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参考になる取り組み

地域での取り組み
福井県小浜市「食のまちづくり条例」
行政が取り組んでいる事例  福井県小浜市「産・学・官・民」の連携を大切に生涯食育を推進
  • 1 「御食国若狭おばま食文化館」が食育の拠点施設
  • 2 行政は「産・学・官・民」を結ぶコーディネーター
  • 3 子どもは全員参加の「義務食育」体制
  • 4 生産者グループの協力で実現した校区内型地場産学校給食
  • 5 事業者と連携して商品開発や食育事業を推進

全国初の「食のまちづくり条例」を制定

成人を対象にした「健康に食べよう会」

成人を対象にした「何を」「どれくらい」食べるのが良いかが理解できる「健康に食べよう会」

小浜市では、2001年に市民や事業者の主体的な参画のもと、協働してまちづくりに取り組むことを基本として、全国初の食をテーマにした条例「食のまちづくり条例」を制定。同市は、福井県南部に位置する人口約3万2000人の小さな街ですが、奈良・飛鳥時代には若狭湾でとれる豊富な食材を天皇の食料(=御食(みけ))として献上する御食国(みけつくに)のひとつであったという歴史があります。

条例の制定にともない、市では「食のまちづくり課」を新設して食の専門職員を配置。人は生涯を通じて食に育まれることから「生涯食育」の概念を提唱し、人は生まれ育った土地や環境と密接なつながりを持っていて、その土地で生産されたものを食べることが最もからだに良いという「身土不二(しんどふじ)」の理念に基づく地産地消とともに、ライフステージに合わせたきめ細かな生涯食育事業に取り組んでいます。

「御食国若狭おばま食文化館」が食育の拠点施設

2003年には、食のまちづくりの拠点施設として「御食国若狭おばま食文化館」を開館。同館は、市職員と市民によるプロジェクトチームからの提案で建てられ、今では食育のシンボルとなる施設になっています。

館内は、小浜の食に関する歴史・伝統・文化の展示ほか、調理室「キッチンスタジオ」を備え、乳幼児から高齢者まで、特色ある料理教室や食育講座等を開催しています。

若狭の魅力がつまった体験型ミュージアム「食文化館」

若狭の魅力がつまった体験型ミュージアム「食文化館」

行政は「産・学・官・民」を結ぶコーディネーター

食のまちづくり課、食育政策専門員の中田典子さんは、「これまでも『食育』とは、特別なことではなく、限られた立場の方だけが関わるテーマではないと訴え続けてきました。行政はいろいろな立場で知恵や力を持つ皆さんをつなぐ役目、つまり『産・学・官・民』を結ぶコーディネーターであり、その重要性を日々実感している」と言います。

子どもは全員参加の「義務食育」体制

小浜で生まれ育つ子ども全員に、食育の機会を提供するため「義務食育」体制を構築。公立、私立問わず、市内の全幼稚園・保育園の年間行事に料理教室「キッズ・キッチン」を組み込んでいます。こうしたシステムは、全国の自治体で初めての試みでした。

「キッズ・キッチン」は、食のまちづくり課を中心に、食育サポーターである栄養士や教師、調理師などの資格を持つ女性を中心に運営。親は一切手も口も出さず、子どもの力だけで全ての作業を進めていきます。そうすることで、子どもたちは明確な達成感や満足感を味わい、また親も料理を通じた子どもの成長で「食」の力に気づくそうです。

また、同市では「義務食育」の一環の 補助事業として、小・中学校に「食事バランスガイド」の下敷きやファイルを全員に配布しました。

包丁を上手に使う子ども

けがをしないように、包丁もじょうずに使えます

生産者グループの協力で実現した地場産学校給食

全小・中学校では、生産者グループの協力により、校区で生産された食材を優先的に学校給食に利用する校区内型地場産給食を実施しています。地元の農家が立ち上げた生産者グループと、栄養士や給食調理担当者などの学校関係者と話し合いながら、安定供給体制を整えてきました。

給食時の校内放送では「本日の食材の若狭カンラン(キャベツ)は○○おじさんの畑で収穫されたものです」といったアナウンスが流れ、生産者の顔が見える学校給食が実現。毎年1月の学校給食週間には、生産者との交流会や給食感謝祭が実施されるほか、給食の野菜を作ってくれている生産者の畑には手作りの「感謝の似顔絵看板」が設置されます。

ありがとうの気持ちを込めて、似顔絵看板を設置

ありがとうの気持ちを込めて、似顔絵看板を設置

こういった取り組みにより、児童は地場産食材に興味を深めるとともに、生産者への感謝の気持ちを育み、給食の残食も大幅に減少。また、生産者は児童との触れあいが大きな生きがいとなり、より安全で安心な食材の提供に責任を感じるようになったということです。

事業者と連携して商品開発や食育事業を推進

小浜市には、市長から認定されている「食の達人」や「食の語り部」がいます。そのなかの1人、豆腐店の方と食のまちづくり課がコラボレーションして「再現料理イベント」を実施。これは古い時代の料理本に基づき、各時代の料理を作り、再現して試食するというもので、シリーズ化しているそうです。他にも事業者と連携している事例を一部紹介します。

  • 小浜水産高校で開発したカレーを市内の大手ホテルや大手缶詰工場が商品化して販売。これは新たな特産品として注目を集めています。
  • 「STOP魚離れ、魚大好き食育事業」は、鯖缶で有名な大手缶詰工場やかまぼこ工場、鮮魚店などと協力して実施。工場見学をしたり、市場で魚を購入したり、また魚をさばいて調理して試食も。
  • 小浜産の米粉を使って、市内の飲食店や製麺業者、菓子、パン業者などと商品開発。
  • 塗箸の生産量が日本一であることから、マイ箸を携帯する市民を増やす運動を推進。箸業者とともに食育活動も展開しています。

大学生の出前講座も盛況

福井県立大学の学生が、小学校、中学校で自分の専門分野に関する内容の出前講座を実施しています。ある小学校では、校歌にイサザというシロウオが出てくるので、それを研究している学生が専門知識と本物のイサザを持ち込んで授業をしたところ、子どもたちから多くの質問が出て大盛況でした。

大学では、学生だけでなく、小浜の漁業や水産業に関する研究をはじめ、特産で伝統食の「へしこ」の良さを研究している先生方も、さまざまな機会を利用して市民対象の講座を提供してくれます。

事業者や市民活動団体などへ資金の支援

市在住の個人や団体、事業者、市民活動団体が、それぞれのアイデアで時代に合った事業(活動)を展開していけるよう「市民提案型事業」の枠を設けています。対象の事業は、公益的または地域貢献型まちづくり活動で、提案者が自ら実施する事業であること、原則、年度内に終了することなどを条件として、ソフト・ハード事業の区別はありません。募集方法は、「広報おばま」や市のホームページで紹介。採択されると自己負担額を上限に50万円以内(事業費の01月02日以内)・総額100万円以内の補助が受けられます。2010年度は、多くの応募の中から23件の事業が採択され、積極的に事業が展開されている状況です。

今後は食育事業を地域外にも提供

現在、『食のまちづくり』の第2ステージとして、これまで実践してきた小浜市の食育事業を地域外にも提供するため、受け入れ態勢を整備。農林水産業の体験や調理体験、食育に関する研修など、ソフト、ハードを共に充実させて、思う存分『食育』を体験できるまちにすることが目標と言います。

「日本中、世界中から多くの方が訪れるまちにしたい」と食のまちづくり課の中田さんは熱く語ります。近く高速道路小浜インターとともにオープンする道の駅などにも、小浜の名物の品々が並ぶよう、事業者や市民の皆さんと力を合わせいくそうです。

取材日=2010年12月