ダムのことをもっと知りたいと思ったなら、ぜひ実際に見に行ってはいかがでしょう。
ダムやその周囲には、マニアでなくとも楽しめる魅力的な要素がたくさんあります。
今回は、農業用ダムのいろいろな楽しみ方を紹介します。

普段は入れないダムの裏側が見られる
見学会
自然の中にそびえるその姿を見るだけでも十分に楽しめますが、1歩踏み込んで中に入ると、より迫力ある姿や合理的なつくりなど、さらにいろいろなものが見えてきます。全国の農業用ダムには、社会への役割について理解を深めてもらうことを目的に、見学会を実施している施設があります。ダムの堤体内部をチェックするための監査廊など、普段は入ることができない所もじっくり見ることができるのが見学会の最大の魅力。学校関係の団体での社会科見学などとは別に、一般の個人でも見学予約を受け付けている施設もあります。

呑吐(どんど)ダム(兵庫県)
毎年11月に東播用水「水と緑の交流」実行委員会の主催で見学イベント「呑吐ダム探検隊」を開催しています。ダムの操作室や監査廊、揚水機場などに入ることができ、毎年100名以上の人々が参加する人気イベントとなっています。
加古川水系広域農業水利施設総合管理所
https://www.maff.go.jp/kinki/seibi/sekei/kokuei/kakogawa/index.html

夕張シューパロダム(北海道)
見学の申込みをすると、高さ110.6メートルの堤体の内部や堤体直下に行くことができます。この他に、ダム見学と周辺の観光スポット巡りを組み合わせた旅行会社の見学ツアーも行われています。

日中(にっちゅう)ダム(福島県)
近隣温泉の宿泊客も含め、一般の人々のダム見学も受け付けています(事前に日程について問い合わせたうえで、見学の2週間前までに申し込み書の提出が必要)。

呑吐ダム(兵庫県)のダムカード。表面右下のアルファベットはダムの形式を表す記号。Gは重力式コンクリートダム(gravity dam)を表します。
訪れた際にはぜひ手に入れたい
ダムカード
ダムカードとは、トレーディングカード型のダムのパンフレット。表面にはダムの写真と目的や形式の記号、バージョン情報、そして裏面にはダムの基本的なスペックとこだわりの技術が記載されています。もともとは国土交通省と(独)水資源機構の管理するダムが2007年から配布を開始したものですが、これにならって都道府県や民間が管理するダムでも作成されるようになり、農林水産省管轄の農業ダムでも配布しているダムがたくさんあります。ダムカードは原則としてダムの来訪者に1人1枚手渡しで配布されますが、カードの有無や配布方法については事前に各ダム管理事務所のWebサイトなどで確認しましょう。

豪快に流れる水の姿に感動
放流
大量の水が大音量とともに放たれるダムの放流。間近で見るとその迫力に圧倒されます。洪水調節や水力発電を主目的とするダムの中には、定期的にイベントとして「観光放流」を行っている施設もあり、多くの見物客が訪れます。しかし農業用ダムは、かんがいのための水を貯めることを目的とする施設なので、こうした観光放流を行っている所はありません。放流は既定の水量を超える恐れがある場合に限られます。このため、農業用ダムの放流は見られたらラッキー程度に思っていたほうがよいでしょう。
目と舌で楽しめる
ダムカレー
街おこしの一環で、近隣の飲食店などが提供している「ダムカレー」。
ライスでダムの堤体を、カレールーで貯水池を表現したご当地カレーです。2009年頃からダムカレーを提供する飲食店が増え始めたといわれており、堤体の形の再現にこだわったもの、周囲の景観を地元の食材で表現したものなど、さまざまなスタイルがあり、目でも楽しませてくれます。


アクティビティを満喫しよう
ダム湖
ダムが堰き止めた川の水によって生まれた人造湖であるダム湖。ダム湖には、一般的な湖と同様にボートやカヌーなどのアクティビティを楽しめたり、周辺にサイクリングロードやトレッキングコースなどが整備されている所も数多くあります。周辺一帯がリゾート地として開発されているダム湖もあり、宿泊して周辺を観光したり、さまざまな遊びを楽しむことができます。


「ダム湖百選」は、2005年に(財)ダム水源池環境整備センターが、地域に親しまれ、地域にとってかけがえのないダム湖を選定したもの。現在全国の65のダム湖が発表されており、農業用ダムのダム湖もあります。写真左は羽鳥(はとり)ダム(福島県)の羽鳥湖で、周辺にはさまざまなリゾート施設が整備されています。写真右の永源寺(えいげんじ)ダム(滋賀県)の湖畔は自然公園として整備され、春は桜、秋は紅葉で有名です。

シューパロ湖は湛水面積全国2位の大きなダム湖ですが、8月から9月の渇水期にはダム湖の水位が下がり、湖底に沈んでいたかつての炭鉱街が姿を現します。そこで秋にはこの街を散策できるユニークなイベント「沈んだ街あるき~夕張市鹿島地区~」が開催されています。

こちらは夕張シューパロダムの無料配布会。流木はカラマツが多く、薪用として求める方が多いとか。
使い途はご自由に!
流木の無料配布
台風などで大雨が降ると、貯水池には枯れ木を始め、さまざまな「流芥(りゅうかい)」が流れ込んできます。こうしたゴミはダムの操作の障害になるので、ダムフェンス(網場)という設備で止め、陸揚げしてから分別して廃棄またはリサイクルします。流芥のうち、流木はガーデニングの装飾、アクアリウム、アート作品の素材、暖炉の薪などさまざまな需要があるため、無料配布を行っている施設もあります。

永源寺ダム(滋賀県)の流木配布会。在庫がなくなったため中止していましたが、今秋は再開する予定だそうです。
永源寺ダム管理支所
https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kendoseibi/dam/18287.html

ダムの特性を活かしたイベント
コンサート
ダムの中には、堤体やそのまわりの特殊で広い空間をイベントや撮影などに提供している施設もあります。内の倉ダム(新潟県)は日本国内に13しかない中空重力式コンクリートダムで、堤体の内部に広い空洞がある点が特徴です。高さ約35メートル、長さ約40メートル、幅約10メートルの大空間は音がよく響くため、これを活かして地元の「ダムを奏でる会」が主体となって、毎年10月にコンサートを開催しています。例年数組の演奏者が参加し、聴衆者含めて80名の定員は公募で選ばれます。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響による中断などを挟みつつ、2002年から開催されている内の倉ダムの晩秋のイベント。堤体内の空間に演奏の音が響き合い、音のシャワーが降り注ぎます。休憩時間には管理用の通路を通って普段は入れない場所からダムを見学することもできます。
新発田地域振興局 地域整備部 【新発田】内の倉ダムのご案内
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/shibata_seibi/damu-u.html
今週のまとめ
ダムの中には、観光資源としても活用されている場所があります。
休日のお出かけ先として、ぜひ農業用ダムを検討してみてください。
遊びに行くことで、楽しみながらダムへの理解を深めることができます。
お問合せ先
大臣官房広報評価課広報室
代表:03-3502-8111(内線3074)
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