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福岡県

大陸の文化をいち早く取り入れた、海外交易の玄関口

九州と本州を結ぶ交通の要衝・福岡県は、奈良時代より海外交易拠点が置かれ、中国大陸や朝鮮半島と交流を重ねてきた。異国からの影響は食文化にも及び、お米やうどんといった現代の日常食とも深く結びついている。いわば、文化伝来の玄関口。そこではどんな郷土料理が親しまれてきたのか――。


取材協力場所:御料理まつ山

縄文時代の遺跡から出土した稲作の痕跡

日本列島の西南端に位置する福岡県。3つの県に囲まれており、東南部は東西に走る英彦山山地(ひこさんさんち)を挟んで大分県と、西部は背振山地(せふりさんち)によって佐賀県と、南部は筑肥山地(ちくひさんち)を挟んで熊本県と接している。北側に広がる玄界灘のはるか先には朝鮮半島を臨む。

総面積4,987m2の約4割が山地になっており、山々に由来する「筑後川」や「遠賀川(おんががわ)」「矢部川」「山国川」といった4水系の一級河川が流れている。
うちの郷土料理
福岡はグルメの町としても有名だ。なかでも“西日本一の繁華街”とされる福岡市天神は多くの観光客が訪れ、那珂川と博多川に囲まれた中洲エリアは夜になると屋台がズラリと並び、多くの人々が集う。
うちの郷土料理
福岡県を“稲作発祥の地” とする説がある。福岡市内に保存されている国指定文化財「板付遺跡」(いたづけいせき)から、縄文時代晩期の稲作の痕跡が発見されたのだ。 なぜ、国内でいち早く稲作がはじまったのか。中村学園大学の栄養科学部学部長・三成由美さんは、その理由を「アジアから技術が伝来したのでは?」と分析する。「中国大陸や朝鮮半島など、海の向こうからさまざまな文化や技術、芸能などが流入してきたのは想像に難くありません」
うちの郷土料理

一説には、日本に初めてうどんが伝来したのも福岡の地とされている。そのきっかけになったのが、福岡市にある「承天寺」(じょうてんじ)の開基・聖一国師。1241年、修行先の中国から戻り、現地で覚えたうどんやまんじゅうなどの製粉技術を全国各地に広めた。「きっと当時は命がけの航海だったことでしょう。発祥については諸説ありますが、日本人が慣れ親しんできた味覚を福岡県人がいち早く味わっていたなんてロマンがありますよね」。

福岡県のみならず各地の食文化にも精通する三成さん。郷土料理は「科学」だと断言する。「福岡県には『あぶってかも』というスズメダイを塩焼きにした郷土料理があります。この料理は、皿と魚の間に柿の葉を敷くのがしきたり。食器を汚さないための知恵でもあるのですが、じつは柿の葉には防腐・殺菌効果があることが研究の結果わかっています。知ってか知らずか、昔の人はこのような理にかなった工夫をいくつも施しているんです」。
うちの郷土料理

画像提供元:松隈 紀生氏(元中村学園大学 短期大学部教授)

福岡県は、中心地の福岡地方、工業地帯が集まる北九州地方、宿場町の風情が残る筑豊地方、筑後川流域に広がる筑後地方から構成されている。それぞれの郷土料理を紹介しよう。

<福岡地方>
奈良時代からの交易拠点に残る、和洋折衷の味覚

九州最大の人口を擁する福岡市を中心に春日市(かすがし)や太宰府市といった市町村から構成される福岡地域。中心地となる福岡市は、大陸や朝鮮半島に近接する地の利を活かし、古くから交渉・交流の拠点として栄えてきた。市内に跡地が残る「鴻臚館」(こうろかん)は、平安時代に建てられた海外交易の施設。前身は奈良時代以前から存在したとされ、唐や新羅の使節はこの施設を日本での拠点にしていた。

博多湾や玄界灘など漁場に近いこともあり、古くから海の幸を使った料理が親しまれてきた。例えば、サバの刺身に薬味のごまを和えた「博多の胡麻鯖」。鮮度の落ちやすいサバを刺身で食べられるのは、福岡市ならではの贅沢だ。また、沿岸部で獲れたエゴノリは水で煮溶かして「おきゅうと」に使われた。ところてんのような食感で磯の香りがあとをひく。現在も朝食の一品として食べられており、一昔前は行商人が家々に売り歩いた。
うちの郷土料理

画像提供元:中村学園大学栄養科学部

鍋料理の「若鶏の水炊き」は、中国の鶏がらスープや西洋のコンソメにルーツがあるとされる。目を引く真っ白いスープは鶏の頭や骨から出汁をとったもの。これに骨付きの鶏肉やキャベツ、季節の野菜を入れてじっくり煮こむ。考案者は長崎県出身の林田平三郎。香港で学んだ洋食技術を活かして、1905年に市内で水炊き専門店を開業した。現在は市内外の飲食店をはじめ、一般家庭でも食べられている。
うちの郷土料理

画像提供元:中村学園大学栄養科学部

<北九州地方>
サバと糠味噌が調和する、小倉城主も愛した一品

鉄鋼、自動車、半導体、ロボット……さまざまな「ものづくり技術」が集積する北九州地域。地域の産業をけん引する北九州市はかつて日本有数の石炭の産地として栄えた。市を代表する名所「門司港」(もじこう)は石炭輸出を目的に開かれた国際貿易港である。

市内にある日本料理店「御料理 まつ山」では、ここ数年、お菜に福岡の郷土料理を加えるようになった。その理由を店主の松山照三さんに聞いてみた。
うちの郷土料理
「郷土料理はあか抜けないところがあるけれど、県外から来ていただくお客さんも増えてきました。そういったお客さんに“福岡の味”も体験していただけたら、より思い出に残るかと思ったんです」。とくに思い入れがあるのは自身の出身地、北九州市に伝わる「ぬかみそ炊き」。玄界灘で収穫したイワシや脂ののったサバを糠味噌で炊いた煮魚の一種で、小倉城城主・細川忠興(ほそかわ ただおき)も好んで食べた。「本来のぬかみそ炊きは塩味がガツンと利いた味わい。私はサバの持ち味を活かした、あっさりとした風味に仕上げています」。サバの上品な脂を発酵由来の豊潤な香りが受けとめる。かの小倉城主も納得の味わいだ。
うちの郷土料理
豊前地域の上毛町ではお祝いごとには「にぐい」が欠かせない。鶏肉と賽の目に切ったこんにゃくやしいたけ、人参、ごぼうなどを出汁で煮上げた郷土料理。地域によっては、くずを入れてとろみを出すこともあるという。汁気を多く仕上げるのが調理のポイント。“だぶだぶ”に汁をたたえた見た目から「だぶ(らぶ)」の別称でも定着している。
うちの郷土料理

<筑豊地方>
山伏の保存食から生まれた、伝統の香辛料

江戸時代、長崎と小倉(北九州市)を結ぶ228キロの「長崎街道」は、砂糖を運ぶ“シュガーロード”となって各地に菓子文化を広めたという。

筑豊地域の飯塚市には宿場「内野宿」(うちのしゅく)が置かれた。筑豊にあるどこの宿場よりも繁栄し、伊能忠敬や吉田松陰などもここで旅の疲れを癒した。

筑豊地域の添田町と大分県中津市にまたがる「英彦山」(ひこさん)には、幕末まで3,000人の山伏が暮らしていたという。山伏たちが編み出した保存食文化をルーツにしているのが添田町の特産品「ゆずごしょう」である。青胡椒と柚子の実を混ぜ合わせてつくった香辛料。さまざまな料理に使える優れもので、ピリッとした刺激と鼻腔をくすぐる清涼な香りがクセになる。刺身、鶏料理、鍋物、漬物……と福岡県民の食卓に無くてはならない存在だ。
うちの郷土料理

画像提供元:中村学園大学栄養科学部

また、この地域のひなの節句に必ずつくられるのが「せんぶきまげ」だ。わけぎ(ねぎの変種)のことをせんぶきと呼び、もだま(フカの尾を輪切りにしてゆでたもの)や、おばいけ(クジラの皮下の白い脂)をさっと湯をくぐらせて付け合わせることもあり、せんぶきの緑と白があざやかで、春らしい一品である。
うちの郷土料理

画像提供元:中村学園大学栄養科学部

<筑後地方>
時代を越えて親しまれ続ける、いも・小麦の粉食文化

県南部に位置し、12の市町村から構成される筑後地域。自然豊かな地域で、有明海に注ぐ筑後川や矢部川をはじめ、「日本の棚田百選」にも選ばれたうきは市の「つづら棚田」や柳川市の「柳川川下り」など、観光資源に恵まれている。
うちの郷土料理
八女市(やめし)をはじめ筑後地域ではいもや小麦が豊富に収獲でき、お米の代用食や農作業の合間に食べられていたのが「いも饅頭」である。ふかしたいもを小麦粉の生地で包んで、蒸したらできあがり。時期によってさつまいもやじゃがいもを使い分け、家庭によっては蒸さずに茹でることもあったそうだ。水で溶いた小麦粉を薄焼きにして黒砂糖を包んで食べる「ふなやき」は、現代でいうところの「クレープ」に近い。焼きたてだと溶けた黒砂糖の香ばしさが加わり、クセになる味わいに。筑後川流域に暮らす漁師や舟人の間では船上の即席料理になっており、それが風変わりな名前の由来になったとも伝わる。大河にたゆたう小舟の上で食べるふなやきは、きっと格別だったに違いない。
うちの郷土料理

画像提供元:中村学園大学栄養科学部

郷土料理を今後も残していくためにはどうすればいいのか。三成さんは新しい切り口での普及・啓発を模索する 「注目したのが社会課題になっている健康問題と環境問題です。中国医療を紐解くと、地域の気候・風土に合った料理を食べることが健康・長寿の秘訣だといわれています。これを突きつめると中国薬膳につながるのですが、日本の郷土料理こそまさに日本人のための健康モデル食であり、日本型の薬膳なのです。さらに、地域の生産物を地域で食べる地産地消はすなわち輸送に関わる環境負荷を軽減でき、持続可能な開発目標(SDGs)にも貢献できるんです」。そして「郷土料理はまだまだ可能性に満ちています」と付け加えた。
うちの郷土料理

海外からの異文化をいち早く取り入れてきた福岡県の郷土料理。そこへ担い手たちによる現代のエッセンスが加わり、新たな道を歩み始めようとしている。

福岡県の主な郷土料理

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