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食とくらしの「今」が見えるWebマガジン

特集 2 ラーメン(国産小麦)

ラーメンを支える国産小麦の生産現場

おいしいラーメンづくりに欠かせないのが、
小麦を生産する農家の存在です。
岩手県のラーメン店「柳家」は農業に取り組み、
今では自家製麺で提供しています。
国産小麦の生産現場と現状についてレポートします。

ラーメン店と農業

岩手県のラーメン店である柳家は、「よりおいしいラーメンを目指して」
小麦を自家栽培するようになり、今では収穫した小麦を自社製麺しています。
ラーメンにふさわしい小麦を追求し、農業に挑戦した柳家に話を聞きました。

(株)柳家 代表取締役 大信田 和彦さん|1997年に柳家へ入社し、2代目の代表取締役に就任。「想いを込めた一杯のラーメンは、必ず心に響く。一生一品である」という先代の想いを継承し、2008年からは小麦の栽培にも着手。お客様への感謝の気持ちを持ち続けながら、自家製麺の味を守り抜いています。

収穫した小麦の味を見極め、めんづくりに取り組む。|天候に左右されることから、ワインなどと同じように、小麦も年によって味わいや風味に違いが出てきます。柳家では毎年、収穫した小麦の味を確認した後、その時々の気候なども考慮に入れながら、水分量を調整して製麺します。自家栽培だからこそ、手塩にかけて育てた小麦に愛着が湧き、その年ならではの最高の味を追求するモチベーションが高まる。これが、柳家ならではの生産スタイルです。

自社の農地で小麦栽培に取り組む|ラーメン店「柳家」の生産サイクル|柳家独自の農業への取り組み|ラーメンにふさわしい小麦を自分たちの手で育てる|農地づくり→種まき→麦踏み→追肥(ついひ)→収穫(小麦を製粉会社で製粉した後、製麺工場へ)→製麺(製粉)|やなぎやのうえん:農場スタッフ2人|製麺工場:製麺スタッフ4人、店内で製麺する店舗もあり|ラーメン店 柳家:収穫した小麦をラーメンとして提供:東北3県9店舗、店舗スタッフ50人弱

農業を始めてわかったこと|農業に挑戦して、一番苦労したのは地域との信頼関係を築くことでした。農業の新人として認められて、農地を貸していただく。ここまでに、まず時間がかかりました。農場スタッフとして畑へ出て、黙々と作業しているうちに、「頑張っているね!」と声をかけていただくようになり、小麦栽培も円滑に進むようになりました。農業を始めたからこそ、地域コミュニケーションの重要性に気づくことができました。

ラーメンができるまで

  1. 種まき|夏の間に土壌環境を整え、秋に種まきをします。スタッフ2人で、16ヘクタールの農地に約1,500キログラムの種をまきます。約10日で15センチメートル~20センチメートルの芽が伸びてきます。|小麦は湿気に弱いので排水対策も大切!
  2. 麦踏み|雪が降る前に雑草取りや虫の駆除をして、麦踏みをします。茎を傷付けることで茎を太くし、丈夫な麦に育てる大事な作業です。|トラクターでローラーを引き、麦を踏んでいく!
  3. 収穫|東北の厳しい冬を越えたのち、春の雑草取りと追肥を行い、夏を待ちます。7月初旬、ついに小麦の収穫! コンバインを使って一気に刈り取ります。|冬の農閑期は農場スタッフも店舗に勤務しています!
  4. 製粉・製麺|収穫した小麦を製粉し、その小麦粉からめんのもとを作り、滑らかな生地に仕上げていきます。喉越しや歯応えなど、食感のバランスを考えて製麺します。|季節によって水分量を変え、おいしさを追求!
  5. 切り出し|ラーメンのメニューによってめんの太さを調節し、丁寧に切り出しを行います。種まきから始まって、ここでやっと柳家のめんが完成します。|熟練スタッフにしかできない難しい仕事!
  6. 販売|各店舗でラーメンとして提供します。「小麦の香りがする!」「喉越しがいい!」「安心して食べられる」と評判の麺です。|「やみつきになるめん」という言葉が嬉しい!|ラーメン店として、小麦生産に挑戦した柳家。最近では、「農場を拡大して、もっと小麦の生産を増やしてほしい」という声も増えてきました。柳家の農業は地元に根付き、地域活性化の期待を担う存在になっています。

国産小麦の現状|小麦の自給率と消費量の推移

農林水産省の「麦の生産をめぐる事情」によると、小麦の年間消費量は1人当たり32キログラムから33キログラムと安定的に推移。小麦の自給率はここ数年15パーセント前後で推移しています。小麦の用途で一番多いのはパン用で、中華麺用、日本麺用、菓子用と続きますが、国産小麦だけで見ると日本麺用が60パーセント程度を占めています。そのため、品質の向上が進み、国産小麦の供給量が増えていくと中華麺用や菓子用などの需要が増加すると見込まれており、消費拡大の可能性があると期待されています。

小麦の自給率と消費量の推移|資料:農林水産省「麦の生産をめぐる事情」をもとに作成

小麦(子実(しじつ)用)の都道府県別収穫量及び割合

農林水産省の「麦の生産をめぐる事情」によると、小麦の収穫量が一番多いのは気候が小麦づくりに適している北海道で、全国の66パーセントを占めています。福岡県や佐賀県、愛知県や三重県なども小麦の主要な産地となっており、これ以外にも多くの地域で活発に小麦生産が行われています。こうした背景には、パンやめんを食べる人が増えていることに加え、特徴であるもちもちした食感が好まれ、国産小麦商品の人気の高まりがあります。

小麦(子実(しじつ)用)の都道府県別収穫量及び割合|資料:農林水産省「麦の生産をめぐる事情」をもとに作成

小麦農家の挑戦|私たちの食生活を支えてくれている小麦農家は、日本全国にあります。ここでは、独自のスタイルで成果を上げている2つの小麦農家を紹介します。

福岡県糸島市(株)百笑屋|百笑屋は82ヘクタールの農地を管理しています。生産物の6割が麦で占められており、ラーメン用など小麦3品種と大麦1品種を作付けしています。積極的に新技術を導入し、県が開発した部分浅耕播種技術を取り入れ、省力化と収穫量増加に成功。地域との連携にも積極的で、2010年からは毎年9月に農地で旬の農産物などが味わえるイベント「糸島ビアファーム」を開催。県内外から500人が訪れるなど、成果を上げています。|代表取締役 松﨑治久さん(左から3番目)

兵庫県たつの市(株)グリーンファーム揖西(いっさい)|2012年、たつの市にある5つの地区の営農組合が参画して設立されました。地元にある大手醤油メーカーから、当時は北海道だけで生産されていた小麦「ゆめちから」を「地元で大量に生産してほしい」という要請があり、栽培をスタートさせました。ドローン撮影やセンシング技術によるデータを社員で共有、スマートフォンで農地の状態がわかるようにするなど、省力化と生産性向上に取り組み収量を増やしています。|代表取締役 猪澤敏一さん

今週のまとめ

一杯のラーメンも、完成に至るまでには
多くの人たちが携わっています。
その起点にあるのが小麦農家の存在。
地域の人々と連携しながら、
新しい味、そして地域経済の活性化にも
貢献しています。

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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