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じゃがいもに含まれる天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」に関するQ&A

作成日:2022年2月7日

毒素

選択・判断

保存

調理

喫食

中毒

栽培

指針・規制




<毒素>

じゃがいもに含まれる毒素はどのようなものですか。

  • 「糖」と「アルカロイド」と呼ばれる物質がつながってできた、グリコアルカロイド(注)という物質です。グリコアルカロイドにはさまざまな種類があり、主にナス科の植物に含まれています。
    注:「グリコ(glyco-)」は「糖」を意味する接頭語です。
  • じゃがいもに含まれるグリコアルカロイドは、主にソラニンやチャコニンと呼ばれる物質です。詳しくはこちらをご覧ください。


―じゃがいもはなぜ毒素を持っているの?―
じゃがいもに限らず、植物には天然の毒素を作るものが多くあります。これは、虫や動物など外敵に食べられないようにするためであるという説があります。
なお、野菜として流通している植物は、天然にできる毒素が少なくなるように品種改良されており、安全に食べられるものです(ただし、あく抜きなどの前処理が必要なものもあります)。じゃがいもは、栽培、流通、家庭の各段階で適切な管理がされていれば、天然毒素の濃度は低く、安全に食べられる野菜です。



―じゃがいも以外の「いも」にも毒素はあるの?―
「いも」と呼ばれる野菜には、さつまいも、さといも、やまのいも等があります。これらはじゃがいもとは異なり、ナス科の植物ではなく、グリコアルカロイドは含まれていません。
さといもなどのサトイモ科の植物や、やまのいもなどヤマノイモ科の植物には、シュウ酸カルシウムという、目に見えないほど小さい針状の結晶物質が含まれています。この針状の結晶が皮膚に刺さることでかゆみや痛みの原因となりますので、肌が弱い方は調理の際に手袋などをするとよいでしょう。また、この物質はえぐみの原因となったり、多くとり過ぎるとおう吐などを引き起こしたりする可能性があります。ただし、さといもややまのいもに含まれる程度の濃度であれば、食中毒を起こすことはほとんどないと考えられます。また、これらのいものシュウ酸カルシウムやその他のえぐみ成分の濃度は、下ゆでやあく抜きによって下げることができ、美味しく安全に食べることができます。


じゃがいもに含まれる毒素によって、どのような症状が出るのですか。
どのぐらいの量の毒素をとると症状が出るのですか。

  • 毒素を多く含むじゃがいもを食べたことで、吐き気やおう吐、下痢、腹痛等の消化器症状、頭痛、めまいなどが起きたとの報告があります。また、おう吐や下痢によって脱水が起きた結果、無気力や錯乱、衰弱などの神経症状が起こる可能性もあり、少数ですが昏睡や死亡に至った例もあります。
  • 国際機関や海外の評価では、じゃがいもに含まれる毒素の摂取量が、体重1 kgあたり0.1 mg以下であれば健康への懸念はないとしています。詳しくはこちらをご覧ください。


―じゃがいもの毒素による影響を受けやすい人はいる?―
現時点では、体重あたり同じ量のじゃがいもの毒素を摂取した場合に、特定の年齢層の人や持病がある人等で、その他の人よりも健康への影響が出やすいかどうかは明らかではありません。
なお、一般的に子どもは、体が未発達であること、体重あたりで考えると1回に食べる食品の量が多いことから、食品に含まれる化学物質による影響を大人よりも受けやすいと考えられています。また、高齢になると、代謝の機能が衰えることで症状が出やすくなる可能性があります。


じゃがいもの毒素は体に蓄積しますか。

  • これまでに、じゃがいもの毒素がヒトの体に蓄積するとの報告はありません。
  • ヒトが摂取したソラニンやチャコニンは、体内で代謝されて別の物質(ソラニジン)になります。このソラニジンは、やがて尿や便を通じて体外に排出されます。

<選択・判断>

どのようなじゃがいもに毒素が多く含まれているのですか。
毒素が少ないじゃがいもの見分け方はありますか。

  • じゃがいもに長時間にわたって光が当たったり傷が付いたりすると毒素が増えること、この毒素は芽や皮の部分で増えやすいことが知られています。
  • じゃがいもは、光が当たると葉緑素(クロロフィル)が増えて緑色になるため、表面が緑色になったじゃがいもには毒素が多く含まれると考えられます(注)
    注:緑色はクロロフィルの色であり、毒素の色ではありません。
  • 芽が出たじゃがいも、表面が緑色になったじゃがいもを食べるときは、周辺部を含めて芽をしっかり取り除き、緑色の部分がなくなるまで皮を厚くむいてから調理しましょう。
  • 未熟なじゃがいもにも毒素が多く含まれることがあります。ただし、じゃがいもには熟しても小さい品種もありますので、大きさだけで判断することはできません。
  • 販売されているじゃがいもは、生産農家が適切に管理して栽培したものです。その大きさにかかわらず、未熟であることはまずありません。
  • 学校や家庭の菜園などでじゃがいもを育てる場合には、未熟なまま収穫して食べてしまうことのないよう注意が必要です。


―緑色になっていなければ大丈夫?―
じゃがいもの緑色は、光が当たってできたクロロフィルの色であり、毒素そのものの色ではありません。また、じゃがいもには皮が赤色や紫色をした品種もあります。このようなじゃがいもは、光が当たってクロロフィルが増えても、色の変化がわかりにくいことがあります。

coloured_potato_green.png

緑色はあくまで光に当たったことの目安であり、かならずしも緑色の濃さが毒素の濃度を表しているわけではありません。長時間にわたって光が当たってしまったと考えられるじゃがいもは、その色の程度にかかわらず、念のため皮を厚くむいてから調理しましょう。


変色したり、表面が柔らかくなったりしたじゃがいもは、毒素が増えている可能性がありますか。

  • 緑色に変色しているじゃがいもは、光に長時間当たったと考えられ、毒素も増えている可能性が高いです。緑色の部分がなくなるまで周辺部も含めて皮を厚くむきましょう。中心部まで緑色になっている場合には食べないようにしましょう。
  • まれに、じゃがいもの内部が褐色や黒色に変色していることがあります。これは、栽培中の水分不足や保存中の酸素不足が原因です(参考:日本いも類研究会〔外部リンク〕)。毒素の量とは関係ありませんが、変色部分は食感が悪くなっていることがあるので、取り除いた方がよいでしょう。
  • じゃがいもは、切った後しばらくすると褐色に変化することがあります。これはじゃがいもに含まれる酵素の働きによるもので、毒素の量とは関係ありません。
  • じゃがいもを長期間保存していると、表面が柔らかくなることがあります。これは水分が抜けたためであり、毒素の量とは関係ありません。

<保存>

じゃがいもはどのような場所で保存すればよいですか。

  • 光が当たらない、涼しくて風通しが良い場所で保存しましょう。
  • 弱い光であっても、長時間にわたってじゃがいもに光が当たってしまうと、毒素が増えることがあります。できるだけ真っ暗な場所で保存しましょう。
  • じゃがいもは20℃以上で保存すると腐りやすくなります。一方、保存温度が低すぎると糖分が増え、揚げる・焼くなど高温で調理したときに、アクリルアミドという有害物質ができやすくなります。夏場などで涼しい場所がなく、冷蔵庫で保存する場合には、冷蔵室ではなく野菜室で保存しましょう。もし長期間にわたって低温で保存した場合には、煮る・蒸すなど、水を使った、高温になりすぎない調理法をおすすめします。詳しくはこちらをご覧ください。
  • 換気の悪い場所で長期間保存すると、酸素が不足することにより、内部が黒く変色してしまうことがあります。
  • じゃがいもは、涼しいところに保存していても、収穫からの期間が長くなると芽が出てくることがあります。できるだけ芽が出ないうちに使い切りましょう。


―明るいお店で売られているじゃがいもは大丈夫?―
スーパーマーケットなどでは、明るい店内でじゃがいもが売られていますが、通常、長期間にわたって同じものが陳列され続けることはありません。また、スーパーマーケットや青果店などを含むすべての食品事業者は、食品衛生法に基づき、食品衛生上の問題となる不良品を販売しないよう商品の管理を行っています。万一販売されているじゃがいもの中に芽が出ているものや緑色になっているものがあれば、購入を避け、もし購入してしまった場合は調理の前に芽を取り除いて、皮を厚くむいてください。

<調理>

皮をどれくらいむけば毒素を減らすことができますか。

  • 海外では、皮むきによって25~75%の毒素を除くことができるとする報告があります。
  • 皮が緑色になっているなど、長時間にわたって光が当たったと考えられるじゃがいもの場合は、表皮のみを薄くむくのではなく、調理前に表皮のすぐ下の部分を含めて厚くむくようにしてください。皮を1 mmの厚さでむいた後のじゃがいも中の毒素の濃度は低いとの報告があります。

水さらしや加熱によっても毒素を減らすことはできますか。

  • 調理によってじゃがいもの毒素が減ったとする報告はありますが、じゃがいもの品種やもともとの毒素の濃度等の条件は様々であり、毒素の減り方にはかなりのばらつきがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
  • 毒素そのものは熱に強く、ゆで調理では毒素は減らなかったとの報告もあります。また、じゃがいもを酢酸に長時間漬けることで毒素が低減したとの報告もありますが、通常の調理で使われるような水さらしの条件で効果があるかは不明です。
  • 毒素を多く含むと考えられるじゃがいもを調理するときには、あらかじめ芽をしっかりと取り除き、皮を厚くむくことがもっとも重要です。

他の食材と一緒に調理した場合、毒素が移ることはありますか。

  • じゃがいもをゆでると毒素の一部が水中に溶け出すとの報告もあるため、毒素が多いじゃがいもを皮をむかずに調理すると、他の食材に毒素が移行する可能性はあると考えられます。
  • 食べてみて苦みやえぐみを感じた場合には、毒素の濃度が高いじゃがいもを料理に使ってしまった可能性がありますので、一緒に調理した食材も含めてそれ以上は食べないようにしましょう。

<喫食>

皮ごと調理されたじゃがいもの皮は食べない方がよいですか。
味に異変を感じた場合はどうしたらよいですか。

  • フライドポテトやふかし芋など、じゃがいも料理には皮ごと調理するものがあります。適切に栽培・管理されたじゃがいもを使っていれば、これらの料理を皮ごと食べても問題はないと考えられます。 また、市販の加工品や飲食店で提供される調理品については、食品事業者が安全を確保した上で提供していますので、皮ごと食べることができます。
  • ただし、小さなお子様が召し上がる場合など、毒素の量をより減らしたいのであれば、念のため、皮を除くとよいでしょう。
  • 皮の有無にかかわらず、もしじゃがいもを食べて苦みやえぐみを感じた場合は、毒素の濃度が高い可能性がありますので、それ以上は食べないようにしましょう。

<中毒>

じゃがいもを食べたら食中毒の症状が出ました。どうしたらよいですか。

  • 医療機関を受診してください。
  • 症状の原因と考えられるじゃがいも料理が残っている場合には、一緒に調理したじゃがいも以外の食材も含め、それ以上食べないようにしてください。

これまでに発生したじゃがいもの毒素による食中毒はどのようなものですか。

  • じゃがいもの毒素による国内の食中毒事例は、学校等で栽培し、調理実習等で調理したじゃがいもが原因であることがほとんどです。これは、栽培時や収穫時、保存時の不適切な取扱いによりじゃがいもの毒素が増えてしまったことや、調理時の皮や芽の除去が十分ではなかったためと考えられます。
  • 市場で流通しているじゃがいもは適切に栽培・管理されており、毒素の濃度は低いため、飲食店や家庭での食中毒の報告はあまりありません。
  • 国内の食中毒の発生状況についてはこちらをご覧ください。

<栽培>

毒素が多い種イモを使った場合、新しく育ったじゃがいもの毒素も多くなりますか。
じゃがいもを栽培した後の土壌には毒素が残っていますか。
土壌中のじゃがいもの毒素が、次に栽培する野菜に移る可能性はありますか。

  • 種イモに含まれる毒素が新しいじゃがいもに移行することはありません。
  • じゃがいもを栽培した土壌に毒素が含まれる可能性はありますが、土壌中のソラニン等は時間の経過とともに分解されるとの報告があります。そのため、じゃがいもの毒素が土壌を通じて次に栽培する作物に移る可能性は低いと考えられます。

未熟なじゃがいもと完熟したじゃがいもの見分け方はありますか。

  • 品種によってもじゃがいもの大きさが異なるため、いもの外見だけでは判断できませんが、同じ品種の他のいもと比べて明らかに小さいものは食べないようにしましょう。
  • 学校や家庭菜園で栽培する場合は、いもの大きさで判断せず、じゃがいもが完熟した目安として、地上部の茎や葉の全体が枯れて黄色くなってから収穫するようにしてください。品種や気候条件によって、植付けから完熟して収穫できるまでに必要な栽培期間は異なります。
  • その他、栽培時の注意事項はこちらをご覧ください。

じゃがいもの品種によって毒素のできやすさに違いはありますか。

  • メークインは毒素ができやすく、男爵やキタアカリなどは比較的毒素ができにくい品種であるとされています。
  • じゃがいもには多くの品種がありますが、天然毒素による食中毒を防ぐために、栽培や調理の際に注意すべきことは変わりません。

<指針・規制>

学校や家庭でのじゃがいもの栽培、学校給食へのじゃがいもの使用についての決まりはありますか。

  • 学校における教育や給食については、文部科学省が担当しています。同省が策定している「調理場における衛生管理&調理技術マニュアル」〔外部リンク〕には、「じゃがいもの芽、皮の緑の部分は丁寧に取り除き、えぐ味成分の除去及びソラニン等による食中毒を防止すること」との記載があります。
  • 農林水産省は、学校や家庭等の菜園でじゃがいもを栽培し、保存、調理する時の注意事項をまとめたリーフレットを作成し、学校関係者にも配布しています。

じゃがいもの毒素の基準値や、じゃがいも料理を販売・提供するときの規制はありますか。

  • 現在、国内ではじゃがいもやじゃがいも料理中のグリコアルカロイド濃度に関する規制はありませんが、有毒な食品を販売したり、提供したりした場合には、食品衛生法に違反する場合があります。詳しくは、食品衛生法に基づく監視指導を担当する、お近くの自治体の保健所にお問い合わせください。
  • 海外には、じゃがいも中のグリコアルカロイド濃度の基準値を設定している国もあります。

お問合せ先

消費・安全局食品安全政策課

代表:03-3502-8111(内線4459)
ダイヤルイン:03-3502-7674
FAX番号:03-3579-0329