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九州地方 大分県

大分県

暮らしのなかで育まれた"おんせん県"の味覚

九州の北東部に位置する大分県。総面積は6,341平方km、東西119km・南北106kmに及ぶ。県土の約7割を林野が占めており、「九州の屋根」と呼ばれる、くじゅう連山をはじめ鶴見岳や祖母山などの山々が連なっている。

年中黒潮の本流・分流に洗われる県南部の沿岸部は、雨の多い地区であり、1年を通じて高温多湿。佐賀関半島から中津市にいたる海岸一帯は瀬戸内海式気候で、気温は平均15℃~16℃と温暖である。一方、内陸山地や盆地は、冬は山越しの北西風、北風が強く冬の冷えこみが厳しい。湯布院や久住山などの避暑地を擁する西部山岳部の冬は、気温が-3℃近くまで下がる。

大分県は、温泉地としても有名である。県内の南北にかけて霧島火山帯、西北にかけて白山火山帯が広がっており、いたるところで温泉が湧出。源泉数と湧出量はともに全国一を誇る。温泉の泉質は10種類に分類されるが、大分県はそのうちの8 種類の泉質がある。こういった背景から、大分県は日本一の"おんせん県"をうたい、国内外に魅力を発信している。

動画素材一部提供元:日本の食文化情報発信サイト「SHUN GATE」
取材協力店舗:こつこつ庵

鶏肉消費量全国トップ、粉食文化も定着

大分県民は鶏肉をよく食べることで知られている。都道府県庁所在地と政令指定都市を対象にした総務省統計局の調査によると、大分市の鶏肉消費量は全国トップクラス。

鶏の唐揚げ、鶏肉を揚げた天ぷら「とり天」、鶏肉を煮こんだ「がめ煮」、鶏肉とごぼうの混ぜごはん「鶏めし」など各地で様々な鶏肉料理が発展。「鶏めし」にいたっては江戸時代に起源があるといわれている。また、ひと昔前までは鶏を飼っている一般家庭も珍しくなく、採卵目当ての「親鳥」が卵を産まなくなると、地域行事や祝いごとの日に捌かれて料理に用いられた。
鶏めし
また、大分県では、平野部を中心に古くから麦などの穀物栽培が盛んだった。穀物の大半は粉に挽かれ、粉食文化が各地に浸透していく。代表格といえるのが「だんご汁」。具だくさんの味噌汁に小麦粉をこねただんごが入っている。素朴で懐かしい味わいの「やせうま」は、平麺のように伸ばした小麦粉を茹でて、きなこと砂糖をまぶした郷土菓子。一説によると、名前の由来は平安時代にルーツがあり、貴族の若殿が乳母の「八瀬(やせ)」に「八瀬、うま(いもの)」とせがんだのがはじまりとされている。

そのほか、大分県各地には地域ならではの食文化が定着している。北部地域中部地域西部地域南部地域の4つの地域に分けて紹介していこう。
やせうま

<北部地域>
ハレの日を彩る、華やかな行事食

中津城下町の風情が残る中津市や神仏習合文化の原点となる山岳宗教「六郷満山」が発展した国東市(くにさきし)、唐揚げ専門店発祥地として知られる宇佐市など個性豊かな地域で構成される北部地域。郷土に残る食文化もじつに多彩である。
宇佐市
中津市三光地区の押しずし「物相(もっそう)ずし」は、数百年近い歴史があるといわれている。「物相」とは、ごはんの量を測る器やごはんを一人前ずつ盛って出す器のこと。転じて、ごはんを型枠に入れて押し抜いた料理を指す。春の金毘羅(こんぴら)祭りや神事のあとに食べられる行事食で、すし飯を基本に、おこわや混ぜごはんでもつくられていた。ごはんが公平に行き渡る押しずしは、米が貴重な時代にはうってつけの食べ方だった。
もっそうずし

画像提供元:大分県中津市地域医療対策課

国東半島沖に浮かぶ、県内唯一の"村"、姫島村。周防灘を望む姫島近海は、好漁場になっており、タイやタコ、車エビなどの豊富な魚介が水揚げされる。村に伝わる「鯛麺」は、新鮮なタイを丸ごと1匹使った豪勢な行事食。尾頭つきのタイを酒や塩、醤油とともに煮こみ、仕上げに茹でたうどんをほぐし入れる。

「鯛麺」と「対面」が同じ発音であることから、婚礼をひかえた両家の顔合わせの会や祝宴の際に提供される。ひと昔前は、家庭でつくったお手製のうどんを使うのが一般的だったそうで、粉食文化が深く浸透していたことがうかがえる。
鯛麺

画像提供元:大分県

<中部地域>
西洋文化がもたらした独自の食文化

由布市、別府市、大分市、臼杵市(うすきし)などの市町村からなる中部地域。大分県の中央に位置する由布院の趣のある街並みは、日本人だけでなく海外の人までも魅了し、多くの観光客が訪れている。

地域に面した別府湾では、船びき網漁業をはじめ小型底びき網漁業、刺網漁業、小型定置網漁業といった漁業が営まれている。約300種類の魚種が生息しており、アカエビ、スズキ、マダイ、トラフグと、1年を通して地元へ豊かな恵みをもたらしている。とくに船びき網で漁獲されるシラスは「豊後別府湾ちりめん」として有名。また、日出町(ひじまち)でとれるマコガレイは「城下かれい」の名称でブランディングされている。
別府市

大分市は、7世紀に国府が置かれて以来、政治・経済の中心市として栄えてきた。戦国時代に入ってからは、キリシタン大名の大友宗麟(おおとも そうりん)が統治するようになり、最盛期には九州の大半を支配下に治めた。1551年にポルトガル船が入航してからは西洋文化が流入し、最先端の音楽や演劇、医術などが伝来。この時期に献上されたかぼちゃは、「宗麟かぼちゃ」の名でいまでも栽培が続けられている。

江戸時代末期、国府は府内藩や日出藩、臼杵藩などの小藩に分立。それでも、大友宗麟が築いた文化の礎は脈々と継承されており、かつての臼杵藩庁が置かれた臼杵市では「黄飯(おうはん)」が郷土の味覚に。乾燥したくちなしの実で黄色く染まったこの飯料理は、スペインから渡来したパエリアに影響を受けているという。
黄飯

画像提供元:特定非営利活動法人 BEPPU PROJECT

<西部地域>
山間部で進化した風変わりな魚料理

熊本県や福岡県の県境と接する西部地域。くじゅう山系の山々に囲まれた竹田市や九重町、九州最大の一級河川・筑後川水系の日田市や玖珠町(くすまち)で構成されている。

日田市は、江戸時代に天領として栄えた街。市内の各所に残された商家や土蔵が、当時の風情をいまに伝えている。

日田市域のお盆に欠かせない郷土料理が「たらおさ」である。たらのエラと内臓を干したもので、巨大な歯ブラシのようなユニークなかたちをしている。これを水に戻して、適当な大きさに切ったものを甘辛く煮こんで食べる。「たらおさ」は、北海道稚内市でとれたマダラが加工されて、博多を経由して日田市へ届けられる。
たらおさ

画像提供元:日田市観光協会

江戸時代、海の遠い竹田市では、海魚は貴重な食材として珍重されていた。新鮮な魚介を口にする機会も稀である。そこから、魚を無駄なく食べる工夫が凝らされるようになり、郷土料理の「頭料理」が生み出された。

「頭料理」は、アラやクエやハタといった大型魚が用いられ、身はもちろんのこと、エラや胸ビレ、内臓など本来なら破棄される部位も湯引きして食べてしまう。一度調理してしまえば日持ちするので、年の暮れや正月の来客などに振る舞われた。ひと昔前は、広い縁側などで大型魚を捌く家庭も珍しくなかった。
頭料理

画像提供元:大分県

<南部地域>
庶民の暮らしから生まれた郷土の味覚

県南部に位置する、佐伯市(さいきし)と豊後大野市。2005年、県南海部郡の5町3村と合併し、九州最大の面積をもつ街になった佐伯市は、市内に山間部、平野部、海岸部を擁し、海の幸・山の幸に恵まれている。

佐伯市域の漁師町に伝わる調味料に「ごまだし」がある。焼いた白身魚をごま・みりん・砂糖とすり合わせ、醤油などで味を調整してつくられる。年間を通じて水揚げされる「エソ」が使われることが多く、昔は各家庭で自家製の「ごまだし」がつくられていた。保存がきき、つくり置きできるので、使い勝手も良い。
佐伯市

お茶漬けにしたり、冷奴にのせたり、様々な料理に使える「ごまだし」だが、地元ではうどんと合わせる「ごまだしうどん」として食べるのが一般的。昭和初期、東京のラジオ番組で紹介されたことをきっかけに、一躍名物になった。

大野町、三重町、清川村、犬飼町などの7町村が合併して発足された 豊後大野市。市域は、大峠山や鎧ヶ岳、祖母・傾山などに囲まれた盆地状になっており、地形的には恵まれていないが、一級河川・大野川の豊かな水利があるため、県内屈指の畑作地帯になっている。

農村の暮らしから生まれたのが「じり焼き」である。小麦粉を水でゆるく溶いた生地を薄く焼いて、黒砂糖を巻いて食べる郷土菓子。子どものおやつとしてはもちろん、農作業の間食などに食べたという。名前の由来は、「じりじり焼いたから」や「水の多い状態を『ジルイ』ということから」など諸説あり。現代のスイーツにはない素朴な味わいは、地元の子どもたちに親しまれている。
じり焼き

画像提供元:大分県

その多くが庶民の暮らしのなかから生まれた大分県の郷土料理。鶏肉料理や小麦粉を使った料理など、素朴で気取らない味わいは時代を越えて、いまなお多くの人に愛されている。その歴史や味覚に目を向ければ、"おんせん県"がより魅力的に映るはずだ。
大分県

大分県の主な郷土料理

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