「バラ焼き」。醤油ベースの甘辛だれには青森特産のにんにくが使われています。いくつかの食品メーカーからバラ焼き用のたれが販売中。肉をうずたかく盛ってから焼く「タワー焼き」はバラ焼きアンテナショップ「司」独自の焼き方です。

青森系ニジマスと大型のドナルドソンニジマスとの交配で作られた青森のご当地サーモン。特産のりんごとにんにく入りのエサを食べて出荷されます。

市民革命だから
ラビアンローズ ?!

2008年にバラ焼きを起爆剤にして町おこしをしようと、職業も年齢もさまざまな有志が集い、「十和田バラ焼きゼミナール」を立ち上げます。活動を拡大するには法人化が必要となり、2010年に企業組合ラビアンローズを発足、イベントに出展し大きな鉄板と格闘しながら周知しようと懸命になりました。しかし、思うようには広がりません。
そんな時は必ず「街を活性化するためだ」と初心に立ち返り、「これは市民革命なんだ」と自分を鼓舞したといいます。そこで18世紀フランスの市民革命を模し、漫画『ベルサイユのばら』とリンクした装いが、バラをあしらった畑中さんの派手な衣装だったのです。「ばら」と「バラ肉」をかけたことはいうまでもありません。

バラ焼きアンテナショップ「司」でバラ焼きを作る畑中さん。結婚式の衣装も扱う美容室を経営する畑中さんだからこそあつらえることができた衣装。国内外問わず、どこに行くにも誰に会うにも、もちろんいつもこの姿です。

海外の講演も
お決まりのスタイルで

このスタイルは定着し、見事な誘引フックとなりました。畑中さんは地域の人たちに、自分たちの食文化に誇りをもってほしいと考えていました。「地域肯定感をもつことが結局は自己肯定につながり、子どもたちの地域への愛着の醸成に役立つ」という一心でやってきたといいます。小学生への食育活動や中高生とのイベント参加も、時間を惜しまず取り組んできました。活動は斬新な装いが人目を引き、宣伝効果は抜群でした。
2017年10月、日中国交正常化45周年の記念イベントに呼ばれて、初めて中国で講演します。現地では「食」で街おこしができることに驚かれました。それを具現化するために、翌年中国遼寧省(りょうねいしょう)で日本と中国の団体が食対決をするイベントを開催。こうした活動を通じて海外進出の種が蒔かれたのでした。
今やバラ焼きは中国や台湾、タイ、シンガポール、ベトナム、米ロサンゼルス、ハワイで食べられています。バラ焼きのアンテナショップとして、地元でバラ焼きや地域の食材を使った料理を提供する専門大衆食堂も運営しています。「ローカルあってのグローバル、それをきちっと押さえておかないと成功しないと思っている」と畑中さんはいいます。

中国の大学の日本研究会が主催した日本食研究イベントのポスター(右)と、地元のメディアの取材に答える畑中さん。

巨大市場上海へバラ焼き上陸

中国遼寧省での講演が縁となり、上海市にある日系高級ホテルのレストランで、2022年2月から2カ月間「十和田フェア」が企画され、バラ焼きを提供することになりました。メニュー名は「青森十和田鉄板牛 五花肉(ウーフアロウ バラ肉の意)」。
上海が新型コロナウイルス感染症の影響でロックダウンしたため、途中で中止になったのですが、バラ焼きを求める声に応えて、7月から再度開催したそうです。そしてその反響から、バラ焼きはメニューとして定番化されることが決まりました。

上海の日系ホテル内にあるレストランで開催された「十和田バラ焼き」メニューのポスター。

「人がそこで生き、暮らしを続けてきた以上、必ず何か食文化があります。地元の人は気づかずに、大したものではないと思うかもしれないけれど、よその人から見れば『新鮮!』なんです。ないものねだりじゃなくて、あるもの探しをきちんとしましょうよ」と熱く語る畑中さん。
「訪日外国人はインターネットで情報を集めた個人旅行者が多い。この十和田にも足を運んでくるかもしれません。地元の人たちが地元へのプライドをもっていれば、それがもてなし方にもきっと表れることでしょう。地元の人が普段から『おいしい!』といって食べているものだからすすめられる。僕たちは活動しながら、そこに行きついていったんです」と畑中さん。海外進出を単にブームにするのではなく、いかにムーブメントにするかが鍵だということです。

Tips!

こんなところに日本食文化!?

世界的な日本食ブームによって、各国に日本食レストランができ、大型スーパーマーケットでは当たり前のように日本の食材が置いてあるコーナーに出会うようになりました。レストランのメニューにSUSHIだけでなく、KATSU、UDON、EDAMAMEなど、日本語名がそのまま使われていることが多く、すっかり浸透しています。

ロンドンでも人気の和牛サンド

ロンドンでも日本食レストランの需要は高く、本格的な日本料理を堪能できる高級店から気軽に楽しめる麺類などの店まで幅広く存在し、その種類は年々多様化しています。そんなロンドンのメリルボーン地区に、和牛のサンドイッチを看板メニューにしている日本食レストラン「TAKA」があります。
同店が提供している和牛サンドは、丁寧に焼き上げた和牛を、味噌のソースとイングリッシュマスタードを塗った厚切り食パンに挟んだもの。
これを調理しているエグゼクティブシェフの丸山泰治さんが渡英した15年前には、ロンドンで手に入るのはオーストラリア産などのWAGYU肉のみ。2013年に日本からEUへの和牛の輸出が解禁になり、その後ロンドンでも和牛サンドを作れるようになりました。「ARIGATO SANDO」は店の看板メニューとなり、「一度は食べてみたい逸品」として話題を呼んでいるのだそうです。

この和牛サンドが紹介されている農林水産省のオフィシャルサイト「Taste of Japan」では、日本産食材や海外での日本食のトレンドを紹介する記事、レシピなど、様々なコンテンツを用意しています。海外で日本産食材を積極的に使用する飲食店や小売店である「日本産食材サポーター店」についても紹介しています。ぜひご覧ください。

Taste of Japan
公式サイトは
こちら
「WAGYU SANDO」の
記事はこちら

世界市場の1パーセントを
木桶仕込みの醤油・味噌に!

江戸時代までは、和食の味を支える味噌や醤油、酢、みりん、酒などの発酵調味料は「木桶」で作られていました。木桶には発酵の元となる微生物が棲みつき、その蔵特有の味を醸し出します。桶はリサイクルして使われており、まさにサステナブルな活動そのものでした。
その伝統的な木桶の維持に加えて、世界の醤油・味噌市場の1パーセント(金額ベース)を木桶仕込みにすることを目標に2021年3月、(一社)木桶仕込み醤油輸出促進コンソーシアムが、2022年2月には(一社)木桶仕込み味噌輸出促進コンソーシアムが発足しました。
両コンソーシアムは、伝統製法の木桶仕込み醤油・味噌を海外の富裕層や美食家に、ワインやウイスキーと同様に蔵元ごとに個性が異なるプレミアムな調味料として売り込み、オールジャパンで日本食の多様な魅力を伝えていきたいと考えています。海外のスーパーマーケットに木桶仕込み醤油・味噌のコーナーができることが期待されます。

木桶仕込み醤油輸出促進コンソーシアムは2022年3月8日から11日、幕張メッセで行われたFOODEXに出展しました。

出典の様子はこちら
外部リンク

同コンソーシアムは醤油メーカー25社で組織し、木桶仕込みの醤油を海外に輸出していくためにさまざまな情報発信もしています。

木桶仕込み醤油
輸出促進コンソーシアム
外部リンク

今週のまとめ

2016年に創設された
「SAVOR JAPAN」の認定地域。
その中のある活動事例から、
ローカルフードの見直しが
地域の活性化とインバウンド誘致にも
つながることがわかりました。

(PDF:2,657KB)
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