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関東地方 茨城県

茨城県

関東が誇る全国屈指の"農業県"茨城県の食文化

日本列島のほぼ中央。関東地方の北東に位置する茨城県は、東は太平洋に臨み、北は福島県、西は栃木県に接し、南は利根川をもって千葉県に接しており、県都の水戸市は首都東京から100km圏内にある。

県土一帯には一級河川の利根川・那珂川・久慈川をはじめ、およそ200の河川が流れ、全国第2位の面積を誇る湖の霞ヶ浦及び北浦を中心とする水郷地帯となっている。

関東平野の一部である常総平野が広がり、豊かな水質を活かして古来より農業が営まれてきた。農業産出額は、全国トップクラスの"農業県"なのだ。また、延長190kmに及ぶ海岸線を有し、県の沖合は、親潮と黒潮が交差する豊かな漁場で、季節ごとに様々な魚介が水揚げされる"漁業県"でもある。特に冬のアンコウは大変質がよく、近年では高級食材となっている。

取材協力場所:中川学園調理技術専門学校クッキングクラブ

農業と漁業に育まれた 茨城県の食文化

農業と漁業を柱にする茨城県の食文化は、地域ごとの気候風土にあわせて、多様な進化を遂げてきた。地域的特徴に分けると、北部地域県央地域南部地域西部地域鹿行地区(ろっこうちく)に大別できる。

<北部地域>
水戸藩の財政を支えた、こんにゃくづくり

北部地域は、こんにゃくの産地として知られている。山間地で古くからはじまっていたこんにゃく生産だが、こんにゃくは腐りやすいため流通させるのが困難だった。江戸時代、こんにゃく生産に転機をもたらしたのが農民の中島藤右衛門である。藤右衛門は、こんにゃく芋を乾燥させる保存方法を確立。こんにゃくの質も高く評価され、水戸藩の専売品として藩の財政を支えた。

こんにゃく自体の保存方法も伝わっており、からからに水分を抜いた「凍みこんにゃく」は、北部地域でつくられる伝統食になっている。
茨城県

画像提供元:観光いばらき

「凍みこんにゃく」がつくられるのは、12月から2月にかけての厳冬期。畑に敷きつめたわらの上に、こんにゃくを1枚1枚並べ、水をかける。すると、夜の冷気によってこんにゃくはすっかり凍ってしまう。翌日、日中の気温で解凍されると、夜にふたたび水をかける。この作業を繰り返し、完成するのは約半月後である。手間がかかることから近年は衰退しつつあり、非常に貴重な食材になっている。
凍みこんにゃく

画像提供元:茨城県営業戦略部販売流通課

また、茨城県を代表する食材のアンコウは、県北部の北茨城市と日立市は特産地として有名。7月、8月の禁漁期以外は、1年を通じて漁がおこなわれており、冬になると「あんこう鍋」の最盛期を迎える。

地元では、「あんこう鍋」のほか、アンコウの身や皮、胃袋などを茹で、肝を合わせた酢味噌「共酢」で食べる「あんこうの共酢和え」という郷土料理が伝わる。いまでも地元の飲食店では提供しており、観光客からも人気があるアンコウ料理の一つだ。
あんこう料理

<県央地域>
水戸納豆を生んだ、茨城県の中心地

県央地域は、本県の行政・経済・文化の中心地。鉄道や高速道路、茨城空港などが整備され、交通の要衝になっている。

水戸市は、いわずと知れた納豆の名産地である。その発祥には、平安時代の武将・源義家が関わっていると地元では伝えられている。源義家が水戸を訪れたときのこと、家来が馬の飼料の煮豆をわらで包んでおいたところ、発酵して糸を引くようになっていた。恐る恐る食べてみた義家は、その味を絶賛。"将軍に納めた豆"、つまり「納豆」は、たちまち近郊の農家に広まったという。稲わらに包まれたわら納豆は1粒1粒にわらの香りが染みこんで、旨味も濃い。地元では老舗から新鋭まで各業者が趣向を凝らし、独自の味を追及している。

この地域で食べられている郷土料理に「そぼろ納豆」がある。切干し大根と納豆を醤油、みりんで味付けした惣菜で、シャキシャキとした歯ごたえが特徴。調味することで保存食としての役割も担っていた。ごはんのおかずとしてはもちろん、酒の肴やお茶づけの具としても親しまれている。
納豆

画像提供元:日本の食文化情報発信サイト「SHUN GATE」

そのほかにも県央地域では多くの郷土料理がいまも根づいている。なかでも「こも豆腐」がおすすめと話すのは、水戸市にある中川学園調理技術専門学校クッキングクラブ代表の中川一恵さん。
こも豆腐
「『こも豆腐』は豆腐を納豆のようにわらで巻いて茹でたもの。豆腐にわらを巻いたあとが残って、この世に二つとないかたちになるんです。豆腐の切り口がまた美しくて。後世に継承するべき、郷土料理の一つですね」。
中川一恵

<南部地域>
夏の訪れをつげる、霞ヶ浦の帆引き船

つくばエクスプレスの開通によって、都内からのアクセスも良い南部地域。都市整備も進み、近年はめざましい発展を見せている。

国内第2位の湖面積を誇る霞ヶ浦と利根川に囲まれた穀倉地帯でもあり、稲作の歴史も長い。また、霞ヶ浦の湖畔でのれんこん栽培も盛んである。土浦市は、れんこんの作付面積・生産量ともに日本一。土浦のれんこんは、肉厚で繊維質が細かいのが特徴で、1年を通して出荷されている。
霞ヶ浦
れんこんは「きんぴら」や「天ぷら」、「だんご汁」といった様々な調理方法で食べられており、一風変わったところでは、れんこんを小豆と一緒に甘く煮こんだ「小倉れんこん」という郷土料理もある。
小倉れんこん
そうした茨城県の食文化と深い関わりをもつ霞ヶ浦の風物詩ともいえるのが、帆引き船である。帆引き船とは帆に受けた風を推進力にする漁法で、ワカサギやシラウオ漁をおこなっていた。昭和40年代にいったんは廃れたものの、観光帆引き船として復活し、7月から11月にかけて優雅に走る姿を見ることができる。この「霞ヶ浦の帆引き網漁の技術」は国選択無形民俗文化財に選定されている。
霞ヶ浦

<西部地域>
江戸の風情が今も息づく農業地帯

江戸時代、水戸藩を中心に笠間藩、土浦藩、古河藩などの藩領だった茨城県。各地に城下町や陣屋町が置かれたが、時代の移ろいとともにその景観は失われつつある。そのようななか、西部地域には江戸の情緒を残した街並みが残る。桜川市の「真壁の街並み」や古河市の「武家屋敷跡」などの往時の景観は、観光スポットとしても人気が高い。「結城紬」や「真壁石燈籠」といった伝統工芸も数多く、伝統的な地場産業が発展した地域でもある。

また、名峰・筑波山の西側には農地が広がっており、レタスやねぎ、白菜、すいかなど茨城県を代表する青果物の生産がされている。農業産出額は、各地域のなかでもトップレベルである。
桜川市

画像提供元:観光いばらき

西部地域に伝わる郷土料理に「すみつかれ」がある。豆や大根、人参、塩ザケの頭などを酒粕と煮こんだ煮物である。

この料理の起源は平安時代にさかのぼるともいわれ、古事に関する説話集「古事談」に記されている「酢ムツカリ」なのではないか、といわれている。近江の国や京の都から発祥したとされ、やがて北関東に伝来。茨城県の西部地域では、2月の初午に食べる行事食として親しまれており、節分でまいた豆を具に使う習わしが残っている。

「7軒の家の『すみつかれ』を食べたら病気にならない」という言い伝えもあり、ご近所同士で分け合っていた習慣があったことがわかる。
すみつかれ

<鹿行地区>
黒潮と親潮が交差する、好漁場

鹿行は、県東南部に位置する地域。地域内に含まれる鹿嶋市は、大和朝廷の東国経略における拠点であり、常陸国一の宮・鹿島神宮の門前町として発達した。鹿島神宮は、神栖市の息栖神社、千葉県の香取神宮とともに東国三社の一社で、全国におよそ900社ある鹿島神社の総本社。市内に残る「宮中」の町名は、そういった歴史的背景が影響している。

地域に面した鹿島灘は、黒潮と親潮が交差する好漁場で、県の水産業を支えている。丸のまま茹でた「鹿島だこ」は地元では正月の食材として欠かせないものとなっている。また、県魚に認定されているヒラメは、茨城県沖で漁獲されたものは常磐ものとして品質が評価されている。

近年は「鹿島灘はまぐり」が全国的にも有名。和名を「チョウセンハマグリ」といい、水深10mまでの砂底に生息する。貝の大きさが10cm以上にもなり、貝殻は艶やかで美しい。国内のハマグリ生産量の約6割を占め、平成のはじめには、1000トン前後の漁獲量を誇ったが、減少傾向にあり現在は100トン未満となっている。地元漁協では計画的に漁を行い、保護区域を設定するなど守りながら出荷している。
鹿島灘はまぐり

画像提供元:茨城県営業戦略部販売流通課

茨城県の食文化からは、地域に深く根づいた伝統や人々の暮らしが垣間見える。"食"というフィルターを通して眺める茨城県には、まだまだ知られざる魅力に満ちている。
大洗

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