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特集 知りたい「JAS」

認証事業者に聞くJASの可能性 認証事業者に聞くJASの可能性

JAS認証は、国が認めた機関(JAS登録認証機関)の審査・認証を受けることで、
事業者がJASマークを利用することができる仕組みです。
食の多様化が進む中、ベジタリアン・ヴィーガン向け加工食品の製造業者、
オーガニック料理やベジタリアン・ヴィーガン向け料理を提供するレストランが
どのようにしてJAS認証を取得し活用しているのかを聞きました。

加工食品初のヴィーガンJAS認証を取得 納豆メーカー・小杉食品の思い 加工食品初のヴィーガンJAS認証を取得 納豆メーカー・小杉食品の思い

加工食品として、国内で初めて
ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品JASの認証
を取得した納豆メーカー(株)小杉食品。
JAS認証取得までの道のりについて、代表取締役の小杉悟さんに聞きました。

納豆のさらなる可能性を探して

三重県桑名市に本社を置き、「都納豆」ブランドの納豆を販売する(株)小杉食品。創業者の生まれ故郷である新潟で食した納豆の味を懐かしみ、納豆づくりを始めたのは昭和の初めのことでした。しかし、当時の桑名では納豆を食べる習慣がほとんどなかったため、事業は苦難の連続だったといいます。この逆境で創業者を支え続けたのは、おいしい納豆を多くの人に食べてもらいたいという思い。そんな心意気を受け継ぎ、(株)小杉食品では、原料の大豆や水、品質に徹底してこだわる納豆づくりを続け、業界トップクラスの30種類を超える品揃えを誇る納豆メーカーへと成長していきました。

加工食品で日本初のヴィーガンJAS認証を取得したことで2024年に「日本ベジタリアンアワード企業賞」を受賞。

三代目となる小杉悟さんが、ニューヨークのスーパーを訪ねた時のこと。ミルクの棚を見ると、豆乳をはじめとする植物由来の商品の比率が非常に高く、「食に関する意識が世界の人々の間で大きく変わってきている」と実感したといいます。訪日外国人が増える近年、食品メーカーとしてこうした変化に対応し、ベジタリアンやヴィーガンも安心して口にできる納豆を作ることを決めました。

本社入り口に飾られた(株)小杉食品のルーツを物語る絵と創業時の看板。

「ヴィーガンJAS」製品開発の苦心

納豆の主な原料は大豆と納豆菌だけですから、ヴィーガンJAS認証を取得するのは難しくないと思う人もいるかもしれませんが、実際はそう簡単なことではないといいます。
「納豆菌そのものは、動物でも植物でもない微生物なので問題ないのですが、菌の培養液に動物性のエキスは使えません。また、ヒトへの安全性を確認するのに動物実験を行っている原材料や添加物も使えません」
そして、納豆をよりおいしく味わってもらうための付属の「たれ」ですが、通常はカツオやサバなど魚介の出汁を使います。ヴィーガン向けの製品の場合、植物性のもので対応しなければなりませんので、新たに「きざみ昆布」でたれを作ることになりました。
こうして、ヴィーガン向けの製品「とろ~りきざみ昆布たれ付小粒納豆」の開発を終え、その後、JAS登録認証機関に対してベジタリアン・ヴィーガンJASの認証申請を行い、厳しい審査を経て、2023年7月に第1号認証を取得することができました。

細心の注意を払う工場の製造ライン。

(株)小杉食品のヴィーガンJAS認証の手順

JASマーク(左)と、JASマークがつけられた製品(右)。

JAS認証を取得することとは

(株)小杉食品はヴィーガンJAS認証を取得する以前の2001年から有機JASの認証を取得しており、国産でさらに産地にこだわった有機JAS認証の納豆も作っています。「有機納豆は、毎朝製造ラインが動き出すと一番はじめに作る決まりになっています。そして、全工程終了後のていねいな清掃やチェックも欠かせません。なぜなら有機納豆には、有機以外の豆は一粒たりとも混入してはならないからです。同じように、ヴィーガンJASの製品も、それ以外のものと接触しないように細心の注意を払って製造しなければなりません」このように原材料の調達だけでなく作業手順も厳格になり、また認証を受けた後も認証の基準がきちんと守られているか、定期的なチェックが入ります。「正直言ってJAS認証を取得するにはコストも手間もかかります。しかし、消費者にとって、JASマークほど簡単でわかりやすい目印はないと思います。その信頼こそが、製造する私たちにとっても一番のメリットなのです」と小杉さんは語りました。(株)小杉食品代表取締役・小杉悟さん。「JAS認証は原材料や品質に徹底してこだわる私たちの納豆づくりを消費者にわかりやすくアピールする手段にもなっています」と語っていました。

オーガニックレストランの先駆け クレヨンハウスが目指すこと オーガニックレストランの先駆け クレヨンハウスが目指すこと

有機JASには、製品にJASマークを貼る有機農産物JASや有機加工食品JASなどがあります。
また、レストランなどの飲食店等についても、お店の看板等にJASマークを掲示できる
「有機料理を提供する飲食店等の管理方法JAS」(通称:オーガニックレストランJAS)
というJASがあります。
オーガニックレストランJASの認証を取得されている
(株)クレヨンハウス取締役副社長の岩間建亜さんにお話を聞きました。

レストラン入り口に掲げられた今日のメニューとJASマーク。
JASマークの上に、「有機料理提供」と記載されている。

オーガニックレストランとは

かつて日本には「オーガニック」をうたう料理や飲食店についての明確な基準はありませんでした。それを消費者にもわかりやすい形で示したのが、2019年1月に施行された「オーガニックレストランJAS」です。
認証の主なポイントは、有機食材を80パーセント以上使用した料理を5品目以上提供することや、その料理に使った有機の食材の割合を利用者に正しく情報提供することなどです。
この認証を国内で初めて取得したのが、東京都武蔵野市吉祥寺の(株)クレヨンハウスが運営するオーガニックレストラン「広場」です。同社取締役副社長の岩間建亜さんに話を聞きました。

毎日5種類(ディナーは6種類)の料理と玄米・五分米のごはん、味噌汁が並ぶカウンター。どれもおかわり自由。料理の後ろには、使われている食材や調味料などの詳しい説明が付けられている。

本日のランチ

和風ドレッシングサラダ、車麩の竜田揚げなど5種類の料理で使用される野菜は全て有機。唯一の肉料理、(株)秋川牧園産鶏ひき肉のキャベツ入りメンチカツ以外はヴィーガン対応。ごはんは玄米か五分米を選べます。

飲食店での有機野菜の需要

クレヨンハウスは1976年、東京都渋谷区に子どものための書店とレストランをオープン、2022年に現在の吉祥寺に移転しています。
初めから有機食材を使った料理の提供を目指していましたが、当時は有機食材の調達が難しかったため、オーガニックレストランの開業は会社設立から16年後のことでした。何より、有機農業の認知度も広がりもまだまだ大きくなかった時代でした。
「私たちは創業から30年近く、95パーセント以上を有機の食材にするなど独自の厳しい基準でオーガニックレストランを続けてきましたので、JAS認証の取得に関しては特に大きな問題はありませんでした。とはいえ、有機野菜の調達には今でもたいへん苦労しています」と岩間さんは教えてくれました。

ランチとディナーがビュッフェスタイルで楽しめる「広場」の1週間のメニュー。

飲食店での需要が農業の未来を支える

「広場」ではランチビュッフェには5品、ディナービュッフェには6品の料理を日替わりで用意し、肉または魚の1品を除けばヴィーガンの方にも食べられるようにしています。そのため食材に占める野菜の比率は一般レストランに比べると格段に大きく、しかも有機野菜の出来不出来は天候の影響を受けやすいため、料理を提供する2週間以上前に産地での生育状況を確認してメニューを作成し、さらに1週間前にも確認してメニューを確定しているとのこと。しかし、生育が悪く、食材やメニューの変更を余儀なくされることも多いのだとか。そんな状況でも岩間さんたちがオーガニックレストランを続けてこられたのは、農業について学びながら、農家の人々と密接な関係を築いてきたからだといいます。「近年は有機農業を目指す新規就農者とよく出会います。一般家庭だけでなく、数多くの飲食店で、プロの料理人たちが大量かつ安定的に有機野菜を使うことになれば、そういう農家を支えることにもつながります。つまりJAS認証によってオーガニックレストランの数が増えていくことは、農業の未来にとっても重要な意味を持つと思うのです」と岩間さんは熱く語ってくれました。(株)クレヨンハウス取締役副社長の岩間建亜さん。(株)オーガニックフーズ普及協会の取締役でもある。

志向や環境、食の多様性に対応 内閣府食堂のベジ・ヴィーガン料理 志向や環境、食の多様性に対応 内閣府食堂のベジ・ヴィーガン料理

内閣府の職員食堂では、2017年3月から毎週金曜日を中心にベジタリアン・ヴィーガン向けの料理を提供しています。(株)ニッコクトラストが運営する内閣府食堂のマネージャー、村越厚久さんにこの取組についてお話を聞きました。

内閣府食堂入り口にはベジタリアン又はヴィーガン料理を提供する飲食店であることを認証する「JAS 0026認証証明書」が掲げられている。右は特色JASマークがついた野菜カレーの広告。

「食」の多様化に合わせて

「私たちの会社は、創業者の理念である『求められたら応える』という姿勢を大切にしてきました。そのような中で近年大きな課題となっているのが食の多様化です。ベジタリアン・ヴィーガンへの対応はその一環でもあります」と村越さんは言います。
(株)ニッコクトラストは2021年に「ベジタリアン又はヴィーガンに適した食品等JAS制定プロジェクト」がスタートした時から積極的に関わり、2023年6月には運営する内閣府の職員食堂が「ベジタリアン又はヴィーガン料理を提供する飲食店等の管理方法JAS」(通称:ベジ・ヴィーガンレストランJAS)の認証を国内で初めて取得しました。

食堂はランチタイムとディナータイムのみの営業だが、食堂奥のカフェコーナーは朝から夕方まで利用でき、ここでベジカレーも提供されている。

利用者の声に応える給食事業

現在、週替わりで提供する5種類のヴィーガン向けカレーライスを中心に、ソイミートなどを利用した約40種類のベジメニューをランチタイムやディナータイムに提供。こうした料理はベジタリアンやヴィーガンばかりでなく、環境や健康への関心が高い利用者からも大きな人気を集めています。「ベジ・ヴィーガン料理やイスラム教のハラルフードなど、今後、日本の給食事業にはさまざまな対応が必要になっていくでしょう。そのためにも私たちはJAS認証を取得したこの職員食堂で経験を積み重ねながら、将来の給食事業につなげていきたいと考えています」と村越さんは語っていました。(株)ニッコクトラスト首都圏事業部、内閣府食堂マネージャー、村越厚久さん。同社は1941年創業の給食会社の老舗だ。

今週のまとめ

JAS認証を取得するには、
国が認めた認証機関の厳しい審査を受けなければなりません。
JASマークの表示や広告などを通じて、
消費者はその製品やサービスの信頼性をひと目で理解できるのです。

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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