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農林水産省

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トピックス6 生活困窮者や買い物困難者等への食品アクセスの確保に向けた対応


新型コロナウイルス感染症による影響の長期化に加え、食料品等の価格高騰の影響により、生活困窮者への影響が深刻化しています。また、食料品等の買い物が困難になっている人が増えてきており、「食品アクセス問題」として社会的な課題になっています。

以下では、フードバンク(*1)活動を始めとした、食品アクセスの確保に向けた対応について紹介します。

*1 用語の解説(1)を参照

(低所得者層ほど食料の価格上昇による負担が増加)

我が国においては、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、原材料価格の上昇や為替相場の影響等による食料品・エネルギー等の価格上昇が国民生活や事業活動に大きな影響を及ぼしています。

厚生労働省の調査によれば、所得金額階層別に世帯数の相対度数分布について、平成9(1997)年と令和2(2020)年を比較すると、高所得世帯の減少のほか、「400~500万円」以下の世帯割合の増加が見られ、相対的貧困者の増加がうかがわれます(図表トピ6-1)。

また、内閣府の資料によれば、食料の価格上昇による家計負担の増加額が収入に占める割合を見ると、令和5(2023)年1月における食料負担増の収入比は、低所得者層ほど負担が増加しており、家計へのしわ寄せが生じている状況がうかがわれます(図表トピ6-2)。

このような状況の中、全ての国民が良質かつ多様で十分な食品にアクセスできる状態を可能とするためには、生活困窮者等へ食品を届きやすくする取組の支援等、食品アクセスの確保に向けた対応を図ることが重要となっています。

図表トピ6-1 所得金額階級別世帯数の相対度数分布の変化
図表トピ6-2 収入階層別に見た、令和元(2019)年平均からの食料負担増の対収入比(令和5(2023)年1月、年換算)

(フードバンクの役割が拡大)

生産・流通・消費等の過程で発生する未利用食品を食品企業や農家等からの寄附を受けて、福祉施設や生活困窮者等に無償で提供する「フードバンク」と呼ばれる団体の役割が大きくなっています。フードバンク活動は、未利用食品を必要とする者に届ける流通の一形態であり、食品ロスの削減に直結するほか、生活困窮者への支援等の観点からも意義のある取組であり、国民に対してフードバンク活動への理解を促進することが重要となっています。

我が国では、令和5(2023)年3月末時点で、全国で約234団体がフードバンク活動を行っています。公益財団法人流通経済研究所(りゅうつうけいざいけんきゅうしょ)の調査によれば、フードバンクの運営主体は、約6割がNPO法人、約1割が社会福祉法人となっています。

また、フードバンクからの食品受取先は、「子ども食堂」が84%で最も多く、次いで「個人支援」が78%となっています(図表トピ6-3)。さらに、フードバンクの運営上の課題については、「予算(活動費)の不足」や「人員の不足」のほか、「食品を保管する倉庫や冷蔵・冷凍庫、運搬する車の不足」といった回答が多くなっています。

図表トピ6-3 フードバンクにおける食品受取先と運営上の課題

(フードバンク活動への支援を強化)

食品の流通を所管する農林水産省では、食品ロス削減のみならず、生活困窮者支援の観点からも、その役割の重要性が高まっているフードバンクに対し、活動開始から間もない団体への支援に加え、運営基盤の強化、食品取扱量の拡大等の課題に対応するため、フードバンクにおける広域連携等の食品の受入・提供能力の強化に向けた先進的な取組の支援を行っています。

また、フードバンクの活動強化に向け、食品供給元の確保等の課題解決に資する専門家派遣等を推進するとともに、フードバンクがこども食堂等向けの食品の受入れ・提供を拡大するために必要となる経費の支援を行っています。

さらに、賞味期限内食品のフードバンク等への寄附が進むよう、官民協働でネットワークを形成する取組を推進しています。

(事例)海外の手法を取り入れてフードバンク活動を実践(岡山県)

岡山県吉備中央町
冷蔵設備のある移動販売車

冷蔵設備のある移動販売車

資料:株式会社ケンジャミン・フランクリン

フードバンク活動

フードバンク活動

資料:NPO法人ジャパンハーベスト

岡山県吉備中央町(きびちゅうおうちょう)の株式会社ケンジャミン・フランクリンは、飲食店と移動スーパーを経営しながら、フードバンク活動に取り組んでいます。

同社は、冷蔵設備のある移動販売車を利用して、欧州で学んだ倉庫を持たないフードバンク活動を実践しており、中山間地域で生じる余剰農産物や、市街地の小売事業者等から提供を受けた「まだ食べられるけれど販売はできない食品」を、児童養護施設やこども食堂、困窮世帯等に届ける活動を行っています。また、英国等で盛んなコミュニティフリッジ(*)の普及にも取り組んでいます。

さらに、令和4(2022)年には、豪州の慈善団体と連携協定を締結し、NPO法人ジャパンハーベストとして、世界をリードする取組を我が国で展開することも目指しています。今後は、食育や料理等を通じた食品ロス削減の啓発にも力を入れていくこととしています。

* 公共施設等に設置された冷蔵庫から、寄附された食品を必要とする人が自由に受け取れる仕組み

(物価高騰の中での期限内食品の有効活用を推進)

原材料価格が高騰する中、コスト削減と値上げ幅の緩和を図っていくためには、期限内食品を消費者に売り切り、それでも発生する未利用食品を生活困窮者に寄附していくことが社会全体で強く求められています。そのためには、「期限内食品は全て消費者に届ける」との思いの下、川上から川下までの関係者が、共に取り組んでいくことが不可欠です。

「物価高騰の中での期限内食品の有効活用に関する意見交換会」にて挨拶する農林水産大臣

「物価高騰の中での期限内食品の
有効活用に関する意見交換会」にて
挨拶する農林水産大臣

このため、農林水産省では、生産・製造された食品がそれを必要とする者に適確に渡っていくよう、フードバンク全国団体等や食品企業の関係者間での意識と課題の共有を図るため、令和4(2022)年9月に「物価高騰の中での期限内食品の有効活用に関する意見交換会」を開催し、食品製造流通事業者に向けて、納品期限の見直しや、期限内にもかかわらず消費者への販売に至らない食品をフードバンクに寄附すること等を求める、農林水産大臣からのメッセージを発出しました。

(約9割の市区町村が「食品アクセス問題」への対策が必要と認識)

図表トピ6-4 対策を必要とする背景

データ(エクセル:23KB / CSV:2KB

我が国では、高齢化や地元小売業の廃業、既存商店街の衰退等により、過疎地域のみならず都市部においても、高齢者等を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる人(いわゆる「買い物困難者」)が増えてきており、「食品アクセス問題」として社会的な課題になっています。

令和4(2022)年4月に公表した調査によれば、回答した市区町村の86.4%が食品アクセス問題への対策が必要と認識しています。

また、対策を必要とする背景としては、都市の規模にかかわらず「住民の高齢化」が最も多く、次いで「地元小売業の廃業」となっています(図表トピ6-4)。このほか、行政が実施している対策では「コミュニティバス、乗合タクシーの運行等に対する支援」が最も多く、民間事業者が実施している対策では「移動販売車の導入・運営」が最も多くなっています。

(食品アクセス問題の解決に向け、取組方法等の情報を発信)

食品アクセス問題は、商店街や地域交通、介護・福祉等、様々な分野が関係する問題であり、関係府省、地方公共団体の関係部局が横断的に連携し、民間企業やNPO法人、地域住民等の多様な関係者と連携・協力しながら継続的に取り組んでいくことが重要です。

農林水産省では、地方公共団体や民間事業者等が食品アクセス問題の解決に向けた取組に役立てられるよう、食品アクセス問題への取組方法や支援施策、先進事例、調査結果等の情報を積極的に発信しています。

食品アクセス(買い物弱者・買い物難民等)問題ポータルサイト

食品アクセス(買い物弱者・買い物難民等)問題ポータルサイト
URL:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/eat/syoku_akusesu.html




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