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農林水産省

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食とくらしの「今」が見えるWebマガジン

特集 3 スマート農業

農業の未来を担う 研究開発

農作業の省力化・高度化を実現する
スマート農業技術の開発・普及が進み、
すでに定着した技術もあれば、
これから広がっていく技術もあります。
最先端の技術が使われている現場を訪ね、
どんな未来を描くのかをご紹介します。

ARを活用した 画期的な農業アプリ

現実世界にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術、AR(拡張現実)を活用し、スマートフォンやスマートグラスを使って、農作業をサポートするアプリ「Agri-AR」。最先端のデジタル技術が農業でどう活用されているのか、開発者に話を聞きました。

(株)Root 代表取締役 岸圭介さん|東京大学卒業後、(株)新日本製鉄入社。英オックスフォード大学のMBAを修了し、(株)Rootを創業。その間に北海道と茨城県で就農を経験。単独で開発した「Agri-AR」で数々の賞を受賞。 Agri-ARができること 平行直線・外周算出 平行直線やポイントをAR空間に表示し、ガイドとして現実空間に固定。|畝・苗シミュレーション 仮想の畝やビニールマルチを現実空間上に表示。畝幅、畝間、株数などの自動計算も可能。|面積計測 計測対象の外周を一周するだけで面積を計測。任意の等分割線をAR空間上に表示。|距離計測 2点間の距離を計測し、等分割線をAR空間上に表示。連続して複数行うことも可能。|レベル計測 現実空間を3Dスキャンし、ARのビー玉を配置。凹凸、勾配、水平高さが確認できる。|サイズ計測 画面をタップしたり、指先を対象に当てたりするだけでサイズを計測。判定や記録も簡単。 体積計測 凹凸のある3Dの物体や空間をポイントで囲うだけで、体積の概算を算出。|林業用調査 幹の太さを測る「周囲計測」、中心から一定範囲内の樹木を数える「標準値調査」の技術も。|外部サービス連携 外部サービスで登録した可変施肥マップを現実空間に配置し、可視化。|AI果実熟度判定 徳島県立農林水産総合技術センターが開発した機能を搭載。柿と梅の熟度を自動判定。|空間マッピング 現実空間にテキストや画像、チェックボックスを配置し、保存。データは何度でも再現できる。|気象積算シミュレータ 全国500箇所以上、過去40年分の気象庁観測データの検索とシミュレーションを提供。 Qなぜ農業に注目したのですか? 大学在学中に北海道で酪農を、会社を退社後に茨城県で和牛・稲作・ハウス苺を経験しました。単純に土や動物と触れ合い、作業をすることが好きですし、同じ作物でも毎年何かが違う点も魅力的ですね。 Qこのアプリを開発したきっかけは? スマート農業ツールは、大規模農業において収益向上などの効果を発揮するものが多いのですが、日本の農地のほとんどは中小規模。そこに向けて、安価に使用でき、初心者でもひとりで作業ができる農作業補助アプリ「Agri-AR」を開発しました。販売農家はもちろん、家庭菜園でも活用できます。 Q今後はどのような開発を? 「体験」に着目した、MR(複合現実)農業体験アプリも開発しています。スマートグラスを用い、現実空間で、自分の手で収穫や農作業ができます。介護施設などでも喜ばれている新しい農業体験の形です。

先進制御システムで自動化とIoT化を支援

センサーと通信機能により、インターネット経由で情報を収集するIoTを駆使した制御技術を用いて、農業の自動化を実現。灌水の自動化や、作物を自動で収穫するロボットの開発が進んでいます。 アイナックシステム 代表 稲員重典さん|2008年に半導体製造装置における制御システムの開発を主体とする会社を創業。2012年に農業自動化システムの開発を始め、かん水システムを提供。2024年にはいちご自動収穫ロボットを販売開始。 アイナックシステムのサービス かん水コントローラー 開始時間や間隔、回数、曜日ごとの設定などを細かく管理しながら灌水を自動化。液肥も混入可能で、スマホなどで遠隔操作可能。|局所土壌ヒーターシステム 重油使用量&CO2排出量-50% 収穫量x2 ブロックごとに土壌を直接温め、重油使用量を約半分、収穫量を2倍以上に。30アンペアの契約電力で基本電気料金も抑制します。|大規模農場かん水システム「AguRo-W」 統括コントローラー1台で、最大10ブロックの農場の自動かん水を、スマートフォンやタブレット、パソコンから遠隔管理できるシステム。大規模農場経営に適しています。|いちご自動収穫ロボット「ロボつみ®︎」 AIで色を判定し、収穫に適したいちごを見つけてそっと優しく収穫する、自走式の自動収穫ロボット。少人数でも一斉収穫が可能になります。 傷つきやすい実をやさしく収穫 独自に開発し特許を取得した収穫ハンドでやさしく収穫。ロボットは地面に張ったロープに沿って自走し、栽培棚の間を自動で移動します。万願寺とうがらしなどの別の野菜への転用も開発が進められています。 農家を重労働から解放する開発 農家で育ち、その重労働を間近に見てきた代表の稲員さん。自動制御システムといちご自動収穫ロボット「ロボつみ®︎」の開発は、農家の人々を重労働から解放したいという稲員さんの思いが込められています。

 まだまだあります!スマート農業を支える技術

労働力不足は、農業にとって大きな課題。この課題を解決するため、ほかにもさまざまな開発が進められ、実証実験が行われています。その一部をご紹介します。

現場全員でデータを共有 車両の走行軌跡をリアルタイムに色付け! (株)エゾウィンの「レポサク」は端末を車両の電源に挿すだけで高精度・リアルタイムに車両の軌跡を可視化。誰でもいつでも全体の進捗が把握可能に。農作業にもっと集中できる環境を提供。|適所適量散布ドローン ひとりでも簡単に操作できる(株)ナイルワークスのフルオートドローン「Nile-JZ Plus」。作物の生育状態にあわせて、必要なところだけに適量の農薬・肥料を散布する可変散布が可能です。 水田の雑草の発生を抑える (株)NEW GREENが開発し、井関農機(株)が販売する「アイガモロボ」は水田の泥をかき混ぜて日光を遮断し、雑草の成長を抑制。ソーラーパネルと蓄電池を搭載し、太陽光のみで稼働します。|自律走行型農薬散布ロボット (株)レグミンが開発した自律走行型の「農薬散布ロボット」。GPSやセンシングを活用して畝を認識して自律走行し、作物に接触せずに農薬や液肥等を所定の位置・量で自動的に散布します。

スマート農業向け品種の開発が進んでいます 農研機構が約30年の育成期間をかけて開発したりんご「紅つるぎ」。樹形がコンパクトなので、1列に並べて植樹し、結実面を壁状に仕立てることで、将来的には自動収穫機などによる収穫機械化の可能性も。他にもさまざまな、スマート農業に適した品種が開発されています。

今週のまとめ

中小規模向けから大規模向けまで、
さまざまなスマート農業技術が開発中。
ロボットと一緒に作業する
未来の農業も実現間近に。
スマート農業に適した作物の品種開発も
盛んに行われています。

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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