輸出促進を図る認定品目団体の取組
「認定農林水産物・食品輸出促進団体(認定品目団体)」とは
輸出重点品目ごとに、生産から販売に至る関係者が連携し、輸出の促進を図る法人を、国が輸出促進法に基づき「認定農林水産物・食品輸出促進団体」(認定品目団体)として認定する制度を2022年10月に開始しました。制度を開始して以降、27品目15団体を認定しています(2023年12月末時点)。認定品目団体は、個々の産地・事業者では取り組む負担が大きい、市場調査、ジャパンブランドによる共同プロモーション等を行い、業界全体の輸出拡大に取り組んでいます。
(一社)日本ほたて貝輸出振興協会
会員事業者を取りまとめて、2023年3月に、Seafood Expo North America(米国・世界3大水産物見本市)に出展、2023年9月には、Seafood Expo Asia(シンガポール・東南アジア最大級の水産物見本市)等に出展し、海外における販路開拓活動を実施しました。

Seafood Expo North America(米国・ボストン)に出展したときの様子。

Seafood Expo Asia(シンガポール)に出展したときの様子。
(一社)日本畜産物輸出促進協会
和牛の需要の裾野拡大や多様な部位の輸出に向けて、カッティング講座の開催、外国人シェフを用いたレシピ集の作成、多言語のカッティングガイドの提供を行うなどの活動を実施しました。

ドバイで好評を博したWAGYU KIMONO BUTCHER-渡邊講師によるカッティング講座(2023年2月)。

外国人シェフによるレシピ集、多言語のカッティングガイド。
全日本カレー工業協同組合
日本式カレーの普及に向けて、日本産食材の流通が少ないフランスの地方都市において、学校給食への導入促進のためのレシピ等の提供や、日本式カレーに関する講演や調理実習を実施しました。
海外で人気のさつまいもを安定的に届けるために
(一社)日本青果物輸出促進協議会
(一社)日本青果物輸出促進協議会は、りんごやぶどうなど国産の青果物やその加工品を対象に輸出促進に取り組んでいる認定品目団体です。今回は、輸出重点品目の1つであり、2022年には28億円と過去最高の輸出額を記録したかんしょ(以下、さつまいも)について、同協議会の会員である東京青果(株)と、同協議会と連携してさつまいもの輸出に取り組んだ(株)野村総合研究所のお二人に話をうかがいました。
さつまいもは、香港やタイ、シンガポールなどで消費量が増えており、東南アジアでは焼き芋がブームになり、日本産はしっとりしていて甘くておいしい、と好評。さらにチップスの原料などの用途も含め需要が高まっています。
お話を聞いた方々

土物グループマネージャー、東京青果入社19年目。さつまいもを中心とした営業活動を展開。さつまいも輸出を2015年から取り組み、日本産さつまいもの魅力を届けることを生きがいとする。

モビリティ・ロジスティクスを専門分野に、青果物輸出関連など戦略から実行支援まで一貫したコンサルティングを行っている。
ニーズに応えるための産地リレー
さつまいもを輸出していくうえで、どのような課題があったのでしょうか。
狩野純一さん(以下、狩野) 海外でのニーズは高まっているのですが、生産者が輸出に興味を持っていても、必要なノウハウが不足しています。すでに輸出している生産者団体もバラバラに動いているため、それぞれが物流やPRなどの面で同じ課題に直面しているといった状況がありました。また、焼き芋が人気の東南アジアは四季がないため、年中需要があるのですが、通年で安定的に供給するのが難しいという課題もありました。さつまいもは貯蔵が可能なのですが、産地ごとに収穫や貯蔵のタイミングが異なるため、広域で調整しない限り、対応できないのです。
安藤太裕さん(以下、安藤) それらの課題に対し、全国の産地を熟知する東京青果(株)とタッグを組み、産地に取組の重要性を訴えながら、オールジャパンで輸出を行うリレー出荷の体制を構築しました。
狩野 全国の情報を整理しながら、供給していただく時期や数量を各産地に示し、調整を図ります。大規模生産が可能な北海道の農業協同組合や農業法人にプロジェクトに参加していただき、生産体制の確立にも取り組んでいます。
安藤 寒い北海道でのさつまいも生産は大きな反響がありました。

北海道産のシルクスイート。海外で人気の「ねっとり系」の品種。

北海道ではしっとりした食感の紅あずまも生産されている。
マンガの箱で日本産をアピール!
生産者以外の事業者もプロジェクトに参加されたのでしょうか。
安藤 輸出促進のためには戦略的なプロモーションのほか、確固たるサプライチェーンの構築も欠かせません。そこで、生産や選果・梱包・加工、流通、販売など食料システムに関わる様々なプレーヤーの協力体制を組み、大規模輸出のモデルケースを作ろうと考えました。北海道では10以上の農業協同組合で生産面積を拡大するとともに、大規模農機具、大規模集中選果場、高効率なパレット輸送など、生産から輸送まで一連のプロセスで大規模化に取り組み、輸出産地としての基盤形成に成功したと考えています。
狩野 出荷箱については「日本産」を強調するため、海外で人気の漫画を採り入れたデザインにしています。ほかに歌舞伎風やレトロ調など10種ほどサンプルを作り、中にはスタイリッシュなデザインもあったのですが、タイのバイヤーが、「いや、こっちのほうがいい」と(笑)。結果としては大成功で、世界的なデザインの賞である「Pentawards 2023」(注1)の金賞など国内外の賞をいくつか受賞できました。
(注1)2007年にベルギーで設立された、世界初のパッケージデザインにおける優秀な才能を認定することに特化した、世界で最初のコンペティション。

ユニークなマンガが描かれた輸出用出荷箱。

40フィートのコンテナに12配のパレットを隙間なく詰められるサイズにすることで輸送コストを低減させた。
品質の底上げにもつなげたい
取組の成果をどのように評価されていますか。
狩野 品質の底上げにつながることを期待しています。輸出を拡大するには量の確保だけでなく、貯蔵や長距離輸送に耐えうる質の確保も重要です。リレー出荷の実証では、各産地の皆さんに、「海外に日本産を欲しいという方々がいるのだから、これに応えるためオールジャパンで取り組みましょう」と呼びかけ、見た目も味も評価されるように1本1本作り込み、品質のよい物を選果してください、とお願いしました。
安藤 生産者から輸出商社まで多くの関係者が協調したことで、海外マーケットニーズに即した輸出サプライチェーンを構築できました。北海道が新たな輸出産地となり、各産地の品質が底上げされ、海外の評価がさらに高まり、より売れるようになる。こうした良いサイクルの入口を作れたのではないか、と考えています。
狩野 種苗や段ボール、機械のメーカーなど異業種の皆さんと密に情報を共有しましたが、大変有意義な機会になりました。
安藤 農林水産物・食品の輸出額を2030 年までに5兆円にするという政府目標を達成するには日本産ブランドを確立し、これを維持・向上させていかなければなりません。今回の取組が参考になり、日本産青果物のさらなる品質向上、国際競争力につながれば、と期待しています。

北海道では12の産地から苫小牧の大規模な選果施設に集積した。
お問合せ先
大臣官房広報評価課広報室
代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449
フランスの学校での調理デモ。
給食で提供されたカレー。
講演の様子。